過去の事務所便り 2013年以前
「ブラック企業」の定義と労働行政の対応 (2013/12/01)
◆「ブラック企業」の定義は?
最近、マスコミ等で大きな話題となっている「ブラック企業」ですが、「労働法令を遵守せず、労働者の人格を著しく無視したかたちで働かせている企業」、「違法な長時間労働 や賃金不払い残業があり、離職率が極端に高い企業」、「就職したらひどい目にあうので避けた方がよい企業」などと定義されているようです。
◆勤務先はブラック企業?
先日、連合総研が10月初旬に実施した「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート調査」(首都圏・関西圏に居住し民間企業に勤務する20~64歳の人2,000名が回 答)の結果が発表されました。
この調査で、「あなたの勤め先は『ブラック企業』にあたると思いますか」と質問したころ、「そう思う」と回答した人は17.2%でしたが、若者世代ほど「そう思う」と回答 した割合が多い結果となりました(20代:23.5%、30代:20.8%、40代:15.4%、50代:11.2%、60代:9.0%)。
◆厚労省が実施した電話相談の結果
厚生労働省では「ブラック企業」という言葉は使わずに、「若者の使い捨てが疑われる企業」と呼んでいますが、今年9月を「過重労働重点監督月間」と定め、過重労働が行われ ている疑いのある事業所に対して重点的に指導・監督を行いました。
同省が9月1日に実施した無料電話相談には全国から1,042件の相談が寄せられたとのことで、相談内容(複数回答)は上位から、(1)賃金不払残業(53.4%)、 (2)長時間労働・過重労働(39.7%)、(3)パワーハラスメント(15.6%)だったそうです。
なお、相談者が勤務している業種は、「製造業」(20.4%)と「商業」(19.9%)で約4割を占めました。
◆労基署の調査、監督指導
厚生労働省は「労働条件の確保・改善対策」を重点施策として挙げており、今後も、労働法令を遵守しない企業に対する監督指導の強化傾向は続くものと思われます。
労働基準監督署による調査や監督指導は、労働者や退職者からの情報提供をきっかけに行われるケースも多いので、労働者等から「ブラック企業」とのイメージを持たれることの ないよう、労務管理上、万全の対策をとっておく必要があります。
社員にも知らせておきたい年金の手続き (2013/12/01)
◆情報提供で従業員満足度をアップ
年金の手続きについては、本人の受け取る年金額にも影響してきますので、最終的には年金事務所での確認が必要になります。しかし、制度の概要や手続きの流れ、法改正の話題 などを従業員に案内しておくことは、従業員満足度を上げる意味でも有効な手段です。
現在、政府広報オンラインのホームページでは、『知っておきたい「年金」の手続き』として、特に「第3号被保険者の不整合記録問題」の対応に関する手続きなどがまとめられ ていますので、こうしたものを参考にするとよいでしょう。
◆「不整合記録問題」とは?
会社員や公務員(第2号被保険者)の配偶者で第3号被保険者であった主婦・主夫の方も、第2号被保険者の方が亡くなったり、退職した場合や自分の年収が130万円以上と なったりした場合には、第3号被保険者の資格を失い、第1号被保険となります。
その場合、居住する市(区)町村の年金窓口で「第3号」から「第1号」になるための切替えの届出を行い、保険料を自分で納めることが必要となります(なお、「第3号」の主 婦・主夫の方が、会社などに就職し、勤め先の厚生年金保険または共済組合などに加入した場合は「第2号」となります)。
しかし、この「第1号」への切替えの届出を行わなかったため、実態とは異なり年金記録上は「第3号」のままになっていることが後で判明するケースが問題となっています。
◆約47.5万人が該当との推計
時効(本来届出が必要な時点から2年)により保険料の納付ができない「未納期間」が生じ、その結果、受け取る年金額が少なくなったり、受給資格期間を満たせず年金が受給で きなくなったりするおそれがあり、約47.5万人(うち、年金受給者約5.3万人、被保険者など約42.2万人)が該当すると厚生労働省は推 計しています。
この問題に対応するため、今年7月に法律が改正され、「第3号」から「第1号」への切替えの届出が2年以上遅れたことのある方が所定の手続きを行えば、「未納期間」を年金 の「受給資格期間」に算入できるようになりました。また、最大10年分の保険料の納付ができるようになりました。
◆小冊子やチェックリストの活用でトラブルを防ぐ
定年退職などで会社を離職する方に、社会保険や税金等に関する必要な手続きをまとめた小冊子などを手渡すと、退職時のトラブルを防ぐ役に立 つでしょう。
また、会社が行う手続きもチェックリストなどを使って漏れのないようにしたいものです。自社のチェックリストは法改正を反映しているか、定期的にチェックが必要です。
島田社労士からの一言 (2013/12/01)
今月は、賞与が支給される会社が多いことと思います。人事労務のご担当者の方は、年末調整に加え、賞与支払い届の準備をなさっていらっしゃ ることでしょう。
年金事務所への賞与支払い届は、法律上の届出期限は、支払日から5日以内(船員は10日以内)となっています。また12月支給予定事業所には11月中に年金事務所から、被 保険者の氏名等が印字された届出用紙が送られているはずですから、それを確認しておくことが必要です。
その他、36協定の新しい協定期間が1月1日からの事業所は、年内に労働基準監督署所へ届出を行うことを忘れないようお気を付け下さい。
労働基準監督署による最近の送検事例(労災関連) (2013/11/01)
◆東京労働局が送検事例を公表
東京労働局では、労働基準監督署が送検した事例をホームページ上で公表しています。ここでは、労災事故に関連した最近の送検事例を見てみま しょう。
◆労災かくしで道路旅客運送業者を書類送検
平成24年2月、タクシー会社の駐車場で労働者がハイヤーを洗車していたところ、転倒して手首を骨折し、休業4日以上に及ぶ労災事故が発生 しました。
労働安全衛生法では、「休業4日以上」を要する労災については、遅滞なく所轄労働基準監督署長に「労働者死傷病報告」を提出することを義務 付けていますが、この会社は労災の発生を隠ぺいするため報告書を提出していませんでした。
中央労働基準監督署は、タクシー会社と営業所長を労働安全衛生法違反の容疑で、平成25年8月に東京地方検察庁に書類送検しました。
◆工事現場の墜落死亡災害で書類送検
平成24年4月、高架橋の防風柵新設工事現場で、建設工事業者の労働者(当時19歳)が、つり足場の組み立て作業中に足場から約13メート ル下の運河上に墜落して死亡しました。
労働者につり足場の組立て作業を行わせる場合は「足場の組立て等作業主任者技能講習」を修了した者の中から作業主任者を選任し、作業主任者 に作業の進行状況および保護帽と安全帯の使用状況を監視させなくてはならないところ、この工事業者は、選任した作業主任者が当該現場に不在で あり作業の進行状況と安全帯の使用状況を監視していないことを知りながら、被災労働者らに作業をさせていたことが判明しました。
亀戸労働基準監督署は、工事業者と工事部長を労働安全衛生法違反の疑いで、平成25年9月に東京地方検察庁に書類送検しました。
◆労基署関連のドラマがスタート
労基署が送検を行うのは特に重大な事案の場合に限られますが、「労働安全衛生法違反」以外にも、「労働基準法違反」や「最低賃金法違反」等 で送検を行うことがあります。
なお、この10月から、労働基準監督官を主人公としたドラマ「ダンダリン」(日本テレビ・水曜22時~)の放送がスタートしたこともあり、 今後、労働基準監督署や労働基準監督官に注目が集まるかもしれません。
人事院調査結果にみる民間企業の勤務条件の最近の動向 (2013/11/01)
◆調査の概要
人事院が、毎年民間企業に対して行う調査の2012年分の結果が、このほど公表されました。
(1)労働時間の短縮制度、(2)休暇の付与、(3)業務災害および通勤災害に対する法定外給付制度の状況等について調査し、常勤の従業員 数50名以上の企業(6,852社)から回答を得ました。
◆「三六協定」により延長できる労働時間数
1カ月単位で三六協定を締結している企業において、協定により延長できる労働時間数は、「45時間」が49.6%、「30時間超45時間未 満」が31.9%でした。
また、1年間では「360時間」が53.7%、「300時間以上330時間未満」が26.5%でした。
特別条項付き三六協定を適用した場合の延長時間数については、1カ月間の延長時間数を「60時間超80時間以下」とする割合が46.7%、 「45時間超60時間以下」が22.4%、「80時間超100時間以下」とする割合が18.2%でした。
また、1年間の延長時間については、「720時間超」が33.2%、「660時間超720時間以下」が18.3%、「540時間超600時間 以下」が13.2%でした。
◆休暇の付与の仕方
正社員の夏季休暇制度がある企業の割合は60.9%で、このうち58.4%の企業で有給としていました。夏季休暇制度がない企業の割合は 38.9%でした。
なお、有期雇用従業員について見ると、フルタイムの場合に正社員と同じ夏季休暇制度がある企業の割合は50.0%で、1週間当たりの労働時 間数が正社員の4分の3以下の有期雇用従業員(以下、「4分の3以下の従業員」)では40.8%でした。
年次有給休暇では、フルタイムでは81.6%の企業が一定期間経過後から付与していましたが、4分の3以下の従業員では87.8%と、有期 雇用従業員の間でも付与の仕方に違いが見られました。
◆業務災害および通勤災害に対する法定外給付制度
従業員が業務災害または通勤災害にあった場合に、労災保険による給付の他に独自給付を設けている企業の割合は、業務災害の場合、死亡で 56.3%、後遺障害で50.0%、通勤災害の場合、死亡で51.3%、後遺障害で45.1%でした。
年末調整の季節です 島田事務所から (2013/11/01)
◆今年も年末調整の季節がやってきました。
先日、例年通り税務署から、年末調整の説明会の案内と、資料が送られてきました。毎年のことですが、これが送られてくると、そろそろ今年も あとわずかしかない、という気分になります。
平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に生ずる所得については、源泉所得税を徴収する際、復興特別所得税を合わせて徴収し て合計額を納付することが義務付けられています。
所得税率が10%の場合、復興特別所得税を合わせた税率は10.21%となり、金額に端数が出る原因となっていることは皆様ご承知のとおり です。
◆給与等の収入金額が1,500万円を超える場合
平成25年分以降は、給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額については、245万円の定額となりました。
たとえば2,000万円の収入の場合、改正前は給与等額X5%+170万円で270万円でした。これが今年からは245万円の定額となり、控 除額が25万円少なくなります。
◆特定の役員等の退職金に対する税額
特定の役員等に対する退職手当等(役員等勤続年数が5年以下である人が支払いを受ける退職手当のうち、 その役員等勤続年数に対応する退職手当として支払いを受けるもの)に係る退職所得の金額の計算については、退職所得控除額を控除した残額を2 分の1する措置が廃止されました。
以上の3点が昨年と比べて変わった点です。
そろそろ生保・損保会社から保険料の証明書が届き始めています。年調のご担当の方はこれからしばらく大変ですね。頑張ってください。(島田)
「社会保険の適用拡大」に伴う企業と労働者の対応は? (2013/10/01)
◆調査の内容
社会保険の適用拡大が短時間労働者の雇用管理に及ぼす影響や、適用拡大が実施された場合の短時間労働者の対応の意向に関する調査の結果が公表されました。
この調査は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が、常用労働者5人以上の事業所(1万5,000社)に対するアンケート調査と、短時間労働者が多いとされる業種の企業お よび労働組合にインタビュー調査を行ったものです。
企業・従業員はどのような対応を取るつもりなのでしょうか?
◆企業の意向は?
- 短時間労働者の雇用管理について見直す(と思う)企業が半数超
- 「所定労働時間の長時間化を図る事業所」… 約3割
「短時間労働者の人材を厳選し、一人ひとりにもっと長時間働いてもらい雇用数を抑制」するという企業が30.5%ありました。 - 「所定労働時間の短時間化を図る事業所」… 約3割
「適用拡大要件にできるだけ該当しないよう所定労働時間を短くし、その分より多くの短時間労働者を雇用」するという企業が32.6%あり ました。
◆従業員の意向は?
社会保険が適用拡大されたら働き方を「変えると思う」短時間労働者は約6割おり、具体的には、次のような意向が多くなっています(無回答:36.3%)。
- 「適用されるよう、かつ手取り収入が増えるよう働く時間を増やす」…26.7%
- 「適用されるよう働く時間を増やすが、手取り収入が減らない程度の時間増に抑える」…15.6%
- 「適用にならないよう働く時間を減らす」… 14.5%
- 「正社員として働く」…8.7%
社会保険適用を希望しているが、会社から労働時間の短時間化を求められた場合の対応として、「他の会社を探す」「分からない・何とも言えない」「受け容れる」がそれぞれ約 3割となっています。
◆短時間労働者の二極化
社会保険の適用拡大に伴い、「短時間労働者」という雇用形態では、“長時間化する層”と“短時間化する層”への二極化が進むと予測されます。また、基幹となる短時間労働者 については、業務上の高度な役割を担う割合が高くなってくるでしょう。
その際、処遇や労働条件を適切に確保しなければ、貴重な人材の流出につながる可能性が高まります。自社の状況を踏まえながら、今後の対応を検討してみてはいかがでしょう か。
「健康管理体制」に関する行政の監督指導の強化 (2013/10/01)
◆「過労死等発生事業場」への監督指導結果
東京労働局から、平成24年度に実施された、過労死・過労自殺など過重労働による健康障害を発生させ労災申請が行われた事業場に対する監督指導結果の概要が公表されまし た。
対象となった93事業場の業種は、「交通運輸業」が最も多く、次いで「ソフトウェア・情報処理業」、「建設業」、「卸・小売業」の順で多くなっています。
また、企業規模としては、「10~49人」が最も多く、次いで「100~299人」、「10 人未満」、「300~99人」の順となっています。
◆法違反の割合が90%
今回の結果から、過労死等を発生させた事業場では「労働関係法令違反」の割合が 90%と高く、被災労働者に対する健康管理体制の不備のある事業場も高い割合であることがわかりました。
違反の状況としては、不適切な労働時間管理(労働時間の違反、未払残業など)によるものが多くなっており、特に「三六協定」の取扱いが厳しく監督指導されているようです。
また、違反のあった事業場のうち半数以上で、1カ月の時間外労働が100 時間を超えるか、2カ月~6カ月の時間外労働が平均して月80時間を超えると認められたとのことです。
◆健康管理体制についての指導を強化
近年では、過重労働による健康障害を防止するためとして、衛生管理体制の不備についても重点的に指導が行われています。
内容は、健康診断の受診、有所見者への対応(医師等からの意見聴取、勤務軽減措置、保健指導)や、時間外・休日労働が多い労働者に対する医師による面接指導です。
これらの中には努力義務のものもありますが、適切に取り組んでいない場合、いざ過労死や精神疾患の発症等が起きた際には、訴訟等において企業は不利な立場に置かれることに なります。
◆「ブラック企業」への取締りも
その他、社員が過重労働により亡くなってしまったり精神疾患等で業務に就けなくなったりすれば、その影響は社員の家族や他の社員に多大な負担を強いることになります。ひい ては企業の社会的評価が低下するなど、経営自体にマイナスとなります。
また、いわゆる「ブラック企業」に対する集中的な指導監督も進められていますので、今後も行政による指導監督は強化されていくことと思われます。この機会に、健康的に働く ことができ、会社経営にもプラスとなる労働時間管理について検討してみてはいかがでしょうか。
話題の「成年後見制度」現在の状況と課題 (2013/10/01)
◆需要高まる「成年後見」
高齢化社会の進展とともに、「成年後見」の需要が高まっているようです。
「成年後見制度」は、認知症や知的障害、精神障害などで判断能力が不十分な人(本人)について、その行為能力を制限するとともに、本人の能力を後見的立場から補完すること によってその権利を守るためのものです。
「成年後見人」の選任対象は、親族や弁護士、司法書士、社会保険労務士などで、仕事は法律行為に関するものに限られ、本人に代わって財産を管理したり必要な契約を結んだり します。
◆後見人による不正も問題に
需要が高まっている一方で、成年後見制度の利用が増えるに伴い、後見人による不正も問題となっています。
最高裁判所の報告によると、成年後見人の起こした不正は、2010年6月から2012年12月末までに1,058件、被害金額は94億円超にも上っています。うち、親族後 見人による不正が1,032件を占めています。
◆専門職の選任割合が増加
こうした背景を踏まえ、また、適切な財産管理を行うという観点から、後見人として、親族ではなく弁護士や司法書士、社会保険労務士などの専門職を選任するケースが増えてい ます。
専門職の選任割合は、2012年に51.5%となり、2000年の後見制度開始以来、初めて半数を超えました。
ただし、専門職であっても、知見等に濃淡があるのは事実です。今後は、裁判所等が後見人の業務を適切に監督する体制づくり等も求められると考えられます。
「社会保障制度改革国民会議」が示した改革の方向性 (2013/09/01)
◆1年に及ぶ議論を経て報告書提出
2012年に成立した「社会保障制度改革推進法」により内閣に設置されていた社会保障制度改革国民会議は、8月5日に報告書を公表、翌6 日、安倍首相に提出しました。
報告書では、各種給付を「全世代型」の給付に見直すことが示されました。これまで高齢者に対し特に手厚い制度となっていたものを、若い世代 向けの出産や育児に関する保障を厚くし、高齢者でも高所得者については相応の負担を求め、現役世代に限らず幅広い世代で負担を分かち合う方向 に転換するというものです。
また、超高齢化社会に対応するため、来年4月から予定通り消費税率を引き上げ、引上げ分を財源として医療や介護の充実を図ることを提言して います。
以下、その主な内容を紹介します。
◆医療保険・介護保険関連
負担に関する見直しとして、(1)70~74歳の医療費について、新たに70歳となる人から2割負担とすること、(2)高所得者の介護保険 の利用者負担の引上げ、(3)健康保険料の上限引上げ、(4)75歳以上の後期高齢者向け医療費の支援金に「総報酬割」を全面導入すること等 が挙げられます。
◆年金関連
話題になっていた抜本改革は見送られ、給付開始年齢の引下げについても中長期的な議論として引き続き検討を求めるにとどまりましたが、(1)非正規労働者への適用拡大、 (2)高所得者に対する年金減額、(3)デフレ下においても給付増を抑制する機能が働くようにすること等が盛り込まれました。
◆少子化対策関連
他の項目に比べると具体策に乏しい印象ですが、(1)雇用保険の育児休業給付の引上げ(厚生労働省は5割→6割を検討)、(2)消費税引上げ分を財源とした待機児童解消策 の実施等が盛り込まれました。
「最低賃金」と「定額残業代」 (2013/09/01)
◆平均で14円の引上げに
最低賃金が引き上げられます。政府は、今年10月頃に予定している平成25年度改定に合わせて、最低賃金の額の引上げ方針を固めました。
引上げ幅は全国平均で「14円」が目安とされています。現在の最低賃金(時給)は、全国平均で749円ですので、763円への引上げになります。今後はこれを目安に、都道 府県ごとの最低賃金が決定されます。
賃金の引上げに向けて、政府は企業の内部留保が投資や賃金に回るような誘導策を導入する方針です。一方、負担の大きい中小企業に対しては、経営を過度に圧迫しない対応も慎 重に検討していくとしています。
◆最低賃金に関する注意点
パートやアルバイトの従業員がいない企業でも、最低賃金には要注意です。
月給制の場合でも、基本給+固定的手当の総額を時間単価に直した場合、その額が最低賃金を下回ると法違反となり罰金が科される可能性があります。さすがにこの基準自体はク リアしていることが多いと思いますが、消費税引上げを見据えて最低賃金引上げの圧力は強いようです。
◆「定額残業代」の最近の傾向
給与制度にはいろいろなものがありますが、導入している企業も多い「定額残業代制度」には問題点もあるようです。
定額残業代の支払方法には、(1)手当として支払う方式、(2)基本給などに組み込んで支払う方式などがあります。ここ数年で日常茶飯事となった感のある未払残業代訴訟で は、これらの支払方法によって、会社側の主張が認められにくくなる場合があります。
(1)については、就業規則や雇用契約書に定めがあれば、裁判でも定額残業代が認められやすい傾向にあります。しかし(2)については特に問題が多く、裁判で否定されるこ とが多いようです。
◆これから定額残業代を導入する場合
新たに定額残業代制度を導入しようとする場合、その多くは労働条件の不利益変更に該当することになります。その場合は、書面による従業員との明確な合意が必要です。また、 同意を得る前に、従業員に対する説明会や個別面談を行うなど、導入には周到な準備が必要です。加えて、就業規則や雇用契約書などの書式類、残 業管理方法の見直しについて準備しておきましょう。
「労働者派遣制度」見直しに関する最新動向 (2013/09/01)
◆制度見直しの“3つの視点”
厚生労働省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」(以下、「研究会」)は、8月6日に開催された会合で報告書素案を公表し、今 後、労働政策審議会で行われる見直しの議論のための方向性や論点を示しました。
この報告書素案では、これからの制度検討の基本的視点として、(1)派遣労働者の保護と雇用の安定、(2)派遣労働者のキャリアアップ推進、(3)労働者派遣制度を労使双 方にとってわかりやすいものとすることが挙げられています。
◆気になる「26業務」や「派遣期間」の行方は?
現行、正規社員の雇用を脅かすおそれがないとして、ソフトウェア開発や通訳、アナウンサーの業務等の26の業務(以下、「26業務」)については、派遣期間の上限が設けら れていません。
これらについては、専門業務の枠組みをすべて廃止したうえで、期間に上限を設けるかどうかは派遣労働者と派遣元との間で締結される雇用契約によって変えられるようにし、有 期雇用についてはすべての業務で派遣期間を「最長3年」とすることが適当とする案が示されました。
そして、派遣期間については、現在、派遣先の業務単位で制限が設けられており、同一業務での派遣の受入れは最長3年とされていますが、これを労働者個人ごとの期間制限と し、前任者の有無にかかわらず同じ部署で最長3年まで働けることとする案が示されました。
◆来年の通常国会に改正法案提出予定
今後は、公表された報告書素案をもとに2013年8月中に報告書を作成し、労働政策審議会で労働者派遣法の改正についての詳細を検討したうえで、2014年の通常国会に改 正法案を提出することが予定されています。
派遣労働者を利用している事業所にとっては、労働者派遣制度をめぐる法規制が大きく変更される可能性がありますので、今後の動向に注目する必要があるでしょう。
8月1日より変更される雇用保険の基本手当日額等 (2013/08/01)
◆賃金日額・基本手当日額の変更
厚生労働省発表の「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減により、毎年8月1日に見直される雇用保険の賃金日額の上限額・下限額が、2012年度の平均定期給与額が前年比 で約0.5%減少したことから、いずれも若干の引下げとなりました。
これにより賃金日額に基づいて算定される基本手当日額の支給額も減額となる場合があり、対象となる方には2013年8月2日以降の認定日に返却される受給者資格者証に印字 して通知されます。
なお、変更後の基本手当日額は、全年齢の下限額が1,848円です。上限額は、29歳以下は6,405円、30~44歳は7,115円、45~59歳は7,830円、 60~64歳は6,723円です。 さらに、基本手当日額以外にも今回の変更に伴い、下記の雇用保険給付について支給額等の変更が生じます。
◆就業促進手当の上限額の変更
就業促進手当(再就職手当、就業手当、常用就職支度手当)の上限額も変更となり、就業手当の1日当たり支給額(基本手当日額の30%)の上限額が、59歳以下で1,752 円、60~64歳で1,418円となります。
◆高年齢雇用継続給付の支給限度額等の変更
高年齢雇用継続給付の支給限度額は34万1,542円となり、最低限度額は1,848円となります。支給対象月に支払われた賃金の額が支給限度額以上であるとき、また、高 年齢雇用継続給付として算定された額が最低限度額を超えない場合は、高年齢雇用継続給付は支給されません。
なお、支給額算定に用いる60歳到達時等の賃金月額については、上限額が44万8,200円、下限額が6万9,300円となります。
◆育児休業給付の支給限度額の変更
初日が2013年8月1日以後である支給対象期間の育児休業給付については、上限額が21万3,450円となります。
◆介護休業給付の支給限度額の変更
初日が2013年8月1日以後である支給対象期間の育児休業給付については、上限額が17万760円となります。
中高年社員や退職者への情報提供は十分ですか? (2013/08/01)
◆65歳、さらに70歳までの雇用が想定されている
平成25年4月より、厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられることに伴う措置として、高年齢者の雇用継続を促す「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。
今回の改正では65歳までの雇用継続が想定されており、継続雇用制度を作成するにあたっては、原則、希望者全員を再雇用する制度とする必要があります(一部例外と経過措置 が設けられています)。
さらに、政府はすでに「70歳まで働ける企業」の普及・促進も進めており、70歳までの雇用継続も視野に入っています。
◆中高年社員に関する取組み
中高年社員の増加を見据えて、東京都では「中高年勤労者福祉推進員(ライフプランアドバイザー)養成講座」を開講するとのことです。
この講座は、中小企業事業主や人事担当者などを対象に、社員の退職後のライフプランについて助言できる人材を養成することが目的で、「税金」「年金」「法律」「キャリア開 発」「介護」「メンタルヘルス」などの講習を修了した人に、東京都知事名の修了証書が授与されるとのことです。
◆中高年社員や退職者への情報提供は十分ですか?
こうした認定までは受けなくても自社の中高年社員に向けて、これからのライフプランについての社内研修を開いたり、退職を控えた社員に退職後の社会保険や年金等の手続きを まとめた小冊子を配付したりするなどの対応を行う企業は、年々増えてきているようです。
これから高齢期・退職期にある社員に対する情報提供は、より重要性を増していくことでしょう。
トラブルの多い社員が定年退職後の再雇用を求めてくるケースも多いようです。こうした情報提供は、離職・退職時のトラブル防止にも役立ちますので、規程等の整備と併せてぜ ひ活用されることをお勧めいたします。
精神障害の労災認定件数が過去最多に! (2013/08/01)
◆脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況
厚生労働省が、平成24年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を発表しました。これは過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスなどが 原因で発病した精神障害の状況についてまとめたものです。
くも膜下出血などの「脳血管疾患」や、心筋梗塞などの「心臓疾患」は過重な仕事が原因で発症する場合があり、これにより死亡した場合は「過労死」とも呼ばれています。
◆精神障害の労災認定件数が過去最多に
今回注目すべきは、精神障害の労災申請自体は前年より若干少なくなりました(1,257件)が、労災認定件数が475件(前年度比150件増)となり、過去最多となったこ とです。
その内容を見ると、昨今、行政による是正指導でも多く指摘されている事項が並んでいます。 業種別では、製造業や卸・小売業、運輸業、医療・福祉といった業種が多くなっています。
◆仕事量・内容の変化、嫌がらせ・いじめに注意
次に、出来事別に支給決定件数をみると、
(1)仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった、
(2)(ひどい)嫌がらせ、いじめ又は暴行を受けた、
(3)悲惨な事故や災害の体験、目撃をした、の順に多くなっています。
また、増加件数としては、
(1)1カ月に80時間以上の時間外労働を行った(前年度比29件増)、
(2)(重度の)病気やケガをした(同27件増)、
(3)上司とのトラブルがあった(同19件増)、
(4)セクシュアルハラスメントを受けた(同18件増)、
(5)(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた(同15件増)の順に多くなっています。
◆体調の管理と併せて労働時間の管理も
「1カ月に80時間以上の時間外労働を行った」という部分については、脳・心臓疾患の時間外労働時間数(1カ月平均)別支給決定件数をみても、飛躍的に発症件数が増えてく るところですので、会社の労働時間の管理が非常に重要であることがわかります。
時間外労働が多いと睡眠不足など体調の管理も難しくなり、こうした労災の発生につながってくることも考えられます。 暑い時期になり、熱中症が例年になく多く発生しているようです。今年は体調の管理と併せて、労働時間の管理についても見直してみてはいかがでしょうか。
調査結果で明らかになった「高年齢者の雇用確保」の課題 (2013/07/01)
◆「改正高年法対応」の実態と影響
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が行った調査によると、回答した342社のうち92.4%が高年齢者雇用確保措置と して「再雇用」を選択しており、「勤務延長」「定年延長」「定年廃止」を選択する会社は少数でした。
調査では高年齢者の勤務形態や担当職務、処遇についても質問していますが、勤務形態は68.2%が「フルタイム」、担当職務は56.4%が 「ケースバイケース」とする一方、36.8%が「原則として定年前と同じ」でした。
再雇用後初年度の給与水準は、58.4%が「定年前の5~8割」、63.8%が「2年度目以降も同水準」としていました。 なお、改正高年齢者雇用安定法への対応の影響として34.2%が「若手の採用抑制」を挙げ、22.2%が「若手・中堅の賃金抑制」を挙げています。
◆規模が小さい会社ほど若年者の採用に影響
東京都が2012年9~111月に行った調査によると、「高齢者の雇用確保が若年者の雇用に悪影響を及ぼす」と回答した割合は、60代で 25.1%に対し、20代では42.1%と、世代間でギャップを生じました。
また、「若年者の採用を抑制せざるを得ない」と回答した企業の割合が、従業員数1,000人以上では25.6%に対し、従業員数 100~299人では40.2%と、規模の小さい会社ほど若年者の採用への影響が大きいことがわかりました。
◆サラリーマンの4割は「老後難民」予備軍!?
フフィデリティ退職・投資教育研究所が20~50代の男女(1万1,507人)に行った調査によると、定年後の生活資金に必要な金額の平均 は3,016万円でしたが、この金額を「準備できる」と回答したのは9.5%で、「少し足りないまでは準備できる」との回答も25.0%でし た。
準備できている額の平均は627.6万円で、「0円」との回答は40.3%あり、定年に最も近い50代男性でも28.2%が「0円」と回答 しています。
会社の30年後は? 重要性を増す「介護休業制度」 (2013/07/01)
◆働き手は23%減、高齢者は5割増
国土交通省が発表した「首都圏白書」よれば、2040年時点における東京圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)の生産年齢人口(15~64歳) が、2010年と比較して23%減少し、高齢者人口は5割増になる見通しだということです。
また、この変化に伴い、空き家の増加や介護施設の不足、郊外住宅地の高齢化、公共交通網の維持などが社会的には大きな問題になると予想され ています。 実際に、近畿や中京圏ではその影響が出始めているようです。
◆会社の30年後は?
働き手の減少や高齢化に伴って、会社の経営上も様々な問題が生じてくるでしょう。 高齢化に伴い、若手の人材難となり、高齢社員や子育て等で一旦職を離れた主婦層をなんとかして戦力に取り込む必要が出てくるでしょう。
また、高齢化する社員のモチベーション維持・アップ、介護による離職を防ぐための介護休業制度の整備・実施、短時間勤務等の労働時間の見直 しなどが、高い確率で必要となってきます。また、業種によっては外国人雇用について今以上に検討する必要が出てくるかもしれません。
◆重要性を増す介護休業制度
2025年には、団塊の世代のすべての人が75歳以上となります。「いつまでも元気でいてほしい」とは思うものの、これからより多くの人が 介護を必要とする状況になっていくことは避けられません。
そうすると、介護を行う人は子ども世代に当たる50代であることが多く、管理職や業務のスペシャリストの立場にある基幹社員である場合が多 いことになります。そうした社員が親の介護に伴っていきなり離職してしまうという事態は、会社にとってリスクとなってしまいます。
介護休業の規定は作ったけれども、実際の運用はきちんとできていない会社が多いそうです。会社経営のこととして、「人財」の確保策として、自社の制度の見直しに着手してみ てはいかがでしょうか。
「クールビズ」事業所で実施できるあれこれ (2013/07/01)
◆今年も「クールビズ」が始まっています
すすっかり定着した感のある「クールビズ(COOL BIZ)」。
環境対策を目的に、夏場の暑いシーズンに室温28℃でも快適に仕事が行えるよう衣服を軽装化する啓発キャンペーンです。
主導する環境省では、今年は、男性のクールビズスタイルだけでなく、女性ならではのクールビズスタイル(衣服の素材やアイテム、涼しさを演 出するヘアメイクなど)をフォーカス。 売場やメディアと連動した企画が立てられるなど、クールビズを推進するために多角的な取組みが行われています。
◆「簡単に」「今すぐ」実施できるあれこれ
梅雨が明ければ、本格的に蒸し暑い夏がやってきます。その前に様々な対策を立てておくことで、エコに貢献しつつ、上手に夏を乗り切りたいも のです。 例えば、次のような対策は、事業所ですぐに実施することが可能です。
- 設備・機器面で工夫する 窓のブラインドを活用したり遮熱シートを利用したりすれば、室内の温度が上がりにくくなります。
- 香りを活用する ミント系の香りなどを用いれば、体感温度が下がり、働く環境を涼しく感じることができます。
◆生活時間から見直しも
ままた、効率的な働き方に生活時間から見直すことも、クールビズの一環と捉えられています。
「勤務時間を朝方にシフトすることによって、より涼しい時間帯に仕事の中心を持ってくる」、「長期の夏季休暇をとる」、「残業を減らす」な ど、会社の事情が許せば、ワークライフバランスなど他の施策にもつながるものですので、一考の余地があります。
「マイナンバー法」による会社実務への影響 (2013/05/31)
◆概要と施行後の利用イメージ
5月9日の衆議院本会議で可決し、その後5月24日の参議院本会議で可決したことから、「マイナンバー法」が成立しました。
同法施行後は、国民1人ひとりに「マイナンバー」(以下、「番号」という)が割り当てられ、各種手続きや申請の場面で利用されることとな り、事務の効率化 が図られる…というイメージはすでに多くの方がお持ちだと思いますが、実は、すぐにすべての場面で利用されるわけではありません。
政府・与党の社会保障改革検討本部では、フェーズ1から3まで、段階的に利用範囲を拡大する構想を持っており、フェーズ1では社会保障およ び税の分野での 利用、フェーズ2では幅広い行政分野での利用、フェーズ3では国民が自ら同意した場合の民間サービス等での利用、となっています。
◆給与計算、労働・社会保険に与える影響
では、給与計算や労働・社会保険の手続実務は、どのように変わるのでしょうか?
まず、番号は各人に対して居住する市町村から通知されます。施行に伴い各種申請書等には番号を記載する欄が設けられますので、企業は従業員 から番号の提供を受け、税務上はその番号を源泉徴収票等の記載欄に記載し、支払調書等提出することとなります。
なお、企業経営者には経営者個人の番号と法人に割り当てられる番号を紐付けすることにより、課税強化がなされることを心配する声があります が、このような取扱いは法律で禁じられているため、個人の番号と法人の番号が紐付けされることはありません。
同様に、労働・社会保険の手続きにおいても申請書等に番号を記載しますが、厚生労働省の資料(「マイナンバー法案に係る厚生労働省関係の業 務について」) によれば、傷病手当金支給申請者の所得確認や労災年金支給申請者の他給付の受給状況の確認、未支給となっている失業等給付や年金給付に関する手続き、国民 年金保険料の免除申請等、様々な分野での利用が見込まれるだけでなく、添付書類の省略等も予定されています。
◆個人情報保護への影響
現行の個人情報保護法では、取扱件数が5,000件以下の事業者については個人情報取扱事業者に該当しませんが、マイナンバー法施行後は、 これらの事業者についても個人情報取扱事業者と同様の安全管理措置等が求められることとなります。
そのため、番号をどう管理するか、取扱いができる部署や担当者をどのように制限するか等の社内規程の整備とそれに伴う手続きの制定、また、 従業員に対する教育も必要となります。
今年の「年度更新」「算定・月変」の実務上留意すべきこと
◆大臣が定める現物給与の価額の一部改正
社会保険の保険料は、被保険者の報酬月額および賞与額に基づいて、労働保険の保険料は、労働者の賃金総額に基づいて決定されますが、報酬、 賞与または賃金 (以下、「報酬等」という)の全部または一部が通貨以外のもので支払われる場合には、その現物給与の価額について、厚生労働大臣がその地方の時価によって 定めることとされています。
従来、支店等に勤務する被保険者の現物給付について、本社所在地の価額が適用されていましたが、生活実態に即した価額が望ましいことから、 2013年2月4日に平成25年厚生労働省告示第17号が発出され、4月1日以降、実際の勤務地の都道府県価額が適用されています(関連通達 として同日発基労徴発 0204第2号、保保発0204第1号、年管管発0204第1号「厚生労働大臣が定める現物給与の価額の取扱いについて」参照)。
この改正による現物給与額の変更は、固定的賃金の変更があったものとみなされますので、「月額変更届」の提出が必要となる場合があり、自社 の算定・月変の手続きを行うにあたり注意を要します。
具体的な現物給与の額は、日本年金機構のリーフレットで「厚生労働大臣が定める現物給与の額」として、2013年4月1日現在のものが掲載 されています。
◆年度更新に係る改正点(その1)一般拠出金への充当手続の簡素化
労働保険料の額が申告済概算保険料額を下回る場合に、次年度の概算保険料や一般拠出金の納付分に保険料を回すことができ、これを「充当」と いいます。
充当には(1)労働保険料のみの充当、(2)一般拠出金のみの充当、(3)労働保険料及び一般拠出金への充当の3パターンがあり、昨年度ま では、一般拠出金に充当する場合には、別途還付請求書を管轄の労働局・労基署へ提出しなければなりませんでした。
この点につき、改正により、「労働保険 概算・増加概算・確定保険料 石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」に充当意思欄が設けられ、当該欄に番号を記載することで還付が受けられるようになり、実務が簡素化されています。
◆年度更新に係る改正点(その2)還付請求書様式のOCR化
労働保険の確定保険料の額が申告済概算保険料の額を下回る場合、労働保険料の還付請求を行うことができますが、請求を受けるには、労働局や 労基署に「労働保険 労働保険料 石綿健康被害救済法 一般拠出金還付請求書」を提出する必要があります。
この還付請求書の様式がOCR化され、従来の様式は使うことができなくなっていますので、還付請求を行う際は注意が必要です。
今年度限定の奨励金!「若者チャレンジ奨励金」のポイント
◆厚労省が始めた3つの事業
厚生労働省は、今年度から、若年者・非正規雇用労働者の雇用支援策として、次の3つの事業を新たにスタートさせました。
- 「若者チャレンジ奨励金」
- 「若者応援企業宣言事業」
- 「キャリアアップ助成金」
ここでは、多くの企業が活用できる可能性のある「若者チャレンジ奨励金」についてご紹介します。
◆奨励金の概要
この「若者チャレンジ奨励金」は、事業主が、35歳未満の非正規雇用の若者を、自社の正社員として雇用することを前提に、自社内での実習 (OJT)と座学 (OFF-JT)を組み合わせた訓練(若者チャレンジ訓練)を実施した場合に、「訓練奨励金」として受講者1人1月当たり15万円〔最大2年間〕が支給さ れます。
さらに、上記の訓練終了後に、訓練受講者を正社員として雇用した場合には、「正社員雇用奨励金」として1年経過時に1人当たり50万円、2 年経過時に1人当たり50万円〔合計100万円〕が支給されます。
なお、この奨励金は「平成25年度末」までの時限措置となっていますので、早めに手続きを行うことが重要です。
4月1日からの改正労働契約法施行 (2013/03/11)
平成24年8月10日に公布された「改正労働契約法」の主な改正点は次の3点です。
この改正で、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という)について
② 無期労働契約への転換 ………平成25年4月1日より施行
③ 不合理な労働条件の禁止 ……平成25年4月1日より施行
が規定されています。
②の無期転換申し込み制度とは、「同一の使用者との間で締結された2回以上更新した有期労働契約(平成25年4月1日以降に契約した契約か ら適用)の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間 に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の申し込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみな す。この場合において、当該申し 込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く)と同一の労働条件(当 該労働条件(契約期間を除く)について別段の定めがある場合を除く)とする。」と定めています。
この改正には、民法の契約自由という大原則を大きく制限して、一定の条件の下に一方の申出により他方が強制的に契約を結ばされるとして批判 もありますが、ともかくこの4月1日より施行されます。
もっとも、平成25年4月1日以降に締結される有期労働契約から適用されるので、実際に無期転換申込みがなされるのは、早くても平成30年 4月1日以降となります。
とは言え、そのときになって就業規則を変更して、有期労働契約を5年間以内に限る、というような条項を設けた場合は、労働条件の不利益変更 のおそれがなくはありません。
また、上記の転換制度が有期労働契約そのものの利用を阻害しすぎないように、一の有期労働契約と次の有期労働契約との間に一定の長さのクー リング期間をおけば、契約期間が通算されません。
このクーリング期間は6ヶ月以上ですが、直前に満了した一の契約期間が1年に満たない場合には、当該契約期間に2分の1を乗じて得た数に、 1月未満の端数 がない場合にはその月数(例えば契約期間が6ヶ月であれば3カ月)をクーリング期間の長さとし、1月未満の端数がある場合にはその端数を切り上げた月数 (例えば契約期間が3ヶ月であれば2カ月)をクーリング期間の長さとします。
これらのことから、通常の正社員、有期労働契約による社員とは別規定の無期転換社員用の就業規則を作成する必要が出てくるかもしれません。
従来、有期労働契約者については、「定年制」という概念は法的にはなじまないものでしたが、無期転換社員については、一般的に正社員と同一 と看做せないので定年制を設けることが必要になってくるでしょう。
最低賃金について (2012/12/04)
人を雇う時の最低賃金が最低賃金法により定められています。一般的には時給で示さ れ、都道府県別によって差があります。現在の最低賃金の主なものは以下の通りです。
北海道 |
719円 |
(時給) |
||
岩手県 | 653円 |
|||
|
埼玉県 |
771円 |
|
|
千葉県 |
756円 |
|||
東京都 |
850円 |
|||
神奈川県 |
849円 |
|||
愛知県 |
758円 |
|||
大阪府 |
800円 |
|||
島根県 |
652円 |
|||
高知県 |
652円 |
|||
長崎県 |
653円 |
|||
沖縄県 |
653円 |
|||
全国加重平均額 |
749円 |
(平成24年10月現在) |
平成24年の年末調整 (2012/11/05)
11月に入り、今週から税務署による年末調整の説明会が始まります。今年は昨年と比べて変わった点が3つあります。
Ⅰ.生命保険料控除
- 平成 24年1月1日以後に締結した保険契約(以下「新契約」)による控除のうち介護(費用)保障または医療(費用)保障を内容とする主契約または特約に基づい て支払った保険料等(以下「介護医療保険料」)について、介護医療保険料控除(適用限度額4万円)が設けられました。
- 新契約に係る一般生命保険料控除及び個人年金保険料の適用限度額は、それぞれ4万円とされました。
- 平成23年12月31日以前に締結した保険契約(以下「旧契約」)に係る控除については、従前の一般生命保険料控除及び個人年金保険 料の適用限度額は、従来通りそれぞれ5万円が適用されます。
- 新契約と旧契約の両方について保険料控除の適用を受ける場合の控除額は、上記1.、2.及び3.にかかわらずそれぞれの限度額は4万 円とします。
- 更に、上記1~3までの各保険料控除の合計適用限度額が12万円とされました。
Ⅱ. 源泉所得税の納期限
「納期の特例」の承認を受けている源泉徴収義務者(会社等)が7月から12月までの間に支払った給与及び退職手当等から徴収した源泉所得税 の納期限が、翌年1月20日とされました。
「納期の特例」の承認を受けていない源泉徴収義務者の納期限については従来通り翌年1月10日です。
Ⅲ. 通勤手当の非課税限度額
自動車などの交通用具を使用して通勤する人が受ける通勤手当の非課税限度額が変わりました。
これは平成24年1月1日以後に受け取るべき通勤手当から改正されています。
高年齢者雇用安定法の改正 (2012/10/01)
平成24年8月29日改正法成立 施行期日は平成25年4月1日
今回の改正は、定年に達した人を引き続き雇用する「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止などを内容としています。
但し、定年の65歳への引き上げを義務付けるものではありません。
昭 和28年4月2日~昭和31年4月1日生まれの方は特別支給の老齢厚生年金については61歳(男子)から報酬比例部分のみの支給となりますが、来年4月2 日以降60歳に達し始めます。経過措置により徐々に支給時期が遅くなっていましたが、60歳になっても年金を全くもらえない世代が登場しま す。
このように厚生年金の支給開始年齢の引き上げにより、現在の高年齢者雇用制度のままでは、平成25年度には、60歳定年以降、継続雇用を希 望したとして も、雇用が継続されず、また年金も支給されないことにより無収入となる者が生じる可能性があります。その対策のため今回の改正の内容は以下の通りです。
- 継続雇用制度の対象となる高年齢者につき事業主が労使協定により定める基準により限定できる仕組みを廃止する。
- 継続雇用制度の対象となる高年齢者が雇用される企業の範囲を、グループ企業まで拡大する仕組みを設ける。子会社、関連会社の範囲は、 会社法の定義を参考に厚生労働省令で定める。
- 高年齢者雇用確保措置義務に関する勧告に従わない企業名を公表する規定を設ける。
- 事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針の根拠を設ける。
- 厚生年金(報酬比例部分)の受給開始年齢に到達した以降の者を対象に、基準を引き続き利用できる12年間の経過措置(平成37年4月 1日まで)を設けるほか、所要の規定の整備を行う。
雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金などの支給要件変更 (2012/08/15)
平成24年10月1日から
厚生労働省は平成24年10月1日から雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金について、支給要件の見直しを発表しました。(8月14日 付)
生産量・売上高が直前又は前年同期と比べて「5%以上減少」していれば対象になっていましたが、この要件が「10%以上減少」と変わりま す。
見直しを行う要件の概要
①生産量要件の見直し
「最近3か月の生産量又は売上高が、その直前または前年同期と比べ、5%以上減少」を「最近3か月の生産量又は売上高が前年同期と比べ、 10%以上減少」 とします。対象期間の初日(助成金の利用開始日)を平成24年10月1日以降に設定する場合から変更となります。
また、中小企業事業主で直近の経常損益が赤字であれば、5%未満の減少でも助成対象としていましたが、この要件は撤廃されます。
②支給限度日数の見直し
「3年間で300日」を、平成24年10月1日から「1年間で100日」に、平成25年10月1日から「1年間で100日・3年間で150 日」とします。
例えば24.10.1以降1年間100日利用した場合その前年(23.10.1~24.9.30で始まる期間)に50日以上の利用があった 場合、次年度 (25.10.1~26.9.30で始まる期間)は3年間で150日という利用限度を超えることになるので、この助成金を使えません。
③教育訓練費(事業所内訓練)の見直し
「雇用調整助成金の場合2,000円、中小企業緊急雇用安定助成金3,000円」を、平成24年10月1日以降の判定基礎期間から「雇用調 整助成金の場合1,000円、中小企業緊急雇用安定助成金1,500円」とします。
*岩手、宮城、福島県の事業主は、6か月遅れで実施します。
健康診断について (2012/08/05)
皆様、ロンドンオリンピックが始まるとともに、毎日うだるような暑さです。 こういう時こそ健康に気をつけないと体調を崩してしまいます。
ご存知のように、労働安全衛生法により会社は従業員の健康診断を義務付けられています。
教科書風に列挙しますと、一般健康診断には
④海外派遣労働者に対する健康診断、⑤給食従業員の検便
また、特殊健康診断としては
⑥有害業務従事者の特別の項目の健康診断、
⑦有害業務従事者の歯科医師による健康診断
があります。
この中でなじみの深いものは1年以内ごとに1回、定期に行われる健康診断です。検査項目は法で定められていて、また、医師が必要でないと認 めるときは省略できる項目・対象者があります。
この健康診断を行わなくてはいけない従業員は「常時使用する労働者」となっていますが、概ね社会保険加入に該当する者は必ず受診させなけれ ばなりません。 また、社会保険加入には該当しないが雇用保険加入に該当する者は努めて受診させることが望ましいとされています。
特定業務従事者の健康診断は、配置換えの際及び6か月以内ごとに1回となっています。特定業務とは、多量の高熱物体や低温物体を取り扱う業 務、有害放射線 にさらされる業務、身体に著しい振動を与える業務、強烈な騒音を発する場所での業務、坑内業務、深夜業を含む業務等で、労働安全衛生規則第13条1項2号 に定められています。
なお、労働基準監督署の臨検があった場合、健康診断記録(5年間保存)の提出を求められることがあります。健康診断を受診していない従業員 がいる場合は是正勧告あるいは指導の対象になりますので、十分ご注意を。
補助金のご紹介
「健康診断に対する自治体の補助金」
ただ、健康診断に対する補助金はすべての事業者が対象となるわけではありません。というのは、全国統一の補助金制度ではなく自治体によって 異なるものだからです。
千葉市や松戸市など、人間ドックなどの実施に対して15,000円から18,000円の補助をしている自治体も数多くあるのですが、対象は 「国民健康保険の被保険者」「後期高齢者医療保険加入者」です。
中小企業そのものに支給する補助金、助成金は埼玉県を中心にいくつかあるので、その一部をご紹介します。
みなさんの自治体が独自に支給しているものもあるかもしれないので、探してみてください。
例1:埼玉県鴻巣市
「鴻巣市中小企業勤労者定期健康診断料補助金」
対象事業者--鴻巣市に住所を置く50人未満の中小企業事業者
定期健康診断に要した費用で3年間に限って1人あたり2,000円を補助する。
例2:埼玉県川口市
「勤労者定期健康診断料補助金」
対象事業者--川口市に住所を置く中小企業基本法に基づく中小企業事業者
定期健康診断に要した費用で1年度に1回1人あたり1,800円を補助する。
例3:埼玉県川越市
「事業所従業員定期健康診断料補助」
対象事業者--川越市に住所を置く従業員30人以下の中小企業事業者
定期健康診断に要した費用の30%(1人あたり上限3,000円)を補助する。
※簡単に記載したため、正確な表現でないところもあります。
実際に活用する際には、詳細を確認してご利用ください。
ポイント
②健康診断の補助は基本的に安全衛生法の定期健康診断の項目
③期限を設けて申請を受け付けている自治体もあるので注意
労働者派遣法改正 (2012/04/15)
昨年の臨時国会で継続審議になっていた、改正労働者派遣法が平成24年3月28日の参議院本会議で可決成立しました。
今回の改正の主要点は、日雇派遣(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止です。
主な改正項目は次のとおりです。
事業規制の強化
- 日雇派遣(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止(適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められ る業務の場合、雇用機会の確保が特に困難な場合等は例外)
- グループ企業内派遣の8割規制、離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止
派遣労働者の無期雇用化や待遇の改善
- 派遣元事業主に、一定の有期雇用の派遣労働者につき、無期雇用への転換推進措置を努力義務化
- 派遣労働者の賃金等の決定にあたり、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮
- 派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(いわゆるマージン率)などの情報公開を義務化
- 雇入れ等の際に、派遣労働者に対して、一人あたりの派遣料金の額を明示
- 労働者派遣契約解除の際の、派遣元及び派遣先における派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用負担等の措 置を義務化
違法派遣に対する迅速・的確な対処
- 違法派遣の場合、派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申 し込んだものとみなす
- 処分逃れを防止するための労働者派遣事業の許可等の欠格事由を整備
施行期日
(労働契約申込みみなし制度の施行日は、法の施行から3年経過後)
国会での主な修正点
- 登録型派遣・製造業務派遣の原則禁止」の削除、「登録型派遣・製造業務派遣の在り方」を検討事項とする
- 原則禁止される日雇い派遣の範囲を「2ヶ月以内」から「30日以内」に修正、原則禁止の例外に「雇用機会の確保が特に困難な場合等」 を追加
- 労働契約申込みみなし制度の施行日を「法の施行から3年経過後」に延期
障害者雇用促進法の改正について (2012/01/01)
1.概要
平成22年7月から中小企業における障害者の雇用促進のために、常用労働者が201人以上300人以下の事業主に対しても、障害者雇用納付 金制度を適用する。更に平成27年4月からは常用労働者が101人以上200人以下の事業主にも適用されます。また、障害者雇用率制度におい て、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働についても、雇用義務の対象にし、短時間労働の障害者について0.5カウントとし て算定する。
2.雇用義務制度
事業主に対し、障害者雇用率に相当する人数の身体障害者・知的障害者の雇用を義務付ける。
国、地方公共団体、特殊法人等 ………… 2.1%
都道府県等の教育委員会 ………………… 2.0%
3.納付金制度
〇 障害者雇用納付金(雇用率未達成事業主)
但し常用労働者が201人以上300人以下の事業主は平成22年7月~平成27年6月まで納付金の減額特例が適用され、上記5万円が4万円と なります。
また、平成27年7月から適用される常用労働者が101人以上200人以下の事業主も減額特例が適用され平成27年4月~平成32年3月まで は納付金額が4万円となります。
〇 障害者雇用調整金(雇用率達成事業主)
この他、200人以下(平成27年4月より100人以下)の事業主については報奨金制度があります。
(障害者を4%又は6人のいずれか多い人数を超えて雇用する場合、超過1人月額2万1千円支給)
また、障害者を多数雇用する企業に対する税制優遇制度が拡充されました(平成23年6月30日公布)。これまでは以下の(1)(2)のいずれ かの要件を満たす事業主が割増償却制度を利用できましたが重度障害者の一層の雇用促進を図る観点から、(3)の要件を満たす事業主について も、割増償却制度を利用できるようになりました。
- 従業員に占める障害者の割合が50%以上*1
- 雇用している障害者数が20人以上*1であり、かつ従業員に占める障害者の割合が25%以上*1
- 法定雇用率1.8%を達成している事業主で、雇用している障害者が20人以上*2であり、かつ、雇用障害者に 占める重度障害者*3の割合が50%以上*2
*1 短時間労働者を除く重度障害者は1人を2人とカウント(ダブルカウント)。重度以外の障害者である短時間労働者は1人を0.5人とカウントします。
*2 ダブルカウントなし。短時間労働者は1人を0.5人とカウントします。
*3 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
雇用促進税制について (2011/12/01)
1.概要
平成23年4月1日から平成26年3月31日までの期間内に開始する各事業年度(個人事業主の場合は、平成24年1月1日から平成26年 12月31日までの各年。以下「適用年度」といいます。)において、雇用者*1増加数5人以上(中小企業は2人以 上)、かつ、雇用増加割合10%以上等一定の要件を満たす企業は、適用年度における法人税の額(個人事業主の場合は、所得税の額)から雇用者 増加数1人当たり20万円の控除が受けられる制度です。但し、控除できる税額は、その適用年度における法人税の額(個人事業主の場合は、所得 税の額)の10%(中小企業の場合は、20%)が限度となります。
*1 雇用者とは、法人又は個人事業主の使用人のうち雇用保険一般被保険者をいい、ハローワークを活用しない方法で雇い入れた場合も対象になります。また、この適用年度の期間中 に65歳となった者(高年齢継続被保険者)は、対象になりません。
2.適用要件
次の?から⑥までのすべての要件を満たす必要があります。
? 青色申告法人であること
? 前期及び当期に事業主都合による離職者がいないこと
? 当期末の雇用者数-前期末の雇用者数≧5人
(中小企業者等*2については2人)
*2「中小企業者等」とは法人の場合は資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下の法人。但し以下のものは除く。
- 発行済株式または出資の総数または総額の2分の1以上が同一の大規模法人(資本金の額もしくは出資金の額が1億円を超える法人または 資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社は除く。)の所有 に属している法人
- 発行済株式または出資の総数または総額の3分の2以上が(複数の)大規模法人の所有に属している法人。個人事業主の場合は常時使用す る従業員が1000人以下のものをいいます。
⑤ 給与等支給額≧比較給与等支給額
イ. 給与等支給額とは、当期の所得の金額の計算上損金の額に算入され
る給与等(雇用者に対して支給されるものに限る)の支給額をいう。
ロ. 比較給与等支給額 =
前期の給与等支給額 + 前期の給与等の支給額 X
((当期末の雇用者数 - 前期末の雇用者数) / 前期末の雇用者数)
X 30%))
⑥雇用保険法第5条第1項に規定する適用事業行っていること
3.税額控除について
法人税及び所得税は課税所得金額に対して一定の税率を乗じて算出した税額から一定の金額を控除するもので、雇用者増加数1人当たり20万円 の控除が受けら れます。但し、法人税額の10%(中小企業者等については20%)相当額までが限度となります。従いまして、税額がマイナスになって還付されることはあり ません。また所得金額がマイナスの場合には、税額が発生しないので税額控除することができません。
4.手続
- 適用年度開始から2ヶ月以内…ハローワークに「雇用促進計画」を提出
- 適用年度終了から2ヶ月以内…ハローワークに「雇用促進計画」の達成状況の確認を受ける
- 確定申告書の提出(確認を受けた「雇用促進計画」の写しを添付)
5.注意点
- 適用年度ごとに「雇用促進計画」の提出と確認が必要となり、一度適用要件を満たしても平成26年3月に開始する適用年度まで自動的に 当該税制の適用を受けられるものではありません。
- 白色申告書を提出している事業者は当該税制の適用は受けられません。
- 外国人技能実習生や短時間労働者であっても、雇用保険一般被保険者であれば、雇用者に含まれます。
- 新設法人については設立事業年度の翌事業年度から、新たに事業を開始した個人事業主については事業を開始した年の翌年から、それぞれ 雇用促進税制の適用を受けることができます。
- 雇い入れ助成金などと雇用促進税制を同一年度で併用することは、助成金と税制では政策手段が異なるので、可能です。但し、雇用促進税 制では、給与等支給額が比較給与等支給額以上であることとする要件における「給与等支給額」には、その給与等に充てるため他の者から支払 を受ける金額は含まれないため、給与等支給額から雇い入れ助成金の支給額を控除して要件判定をおこなうことになります。
年金改革と企業の対応 (2011/11/15)
10月は年金と社会保険に関して4つの話題が ありました。
1つ目は、年金の支給開始時期を遅らせることが 検討されていることです。
10月11日の社会保障審議会年金部会で審議されました。現在基礎 年金(国民年金)は65歳から、厚生年金は60~65歳からの支給となっています。それを68~70歳からに遅らせようとする案です。
これは企業の定年制の問題と絡んで、そう簡単には決着がつかないでしょう。現在定年は原則65歳となっていますが、大半は、60歳定年で、 65歳までの再 雇用、あるいは雇用延長となっています。年金支給時まで雇用を伸ばすことが義務付けられるなら企業の人事政策に重大な影響を及ぼします。今後の議論に注目 したいところです。
2つ目は、在職老齢年金の見直しに ついてです。
これも10月11日の社会保障審議会年金部会にてとりあげられました。ご承知のように60歳から64歳まで の、年金を貰いながら勤めている厚生年金の被保険者は、年金と給与の合計によっては年金額が少なくなります。
その仕組みは、月給(標準報酬月額と過去1年間の賞与額の12分の1を合計した額)と年金月額の合計が28万円を越えると、28万円を越え た額の2分の1が年金から減らされます。
65歳以上は、合計額が46万円を越えるとその額に応じて年金が減ることになっています。
現行の在職老齢年金制度の仕組みについては、60歳~64歳と65歳~70歳とでは上に述べたように仕組みが異なっています。ただし60 歳~64歳の者に 支給される特別支給の老齢厚生年金については、支給開始年齢が段階的に引き上がっているため、2025年以降、基本的には60歳~64歳の者に対する支給 停止(減額)の効果はなくなることになります。
今回60歳~64歳の支給停止の仕組みを65歳以上の仕組みと同様にするなどの改革案がだされました。ただしこれも予算措置を講じなければ ならない話で、保険料増額の案も出されています。
3つ目がその保険料増額の案です。
厚生年金の保険料は月給に応じた保険料を納めていますが、標準報酬月額は62万円で頭打ちです。従って60万5千円以上の月給者は一律62万 円の保険料 (現在1000分の164.12を労使で折半)で、62万円の月給でも100万円の月給でも保険料は変わりません。それを健康保険と同じように標準報酬月 額の最高限度を121万円に上げるという案が出されました。
例えば100万円の月給者では現在、社員・会社負担額はそれぞれ50,877円ですが、この改正案では82,060円となります。差額は 31,183円に なります。また、この値上げ分をそのまま給付に反映させるかどうかも議論されています。
この改革案については労使共に反対が予想されますが、苦しい年金財政からみて、高額給与所得者からの保険料ということで今後どのような結論 になるか、大いに関心のあるところです。
4つ目は、3つ目と同じ10月31日の社会保障審 議会年金部会で審議された事項です。
それは産休期間中の保険料負担免除についてです。現在育児休業中の健康保険料・厚生年金保険料は本人、会社負担共に免除されています。産休中 は無給になる 事が多く、実務担当者は休業中の社員から保険料を徴収するのに苦労している向きもあります。産休中の保険料が免除となれば事務取り扱いも楽になります(住民税の徴収は残り ますが)。
これについても財源の問題がありますが、次世代育成支援の観点から見ても、育児休業中と同様の扱いをするのが妥当と言えます。また、社会保 障・税一体改革 案に於いても「産休期間中の保険料負担免除」が盛り込まれ、工程については「2012年以降速やかに法案提出」することとされていますので、早ければ来年 度の実施もあり得るでしょう。
長時間労働の周辺 (2008/05/22)
昨今、日本マクドナルドの店長による残業代支払を求める裁判の判決が話題になった。(東京地裁1月28日)労働基準法に言う「管理監督者」に はいわゆる残業代を支払わなくとも良いことになっている。ところが、マクドナルドの店長は健康を害するほどの長時間労働・残業をせざるをえ ず、「管理監督者」ではないの で、会社に対して残業代を支払え、という訴えだった。 東京地裁での1審では労働者側の勝訴であったが、会社側が控訴しているのでまだ先が続く。(日本マクドナルドは5月20日に、管理職扱いの直営店店長らに 残業代を8月1日より支払うと発表したが、今回の裁判とは別の問題であり、引き続き当該裁判については争う、としている。)
ここでの主たる問題は店長が「管理監督者」に該当するかどうかが争われ、この「名ばかり管理職」について最近NHKでも特集番組が放映された が、本稿では少し視点を変えて、長時間労働について考えてみたい。 話題になっていえる、ファーストフードやコンビニの店長クラスの長時間労働は個人の裁量だけでは労働時間管理は難しい問題があるので、主としてホワイトカラー=知的労働者 の長時間労働について考えてみたい。
長時間労働について経済学者から見た興味深い分析がある。(*1)これによると、長時間労働を促す要因として第一に、男性労働者では、長時間 労働をしている人は、健康状態の良し悪しにかかわらず、継続的に長時間労働をする可能性が高い。第二に、子供の頃、夏休みの宿題を夏休みの最 後の方にやっていたという後回し行動をとっていた人は大人になって長時間労働をしやすい。いやなものを後回し行動しやすい人は、仕事も後回し 行動をする可能性が高く、長時間労働をすることになりやすい。 一度長時間労働に慣れるとそれを苦痛と思わなくなり、特に労働時間を自分で決めやすい管理職の方に多く見受けられると、分析している。
仕事の成果を評価するに際して、時間当たり成果を厳密に測定することは困難であろうが、Xという仕事をAさんに頼めば半日で出来上がり、Bさ んに頼めば3日かかる、というようなことはザラにある。どちらが優秀であるかということは一目瞭然である。Bさんは残業をして(長時間労働を して)2日で仕上げるかもしれない。 それでもAさんには及ばない。(意図的に)定時間内は適当にサボって、残業時間になるとようやく仕事に取り掛かる人(生活残業)は論外であるが、いやな仕事として後回しに していることはないだろうか。 労働時間管理は会社にとっても重要な問題であるが、クリエイティブ・パーソンを目指す人にとっても成果を上げるにあたって喫緊の課題である。
ドラッカーが時間管理について述べている。(ドラッカー「経営者の条件」)まず実際の時間の使い方を、あとで記憶に頼って記録するのではなく て、リアルタイムに記録して、その結果を毎日見ていくことである。きっと思わぬことに時間を費やしていたことに愕然とするにちがいない。 その上で、時間を浪費する非生産的な活動を見つけ、排除する3つの方法を述べている。 第一に、する必要の全くない仕事、何の成果も生まない時間の浪費である仕事を見つけ、捨てることである。 第二に、他の人間でもやれることは何かを考えることである。第三の方法は、自らがコントロールし、自らが取り除くことのできる時間浪費の原因を排除すること。 これは少し分かりにくいが、人は他人の時間まで浪費していることがあるので、自分も他人の時間を浪費しないが、他人にも自分の時間を浪費され ないようにすることである。
もちろん会社での仕事は一人で完結できることばかりではないので、会社全体で定時間内での仕事を仕上げる風土・仕組みを作ることが大事で、そ の点に関しては、社長時代に定時間内で仕事をすることをモットーにしていたトリンプインターナショナルの元社長吉越浩一郎氏の著書「残業ゼロ の仕事力」が参考になる。 定時で仕事を切り上げた後の時間をどのように使うか、楽しみではありませんか。
(*1)大阪大学社会経済研究所大竹文雄教授 /大阪大学大学院・日本学術振興会特別研究員奥平寛子氏「長時間労働の経済分析」2008.4 (独法)経済産業研究所 シンポジウム 「労働市場制度改革 日本の働き方をいかに変えるか」 論文所収