事務所便り
労働者不足の対処方法~厚生労働省の調査より (2024-11)
厚生労働省の「労働経済動向調査(令和6年8月)の概況」(※)が公表されており、調査項目の1つとして、「労働者不足の対処方法に関する事
項」が盛り込まれています。
人手不足に悩む事業者(同調査では労働者が不足している事業所の割合は80%に上る)にとっても参考になるものと思われます。
(※)令和6年8月1日現在の状況について、令和6年8月1日~8月7日に調査。
◆労働者不足の対処方法
過去1年間(令和5年8月~令和6年7月)に行った労働者不足への対処方法について、割合の大きかったものから順から見てみます。また、今
後1年間(令和6年8月~令和7年7月)についての結果も見てみましょう。
(いずれも複数回答)
【1位】「正社員等採用・正社員以外から正社員への登用の増加」(過去1年間59%、今後1年間60%)。
【2位】「在職者の労働条件の改善(賃金)」(過去1年間55%、今後1年間48%)。
【3位】「臨時、パートタイムの増加」(過去1年間40%、今後1年間41%)
【4位】「派遣労働者の活用」(過去1年間38%、今後1年間35%)
【5位】「求人条件の緩和」(過去1年間36%、今後1年間34%)
求人条件の緩和内容としては、賃金、労働時間、休暇、学歴、必要資格・経験等の緩和が挙げられています。
【6位】「離転職の防止策の強化、又は再雇用制度、定年延長、継続雇用」(過去1年間34%、今後1年間36%)
離転職の防止策としては、労務管理(労働条件以外の福利厚生、労使関係など)の改善や教育訓練の実施などが挙げられています。再雇用制度には
定年退職者だけでなく、子育てのためにいったん退職した女性などを再雇用する仕組みも含まれています。
【7位】「在職者の労働条件の改善(賃金以外)」(過去1年間31%、今後1年間31%)
在職者の労働条件の改善内容としては、休暇の取得促進、所定労働時間の削減、育児支援や復帰支援制度の充実などが挙げられています。
【8位】「配置転換・出向者の受入れ」(過去1年間25%、今後1年間24%)
【9位】「省力化投資による生産性の向上・外注化・下請化等」(過去1年間16%、今後1年間19%)
【厚生労働省「労働経済動向調査(令和6年8月)の概況」】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keizai/2408/
11月は「過労死等防止啓発月間」です (2024-11)
毎年11月は、「過労死等防止啓発月間」です。
厚生労働省では、国民への周知・啓発を目的に、各都道府県において「過労死等防止対策推進シンポジウム」を行うほか、「過重労働解消キャン ペーン」として、長時間労働の是正や賃金不払残業などの解消に向けた重点的な監督指導やセミナーの開催、一般人からの労働に関する相談を無料 で受け付ける「過重労働解消相談ダイヤル」などを行います。
「過労死等」とは、①業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡、②業務における強い心理的負荷による精神障害を
原因とする自殺による死亡、③死亡には至らないが、これらの脳血管疾患、心臓疾患、精神障害をいいます。
◆「過労死等防止対策推進シンポジウム」の実施
47都道府県48会場(東京は2会場)でシンポジウムを開催し、過労死遺族の方の体験談やメンタルヘルスの専門家等による講演などを行いま す(無料でどなたでも参加できます)。
[参加申込方法]事前に下記ホームページから申込み
https://www.mhlw.go.jp/karoshi-symposium/
また、国民一人ひとりが自身にも関わることとして、過労死等とその防止に対する関心と理解を深められるよう、ポスターの掲示やパンフレッ
ト・リーフレットの配布、インターネット広告など多様な媒体を活用した周知・啓発を行います。
◆過重労働解消キャンペーン
過労死等につながる過重労働などへの対応として、長時間労働の是正や賃金不払残業などの解消に向けた重点的な監督指導や、全国一斉の無料電 話・SNS相談などを行います。
[過重労働解消キャンペーン特設ページ]
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoukijun/campaign_00004.html
キャンペーンの概要は以下のとおりです。
①労使の主体的な取組みの促進、②労働局長によるベストプラクティス企業との意見交換、③重点監督の実施、④過重労働相談受付集中期間の設
定、⑤特別労働相談の実施、⑥セミナーの開催
企業には、従業員の過労死等の防止に向け、長時間労働削減など、積極的な取組みが求められます。
【厚生労働省「11月は「過労死等防止啓発月間」です」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43985.html
厚生労働省が「就職氷河期世代支援 特設サイト」をリニューアル (2024-11)
就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の1990~2000年代、景気悪化のため新卒採用が他の時期に比べて厳しかった時代に就職活動を行った世
代を指す言葉として、広く使われています。就職氷河期世代の人は、長年不安定な雇用形態や無業を強いられていたり、十分なキャリアを積めてい
なかったりと、課題を抱える人が多く、国を挙げて取り組むべき課題とされています。
◆政府支援「第一ステージ」から「第二ステージ」へ
政府は、2020年から2021年を就職氷河期支援の「第一ステージ」と位置付け、「就職氷河期世代支援プログラム(3年間の集中支援プロ
グラム)」として各種支援を行ってきました。そして、2023年から2024年を「第二ステージ」と位置付け、2023年12月には、「就職
氷河期世代支援に関する行動計画2024」を策定しました。同計画では、「第一ステージ」の総括的検証を踏まえた施策の見直し等を行い、より
効果的な支援に取り組むとした方針に基づく施策・事業の具体的内容について定めています。
◆特設サイトのリニューアル
また、今月、厚労省が「就職氷河期世代支援 特設サイト」をリニューアルしています。同サイトでは、就職氷河期の求職者等のニーズや状況に あわせたさまざまな支援窓口の紹介がされています。また、事業主向けに、就職氷河期世代の活躍支援のための各種助成金の紹介や好事例集が掲載 されています。
助成金については、以下が紹介されています。
① トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
② 特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)
③ 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)
④ キャリアアップ助成金(正社員化コース)
また、事例集では、医療・福祉業やサービス業など12の事業主の事例が掲載され、各事業主の就職氷河期世代採用の背景や、応募や採用のス
テップが紹介されています。このなかでは、就職氷河期世代の採用の好影響として、若手と高年齢社員の中間層となることや、社会経験の豊富さか
らくる対応力などが挙げられています。
人手不足への対応、組織の活性化という観点からも、就職氷河期世代の採用を検討してみてはいかがでしょうか。募集方法や助成金など、詳しいこ
とは当事務所にお気軽にご相談ください。
【厚生労働省「就職氷河期世代支援 特設サイト」】
https://www.mhlw.go.jp/shushoku_hyogaki_shien/
マイナ保険証への移行に伴う対応について (2024-10)
◆9月9日から「資格情報のお知らせ」送付開始
12月2日以降、健康保険証がマイナ保険証へと移行します。協会けんぽでは、9月9日から既加入者に対する「資格情報のお知らせ」の送付を 行っています。
この「資格情報のお知らせ」は、令和6年12月から健康保険の各種給付金等の申請に必要な健康保険の記号・番号の確認等に用いるもので、一 部は被保険者が携帯しやすいよう切り取って利用可能なレイアウトの紙製カードとなっています。
特定記録郵便で会社に送付されてきますので、各被保険者に配付等する必要があります。なお、12月2日以降の新規加入者については、資格取
得時に送付されてくることとなります。
◆従来の被保険者証の扱い
マイナ保険証に移行した後も、現行の保険証がすぐに使えなくなるわけではありません。そのため、令和7年12月1日までに退職する従業員か
らは、従来どおり保険証を返納してもらう必要があります。令和7年12月2日以降は、被保険者による自己破棄も可能となりますので、返納して
もらわなくても構いません。
◆マイナ保険証を持っていない加入者への「資格確認書」の発行
新規加入者については、12月2日以降、資格取得届などによる本人からの申請に基づき、会社を経由してマイナ保険証を持っていない加入者に 発行されます。
既存の加入者については、令和7年12月2日までに協会けんぽが必要と判断した人に対して発行されます。
なお、資格確認書の取扱いについても、従来の被保険者同様、有効期限内に退職した場合、会社に返納してもらう必要がありますので退職手続時 にあわせて回収しましょう。
【全国健康保険協会「第130回全国健康保険協会運営委員会資料~マイナ保険証への円滑な移行に向けた対応について」】
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat720/r06/001/240725/
転職者の離職理由と賃金の変動状況~厚生労働省「令和5年 雇用動向調査」より (2024-10)
◆入職率、離職率ともに上昇
厚生労働省は令和5年「雇用動向調査」を公表しました。これによれば、入職率 16.4%(前年比1.2ポイント上昇)、離職率
15.4%(前年比0.4ポイント上昇)と、いずれも前年を上回る数字となっています。また、入職超過率は1.0ポイントとなっており、前年と比べて0.8ポイント拡大し
ています。
◆転職入職者が前職を辞めた理由
令和5年1年間の転職入職者(入職者のうち、入職前1年間に就業経験のある者)が前職を辞めた理由をみると、男性は「その他の個人的理 由」、「その他の理由(出向等を含む)」を除くと「定年・契約期間の満了」16.9%が最も多く、次いで「職場の人間関係が好ましくなかっ た」9.1%となっています。女性は「その他の個人的理由」を除くと「職場の人間関係が好ましくなかった」13.0%が最も多く、次いで「労 働時間、休日等の労働条件が悪かった」11.1%となっています。
また、前年と比べて上昇幅が最も大きいのは、男性は「仕事の内容に興味を持てなかった」(2.9
ポイント)で、女性は「職場の人間関係が好ましくなかった」(2.6 ポイント)となっています。
◆転職入職者の賃金変動状況
転職入職者の賃金変動状況をみると、前職の賃金に比べ「増加」した割合が37.2%(前年比2.3ポイント上昇)、「減少」した割合は
32.4%(前年比1.5 ポイント低下)、「変わらない」の割合は 28.8%となっています。また、「増加」のうち「1割以上の増加」は
25.6%、「減少」のうち「1割以上の減少」は 23.4%となっています。
現在、転職市場が活性化しており、若年者に限らずミドル層の転職も増えているようです。企業としては、他社の状況も踏まえつつ労働条件や社内
環境等についてはよく考えていきたいところです。
【厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/dl/gaikyou.pdf
ジョブ型人事指針が公表されました (2024-10)
◆そもそもジョブ型人事とは?
ジョブ型人事制度は、従来のメンバーシップ型人事制度とは異なり、職務ごとに必要なスキルや役割を明確にし、その職務に基づいて採用・評
価・報酬設定を行う制度です。専門性を重視し、社員が自らのキャリアを選択しやすくなるといわれています。グローバル化や働き手の減少に伴
い、従来の年功序列や一括採用に依存した日本型の制度では対応が難しくなってきています。こうした中で、日本企業の競争力を高め、効果的な人
材活用を促進するために、ジョブ型人事制度を導入する企業が増加しているのです。
◆ジョブ型人事指針の概要
8月28日、内閣官房、経済産業省、厚生労働省は、連名で「ジョブ型人事指針」を公表しました。この指針は、内閣官房が主導する「三位一体 労働市場改革分科会」で令和5年4月から令和6年7月までに行った、全10回にわたる議論をもとに策定されました。
指針では、既にジョブ型人事制度を導入している20社の事例を取り上げています。特に、①制度の導入目的、経営戦略上の位置付け、②導入範
囲、等級制度、報酬制度、評価制度等の制度の骨格、③採用、人事異動、キャリア自律支援、等級の変更等の雇用管理制度、④人事部と各部署の権
限分掌の内容、⑤労使コミュニケーション等の導入プロセス、といった観点で紹介しており、各企業が自社のスタイルに合った導入方法を検討する
ことを目指しています。
ジョブ型人事指針は、日本企業が今後の労働市場で競争力を維持・向上させていくための重要な指針です。この機会に導入を検討してみてはいかが
でしょうか。ご検討の際は、当事務所にご相談ください。
【内閣官房・経済産業省・厚生労働省「ジョブ型人事指針」】
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/jobgatajinji.pdf
最低賃金をめぐる動向等 (2024-09)
◆「最低賃金」制度の概要
最低賃金は、最低賃金法に基づき国が定めるもので、使用者は、労働者にその金額以上の賃金を支払わなければなりません。都道府県別に最低賃
金が定められ、この地域別最低賃金以上の賃金を支払わない場合、罰則が科せられます。なお、最低賃金制度には例外があり、「最低賃金の減額の
特例許可制度」において、身体や精神の障害によって一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの特定の労働者について、使用者が都道府県労働
局長の許可を受けることにより個別に最低賃金の減額の特例が認められます。また、例えばシルバーワーカーなどとの契約は、請負・委任契約に当
たるため、最低賃金法ほか労働関係の法律は適用されません。
◆なお昨今の賃金事情と乖離
2024年度の最低賃金について、厚生労働省の中央最低賃金審議会は7月25日、目安額を全国平均で時給1,054円とする答申を行いまし た。引上額は50円となり、1,000円の大台に乗った2023年度の額を超え、4年連続で過去最大となりました。
この答申を参考として、各地方最低賃金審査会で調査審議のうえ、答申を行い、各都道府県労働局長によって地域別最低賃金額が決定されます。 例えば、東京都の最低賃金については、8月5日に東京地方最低賃金審議会が東京労働局長に対し時給1,163円に改正することが適当であると の答申を行いました。例年、10月上旬~中旬に各都道府県の地域別最低賃金が発効します。
なお、このように最低賃金は引き上げられますが、すでに社会的な人手不足等により、各業界におけるパートタイム労働者等の時給は上昇してい
るのが現状です。例えば、厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年6月分結果速報」によると、パートタイム労働者の時給は平均1,338円
で、前年同月比4.9%増となっています。
各企業においては、今一度自社の賃金の確認を行いましょう。なお、給与制度や給与規程等を変更する際には手続き・届出が必要になります。ご検
討の際には、弊所にご相談ください。
【厚生労働省「最低賃金に関する特設サイト」】
https://saiteichingin.mhlw.go.jp/
男性育休初の30%超え~「令和5年度雇用均等基本調査」より (2024-09)
厚生労働省は、「令和5年度雇用均等基本調査」の結果(従業員5人以上の3,495事業所から回答)を公表しました。この中から、男性の育児
休業の取得状況についてご紹介します。
◆法改正により取得率が上昇
昨年度の男性の育児休業取得率(産後パパ育休を含む)は30.1%で、令和3年度より13ポイント増え て過去最高を更新しました(女性は、 84.1%(令和3年度より3.9ポイント増))。同省は、取得率が30%に達した理由として、令和4年の育児介護休業法の改正により取得意 向の確認が義務付けられたことや、中小企業に様々な政策を打ち出し、制度が周知されたことなどを挙げています。
育児休業の取得期間は、「1か月~3か月未満」が28.0%(令和3年度24.5%)と最も高く、「5日~2週間未満」が22.0%(同
26.5%)、「2週間~1か月未満」が20.4%(同 13.2%)となっており、2週間以上取得する割合が上昇しています。
事業所の規模別では、「従業員500人以上」が34.2%で最も多く、100人以上の事業所では30%を超えているのに対し、「5~26人」
の事業所は26.2%でした。
◆従業員300人以上の企業は取得率公表が義務化
政府は、男性の育児休業取得率を令和7(2025)年までに50%に上げることを目標に掲げています。取得率を向上させる施策として、来年 4月からの育児介護休業法の改正により、従業員が300人超1,000人以下の企業にも取得率の公表が義務付けられるようになります。また、 従業員数100人超の事業主に対して、行動計画策定時に育児休業の取得状況等に係る状況把握および数値目標の設定が新たに義務付けられるよう になります。
【厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r05.html
令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況~いじめ・嫌がらせの相談が最多 (2024-09)
厚生労働省が7月12日、「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主
間における労働条件や職場環境に関するトラブルを未然に防止し、迅速に解決を図るための制度で、「総合労働相談」(都道府県労働局、各労働基
準監督署内、駅近隣の建物など379カ所(令和6年4月1日現在)に総合労働相談コーナーを設置し、専門の相談員が対応)、都道府県労働局長
による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があります。
◆総合労働相談件数は4年連続で120万件超
公表内容によれば、総合労働相談件数は121万400件で、4年連続で120万件を超え、高止まりの状況です。内訳としては、「法制度の問
い合わせ」が83万4,816件、「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」が19万2,972件、「民事上の個別労働関係紛争相談」が26万
6,160件となっています。
また、助言・指導申出は8,346件(前年度比4.5%増)、あっせん申請は3,687件(同5.6%増)となっています。
◆いじめ・嫌がらせの相談が最多
相談内容等の内訳を見ると、民事上の個別労働関係紛争相談では「いじめ・嫌がらせ」が12年連続最多で60,113件となっており、「自己 都合退職」(42,472件)、「解雇」(32,943件)と続いています。パワハラ防止法の全面施行に伴い、この数に同法に規定するパワハ ラに関する相談は含まれていませんが(「総合労働相談」のうち「法制度の問い合わせ」や「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」として計上さ れるため)、パワハラに限らず、「いじめ・嫌がらせ」については企業の労使紛争のリスクにおいて大きい課題であることがわかります。企業とし て対策と対応を検討していきたいところです。
令和6年分年末調整のご準備はお早めに (2024-08)
◆定額減税対応は年末調整でも発生
6月1日以降に支払う給与等から定額減税が実施されましたが、令和6年分年末調整においても対応は発生します。
例えば、令和6年6月2日以後に採用した従業員は月次減税を行っていないので、年末調整で定額減税額の控除(年調減税)を行うほか、令和6
年7月以降に子どもが生まれ扶養親族の人数が増えた場合、定額減税額の差額は年末調整または確定申告により精算するなどがあるためです。
◆「給与所得者の保険料控除申告書」が変更に
令和5年度税制改正により保険料控除申告書の記載事項に改正があり、令和6年10月1日以後提出分、つまり令和6年分年末調整から適用され ます。
保険金等の受取人と申告者との続柄を記載する欄が削除され、様式に変更があります。
◆「令和6年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼
年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に定額減税に係る記載欄が追加
月次減税額の計算に含めた同一生計配偶者がその後就職等し、令和6年分の合計所得金額が48万円超となった場合、年調減税額の計算に含めな
いため、定額減税の対象となるかを確認するための欄等が追加されています。
◆改正対応は令和7年も続く
さらに、令和5年度税制改正により、令和7年1月以降、扶養控除等申告書について「簡易な申告書」が導入されます。
このように、令和6年分年末調整から令和7年1月の源泉徴収事務においては、様々な改正に対応しながら正確に実務を行うことが求められます。
事前の周知や、早めの書類配付および回収などが望ましいと言えるでしょう。
【国税庁「変更を予定している年末調整関係書類(事前の情報提供)」】
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho_shorui/index.htm
【同庁「令和6年分所得税の定額減税Q&A(概要・源泉所得税関係【令和6年5月改訂版】)」】
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0024001-021.pdf
個人データの漏えい事案が大幅増加~個人情報保護委員会「令和5年度年次報告」より (2024-08)
◆個人データ漏えい事案の増加
企業による個人情報漏えい事故はしばしばニュースでも取り上げられるところです。個人情報保護委員会は令和5年度の年次報告(個人情報保護
法168条の規定に基づき、委員会の所掌事務の処理状況について毎年国会に報告するもの)を行っており、それによれば、令和5年度において
は、個人情報取扱事業者等の個人データの漏えい等事案について12,120 件(前年度7,685 件)の報告処理を行ったとしています。
◆漏えいした情報の種類
同報告書によれば、委員会に対し直接報告された事案について、漏えい等した情報の種類としては「顧客情報」が83.5%と最も多くなってい ます。その形態別に見ると、紙媒体のみが漏えい等したもの(82.0%)が、電子媒体のみが漏えい等したもの(12.2%)より多くなってい ます。
また、個人情報保護法律施行規則7条で定める報告義務の類型による分類において、最も多くを占めたのは「要配慮個人情報を含む個人データの
漏えい等」(89.7%)、次いで「不正アクセス等、不正の目的をもって行われたおそれのある個人データの漏えい等」(8.1%)となってい
ます。
◆漏えい等事案の発生原因の多くがヒューマンエラー
報告書では、上記のような傾向となった要因として、漏えい等事案の発生原因の多くが誤交付、誤送付、誤廃棄および紛失といったいわゆる
ヒューマンエラーであったことにも触れられています。
個人情報の取扱いに関しては厳しく法規制されていくなか、最近では不正アクセス等による漏えい事案も増加しているところです。漏えい事故が発
生した場合の影響の大きさを考えると、企業としては、ハード面、ソフト面あらゆる角度からの対策が必要になってくるでしょう。
【個人情報保護委員会「令和5年度個人情報保護委員会年次報告」】
https://www.ppc.go.jp/aboutus/report/
通称使用を認める企業が多数も課題あり~経団連の調査より (2024-08)
◆通称使用を認める企業が多数
社員の通称(旧姓含む)使用は、最近では多くの企業が認めているところでしょう。メリットとして、従業員の実績の連続性が担保される、結
婚・離婚等のプライバシーが保たれる、メールアドレス等の変更が不要といった点が挙げられます。他方、戸籍名が必要な手続きもあるため、社内
では戸籍名と通称の2つを管理しなければならず、事務手続が煩雑になるなどの課題も認められています。
◆通称使用に関する調査
一般社団法人日本経済団体連合会は、企業での通称使用について調査結果を公表しました。以下はその要点です。
- 通称(ビジネスネーム)の使用
調査対象企業の約90%以上が、役職員(役員を含む社員)に対して通称の使用を認めています。姓だけでなく、名の部分も含めて自由に選ぶ ことを認めている企業もあります。また、婚姻・離婚等に関係なく、自由に姓を選ぶことを認めている企業も存在します。 - 通称使用に関連する課題
書類や帳票において、通称と戸籍姓の統一が確立できず、関係する社員の混乱を招くケースがあります。また、社内システムが通称使用に対応 していないため、管理が煩雑になることがあります。 - 女性エグゼクティブの姓(氏)の取扱い
調査対象企業の女性役員の約96%が、役職員に対して通称の使用を認めていると答えています。
この調査結果からは、通称の使用が広く認められている現状と、それだけでは解決できない課題が読み取れます。夫婦別姓制度の議論も活発化す
る中で、誰もが働きやすい社会となるために、企業ができることを考えていきたいですね。調査の詳細は以下をご覧ください。
【一般社団法人
日本経済団体連合会「「企業」における社員の姓(氏)の取扱いに関する調査結果および「女性エグゼクティブ」の姓(氏)の取扱いに関する緊急アンケート結果」】
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/044.html
改正育児・介護休業法、改正次世代育成支援法が成立しました (2024-07)
男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、育児休業の取得状況の公
表義務の対象拡大や次世代育成支援対策の推進・強化、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等の措置を目的とした改正法が成立
しました。
◆育児・介護休業法の改正ポイントと施行日
- 3歳以上、小学校入学前の子を養育する労働者に柔軟な働き方を実現するための措置等が事業主の義務になります。【施行日:公布後1年 6か月以内の政令で定める日】
- 小学校入学前の子を養育する労働者は、請求すれば所定外労働の制限(残業免除)を受けることが可能となります。【施行日:令和7年4 月1日】
- 3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。【施行日:令和 7年4月1日】
- 子の看護休暇が見直されます。【施行日:令和7年4月1日】
- 妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主に義務づけられます。【施 行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日】
- 育児休業取得状況の公表義務が従業員数300人超の企業に拡大されます。【施行日:令和7年4月1日】
- 介護離職防止のための個別の周知・意向確認、 雇用環境整備等の措置が事業主の義務になります。【施行日:令和7年4月1日】
◆次世代育成支援対策推進法の改正ポイントと施行日
- 法律の有効期限が、令和17(2035)年3月31日までに延長されました。【施行日:公布の日(令和6年5月31日)
- 育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定が従業員数100人超の企業に義務付けられます。【施行日:令和7年4月1日】
詳細は今後政省令で定められますので、注視しておく必要があるでしょう。
【厚生労働省「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法 改正ポイントのご案内】
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf
「職場のハラスメントに関する実態調査」報告書が公表されました (2024-07)
厚生労働省が、「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表しました。前回調査から3年が経過し、ハラスメントに係る状況にも変化
があると考えられることから、ハラスメントの発生状況や企業の対策の進捗、労働者の意識等を把握し、今後の諸施策に反映させることを目的に実
施したものです。
◆企業におけるハラスメントの発生状況
「過去3年間にハラスメントの相談があった」と回答した企業について、ハラスメントの種類別割合を見ると、高い順にパワハラ (64.2%)、セクハラ(39.5%)、顧客等からの著しい迷惑行為(27.9%)となりました。
また、各ハラスメントの相談件数の推移については、「件数は変わらない」の割合が最も高く、セクハラのみ「減少している」が最も高くなりま
した。なお、「顧客等からの著しい迷惑行為」については、「件数が増加している」の割合のほうが「件数は減少している」より高くなっていま
す。
◆労働者におけるハラスメント被害を受けた経験
過去3年間に勤務先でパワハラ、セクハラ、顧客等からの著しい迷惑行為を受けた割合は、それぞれ19.3%、6.3%、10.8%でした。
また、パワハラ、セクハラを受けた後の行動としては、「何もしなかった」が最も多く、顧客等からの著しい迷惑行為については「社内の上司に相
談した」が最も多くなりました。
その他、調査結果の詳細は以下のホームページをご覧ください。
【厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(令和5年度厚生労働省委託事業)】
https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/001256082.pdf
「令和5年 労働災害発生状況」~転倒、高齢者等の災害が増加 (2024-07)
◆死亡者数は過去最少、休業4日以上の死傷者数は3年連続で増加
厚生労働省は令和5年の労働災害発生状況を公表しています。これによると、令和5年1月から12月までの新型コロナウイルス感染症へのり患
によるものを除いた労働災害による死亡者数は755人(前年比19人減)と過去最少となり、休業4日以上の死傷者数は135,371人(前年
比3,016人増)と3年連続で増加しています。
◆休業4日以上の死傷者数の事故の型別では「転倒」が最多
休業4日以上の死傷者数の事故の型別では、件数の多い順に「転倒」が36,058人(前年比763人・2.2%増)、腰痛等の「動作の反
動・無理な動作」が22,053人(同1,174人・5.6%増)、「墜落・転落」が20,758人(同138人・0.7%増)となっていま
す。
◆「第14次労働災害防止計画」と高齢者等の災害
労働災害を減少させるために重点的に取り組む事項を定めた中期計画である「第14次労働災害防止計画」(令和5年度~令和9年度)では、 「転倒による平均休業見込日数を令和9年までに40日以下とする」、「増加が見込まれる60歳代以上の死傷年千人率を令和9年までに男女とも その増加に歯止めをかける」などの項目が挙げられています。
このアウトカム指標に関する状況としては、転倒災害の死傷年千人率は0.628(対前年比0.009ポイント・1.5%増)、転倒による平
均休業見込日数は48.5日(同1.0日・2.1%増)、60歳代以上の死傷年千人率は4.022(同0.061ポイント・1.5%増)と増
加の状況がみられます。
◆今後必須となる高齢者の労働災害防止
「令和5年 高年齢労働者の労働災害発生状況」によれば、雇用者全体に占める60歳以上の高齢者の割合は18.7%、労働災害による休業4 日以上の死傷者数に占める60歳以上の高齢者の割合は29.3%となっています。
高齢者の事故の型別では、「墜落・転落」、「転倒による骨折等」が目立っています。企業としては、今後の高齢化の状況を踏まえて、転倒災害 などの高齢者による事故への備えは必須となってくるでしょう。
【厚生労働省「令和5年の労働災害発生状況を公表」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40395.htm
来年4月から自己都合退職者の基本手当の給付制限の扱いが変わります (2024-06)
◆改正雇用保険法が成立
5月10日、改正雇用保険法が成立しました。改正項目は、育児休業に関する給付新設、教育訓練やリ・スキリング支援の充実や雇用保険の適用
拡大など、多岐にわたります。(育児休業に関する給付新設を含む子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案は参議院で審議中)。
◆自己都合退職者の基本手当の給付制限はどう変わる?
令和7年4月1日から、法改正により、要件を満たす公共職業訓練等を受ける受給資格 者は給付制限なく基本手当を受給できるようになります。
また通達の改正により、正当な理由のない自己都合離職者への基本手当の給付制限期間が1カ月に短縮されます。ただし、短期で入退社を繰り返
すのを防止するため、5年間で3回以上正当な理由のない自己都合退職を行った人の給付制限期間は3カ月とされます。
◆育児休業に関する新給付
令和7年4月1日から、育児休業に関する2つの給付が創設されます。
出生後休業支援給付は、子の出生後間もない期間に両親がともに14日以上育児休業を 取得した場合、休業開始前の賃金の13%が最大28日分、支給されます。
育児時短就業給付は、2歳未満の子の養育のため所定労働時間を短縮して短時間勤務を行う場合の賃金減額分の一部を補助するもので、短時間勤
務中に支払われた賃金の約10%が支給されます。
◆雇用保険の適用拡大
令和10年10月1日から、「31日以上継続して雇用されることが見込まれ」かつ 「1週間の所定労働時間が10時間以上」の労働者が雇用保険に加入することとなります。被保険者資格取得手続を行う機会が大幅に増えるほか、 基本手当の受給や離職票の作成にも影響が及ぶため、今後の情報を注意深く確認する必要があります。
【厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律案(令和6年2月9日提出)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/213.html
【同省「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会報告」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000107715_00006.html
高齢社員のさらなる活躍推進に向けて~経団連の報告書から (2024-06)
少子高齢化の急激な進行により、持続的な成長や労働力不足への対応には多様な人材の活用が重要となっています。なかでも高齢者の就労意欲は高
く、就職率も上昇傾向にあります。一方で高齢者雇用にあたっては、賃金水準の問題をはじめ、多くの課題もあります。このような状況をうけ、経
団連は4月16日、各種調査等を踏まえ取りまとめた報告書を公表しました。
◆現状と課題
高年齢者雇用安定法への対応状況について、多くの企業において「継続雇用制度の導 入」という措置をとっていることを示したうえで、以下を例として、項目別の現状と課題をまとめています。
○ 職務・役割、賃金水準・賃金制度
多くの企業では高齢社員の職務は従前と同様か縮小して割り当てられ、基本給等の水準 が下げられるケースが多い。こうしたことは高齢社員のエンゲージメント・パフォーマンスの低下とつながっている可能性がある。
○ 人事制度評価
高齢社員への人事評価の基本給への反映や本人へのフィードバックを行わないケースが みられる。
○ マネジメント
半数程度の企業で高齢社員のマネジメントや関係性に課題を感じているとされる。加齢に伴う個人差の拡大を踏まえ、職場環境や働き方における
個別の配慮・マネジメントや、良好な関係の構築が必要となっている。
◆課題解決に向けた対応
課題解決に向けた基本的な考え方として、①高齢社員のさらなる活躍推進、②能力や知 識等に適した職務・役割の割り当て、そして③成果・貢献度を評価して適切に処遇に反映することを挙げています。それと同時に、従来のイメージ にとらわれずに高齢者の心身等の変化を認識することが重要としています(例:「結晶性知能」は加齢による影響を受けにくい、ワーク・エンゲー ジメントは加齢に伴って上昇する傾向にある 等)。
また、以下を例として、項目別の具体的対応をまとめています。
○ 職務・役割、賃金水準・賃金制度
- 自社の実情等に応じた廃止も含めた役職定年制のあり方の検討
- 高齢社員による創意工夫の促進
○ 人事評価制度
- 同一労働同一賃金の観点による検討
- 定年年齢の引上げや定年廃止を検討している企業において、退職金制度を有している場合、そのあり方を含めた検討
○ マネジメント
- 個別事情に配慮した別制度による運用の検討
- 評価結果のフィードバックの実施、処遇への適切な反映
◆今後の方向性
同報告書は、高齢者雇用制度を「定年設定型」と「定年廃止型」に大別し、現状、「定 年設定型」のうち、「定年後に適用する人事・賃金制度を別建て」とする企業が大勢であるとしています。そのうえで、高齢社員の活躍推進に資す る様々な施策の中から、自社にとって最適な「自社型雇用システム」確立の一環として、検討・見直ししていくことが望ましいとしています。
【経団連「高齢社員のさらなる活躍推進に向けて」】
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/033.html
69%が「転勤は退職のキッカケになる」~エン・ジャパンのアンケート調査から (2024-06)
エン・ジャパン株式会社が運営する社員・バイト求人サイト『エンゲージ』上で、ユーザーを対象に「転勤」についてアンケートを実施し、
1,039名から回答を得た結果が下記のとおり公表されました。
◆69%が「転勤は退職のキッカケになる」と回答。年代が低いほど、転勤への抵抗感が大きくなる傾向に
「もしあなたに転勤の辞令が出た場合、退職を考えるキッカケになりますか?」と問うと、69%が「なる」(なる:44%、ややな る:25%)と回答しました。
年代別でみると、20代78%、30代75%、40代以上の64%が「なる」「ややなる」と回答しており、年代が低いほど転勤への抵抗感が 大きいことが分かりました。
また男女別では、男性62%、女性75%が「なる」「ややなる」と回答し、女性のほうが抵抗感が大きい結果になりました。
◆転勤の辞令を受けたことがある人のうち、3割が転勤を理由とした退職を経験
転勤の辞令を受けたことがある人に「転勤を理由に退職したことがありますか?」と問うと、31%が「退職したことがある」と回答しました。
◆半数が転勤を承諾意向。承諾条件のトップは「家賃補助や手当が出る」。転勤を拒否する理由、トップは「配偶者の転居が難し
い」
「もしあなたに転勤の辞令が出た場合、どう対処しますか?」と問うと、50%が「承 諾する」(「承諾する」8%、「条件付きで承諾する」42%)と回答しました。
「条件付きで承諾する」と回答した人に承諾条件を問うと、トップは「家賃補助や手当 が出る」(72%)でした。
「条件に関係なく拒否する」と回答した人に理由を問うと、トップは「配偶者の転居が 難しいから」(40%)でした。
【エン・ジャパン『エンゲージ』ユーザーアンケート~「転勤」に関する意識調査(2024)】
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2024/36874.html
4月からの求人票記載に関するポイント (2024-05)
◆明示する労働条件が追加
4月1日からの改正で、ハローワークの求人票に記載する労働条件に、「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契
約を更新する場合の基準」の3つが追加されています。具体的な記載のしかたを紹介します。
◆従事すべき業務の変更の範囲
採用後、業務内容の変更予定がない場合は、「仕事の内容」欄に「変更範囲:変更なし」と明示します。異なる業務に配置する見込みがある場合
は、同欄に変更後の業務を明示します。
◆就業場所の変更の範囲
異なる就業場所に配置する見込みがある場合は、「転勤の可能性」欄で「1.あり」を丸で囲み、転勤範囲を明示します。
◆有期労働契約を更新する場合の基準
原則として更新する場合は、「契約更新の可能性」欄で「1.あり」を丸で囲み、「原則更新」を選択してマルで囲みます。通算契約期間または 更新回数に上限がある場合は、「求人に関する特記事項」欄に「更新上限:有(通算契約期間○年/更新回数○回)」と明示します。
更新の可能性はあるもののそれが確実ではない場合は、同欄で「1.あり」を丸で囲み、「条件付きで更新あり」を選択してマルで囲みます。そ
して、「契約更新の条件」欄に具体的な更新条件を記載します。通算契約期間または更新回数に上限がある場合は、「契約更新の条件」欄にその旨
を記載します。
◆記載欄に書き切れない場合
上記の労働条件について指定された記載欄に書き切れない場合は、求人申込書の「求人に関する特記事項」欄に記載します。
【厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「事業主の皆さまへ 求人票に明示する労働条件が新たに3点追加されるのでご留意ください」】
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/anteihoukaisei.pdf
在宅勤務手当を割増賃金の算定基礎から除外する場合について通達が出ました (2024-05)
◆割増賃金の基礎となる賃金
割増賃金は1時間当たりの賃金を基礎として、それに割増率を乗じることにより算定されますが、基礎となる賃金に算入しない賃金として、家族 手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金及び1か月を超える期間ごとに支払われる賃金が法律に定められてい ます。
いわゆる在宅勤務手当については、一般的に、在宅勤務手当が労働基準法上の賃金に該当する場合には、割増賃金の基礎となる賃金に算入されま
す。
◆在宅勤務手当を割増賃金の基礎に算入しない場合
ただし、在宅勤務手当が事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される場合には、当該在宅勤務手当は賃金に該 当せず、割増賃金の基礎となる賃金への算入は要しません。
今回の通達によれば、在宅勤務手当が実費弁償として扱われるためには、当該在宅勤務手当は、労働者が実際に負担した費用のうち業務のために
使用した金額を特定し、当該金額を精算するものであることが外形上明らかである必要があります。
◆実費弁償の計算方法
在宅勤務手当が実費弁償とされるために必要な計算方法としては、以下の3つの方法が示されています。
- 別添の国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」で示されている計算方法
- 上記1.の一部を簡略化した計算方法
- 実費の一部を補足するものとして支給する額の単価をあらかじめ定める方法
在宅勤務手当を割増賃金の算定基礎から除外することは労働条件の不利益変更に当たりますので、法律にのっとって労使でよく話し合うようにしま
しょう。
【厚生労働省「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて(令和6年4月5日基発0405第6号)」】
本文:https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T240409K0010.pdf
別添:https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T240409K0011.pdf
障害者雇用者数が初の100万人超え~厚生労働省調査 (2024-05)
◆前回(平成30年)調査より25.6万人(30.1%)の増加
厚生労働省は、昨年6月に実施した「令和5年度障害者雇用実態調査」の結果を公表しました。この調査は、企業における障害者雇用の実態の把 握と今後の障害者雇用施策の検討や立案に役立てることを目的に、5年ごとに実施しています。
従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数は110.7万人(以下、すべて推定値)で、前回(平成30年)の調査より25.6万
人(30.1%)増加となり、初めて100万人を超えました。障害の種類別にみると、身体障害者は約52万6,000人(前回42万
3,000人)、知的障害者は約27万5,000人(同18万9,000人)、精神障害者は約21万5,000人(同20万人)、発達障害者
は約9万1,000人(同3万9,000人)となっています。
◆平均賃金、平均勤続年数も増加
職業別にみると、身体障害者と精神障害者は事務的職業が最も多く、知的障害者と発達障害者はサービスの職業が最も多くなっています。
平均賃金(令和5年5月)は、身体障害者は23万5,000円(前回は21万5,000円)、知的障害者は13万7,000円(同11万
7,000円)、精神障害者は14万9,000円(同12万5,000円)、発達障害者は13万円(同12万7,000円)となっています。
平均勤続年数は、身体障害者は12年2か月(同10年2か月)、知的障害者は9年1か月(同7年5か月)、精神障害者は5年3か月(同3年2
か月)、発達障害者は5年1か月(同3年4か月)と、すべての障害種別で増加しています。
◆雇用にあたっての課題・配慮事項
障害者を雇用する際の課題として、「会社内に適当な仕事があるか」という項目が最も多くなっています。また、雇用している障害者への配慮事 項として、「休暇を取得しやすくする、勤務中の休暇を認める等の休養への配慮」(身体障害者、発達障害者)、「能力が発揮できる仕事への配 置」(知的障害者)、「短時間勤務等勤務時間の配慮」(精神障害者)と回答しています。
【厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39062.html
「2024年問題」物流2法改正案が閣議決定されました (2024-04)
働き方改革関連法が本年4月から適用されることによる物流業界の「2024年問題」に対応するため、商慣習の見直しや効率化に向けた物流関連
2法の改正案が閣議決定されました。主な内容は以下の通りです。
◆荷主・物流事業者に対する規制【流通業務総合効率化法】
- 荷主・物流事業者に対し、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課し、当該措置について国が判断基準を策定
- 上記取組状況について、国が判断基準に基づき指導・助言、調査・公表を実施
- 上記事業者のうち、一定規模以上のものを特定事業者として指定し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付け、中長期計画に基づく取組 みの実施状況が不十分の場合、勧告・命令を実施
- さらに、特定事業者のうち荷主には物流統括管理者の選任を義務付け
◆トラック事業者の取引に対する規制【貨物自動車運送事業法】
- 元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成を義務付け
- 荷主・トラック事業者・利用運送事業者に対し、運送契約の締結等に際して、提供する役務の内容やその対価(附帯業務料、燃料サー チャージ等を含む)等について記載した書面による交付等を義務付け
- トラック事業者・利用運送事業者に対し、他の事業者の運送の利用(=下請けに出す行為)の適正化について努力義務を課すとともに、一 定規模以上の事業者に対し、当該適正化に関する管理規程の作成、責任者の選任を義務付け
◆軽トラック事業者に対する規制【貨物自動車運送事業法】
- 軽トラック事業者に対し、①必要な法令等の知識を担保するための管理者選任と講習受講、②国土交通大臣への事故報告を義務付け
- 国交省による公表対象に、軽トラック事業者に係る事故報告・安全確保命令に関する情報等を追加
【国土交通省プレスリリース「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」を閣議決
定】
https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000747.html
短い期間での工事契約を禁止する建設業法などの改正案が閣議決定 (2024-04)
「2024年問題」を抱える建設業界の深刻な人手不足に対応するため、現場で働く人の賃上げや働き方改革を促すことなどを盛り込んだ「建設業
法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。以下、その概要です。
◆労働者の処遇改善
- 建設業者に対して労働者の処遇確保を努力義務化するとともに、国は当該処遇確保に係る取組状況を調査・公表
- 労務費等の確保と行き渡りのため、中央建設業審議会が「労務費の基準」を作成・勧告することとし、受注者および注文者の双方に対して 著しく低い労務費等による見積り書の作成や変更依頼を禁止(違反発注者には国土交通大臣等が勧告)
- 併せて、受注者における不当に低い請負代金による契約締結を禁止
◆資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止
- 資材高騰など、請負代金や工期に影響を及ぼす事象(リスク)がある場合、請負契約の締結までに受注者から注文者に通知するよう義務化 する。また、資材価格変動時における請負代金等の「変更方法」を契約書の記載事項として明確化
- 注文者に対し、当該リスク発生時は誠実に協議に応ずることを努力義務化
◆働き方改革と生産性向上
- 長時間労働を抑制するため、受注者における著しく短い工期による契約締結を禁止
- ICT活用等を要件に、現場技術者に係る専任規制や、公共工事における施工体制台帳提出義務を合理化
- ICT活用による現場管理の「指針」を国が作成し、特定建設業者や公共工事受注者に対し、効率的な現場管理を努力義務化
【国土交通省「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定~建設業の担い手を確保
するため、契約取引に係るルールを整備~】
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo13_hh_000001_00221.html
賃上げ予定の中小企業の6割が業績改善の伴わない「防衛的」賃上げ~日本商工会議所・東京商工会議所の調査より (2024-04)
日本商工会議所・東京商工会議所は2月14日、「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」集計結果を発表しました。全国の中小企業
6,013社を対象に調査したもので、2024年1月4日~26日に実施し、2,988社から回答を得ています。
2024年度に賃上げを予定する企業は、前年度比3.1ポイント増の61.3%に上ったものの、うち6割が業績改善を伴わない人材確保のた
めの「防衛的な賃上げ」を迫られている状況です。
◆人手が「不足している」と回答した企業は65.6%
「人手不足の状況および対応」では、人手が「不足している」と答えた企業は前年比1.3ポイント増の65.6%に上り、3社に2社が人手不 足という深刻な状況が依然続いています。
業種別にみると、「2024年問題」への対応が求められる建設業(78.9%)や運輸業(77.3%)、労働集約型の介護・看護業 (76.9%)で「不足している」とする企業の割合が高く、8割近くに及んでいます。
また、最も低い製造業(57.8%)でも約6割が「不足している」と回答していて、あらゆる業種で人手不足の状況にあります。
◆2024年度に「賃上げを実施予定」の企業は6割超
こうした中で、2024年度に「賃上げを実施予定」と回答した企業の割合は、昨年度(58.2%)から3.1ポイント増加の61.3%と6 割を超え、賃上げに取り組む企業は着実に増加しています。ただ、そのうち、「業績の改善がみられないが賃上げを実施予定」は60.3%で、依 然6割が「防衛的賃上げ」となっています。
従業員規模別では、従業員5人以下の企業では、「賃上げ実施予定」は32.7%にとどまり、「賃上げを見送る予定(引下げ予定を含む)」が
16.8%に上っています。
◆「最低賃金を下回ったため、賃金を引上げた」企業は38.4%
2023年10月の最低賃金引上げを受け、「最低賃金を下回ったため、賃金を引上げた」企業(直接的な影響を受けた企業)は38.4%と、 昨年度から0.4ポイント低下したものの引き続き高い水準です。
一方、人手不足や物価上昇が進む中、「最低賃金を上回っていたが、賃金を引上げた」企業は29.8%と、昨年度から5.2ポイント増え、 2017年の調査開始以降で最も高い割合となっています。
【日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」集計結果】
https://www.jcci.or.jp/20240214_survey_release.pdf
「令和6年分所得税の定額減税」の特設サイトが開設されました (2024-03)
「令和6年度税制改正大綱」(令和5年12月22日閣議決定)で、岸田内閣が先に掲げた、令和6年分の所得税額から一定額が控除される定額減
税が盛り込まれました。
法案が成立すれば、給与所得者については令和6年6月1日以後最初に支払う給与等についての源泉徴収を行う際から実施されることになりま
す。金額は、1人あたり3万円、同一生計配偶者および扶養親族がいる場合は1人につき3万円の合計額です。
◆定額減税特設サイト
法案成立前でも、給与計算担当者(源泉徴収義務者)が早期に準備に着手できるよう、国税庁は特設サイトを設け、1月30日に各種パンフレッ
ト・資料等を、そして2月5日にQ&Aを公表しました。
◆「令和6年分所得税の定額減税のしかた」
パンフレットは、1.定額現在の概要、2.給与の支払者の事務のあらまし、3.月次減税事務の手順、4.年調減税事務の手順、5.源泉徴収
票への表示について、全16頁で解説されています。
◆「令和6年分所得税の定額減税Q&A」
Q&Aは、制度の概要、対象者の選定、月次減額の方法、年調減税の方法、源泉徴収票・給与支払明細書等への記載方法等、全23頁、
計59のQ&Aから構成されています。
今回の定額減税は、給与計算実務に直接の影響がある内容ですので、資料やQ&Aを参考に、あらかじめ手順を確認しておくとよいでしょ
う。
【国税庁「定額減税 特設サイト」】
https://www.nta.go.jp/users/gensen/teigakugenzei/index.htm
【同「令和6年分所得税の定額減税のしかた」】
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0023012-317.pdf
【同「令和6年分所得税の定額減税Q&A」】
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0024001-021.pdf
2024年10月からの社会保険適用拡大に関するQ&Aが公開されました (2024-03)
所定労働時間または所定労働日数が通常の労働者(正社員)の4分の3に満たない短時間労働者でも、①1週の所定労働時間が20時間以上である
こと、②所定内賃金が月額8.8万円以上であること、③学生でないこと、④特定適用事業所に使用されていること、という要件を満たせば、健康
保険と厚生年金保険の被保険者になります。
今年の10月から、④の特定適用事業所の企業規模要件が、使用される厚生年金保険の被保険者の総数が常時100人を超える企業から常時50
人を超える企業に拡大されるため、厚生労働省によるQ&Aが公開されました。関係のある方は、下記をご確認ください。
◆問9 「被保険者の総数が常時50人を超える」とは、どのような状態を指すのか。どの時点で常時50人を超えると判断する
ことになるのか。
(答)「被保険者の総数が常時50人を超える」とは、①法人事業所の場合は、同一の法人番号を有する全ての適用事業所に使用される厚生年金
保険の被保険者の総数が12か月のうち、6か月以上50人を超えることが見込まれる場合を指します。②個人事業所の場合は、適用事業所ごとに
使用される厚生年金保険の被保険者の総数が12か月のうち、6か月以上50人を超えることが見込まれる場合を指します。
◆問10 特定適用事業所に該当した適用事業所は、どのような手続が必要になってくるか。
(答)特定適用事業所に該当した場合は、①法人事業所の場合は、同一の法人番号を有する全ての適用事業所を代表する本店又は主たる事業所か
ら、事務センター等へ特定適用事業所該当届を届け出ることになります(健康保険組合が管掌する健康保険の特定適用事業所該当届については、健
康保険組合へ届け出ることになります。)。②個人事業所の場合は、各適用事業所から、事務センター等へ特定適用事業所該当届を届け出ることに
なります(健康保険組合が管掌する健康保険の特定適用事業所該当届については、健康保険組合へ届け出ることになります。)。
【厚生労働省「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(令和6年10月施行分))】
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T240124T0010.pdf
外国人労働者数が初の200万人超え~厚生労働省のまとめより (2024-03)
厚生労働省は1月26日、令和5年10月末時点の外国人雇用についての届出状況の取りまとめを公表しました。
国内で働く外国人は昨年10月末時点で前年と比べ12.4%増えて、204万8,675人に上り、平成25年から11年連続で過去最多を更
新しました。外国人労働者の増加率はコロナ禍前の水準にまで回復しています。また、比較可能な平成20年以降、200万人を超えるのは初めて
です。
◆外国人労働者数は過去最高を更新
外国人労働者数は204万8,675人で、前年比で22万5,950人増加し、届出が義務化された平成
19年以降、過去最高を更新しました。対前年増加率は12.4%と、前年の5.5%から6.9ポイント上昇しています。
◆外国人を雇用する事業所数も過去最高を更新
外国人を雇用する事業所数は31万8,775所で、前年比1万9,985所増加し、届出の義務化以降、こちらも過去最高を更新しています。
対前年増加率は6.7%と、前年の4.8%から1.9 ポイントの上昇でした。
◆国籍別では、ベトナムが昨年同様に最多
国籍別では、ベトナムが最も多く51万8,364人で、外国人労働者数全体の25.3%を占めています。次いで中国39万7,918人(全 体の19.4%)、フィリピン22万6,846人(全体の11.1%)の順となっています。
対前年増加率が高かったのは、インドネシア(56.0%増)、次いでミャンマー(49.9%増)、ネパール(23.2%増)の順となってい
ます。
◆在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」が前年比最多の増加率
在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」が対前年増加率として最も大きく59万5,904人で、前年比11万5,955人 (24.2%)の増加、次いで「技能実習」が41万2,501人で、前年比6万9,247人(20.2%)増加、「資格外活動」が35万 2,581人で、前年比2万1,671人(6.5%)の増加でした。
【厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37084.html
改正施行目前! 4月以降の労働者募集に関する注意点 (2024-02)
◆募集時等に明示すべき労働条件が追加されます
令和6年4月より、労働契約の締結時や有期労働契約の更新時に明示すべき労働条件として、「就業場所」「業務の変更の範囲」が追加される等 の改正が施行されます。既に、この改正に対応した労働条件通知書等のフォーマットが厚生労働省ホームページで示されています。
この明示すべき労働条件の追加は、求人の申込みの際に明示しなければならない労働条件としても追加されますので、注意が必要です。
◆追加される明示事項は?
具体的には「就業場所」として、「雇入れ直後」のものと「変更の範囲」を求人広告等に記載することとなります。「業務の変更の範囲」につい ても同様です。
さらに、有期労働契約を締結する場合には「有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項」(通算契約期間または更新回数の上限を含む)も
明示しなければなりません。
◆「変更の範囲」はどこまで想定して書けばよい?
特に正社員の場合、契約期間が長くなるため、営業所や部署が新設される可能性などを考慮するときりがありませんが、厚生労働省の
Q&Aでは「募集等の時点で具体的に想定されていないものを含める必要はありません」とされています。
◆スペースに書ききれない場合はどうする?
求人広告などの限られたスペース内に書き入れない場合は、「詳細は面談時にお伝えします」などとしておき、一部を別途のタイミングで明示す ることも可能です。この場合、原則、面接などで求職者と最初に接触する時点までに、すべての労働条件を明示する必要があります。
【厚生労働省「令和6年4月より、募集時等に明示すべき事項が追加されます」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1.html
4月より労災保険率の改定が予定されています! (2024-02)
厚生労働大臣は昨年12月22日に、労働政策審議会に対して「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」に
ついて諮問を行いました。事業主が支払う労災保険料算出に用いる労災保険率の改定などを主な内容とするものです。12月26日、同審議会から
いずれも妥当であるとの答申があったことから、同省は令和6年4月1日の施行に向け、速やかに省令の改正作業を進めるとしています。
◆労災保険率とは?
労災保険率とは、労災保険料の計算に用いられる料率のことです。労災保険率は業種によって異なり(全部で54の事業)、それぞれの業種の過
去3年間の災害発生状況などを考慮し、原則3年ごとに改定されています。建設事業などの危険な業種ほど高く、労災事故が起こりにくい業種ほど
低く設定されています。
◆労災保険率を業種平均で0.1/1000引下げへ
労災保険率の業種平均は現在4.5/1000ですが、業種平均で0.1/1000引き下げられる予定です(4.4/1000へ)。
- 引下げ→「林業、定置網漁業又は海面魚類養殖業」「採石業」「めつき業」「金属材料品製造業」などの17業種
- 引上げ→「パルプ又は紙製造業」「電気機械器具製造業」「ビルメンテナンス業」の3業種
- 変化なし→34業種
◆一人親方などの特別加入に係る第2種特別加入保険料率を改定へ
全25区分中、5区分で引下げとなる予定です。
- 引下げ→「個人タクシー、個人貨物運送業者、原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物の運送の事業」「建設業の一人親方」「医薬 品の配置販売業者」「金属等の加工、洋食器加工作業」「履物等の加工の作業」の5区分
- 引上げ→なし
◆請負による建設の事業に係る労務費率(請負金額に対する賃金総額の割合)を改定へ
「鉄道又は軌道新設事業」「その他の建設事業」の労務費率を引き下げる予定です。
政府の少子化対策をまとめた「こども未来戦略」が決定されました (2024-02)
政府は令和5年12月22日、少子化対策をまとめた「こども未来戦略」を閣議決定しました。今後3年間の集中的な取組みである「加速化プラ
ン」には、「共働き・共育ての推進」が盛り込まれています。具体的な内容は次の通りです。
◆育児休業の取得促進
- 2週間以上の男性育休の取得率を2030年に85%へと引上げ
- 次世代育成支援対策推進法を改正、一般事業主行動計画に数値目標の設定、PDCAサイクルの確立を定め、育休取得から円滑な職場復帰 までの支援、勤務時間や勤務地への配慮等を盛り込ませる
- 育児・介護休業法における育休取得率の開示義務について、常時雇用する労働者数が300人超の事業主に拡充し、有価証券報告書におけ る開示を進める
- 産後8週間以内に両親が14日以上の育休を取得した場合の給付率を手取り10割相当に
- 代替要員確保等の体制整備を行う中小企業への助成措置を大幅に強化
- 「くるみん認定」の取得など、育児休業の取得状況等に応じた実施インセンティブの強化
◆育児期の柔軟な働き方の推進
- フレックスタイム制の義務化、テレワークの努力義務化…こどもが3歳まで
- 「親と子のための選べる働き方制度(仮称)」を創設…こどもが3歳以降小学校就学前まで、フレックスタイム制を含む出社・退社時刻の 調整、テレワーク、短時間勤務制度、保育施設の設置運営等、休暇から、事業主が複数の制度を選択して措置し、その中から労働者が選択でき る制度
- 「育児時短就業給付(仮称)」を創設…こどもが2歳未満の期間に時短勤務を選択した場合、賃金の10%を支給。体制整備を行う中小企 業に助成措置を実施
- 所定外労働の制限…こどもが小学校就学前までに引上げ
- 子の看護休暇…こどもが小学校3年生修了時までに引上げ。休暇取得事由の見直し
◆多様な働き方と子育ての両立支援
- 週所定労働時間10時間以上20時間未満の労働者も失業給付や育児休業給付等の受給対象者へ
- 国民年金の第1号被保険者を対象に育児期間に係る保険料免除措置を創設。
【こども家庭庁「こども未来戦略~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」】
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/fb115de8-988b-40d4-8f67-b82321a39daf/b6cc7c9e/20231222_resources_kodomo-mirai_02.pdf
賃金改定率が過去最高に~厚生労働省実態調査から (2024/01)
◆賃上げ実施企業、引上げ額、引上げ率ともに昨年より増加
厚生労働省の令和5年「賃金引上げ等の実態に関する調査」結果によると、1人当たりの平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業の割合は 89.1%(前年同比3.4ポイント増)、1人当たりの平均賃金の引上げ額は9,437円(同3,903円増)となりました。平均賃金の引上 げ率は3.2%(同1.3ポイント増)で、平成11年以降で最も高い数値となりました。
同調査は、常用労働者100人以上を雇用する会社組織の民営企業を対象とし、3,620社を抽出して1,901社から有効回答を得たもので
す。
産業別にみると、平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業の割合は、「建設業」が100.0%で最も高く、次いで「製造業」が
97.7%、「電気・ガス・熱供給・水道業」が92.9%となっています。
平均賃金の引上げ額は、「鉱業、採石業、砂利採取業」が18,507円(引上げ率5.2%)で最も高く、次いで「情報通信業」が15,402
円(同4.5%)、建設業12,752円(同3.8%)となっています。
◆すべての企業が業績好調による賃金引上げとは限らない
賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素の割合をみると、「企業の業績」が36.0%で最も多く、次いで「労働力の確保・定着」が 16.1%、「雇用の維持」が11.6%となっています。
本調査結果の通り、近年、賃金引上げを実施する企業が増加しています。その理由として、物価上昇への対応や従業員のモチベーション向上、人材 確保・定着などが挙げられます。しかし、賃金引上げを実施するすべての企業が業績好調による引上げとは限らず、業績は改善しないが従業員の生 活を守り、人材流出を防ぐことを狙いとして実施する企業も多いと考えられます。賃金引上げを実施する際には、政府が掲げている賃金引上げに向 けた各種支援策等を参考にしながら慎重に検討する必要があるでしょう。
【厚生労働省「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/23/dl/10.pdf
令和5年改正労基則等に係る裁量労働制に関するQ&A(追補版)が作成されました (2024/01)
厚生労働省は、今年8月に作成した裁量労働制に関するQ&Aについて、追補版を作成しました。追加された内容からいくつか抜粋して紹
介します。
◆労働者の自己申告による労働時間の状況の把握は可能
専門型・企画型において、労働時間の状況の把握方法は「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の
客観的な方法その他の適切なもの」であることが必要とされています。そのため、労働者の自己申告による把握は原則認められません。ただし、こ
こでいう「労働時間の状況」の概念およびその把握方法は、安衛法66条の8の3と同一のものであるため、やむを得ず客観的な方法により把握し
難い場合においては認められます。
◆事前に協定または決議し、制度を適用しない期間後に再適用することは可能
専門型・企画型において、健康・福祉確保措置として、把握した労働時間が一定時間を超えない範囲内とすること、および当該時間を超えたときは みなしの効果が生じないこととする措置を定めた場合に、一定期間の適用をしないこととしたうえで、同期間経過後に再度制度を適用することをあ らかじめ協定または決議し、実施することは可能です。
ただし、適用しない期間は事前に労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等または労使委員会と協議のうえで決定しておくこと
が必要です。また、再度適用するにあたっては、適用解除後の労働者の勤務状況(労働時間の状況を含みます)や健康状態等を踏まえて、使用者が
個別具体的に再適用の可否を判断することに留意する必要があります。また、いったんは適用が解除された以上、改めて労働者の同意が必要です。
◆評価制度および賃金制度の運用状況の説明は、概要資料等の開示を想定
専門型・企画型において、裁量労働制の適用対象である「労働者に適用される評価制度およびこれに対応する賃金制度の運用状況(労働者への賃 金・手当の支給状況や評価結果等をいう。)」の開示方法は、実際に支給されている平均賃金を示した資料を開示することや、賃金水準や制度適用 に係る特別手当の実際の支給状況や評価結果等について、その分布をまとめた概要資料などを開示することが考えられます。特に適用対象である労 働者が1名の場合は、賃金額等について一定の幅を持たせて開示すること、当該労働者の値が非適用労働者と比べてどの程度多いかもしくは少ない かという相対値を示すことなどが考えられますが、労使で協議のうえ、個人が特定できないようプライバシーの保護に十分留意が必要です。
【厚生労働省「令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A」】
https://www.mhlw.go.jp/content/001164350.pdf
国家公務員の男性育休取得率が初の7割に (2024/01)
◆令和4年度の国家公務員の男性育休取得状況
人事院は、仕事と家庭の両立支援のための制度等の検討に資するため、令和4年度における一般職の国家公務員の育児休業等の取得実態について調
査を実施し、一般職の男性職員の育児休業取得率が過去最高の72.5%(前年度比9.7ポイント増)だったことを公表しました。7割を超えた
のは初で、4年前の平成30年度では21.6%だったことを踏まえると、ここ数年で急激な増加となっています。
◆取得期間は「2週間以上1月以下」が約5割で最多
同調査によれば、取得期間としては、男性では「2週間以上1月以下」が48.6%で最も多く、「1月超3月以下」(22.5%)、「3月超6
月以下」(9.2%)が続いています。なお、女性では「9月超12月以下」が31.2%で最も多く、次いで「12月超24月以下」
(30.3%)となっています。
◆くるみんの認定基準も厳しく
政府は2030年度までに、民間を含む男性育休の取得率を85%まで引き上げる目標を掲げています。「子育てサポート企業」として厚生労働大 臣が認定をする「くるみん」についても、2024年以降に、男性育休取得率の基準が10%から30%に引き上げられる方針です。
育児・介護休業法改正後、男性育休の取得促進についても広く知られるところとなってきました。男性の育休取得の促進は、企業にとっても人材確 保や両立支援の面から無視できない課題です。今後より一層の取組みを検討していきたいところです。
【人事院「仕事と家庭の両立支援関係制度の利用状況調査(令和4年度)の結果について」】
https://www.jinji.go.jp/kisya/2311/ikukyuR5syousai.pdf