過去の事務所便り 2019年


有給取得率の調査結果と今後 (2019/12/01)


◆平成30年の年次有給休暇の取得率は52.4%

厚生労働省は平成31年「就労条件総合調査」の結果を公表しました。調査によれば、年間の年次有給休暇の平均取得率は52.4%で、前年に 比べて1.3ポイント上昇しています。取得率を企業規模別にみると、「1,000人以上」が58.6%、「300~999人」が49.8%、 「100~299人」が49.4%、「30~99人」が47.2%となっており、規模により最大10ポイント近くの差がみられました。

なお、本調査は平成30年の1年間の状況について調査を行ったものですので、本年4月に施行された改正労働基準法による年次有給休暇年5日 取得義務化前についての調査になります。

◆企業規模が小さいほど休みが少ない

また、公表された調査によれば、週休制の形態別適用労働者割合をみると、「完全週休2日制」が適用されている労働者割合は57.0%とあり ますが、その割合は企業規模が小さくなるほど低くなっています。年間休日総数についても、1企業平均は108.9日、労働者1人平均 114.7日となっていますが、いずれも大企業ほど多く、小規模企業ほど少なくなるという傾向は変わりません。

◆年次有給休暇年5日取得の義務化

本年4月から、働き方改革法に伴う年次有給休暇年5日取得義務化が適用されています。

有給休暇取得率の低さについては以前から問題となっていましたが、法律の規制がかかったことで、企業でも取得率向上に向けた取組みが本格的 に実施されているところでしょう。来年の調査結果には注目したいところです。

◆企業の現況を踏まえた取組みを

上記の調査結果の通り、中小企業ではもともと休みが少ないという実態があります。それにはそれなりの理由があるのでしょう。現在、働き方改 革による大企業の残業時間削減のしわ寄せが中小企業に及んでいるという問題も指摘されており、厚生労働省も「しわ寄せ防止特設サイト」を設け て防止を呼び掛けています。そのため、特に中小企業にとっては、有給休暇取得義務化への対応は困難となることが予想されますが、根本的な問題 への対応を検討しつつ企業としてしっかり取り組んでいきたいところです。


若手が求めるやりがいとパワハラ防止へのコミュニケーションの重要性 (2019/12/01)


◆若手のやりがい、求められるコミュニケーション

マンパワーグループが行った、入社2年目までの若手正社員(22~27歳)を対象とした調査によると、仕事に「やりがいを感じている」割合 は約70%だということです。やりがいの中身(複数回答可)では、上位から順に「仕事の成果を認められる」が37.6%、「仕事をやり遂げ る」が34.7%、「自分の成長を感じる」が34.7%、「新しい仕事にチャレンジする」が33.2%、「お礼や感謝の言葉をもらう」が 31.4%となっています。

また、若手正社員が取り入れてほしいと考える勤務制度への回答では、多いほうから順に「フレックス制」36.8%、「在宅勤務」 33.3%、「モバイルワーク」30.8%が目立つ一方、「ない」との回答も37.5%ありました。

上記の結果を「コミュニケーション」という視点から見ると、認められたい・コミュニケーションをとりたいという希望がある一方、勤務制度に ついてはコミュニケーションがとりづらい方法の希望があるようです。

◆コミュニケーションとパワハラ

パワハラの防止対策を企業に義務付けるパワハラ防止法の施行を来年6月(中小企業は2022年4月)に控え、現在、パワハラ防止ガイドラン の素案が公表されており、年内には正式に決定・公表される見込みです。

パワハラ予防のためには、職場のリーダーは部下を指揮する一方、部下から必要な情報が上がってくるようにして適切なコントロール(指揮・統 制)をしなければなりません。昔のようにリーダーからの一方的な指揮・統制では仕事は回らなくなっています。

つまり、部下の話を聞いてあげて、部下のほうからのコミュニケーションを増やすよう、意思疎通を良くしなければならないのです。例えば、業 務時間中に部下の話を聞く機会を増やしたり、部下が考えて意見を言えるように質問型マネジメントをしたりする等が必要です。

実際、上記調査でもコミュニケーションがとりやすい社内ツールとして、メール(55.3%)、電話(50.0%)に次いで「対面」 (48.0)%も回答が多くなっています。社内SNS等も発達してきていますが、やはり人間同士、電話・対面といったアナログなコミュニケー ションも重要なのだと思われます。

◆中小企業もスケジュールは考えておく

パワハラ防止のカギはコミュニケーション、といってしまえば単純なようですが、管理職・一般社員への研修一つとってもポイントなる部分を押 さえる必要がありますし、法施行日までにやることは他にもたくさんあります(就業規則改訂、相談窓口設置・担当者の決定、従業員アンケー ト…etc)。中小企業には多少猶予期間がありますが、今からスケジュールだけでも考えておく必要はあるでしょう。

年末の風物詩「職場の大掃除」、実は義務だとご存じでしたか? (2019/12/01)


◆大掃除は会社の義務とされている

仕事納めの日には社内の大掃除をする、という会社は多いのではないでしょうか。忙しい部署からは、「ただでさえ年末はやることが多いのに、 掃除に割く時間がもったいない」とか、「掃除は仕事じゃないのに……」などとボヤく声も聞こえてきそうですね。

しかし、実は、会社の大掃除を行うことは、法律にも定められた義務であり、立派な仕事の1つなのです。

具体的には、労働安全衛生規則第619条に、「事業者は、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。」として、「日常行う清掃のほか、 大掃除を、6月以内ごとに1回、定期に、統一的に行うこと」が定められています(第1項)。

◆職場の清潔保持は労働者の義務でもある

一方、労働者にも、「作業場の清潔に注意し、廃棄物を定められた場所以外の場所にすてないようにしなければならない」ことが義務付けられて います(同規則第620条)。職場環境を清潔に保つことは、会社にとっても労働者にとっても、必要不可欠なこととされているのです。

◆義務付けのねらいを理解して積極的に大掃除に取り組もう

このような義務付けがなされているのは、労働者を守るためです。オフィス内が整理・整頓されていなければ事故も起こりやすくなりますし、不 衛生な環境は病気の原因ともなります。安心して働くことのできる職場環境を維持するためにも、定期的に大掃除を行って職場の清潔を保持するこ とが大切です。

また、職場環境をきれいに保つことは、仕事の効率化やストレスの軽減にも効果があるとされています。「労働者が働きやすい環境をつくるた め」という意義を明確にして、来たる年末、職場みんなで積極的に大掃除に取り組む機運を醸成しましょう。


来年1月からハローワーク求人票が変わります (2019/11/02)


◆ハローワークで求人する企業が再び増えている

ハローワークに登録した求人情報は、5年前から職業紹介事業を行う地方自治体や民間事業者に、オンラインで提供されています。

近年では、求職者が求人情報専門の検索サイトIndeed等を利用して、多くの情報の中からより求める条件に合致する企業を選んで応募する ようになっています。

ハローワークがオンライン提供する求人情報は、こうしたサイトでもヒットする可能性があることから、ハローワークを通じた求人が見直されつ つあります。

◆「人材確保対策コーナー」での求人相談も人気

厚生労働省では、2018年4月より全国84のハローワークに「人材確保対策コーナー」を設置し、介護・医療・保育の福祉人材分野と警備 業、運輸業、建設業などの業種のマッチング支援を強化するため、専門相談員を配置しています。

求職者にも担当者がついて企業見学会や就職面接会などを実施しているため、求職者と密に接点を持つことができ、利用が増えているようです。

◆新しい求人票ではより多くの情報を掲載できるようになる

そうしたなか、ハローワークのシステムと求人票の様式が新しくなります。

A4判片面から両面となり、固定残業代制度、職務給制度や復職制度の有無のほか、残業・休日労働に関する労使協定(36協定)で、繁忙期等 により長い労働時間を設定する特別条項を定めているかなど、登録する項目が追加されます。

また、会社や職場の写真、面接会場の地図や取扱商品の写真など、画像情報も登録できるようになるため、より内容を工夫できるようになりま す。

◆「マイページ」で求職者とも直接やり取りできるようになる

新しいハローワークインターネットサービスでは、会社が「マイページ」を設けて、担当者が会社のパソコンで、求人内容を変更したり募集停止 をしたりすることができるようになります。

また、求職者もマイページを登録している場合には、メッセージ機能を使って直接やり取りができるようになるため、求職者からの質問等により きめ細かな対応ができ、安心感を持ってもらえるようになります。

新サービスの運用は2020年1月6日からで、既に求人票を登録済みの会社も、情報を追加登録することができますので、なかなか応募が来な いと悩んでいる場合には、追加登録を検討してみてはいかがでしょうか。


正規・非正規雇用の平均給与の現状と「同一労働同一賃金」対応 (2019/11/02)


◆企業が支払った給与の総額、7年連続増加

国税庁が租税負担の検討のため例年実施している「民間給与実態調査」の最新版が公表されました(2018年12月31日現在の源泉徴収義務 者が対象)。

調査によれば、昨年中に民間の事業所が支払った給与の総額は、223兆5千億円(前年対比3.6%増)でした。給与総額の増加は7年連続の ことです。

◆正規・非正規雇用の平均給与

また、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は440万円(同2.0%増)でした。この平均給与を正規・非正規雇用でみる と、正規504万円(同2.0%増)、非正規179万円(同2.2%増)とのことです。

正規・非正規間では、給与に倍以上の格差があるといえます。

◆同一労働同一賃金まであと半年

2020年4月には、いわゆる「働き方改革関連法」(パート・有期法、改正派遣法等)による「同一労働同一賃金」がいよいよ適用され、企業 は正規・非正規雇用での不合理な給与の格差を禁じられることとなります(ただし、パート・有期法の中小企業への適用は2021年4月から)。 適用により、非正規雇用の平均給与は来年以降も増加するでしょう。

◆同一労働同一賃金による人件費増をどうするか

日本経済新聞(2019年9月21日付)が実施した「社長100人アンケート」によれば、同一労働同一賃金に対応した制度の導入により人件 費が「増える」「どちらかといえば増える」と回答した企業は46.9%でした。

また、既に同一労働同一賃金に対応した制度整備を終えた企業のうち、「基本給・給与」を見直した企業は少なかったようです。同アンケートで は、非正規雇用に賞与支給を開始する企業は10.5%、非正規雇用の基本給を正規雇用並みに引き上げる企業は7.0%と少数でした。一方で、 「手当・福利厚生」を見直したという回答が多く、たとえば「時間外・深夜・休日手当の割増率」を見直した企業は17.5%だったとのことで す。

企業によって対応に差はありますが、給与を中心とする待遇格差の是正や、そのコストへの対応が必要です。大手他社の動向も参考にしつつ、対 応を急ぎましょう。


平成30年度 長時間労働の実態 ~厚生労働省 「長時間労働が疑われる事業場に対して監督署が実施した監督指導の結果」より (2019/11/02)


◆平成30年度の監督署指導結果が公表

厚生労働省は、長時間労働が疑われる事業場に対して、平成30年4月から平成31年3月までに労働基準監督署が実施した監督指導の結果(改 正労働基準法等の施行前の法令に基づくもの)を取りまとめ、公表しています。この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1カ月当 たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としたもので す。

◆40.4%の事業場で違法な時間外労働

公表された情報によれば、監督指導実施事業場29,097のうち、11,766(40.4%)で違法な時間外労働を確認し、是正・改善に向 けた指導を行ったそうです。このうち時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が月80時間を超えるものが全体の66.4%、100時 間を超えるものが44.3%、150時間を超えるものが約10%という結果が出ています。

◆労働時間の適正な把握に関する指導状況

また、監督指導を実施した事業場のうち、4,752事業場について、労働時間の把握が不適正であることから、厚生労働省「労働時間の適正な 把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に適合するよう指導したとしています。指導事項としては、「始業・終業時刻の確認・ 記録」が2,688事業場、自己申告制による場合の「実態調査の実施」が2,154事業場、「自己申告制の説明」が296事業場、「適正な申 告の阻害要因の排除」が244事業場となっています(指導事項が複数の場合、それぞれに計上)。

◆今後も積極的に実施される長時間労働是正に向けた取組み

厚生労働省は、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中には、重点的な監督指導を行うとしています。今後も長時間労働是正に向けた取組 みはますます強化されることと思いますので、自社の労働時間の実態、管理方法等を今一度確認していく必要があるでしょう。


監督指導による賃金不払残業の是正企業数が減少~厚生労働省調査 (2019/10/01)


厚生労働省から、平成30年度に時間外労働などに対する割増賃金を支払っていない企業に対して、労働基準法違反で是正指導した結果が公表され ました。

全国の労働基準監督署が、賃金不払残業に関する労働者からの申告や各種情報に基づき企業への監督指導を行った結果、平成30年4月から平成 31年3月までの期間に不払いだった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取り まとめたものです。

◆平成30年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント

  1. 是正企業数……………………………1,768企業(前年度比102企業の減)
    うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、228企業(前年度比34企業の減)
  2. 対象労働者数…………………………11万8,837人(同8万9,398人の減)
  3. 支払われた割増賃金合計額…………125億6,381万円(同320億7,814万円の減)
  4. 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり711万円、労働者1人当たり11万円

いずれも前年度に比べ減少しています。また、監督指導の対象となった企業では、賃金不払残業の解消のために様々な取組みが行われています。

その一つとして、ある金融業の取組事例が以下のとおり紹介されています。

◆賃金不払残業の状況

  • 割増賃金が月10時間までしか支払われないとの労働者からの情報を基に、労基署が立入調査を実施。
  • 会社は、自己申告(労働者による労働時間管理表への手書き)により労働時間を管理していたが、自己申告の時間外労働の実績は最大月 10時間となっており、自己申告の記録とパソコンのログ記録や金庫の開閉記録とのかい離が認められたことから、賃金不払残業の疑いが認め られたため、労働時間の実態調査を行うよう指導。

◆企業が実施した解消策

  • 会社は、パソコンのログ記録や金庫の開閉記録などを基に労働時間の実態調査を行った上で、不払いとなっていた割増賃金を支払った。
  • 賃金不払残業の解消のために次の取組みを実施した。
    1. 支店長会議において、経営陣から各支店長に対し、労働時間管理に関する不適切な現状およびコンプライアンスの重要性を説明し、労 働時間管理の重要性について認識を共有した。
    2. 労働時間の適正管理を徹底するため、自己申告による労働時間管理を見直し、ICカードの客観的な記録による管理とした。
    3. ICカードにより終業時刻の記録を行った後に業務に従事していないかを確認するため、本店による抜き打ち監査を定期的に実施する こととした。

厚生労働省では、引き続き、賃金不払残業の解消に向け、監督指導を徹底していくとしています。


高齢者の労働災害が増加しています! 改めて考えたい「高齢者が働きやすい職場づくり」 (2019/10/01)


◆労災発生件数の4分の1は高齢者

定年延長や、人手不足を背景として、働く高齢者が増えています。現在では、65歳以上の労働者は、労働力人口の12.8%を占めています。

このような状況にあって、働く高齢者の労働災害が問題となってきました。厚生労働省「労働災害発生状況」によれば、2018年に労災に遭っ た60歳以上の労働者は、前年比10.7%増の3万3,246人で、労災全体の4分の1を占めています。

◆高齢者の労災を防ぐためのカギは「転倒防止対策」

60歳以上の労働災害の中でも目立つのは転倒事故で、37.8%を占めます(全世代では転倒による労災事故は25%程度)。転倒防止対策 が、高齢者の労働災害減少のカギとなるといえます。

転倒は、段差でつまずいたり、バランスを崩してしまったりすることにより起こります。特に高齢者の場合、下肢の筋肉の衰えが影響して、転倒 しやすくなるものと考えられています。また、年齢を重ねるとともに、視力や握力、バランス保持能力といった身体機能は低下しますが、こうした 身体機能・認知機能の低下に気がつかず、自分では「できる」と過信して無理な動作をしてしまうことも、転倒の原因となります。

職場内の段差を極力なくす、通路を整頓して通行しやすくするといった対策を講じるとともに、実際の身体機能と本人の認識のズレを正すための チェックを受けてもらうことも効果的といえるでしょう。

◆これからも増え続ける「働く高齢者」のために

政府は現在、「希望する人が70歳まで働ける機会の確保」を努力義務として企業に課す方針を打ち出しています。働く高齢者がますます増える ことが想定される中、高齢者が安心して働くことのできる職場づくりが必要となります。

働く高齢者の労働災害を防ぐため、安全確保に取り組む中小企業を対象とした助成制度も新設される見込みです。この機会に、改めて、働く高齢 者のための環境整備について考えてみませんか。


内定辞退率販売事件と個人情報保護法 (2019/10/01)


◆リクナビの「内定辞退率販売事件」

大手就職情報サイト「リクナビ」等を運営する(株)リクルートキャリアが、自社サービスを利用している就職活動中の学生の「内定辞退率」を AIで予測し、そのデータを30社以上の企業に販売していたとして、法的・企業倫理的な問題となっています。

8月26日、個人情報保護委員会は、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という)第20条が求める「安全管理措置」を適切 に講じず、また同法第23条1項に規定されている「個人データを第三者に提供する際に必要な同意」を得ていなかったとして、同社に対し、委員 会発足後初となる是正勧告を行いました。

また、東京労働局も9月6日、同社が職業安定法および指針に違反していたとして、すべての事業について同法違反がないか確認し、必要な是正 や再発防止策を講じることなどを求める指導を行いました。

◆すべての事業者は「個人情報取扱事業者」

改正個人情報保護法(平成29年5月30日施行)により、規模の大小に関わらず、何らかの個人情報を取り扱う事業者には、同法が適用されて います。自社従業員はもちろん、自社の採用活動への応募者や、自社サービスを利用する顧客の個人情報も、適正に取り扱わなければなりません。

◆個人情報保護委員会のQ&A

個人情報保護委員会では、個人情報の取扱いに関する、わかりやすいガイドラインやQ&Aを公表・更新しています。Q&Aの 最新版では、

  • 防犯目的で、万引き・窃盗等の犯罪行為や迷惑行為に対象を限定した上で、顔認証システムを導入しようとする場合の注意点
  • 飲食店で、顧客からの予約を受付時に取得した個人情報の取扱い
  • 「貴社が保有する私の情報すべてを開示せよ」という請求があった場合の対応

など、興味深い論点が盛り込まれています。ほかにも、中小企業向けに抜粋した簡易版Q&Aなども公表されていますので、参考にして はいかがでしょうか。

【個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」及び「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応につ いて」に関するQ&A」(令和元年6月7日更新)】
https://www.ppc.go.jp/files/pdf/1906_APPI_QA.pdf



最低賃金の引上げと活用したい助成金 (2019/09/02)


◆最低賃金、全国平均901円に引上げ!?

厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会で、2019年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられ、公表されまし た(7月31日)。

今年度の目安が示した引上げ額の全国加重平均は27円(昨年度は26円)引き上げた901円となり、最も高い東京都は1,013円(昨年度 は985円)、それに次ぐ神奈川県は1,011円(昨年度は983円)と、初めて1,000円を超えることになります。

今後は、各地方最低賃金審議会で、この答申を参考にしつつ、地域における賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議のうえ答申を行 い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定、10月以降に改定されます。

引上げ額が過去最大となる予定の今回の改定は、中小零細企業に厳しい状況を強いることになり、さらなる生産性向上が課題となってきます。
そこで今回は、厚生労働省が中小企業に対する支援策として設けている助成金をご紹介します。

◆業務改善助成金

本助成金は、生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げた中小企業・小規模 事業者に対して、その設備投資など(POSレジシステム導入よる在庫管理の短縮や、顧客・在庫・帳簿管理システムの導入による業務の効率化な ど)にかかった経費の一部を助成するというものです。

例:【30円コース】

引き上げる労働者数:1~3人、助成上限額:50万円
助成対象事業場:事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内、および事業場規模30人以下の事業場、助成率:4分の3

平成31年度については、受付が始まっています(申請期限は翌年の1月31日まで)。

◆その他の助成金や支援策等

その他、中小企業事業主の団体やその連合団体が、その傘下の事業主のうち、労働者を雇用する事業主の労働者の労働条件の改善のために、時間 外労働の削減や賃金引上げに向けた取組みを実施した場合に、その事業主団体等に対して助成する時間外労働等改善助成金(団体推進コース)があ ります。

また、厚生労働省のホームページには、上記助成金を活用し、業務の効率化や働き方の見直しなどを実施して生産性向上を実現し、最低賃金の引 上げを行った事例や支援施策紹介マニュアル等が紹介されていますので、参考にしてみるとよいでしょう。


フリーランスとして働く人の実態と分析~内閣府の調査から (2019/09/02)


多様で柔軟な働き方として、特定の組織等に属さず、独立して様々なプロジェクトに関わり自らの専門性等のサービスを提供するフリーランスへの 関心が高まっています。

内閣府は、日本の公的統計では初めてとなるフリーランスとして働く人の実態調査の結果とその分析についてまとめ、公表しました。

◆就業者の約5%がフリーランス

内閣府の調査結果によると、フリーランスとして働く人は306万人から341万人程度であると推定されました。これは日本の就業者全体の約 5%を占めることになります。そのうち、本業をフリーランスとして働く人が158万から228万人、副業をフリーランスとして働く人は106 万から163万人と推定されました。

また、自営業主の全体数は長期間減少傾向にありますが、雇用的自営業等(建築技術者、システムコンサルタント・設計者、保険代理人、調理人 など特定の発注者に依存する自営業主)は増加傾向であることが明らかになりました。

◆競業避止義務の課題

退職後・契約終了後に競合企業への転職、競業企業の立上げを制限・禁止するなどの競業避止義務についての調査では、競業避止義務が「ある」 と答えた雇用者は13.9%、「あるかもしれない」10.5%で、フリーランスでは、「ある」が4.4%、「あるかもしれない」が4.2%で した。

また、競業避止義務には、競業企業への転職や競合事業の立上げをしないことへの見返りとして「賃金プレミアム(賃金の上乗せ)」をもたらし ていることが確認されました。しかし、義務を認識したタイミングによって違いがあり、フリーランスとして働く人が契約後に認識した場合と覚え ていない場合では、賃金の上乗せが見られなかったとしています。

◆法整備の動向

現在、厚生労働省では、フリーランスへの労災保険の適用や報酬額の適正化、取引先企業と対等な立場を保つための契約ルール等について議論し ています。また、フリーランスとして働く人を支援する法整備も検討されています。


転勤をめぐる近時の報道と、配転命令権 (2019/09/02)


◆AIG損保、転勤を廃止

AIG損害保険が、転勤の多い保険業界では珍しく、転勤を原則として廃止したと報道されました。一般に「転勤のある社員」と「地域限定社 員」に分け、給与に1~2割の差をつける企業が多いところ、同社は「限定社員が格下の印象となり、優秀な人の出世の障壁になる」として、廃止 に踏み切ったとのことです(日本経済新聞2019年7月17日付)。

◆転勤命令で騒動となったカネカ

一方、今年6月には、カネカが育休対応問題で炎上しましたが、そのきっかけは、男性社員が育休復帰後2日で転勤の辞令が下され、これを拒否 したことでした。同社は「当社対応は適切であった」というコメントを公表していますが、世間からはその適法性ではなく、一連の企業姿勢を疑問 視されることとなりました。

◆企業には転勤命令権が認められているが……

転勤拒否の法律問題を考えるうえで非常によく言及されるのが、東亜ペイント事件(最高裁昭和61年7月14日判決)という有名な裁判例で す。企業の転勤命令権を広く認めた判例として、以後の多くの人事・労務実務や、労働紛争に影響を与えています。

しかし、その事件発生は1973~74年、判決が1986年のことであり、最近では、ワークライフバランスなどの観点から、転勤の必要性は 厳しく吟味されるべきという声も高まってきています(大内伸哉「キーワードからみた労働法」、日本法令「ビジネスガイド」2019年9月号掲 載)。

◆厚生労働省も転勤見直しを促進

自社の転勤のあり方を吟味する際の手引きとして、厚生労働省が下記資料を公表しています。AIG社のように全面廃止するだけでなく、雇用管 理の類型ごとの運用メニューとするなど、いくつかの例が示されています。

古くて新しい転勤問題。いまいちど、自社制度の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

【厚生労働省雇用均等・児童家庭局「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」(平成29年3月30日)】
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11903000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Shokugyoukateiryouritsuka/0000160191.pdf


賃金等請求権の消滅時効 見直しに向け審議始まる (2019/08/01)


◆7月1日に検討会報告書公表

厚生労働省の賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会は、7月1日、報告書を公表しました。この報告書は、現在一律2年とされている 賃金や年休に関する権利等について、改正民法において短期消滅時効に関する規定が整理されたことを受け、どのように見直すべきか方向性を示し たものです。

◆改正民法で消滅時効はどう変わる?

改正民法施行後は、①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または②権利を行使することができる時 から10年間行使しないときに時効消滅することとなります。

現行の労働基準法115条では、「賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5 年間行わない場合においては、時効によって消滅する」と規定されているため、改正民法に合わせた場合、未払い賃金訴訟や年休の繰越し等で企業 実務に大きな影響を及ぼすため、改正民法とは別に、検討されてきました。

◆対象により異なる見直し案を提示

報告書は、賃金請求権について、「2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要」としています。未 払い賃金訴訟等で使用者に支払いが命じられる付加金についても、併せて検討することが適当、とされています。

さらに、労働者名簿や賃金台帳等、3年間の保存義務が課される記録の保存についても、併せて検討することが適当、とされています。

なお、年休については賃金と同様の取扱いを行う必要性がないとして、2年を維持する案が示されています。

◆2020年4月から改正される可能性も?

見直しの時期については、改正民法が2020年4月1日から施行されるのを念頭に置いて速やかに労働政策審議会で検討すべきとされており、 今秋から議論が始まります。既に経過措置に関する案も2つ示されており、今後の動向が注目されます。

今春から施行された改正労働基準法により労働時間管理の厳格化が求められているところですが、賃金等請求権の消滅時効が改正されれば、万が 一未払い賃金が生じたときに重大な影響があるため、自社で適切な管理がなされているかを改めてチェックし、不安な点があれば専門家に相談する 必要があるでしょう。


令和2年1月から労働社会保険の届出がワンストップで可能に (2019/08/01)


◆届出の契機が同じものは1回で

労働社会保険手続のルールが変わります。健康保険、厚生年金保険、雇用保険等の適用事務に係る事業主の事務負担の軽減および利便性の向上の ため、健康保険法等に基づく手続きのうち届出契機が同一のものを一つづりとした届出様式(「統一様式」)を設け、統一様式を用いる場合はワン ストップでの届出が可能となります。
現在、令和2年1月1日の施行に向けて省令の整備が進められています。

◆改正の内容

次の1~4に掲げる届書については、届出契機がそれぞれ同一であることから、同一の契機で届出を要する届書の届出先を経由して届出できるも のとされます。

  1. 健康保険法および厚生年金保険法に基づく「新規適用届」、雇用保険法に基づく「適用事業所設置届」並びに労働保険の保険料の徴収等に 関する法律に基づく「労働保険関係成立届」
  2. 健康保険法および厚生年金保険法に基づく「適用事業所廃止届」並びに雇用保険法に基づく「適用事業所全喪届」
  3. 健康保険法および厚生年金保険法に基づく「資格取得届」並びに雇用保険法に基づく「資格取得届」
  4. 健康保険法および厚生年金保険法に基づく「資格喪失届」並びに雇用保険法に基づく「資格喪失届」


◆「労働保険関係成立届」に関する改正省令案を諮問

上記の届出のうち「労働保険関係成立届」に関する改正省令案が去る6月、労働政策審議会に諮問されました。

その内容は、徴収法第4条の2に規定する労働保険関係成立届について、対象事業(※)の事業主が、健康保険法および厚生年金保険法上の「新 規適用届」または雇用保険法上の「適用事業所設置届」に併せて提出する場合においては、年金事務所、労働基準監督署または公共職業安定所を経 由して提出することができるものとする、というものです。

※本省令改正により、年金事務所、労働基準監督署または公共職業安定所を経由して届け出ることができる事業は、一元適用の継続事業(個別) とされます。
この場合において、事業主が提出する概算保険料申告書についても同様に、年金事務所、労働基準監督署長または公共職業安定所長を経由して提出 することができるものとされます。なお、今回省令案が公表されたのは保険関係成立届のみでしたが、これ以外の適用事業所の設置・廃止の届出、 被保険者資格の資格・喪失の届出についても来年1月の施行に向けて順次公表されると思われます。効率化の波に乗り遅れないようにしたいです ね。


副業制度をどうしますか? (2019/08/01)


◆骨太方針にも明記された副業・兼業の促進

政府がまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太方針)にも、副業・兼業の促進に関して、労働時間の把握・通算に関する現行 制度の適切な見直しについて明記されています。副業・兼業が珍しいものでなくなる時代が、すぐそこまで来ているようです。

いくつかの調査結果から、企業側・従業員側の現状・意向が垣間見られます。

◆従業員側の現状・意向

2019年度の新入社員は、会社に副業制度があった場合、64.0%が利用したいまたはどちらかといえば利用したいと考えているようです (産業能率大学総合研究所「2019年度新入社員の会社生活調査」)。

また、有職者の58.1%が、副業をしている・したいとの調査結果もあります(インテージリサーチ「副業に関する意識調査」)。なお、この 調査はアンケートモニターやネットオークション等のどちらかというと軽い副業も含まれているようです。具体的に副業や副収入を得ることを意識 した活動を実際にしている人が約19%、今後してみたいと思っている人が約40%ですので、まだそれほど実際に副業をしている人は少ないよう です。

◆企業側の現状・意向

一方、副業制度の導入状況は、約8割の企業が未導入だとしています。制度のある企業でも利用率が50%以下となっている企業が9割を占める ようです(産業能率大学「2019年中小企業の経営施策」)。現状では、人材不足で本業で手一杯というところでしょうか。

また、別の調査(パーソル総合研究所「副業実態・意識調査結果(企業編)」)では、副業を認めている企業(条件付きを含む)も、全面禁止と している企業もそれぞれ50%となっています。副業を許可している企業でも、ここ3年以内に許可を開始した企業が52%となっており、副業許 可の動きが増加傾向にあることがわかります。

さらに、副業を全面許可した企業では、条件付きでの許可よりも会社へのロイヤリティ、本業のパフォーマンスが高まることがわかり、メリット は大きいとしています。

そうしたメリットは、会社による副業時間の把握、副業のやり方等についてのアドバイス、社内ツールを使用した全社への共有を行うことで効果 が高まるという結果が出ており、従業員任せではなく、企業が積極的に対策を行い、副業をバックアップすることが重要なようです。


マイナンバーカードの普及・利活用の促進と企業実務への影響 (2019/07/02)


◆政府の方針

6月4日のデジタル・ガバメント閣僚会議で、「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」が公表されました。そ の柱は下記の4点です。

  1. 自治体ポイントの活用(令和2年度;消費活性化策)
  2. マイナンバーカードの健康保険証利用(令和3年3月から)
  3. マイナンバーカードの円滑な取得・更新の推進等
  4. マイナンバーカードの利便性、保有メリットの向上、利活用シーンの拡大

このうち企業の実務に影響があるのは、2の健康保険証利用です。

◆健康保険証への利用実現へ向けて

マイナンバーカードを健康保険証として利用することにより、①医療の質の向上、②被保険者の利便性の向上が期待されますが、環境整備も必要 です。医療機関側でマイナンバーカード利用のための端末、システムを整備するための支援が検討課題です。

保険者からも円滑な移行を促すため、保険者から事業主、加入者等へのマイナンバーカード取得要請とそのフォローアップを行うとともに、保険 者による被保険者のマイナンバーカードの初回登録の促進を図るとされています。

◆企業の総務事務の効率化を促進するための方策

マイナンバーカードの健康保険証利用は、企業の健康保険に係る事務のコスト縮減につながることが期待されます。さらに、マイナンバーカード の民間活用等を通じて社員の健康管理への活用等が促進されるよう、モデル事業等を行うとされています。

また、マイナンバーカードの社員証等の各種証明としての活用が促進されるよう、利用手続の簡素化等を実施するとともに、令和2年11月頃よ り、企業が行う従業員の社会保険・税手続のワンストップ化を開始できるよう取組みを推進します。
あわせて、令和2年4月より、情報システムに係る調達等において、マイナンバーカードの普及実績等を評価する仕組みを導入します。

◆社会保険・税手続きのワンストップ化の流れ

政府の報告によれば、従業員の採用、退職等のライフイベントに伴う社会保険・税手続きについては、①令和2年11月からマイナポータルを通 じたオンライン・ワンストップ化を開始し、②令和3年度後半から、企業が保有する情報のクラウドを活用した提出の実現を目指すとされていま す。マイナンバーカードの普及はそれに向けての重要な役割を担っており、情報漏洩のない安全な運用が期待されます。


職場におけるハラスメントの実態の連合調査から (2019/07/02)


連合は、国際労働機関(ILO)の総会で「仕事の世界における暴力とハラスメント」に関する条約案が採択されるよう、日本政府に条約案の支持 と採択後の批准を求めていますが、このたび、職場や就職活動におけるハラスメントの実態を把握して条約の必要性をアピールするため、「仕事の 世界におけるハラスメントに関する実態調査2019」をインターネットリサーチにより実施しました(対象は全国の20 歳~59 歳の有職者1,000 名)。その調査結果の一部を紹介します。

◆ハラスメントの有無

「職場でハラスメントを受けたことがある」と答えたのは全体の38%。決して少なくない数です。そして、そのうちの54%が「仕事のやる気 がなくなった」と回答しています。また、22%が「心身に不調をきたした」、18.9%が「仕事を辞めた・変えた」と答えています。

◆ハラスメントの種類

「受けたことのあるハラスメントの内容」については、「脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言などの精神的攻撃」が最も多く41.1%、「業務 上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害などの過大な要求」が25.9%等、パワーハラスメント(以下、パワハラ)に該当 しうる行為を受けたという人が散見されました。「セクシャル・ハラスメント」(以下、セクハラ)は26.7%で、男性よりも女性のほうが高 く、女性の約4割が受けたと答えています。

◆ハラスメントの相手

“上司”からのハラスメントで多いのは、「脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言などの精神的攻撃」が最も多く28.1%、“同僚”からのハラ スメントは、「人間関係からの切り離し」が19.4%と最も高くなりました。また、“取引先”からのハラスメントでは、「セクハラ」が 28.1%、“顧客”からのハラスメントでは、「精神的な攻撃」が23.3%で最も高くなりました。

◆ハラスメントを受けた時の相談相手

ハラスメントを受けた時、56%が誰かしらに相談していて、その相手として多いのが、「職場の上司・先輩」(23.7%)、「職場の同僚」 (18.1%)、となっています。一方で、ハラスメントを受けたことのある人の半数近くが「誰にも相談しなかった」と回答していますが、その 理由は、「相談しても無駄だと思ったから」が圧倒的の67.3%でした。

◆就職活動中におけるセクハラ

就職活動を行った人(835名)への就職活動中にセクハラを受けたことがあるかという質問に対しては、89.5%が「受けたことはない」と の回答でした。「受けたことがある」10.5%のうちでは、20代男性が最も多く、5人に1人の割合であることがわかりました。

また、セクハラの内容としては、「性的な冗談やからかい」(39.8%)、「性的な事実関係(性体験など)の質問」(23.9%)、「食事 やデートなどへの執拗な誘い」(20.5%)となっています。「性的な冗談やからかい」は、主に“人事担当者”から受け、「食事やデートへの 執拗な誘い」や「性的な関係の強要」といったハラスメントは、“OB・OG”から受けたとの回答が目立ちました。

条約の行方はともかく、ハラスメントへの対策は、当事者が傷つくばかりではなく、企業イメージを損ね、採用や人材定着にも影響を与えるもの です。企業にも一層の気遣いが求められるところです。


男性の育児休業取得率とパタハラ (2019/07/02)


◆育児休業取得率、女性は高水準・男性は低調

厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」により、最新の育児休業取得率(調査対象事業所における、出産者(男性の場合は配偶 者が出産者)のうち育児休業を開始した者の割合)が判明しました。

女性の取得率は82.2%で、10年以上高水準で安定しています。その一方、男性の取得率は6.16%ということで、6年連続で上昇しては いますが、依然としてきわめて低調です。

◆男性の育児休業を促進する動き

そのような中、6月5日、自民党の有志議員が「男性の育児休業義務化」を目指す議員連盟の設立総会を開きました。議連は、本人からの申請が なくても、企業から「育児休業を取らないのか」と促すことを義務付ける仕組みの制度化を目指すとし、育介法の改正などを視野に活動するとして います。

◆パタハラ疑惑で炎上する企業

おりしも、大手化学メーカーにおいて、パタニティ・ハラスメント(男性の育休取得者への嫌がらせ)疑惑が取りざたされています。報道等によ れば、ある男性社員が約1カ月弱の育児休業休職を取得したところ、職場復帰した翌日に転勤を命じられ、その後の転勤時期をずらす交渉等もまと まらず、退職を余儀なくされたといいます。男性の妻が、社名をほのめかした発信をTwitter上で行い、またたく間に社会問題化してしまい ました。

同社は「くるみん」(厚生労働省による子育て支援に積極的な企業への認定マーク)を取得していたため、前述の議連からも「くるみんを取得し ていても、あのような事例があったのは残念」と名指しでコメントされる等、望ましくない事態となっています。

◆違法性がなければよい、とは限らない

法律上、使用者は「労働者の子の養育(略)の状況に配慮しなければならない」(育介法26条)とされていますし、必要性のない配置転換であ れば「権利の濫用」(労契法3条5項)とみなされる恐れもあります。また、違法性がないとしても、ハラスメント行為と世間からみなされること となれば、上記化学メーカーのように大きなイメージダウンとなり、企業活動にも支障をきたすことでしょう。

法律の正しい理解と、マタハラ・パタハラを生まない職場づくりが大切です。

【厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05049.html


「有給休暇の取得義務化」企業の反応は?~エン・ジャパン調査 (2019/06/02)


4月1日から、10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者に対して「年5日の有給休暇の取得義務化」が始まりました。エン・ジャパン株 式会社は、同社の人事向け総合情報サイト「人事のミカタ」上で、2月から3月にかけて、「有給休暇の取得義務化」についてアンケート調査を行 いました。その概要は以下のとおりです。

◆有給休暇の取得義務化の認知度は9割以上。4社に1社が義務化に否定的

有給休暇の取得義務化の認知度を伺うと、96%が「知っている」(内容も含めて知っている:63%、概要を知っている:33%)と回答しま した。

有給休暇の取得義務化についての印象を伺うと、「良いと思う」が73%(非常に良いと思う:23%、まあ良いと思う:50%)、「良くない と思う」が26%(あまり良いと思わない:21%、良くないと思う:5%)と、4社に1社が否定的に感じていることがわかりました。

◆7割が「有給休暇の取得を促進している」と回答。業種は「金融」「商社」

「IT」。一方、促進していないのは「広告」「流通」「不動産」。
「現在、有休取得を促進していますか?」と伺うと、「促進している」が70%でした。取得を促進している業種トップ3は「金融・コンサル関 連」(100%)、「商社」(79%)、「IT・情報処理・インターネット関連」(77%)でした。一方、取得を促進していないのは「広告・ 出版・マスコミ関連」(36%)、「流通・小売関連」(34%)、「不動産・建設関連」(27%)でした。また、企業規模別では他に比べ、 「100~299名」(28%)が目立ちました。

有休取得を促進する理由を伺うと、「社員の満足度向上のため」(67%)が最多。「有休取得の義務化の法に準拠するため」(42%)は第3 位でした。

◆有給休暇の取得義務化への課題は、「人手不足」「業務の偏り」

有休の取得義務化にあたり、難しい点や課題を伺うと、「人員不足」(65%)、「業務量が人に偏っている」(60%)が多く回答されまし た。人手不足や業務過多の状況にある企業は、義務化への対応を不安視しているようです。

また「有給休暇の取得義務化に、どう対応しますか?」と伺うと、多くが「有給休暇の計画的取得」(83%)、「有給休暇取得のための周知・ 啓発」(81%)と回答しました。

会社によっては人員に余裕がなく、もともと有給休暇を取りづらい場合があるでしょう。今回の有給休暇の取得義務化は画期的ですが、そのために サービス残業や仕事の持ち帰りが増えては意味がありません。会社ごとに業務の見直しを行ったり、各人が労働生産性を意識した行動をとったりす ることが大事ではないでしょうか。

【エン・ジャパン「有給休暇の取得義務化」実態調査】
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2019/17179.html


平成30年度の民間企業の障害者雇用状況~厚生労働省集計結果 (2019/06/02)


◆雇用障害者数、実雇用率が過去最高を更新

厚生労働省は、平成30年度6月時点の民間企業の障害者雇用状況を公表しました。集計結果によると、民間企業で雇用されている障害者数は 53万4,769.5人(短時間労働者は0.5人で計算、前年より3万8,974.5人増加)で、15年連続で過去最高を更新しました。

また、実雇用率は2.05%(前年比0.08ポイント増)で、7年連続で過去最高を更新しましたが、法定雇用率(2.2%)を達成した企業 の割合は45.9%(前年比4.1ポイント減)でした。

なお、平成30年4月施行の改正障害者雇用促進法により、民間企業の障害者雇用の対象が従業員数「50人以上→45.5人以上」、法定雇用 率が「2.0%→2.2%」に拡大され、算定の対象に「精神障害者」が追加されました。

◆障害種別、企業規模別の状況

障害種別にみると、身体障害者は34万6,208人(前年比3.8%増)、知的障害者は12万1,166.5人(同7.9%増)、精神障害 者は6万7,395人(同34.7%増)でした。特に精神障害者の雇用者数が大幅に伸びています。

また、企業規模別にみても、45.5人~50人未満、50人~100人未満、100人~300人未満、500人~1,000人未満、 1000人以上、すべての企業規模区分で障害者雇用者数が前年より増加しました。

しかしながら、企業規模別の実雇用率は、全体の実雇用率(2.05%)に到達している企業は500人~1,000人未満、1,000人以上 規模以上の企業規模のみとなっています。法定雇用率達成企業の割合も、すべての企業規模区分で前年より減少となりました。

◆法定雇用率未達成企業の状況

法定雇用率の未達成企業は5万4,369社(全体の54.1%)でした。また、そのうちの64.0%は不足数が0.5人または1人である1 人不足企業でした。さらに、障害者を1人も雇用していない障害者雇用ゼロ企業は3万1,439社で、未達成企業に占める割合は57.8%と6 割近くを占めています。

現在、法定雇用率未達成企業には、法定雇用率に対し不足する障害者1人につき月5万円の障害者雇用納付金の納付を義務付けています。また、 法定雇用率は、令和3(2021)年4月までにさらに「2.3%」への引上げが予定されています。企業の障害者雇用に関する関心はますます高 まっていきそうです。

【平成30年 障害者雇用状況の集計結果~厚生労働省】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04359.html


新卒採用者の3年以内の離職率、平成30年は31.8% (2019/06/02)


◆ゴールデンウィーク明けは早期離職の時期?

例年、5月の大型連休後は、新社会人など若手が新しい環境に適応できずうつ病のようになってしまう、いわゆる「5月病」の時期とされていま す。特に今年は、10日間もの連休となったため、「早期離職を考える人」「大型連休中に転職活動をした人」が例年よりも多い傾向にあったとす る一部報道も見られました。
ここでは、新卒入社3年以内の早期離職についてとりあげます。

◆平成30年間の「3年以内の離職率」推移

厚生労働省が毎年公表している「新規学卒者の離職状況」によると、新規学卒就職者(本稿では大卒のみ。以下「新卒採用者」)の3年以内の離 職率は、平成30年で31.8%でした。離職率を平成の30年間で比較すると、最も低い年で23.7%(平成4年)、最も高い年で36.6% (平成16年)となっており、年によって多少の変動はあるものの、昨年の31.8%という結果は平均値に近いものとなっています。いつの時代 も、おおむね3~4人に1人の新卒採用者が、3年以内に辞めてしまうと言えます。

ちなみに、業種別では、離職率が高い順に、宿泊業・飲食サービス業(49.7%)、教育・学習支援業(46.2%)、生活関連サービス業 (45.0%)という結果でした。

◆「3年以内の離職」の理由1位とは?

では、新卒採用者は、具体的にどのような理由で早期離職しているのでしょうか。
内閣府「平成30年版 子供・若者白書」によれば、初職の離職理由(複数選択可)として最も多く挙げられたのは「仕事が自分に合わなかったため」(43.4%)で、2位以下の「人間関係がよくな かったため」(23.7%)、「労働時間、休日、休暇の条件がよくなかったため」(23.4%)を大きく引き離す結果となりました。新卒採用 者の場合、人間関係のトラブルや労働条件よりも、「仕事(業務)のミスマッチ」が原因で辞めてしまうケースが多いようです。

この時期、自社の新卒採用者においても「仕事が自分に合わない」と感じている者がいないかどうか目を配ってみると、離職の予防につながるか もしれません。

【厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00001.html

【内閣府「平成30年版 子供・若者白書」】
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/pdf_index.html


令和に改元 人事労務・給与担当者が確認しておくべきこと (2019/05/01)


◆官庁のシステムは5月7日までに対応完了予定

4月1日に新元号が発表され、これから新しい時代が始まります。政府は、3月14日の改元に向けた関係省庁連絡会議で、年金、雇用保険、納 税等の改元に伴う作業を5月7日までに終え、国民生活に影響は出ない見通しになったと確認しました。

さらに4月2日、行政手続文書に改元日以降の年号が「平成」と書かれていても有効として受理することを閣議決定しました。

◆日本年金機構における対応

4月1日掲載の「改元に関するお知らせ」によると、通知書等が「平成」で表記されていても有効として取り扱われ、旧様式による届出も可能で す。ただし、5月1日以降の日付が「平成」で表記されている場合、可能な限り補正(訂正印不要)して提出することが求められます。

年金事務所等が4月27日から5月6日まで休所する間、電子申請プログラムのバージョン変更も行われるため、5月1日以降電子申請を行う場 合は、先に更新を行う必要があります(対象プログラム未公表)。なお、連休中も電子申請の受付はされますが、処理が行われないため、処理完了 までに時間を要します。

また、ねんきんネットは連休中の一部期間でサービス停止予定です(停止期間未公表)。

◆ハローワークのサービス停止期間

4月5日掲載の「インターネットから求人・求職仮登録等のお申込みの方へ」によると、4月25日18時から5月6日18時まで、求人情報仮 登録のサービスが停止されます。

◆源泉所得税の納付書の記載のしかた

年度欄が平成の納付書を使用する場合も、平成31年4月1日~令和2年3月末日までの間に納付する場合、年度欄には「31」と記載し、補正 は不要です。

給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)以外の納付書も同様です。

◆自社の使用するシステムも要チェック

独立行政法人情報処理推進機構によれば、改元対応をしないと、帳票印刷に不具合が出たり、日付に応じた処理がなされなくなったりするおそれ があります。他システムと連携している場合、双方が対応していないと正常に処理されなくなるおそれもあります。

元号が組み込まれたシステムのアップデート等を行い、画面表示や帳票・印字が適正かどうかを確認し、他システムとの連携に問題がないか、あ らかじめ確認しておきましょう。


出退勤時に打刻しない勤怠管理の最新動向 (2019/05/01)


◆PCの起動・終了ログなどから労働時間を予測する勤怠管理のクラウドサービス

ソフトウェア開発の株式会社ソニックガーデンは4月1日、自社が提供する月額制の“打刻レス”勤怠管理ツール「ラクロー」が、労働基準法の 「賃金台帳への労働時間記載」(同法108条および施行規則54条)と、改正労働安全衛生法の「労働時間の状況把握」(同法66条の8の3) に適合している旨、厚生労働省に確認がとれたとするプレスリリースを公表しました。

ラクローは、PCの起動・終了ログ、カレンダーの予定時刻、メールの送信時刻などから労働時間を予測する、勤怠管理のクラウドサービスで す。従来の勤怠管理と違い、従業員による「打刻」や「時刻入力」のプロセスがないのが大きな特徴となっています。同社は、4月からいよいよ施 行された働き方改革関連法にともない、ユーザーから「法が求める労働時間管理にラクローが対応しているのか」という質問が相次いでいることへ の対応としています。

◆勤怠管理(打刻)と「適正把握ガイドライン」の関係

労働時間管理における重要な指針として、平成29年1月策定の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」 (以下「適正把握ガイドライン」)があります。これにおいて、国は使用者に対し、「労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録 すること」を求めており、その方法は労働者の「自己申告」ではなく、「客観的な記録」(タイムカード、ICカードによる入退室ログ、PCの使 用時間の記録等)に基づくことを原則とするものとしています。やむを得ず「自己申告」による場合は、自己申告による時間と、入退場記録やPC 使用時間記録を基にした時間に乖離が生じているときに、実態調査と補正をすること等をしなければなりません。

前述のプレスリリースによれば、従来型の勤怠管理サービスは適正把握ガイドラインにおける「自己申告」に相当するのに対し、ラクローは「客 観的な記録」として扱われるので、労働時間管理に多大な労力を必要とせず、未払い残業代請求や残業時間上限超過など法令違反リスクもないとの ことです。

◆自社にあった勤怠管理は?

労働者を対象とした勤怠管理と打刻に関する民間調査(HR NOTE「勤怠管理に関するインターネット調査」2016年実施)によれば、「あなたの勤め先の勤怠管理方法」で多いのは「タイムカードにて打刻」26.4%、「紙の出勤 簿に記入」19.9%、「PCのWebブラウザよりログインして打刻」15.6%と、アナログな手法もまだまだ根強いようです。また、「勤怠 管理に関する不満」としては、「正確な勤怠管理ができていないように感じる」15.0%が最多の回答でした。労働者にとって、「正確な勤怠管 理」(=適正な労働時間管理把握)がされないことは、サービス残業や過重労働の温床となるおそれがあり、関心の高いところです。

ラクローのような新手法にしろ、従来の手法にしろ、法律が求める要件と従業員が求める要件の双方に対応した勤怠管理をしたいものです。

【参考】
株式会社ソニックガーデン ニュース
https://www.sonicgarden.jp/news/326


法整備も間近!企業のパワハラの実態は? (2019/05/01)


◆パワハラ法整備へ

昨今、マスコミでも大きなニュースとして取り上げられることが多い職場の「パワハラ」問題。パワハラ防止は、働き方改革の施策においても喫 緊の課題として示され、今国会でも、パワハラに関する法整備を含めた改正案が議題に上がっています。

◆ミドルの8割以上がパワハラを受けたことがある

エン・ジャパン株式会社が、転職サイト『ミドルの転職』上で35歳以上のユーザーを対象に実施した「パワーハラスメント」に関するアンケー トによると(回答:2,911名、調査期間:2018年12月28日 ~ 2019年1月31日)、「パワハラを受けたことがある」との回答が8割にも上っているそうです。実際にパワハラに当たるか否かの判断は難しいところですし、程度も様々で あると考えられますが、「パワハラを受けた」と認識している人が8割もいるというのは見逃せない数字でしょう。

◆「精神的な攻撃」、「被害を受けた相手は同性・年上の社員」が最多

同調査では、パワハラ被害の内容としては、「精神的な攻撃(公の場での叱責、侮辱、脅迫)」(66%)が最多となっており、次いで「過大な 要求(不要・不可能な業務の強制、仕事の妨害)」、「人間関係からの切り離し(隔離、無視、仲間はずれ)」が続いています。また、被害を受け た相手として最も多かったのは「同性・年上の社員」(75%)で、男女別では、女性は男性に比べ、「異性・年上の社員」(40%)が多く挙 がっています。

◆より一層求められる企業対策

株式会社アドバンテッジ リスク マネジメントが、企業・団体の担当者にハラスメントに対する取組みについて実施した調査によると、パワハラにおける対策を「実施している」との回答は全体の8割弱となって います。しかし、企業規模別の差は大きく、50人未満の企業についていえば、7割近くが「実施していない」と答えています。

パワハラ被害を受けた場合、解決策として「退職」を選ぶ人が多いそうです。人手不足の状況が続く中、離職者が増えることは企業にとって大き なリスクとなります。今後は、企業にも一層の対策が求められてくることでしょう。

【ミドルに聞く「パワハラ」実態調査~エン・ジャパン】
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2019/16367.html


約半数の企業が副業を許可~パーソル総合研究所の調査から (2019/04/01)


◆調査の概要

副業を解禁するべきかの判断材料になる情報や、副業のメリットを享受したい企業がとるべきアクションを明らかにするため、総合人材サービ ス、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームである株式会社パーソル総合研究所は、インターネット調査を通じて、副業に対 する企業と個人の意識調査の結果を公表しました。

今回は、その調査結果から注目すべき内容を取り上げてまとめます。

◆調査結果

  • 副業の許可と禁止割合

    10人以上の従業員が勤務する企業の人事担当者(1,641人)の回答によると、「全面的に許可している」が13.9%、「禁止していな い(希望者がいれば条件付で許可)」が36.1%、「全面的に禁止している」が50%という結果になっています。

 副業許可企業

  • 副業許可の開始時期

    副業許可企業に、許可を開始した時期を尋ねると、「1年以内」が22.8%、「2~3年前」が29.2%、「4~6年前」が22.8% と、働き方改革が叫ばれるようになったこの3年以内に許可を開始した企業が半数以上に上っていることがわかります。
  • 副業許可の効果

    副業許可の効果を尋ねると、「従業員の社外人脈の拡大」52.2%、「モチベーションの向上」50.3%、「スキル向上」49.7%と、 メリットを実感している割合が高く、一方で効果を感じていないとの回答は18%未満と少ないことがわかりました。

 副業禁止企業

  • 企業規模別

    副業禁止割合を企業規模別に見ると、10~100人未満の企業は43%台、100~500人未満企業で50%前後、1,000~1万人未 満企業は60%近くあります。
  • 設立年数別

    10年未満企業の副業禁止割合は36.3%と最も少なく、50年以上企業は62.1%と最も高く、歴史のある企業ほど「全面的に禁止」の 割合が高くなっていることがわかります。
  • 禁止理由

    副業禁止の理由を尋ねると、「従業員の過重労働につながるから」が49.2%と最も多く、「自社の業務に専念してもらいたいから」が 47%、「疲労による業務効率の低下が懸念されるから」43.6%となっています。

副業禁止が何となく染みついている時代ですが、この調査によると、半数が副業を認めている(条件付許可も含む)実態がわかります。しかも、 全面的に副業を許可している企業のほうが、社員のスキル向上やモチベーションのアップといったプラスの効果を感じているという結果も出ていま す。今後は、コンプライアンスやリスク回避もしっかり踏まえて、今後ますます広がる“多様な働き方”に対応していく必要があるでしょう。


障害者雇用をめぐる最近の動き (2019/04/01)


◆平成30年4月からの障害者雇用率制度

すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。この法定雇用率が、平成30年4月1日から次のように変わっ ています。民間企業2.0%→2.2%。国、地方公共団体等2.3%→2.5%。都道府県等の教育委員会2.2%→2.4%。

◆平成30年12月公表の「平成30年国の機関等における障害者雇用状況の集計結果」

例年、一般事業主、国、地方公共団体及び独立行政法人等は、6月1日時点の障害者雇用の状況を報告しなければならず、それを受けて12月に 厚生労働省から「障害者雇用状況の集計結果」が公表されます。平成30年12月の公表では、「国の機関等における障害者雇用状況の集計結果」 とされ、民間企業についての記述はありませんでした。民間企業については、データ入力のための作業ツールの不具合により、平成31年3月末ま でに公表する予定とされています。

12月の集計結果によると、行政や司法など国の機関での2018年6月時点の障害者雇用率が1.22%でした。法定雇用率の2.5%を満た すには計算上で約4,300人不足し、8割以上の機関が基準を達成していませんでした。障害者雇用については、国や地方自治体の機関で水増し が相次いで発覚し、各機関が法定雇用率の達成に向け採用を急いでいます。

◆障害者雇用率未達成の省庁は予算減額

民間企業では、障害書雇用率を達成すると、超過人数1人につき月2.7万円の調整金が支給されます。一方、未達成の場合は、不足人数1人に つき月5万円の納付金が徴収されます。このペナルティーが民間企業だけにあり、国等の機関にないのは不公平だとの批判が以前からありました。

政府は来年度から、法定雇用率を達成できなかった省庁の予算を減額する方針を決めました。国の機関では不足1人につき、翌年度の予算から 60万円を減額します。減額対象の予算項目は備品購入などに充てられる「庁費」とします。

◆障害者手帳のカード化、自治体判断で4月から

厚生労働省は、以前から障害者手帳をカード化する方針を打ち出していましたが、この4月にも省令を改正し、各自治体の判断で障害者手帳や精 神障害者保健福祉手帳をカード化できるようにする方針を決めました。現在の身体障害者手帳は縦11.4センチ、横7.5センチで、「持ち運び しにくく、劣化しやすい」など、障害者などからカード型に変更するよう求める声がありました。カード型の手帳は耐久性のあるプラスチックなど の素材を利用し、運転免許証やクレジットカードと同じ大きさにします。また、カードに氏名や住所、障害の度合いなどを記載します。


一般化するリファラル採用と、その留意点 (2019/04/01)


◆「リファラル採用」とは

リファラル採用(referral recruiting)をご存知でしょうか。いわゆる縁故採用の一種で、「自社従業員に、採用候補者を紹介してもらう採用(制度)」をいいます。

◆最新調査結果

株式会社リクルートキャリア「リファラル採用で声をかけられた人の実態調査」によれば、「リファラル採用の制度がありますか」という質問に 対し、「制度があり、推進している」が48%、「制度があるが、推進していない」が23%と、回答企業の7割以上で社内制度化されています。

ほかにも、「知人の会社に誘われた人のうち、実際に選考を受けた人」が54.8%にのぼるなど、広く行われている結果となりました。「リ ファラル採用」という言葉が広まったのは最近のことですが、従業員(以下「紹介者」)の紹介による採用は、珍しいことではありません。

◆リファラル採用のメリット

企業にとっては、リファラル採用のメリットとして、「採用のミスマッチが起こりにくい」(紹介者が詳細に企業説明をするため)、「定着率が 高い」(紹介者による入社後のアフターフォローのため)、「採用コストが低い」、「通常の採用活動では応募しないような人材を採用できる」、 などが挙げられます。

一方、デメリットとしては、「不採用とした場合の、人間関係悪化」、「紹介者が退職した場合の、採用者の意欲低下」などが懸念されることが あります。

◆紹介者へのインセンティブの相場

採用に至った場合、紹介者にインセンティブ(成功報酬)を支払う場合もあります。
エン・ジャパン株式会社「リファラル採用(社員紹介)意識調査」によれば、リファラル採用実施企業の44%が、紹介者へインセンティブを支給 しています。また、その支給額は「3万円から10万円」が最多(52%)とのことです。

◆インセンティブ支給の留意点

紹介者にインセンティブ支給の際は、「賃金として支払う必要がある」点に留意しましょう。「被用者で当該労働者の募集に従事するもの」に 「賃金、給料その他(略)報酬」以外を支払うことは、職業安定法40条(報酬の供与の禁止)違反となるからです。

リファラル採用を社内制度化するにあたっては、労働局等に相談のうえで、就業規則や賃金規程に明文化するとよいでしょう。
【参考】

リクルートキャリア「リファラル採用で声をかけられた人の実態調査」
https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2018/181101-01/

エン・ジャパン「リファラル採用(社員紹介)意識調査」
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2017/11266.html



人手不足問題への対応、どうしますか? (2019/03/03)


◆人材不足を実感している企業が9割

企業の「人手不足」の問題については、しばしば新聞やテレビでも報道されるところですが、自社の状況はいかがでしょうか?

エン・ジャパン株式会社が実施した2019年の「人材不足の状況」についてのアンケート調査(762社から回答)によると、「人材が不足し ている部門がある」と回答した企業が9割という結果だったそうです。これは、2016年の調査に比べ、5ポイント上昇した数字となっており、 3年前よりも人材不足感が増していることが伺えます。

◆人手不足への対応策は?

では、人手不足を実感している会社では、どのような対策を講じているのでしょうか。
同調査では、人材不足の状況への対応策についても聞いており、86%が「新規人材の採用(欠員の補充)」と答えています。次いで「既存の業務 を効率化する(ICT化、標準化等)(35%)、既存社員の教育、能力向上(30%)、社員のモチベーション向上のため、処遇見直し (18%)と続いています。

調査結果でも、「新規人材の採用」を解決策として挙げた会社が多かったようですが、最近は、「高齢者雇用」「外国人雇用」「仕事を離れてか らブランクのある女性の雇用」など、これまで採用市場に多くなかった人材の積極採用に目を向ける企業も増えているようです。

◆「新規人材の採用」以外の解決策も

また、今後避けられないであろう人口減少、労働力人口減少の流れの中では、「今いる人材が離職しないこと」「業務の効率化」は、どうしても 検討しなければならないテーマとなっています。

社員の納得感を増すために処遇制度を見直したり、職場環境を改善するため社内コミュニケーションを活性化させたりするなど、すでに人材確保 のための積極的な取組みを始めている企業も少なくありません。

◆人材確保のために今から対策を

人手不足の問題は、今後企業ごとに工夫を凝らして解決していかなければならないテーマとなっています。人材獲得競争の波に乗り遅れないよう に、今から検討していく必要があるでしょう。
 

マネージメントと「文書」の大切さ (2019/03/03)


◆マネージメント力が問われる傾向

厚生労働省は、平成31年度からの新事業として、企業のマネージメント力を支える人材育成強化プロジェクト事業(仮称)を行うとしていま す。

具体的には、マネージメント力向上のためのモデルカリキュラムの開発を進め、企業の教育訓練の実施を総合的に支援するセミナー等を行うとい うことです。昨今、セクハラ、パワハラ、情報セキュリティなどに端を発する不祥事が顕在化しており、労働・職場環境の悪化や、生産活動の停止 等により、企業の生産性に悪影響を与える場合も生じている現状を踏まえて実施するものです。

◆文書の重要性

マネージメント力向上は、国としても取り組む企業の課題となっていますが、日頃の労務管理方法としては、やはり文書でのやりとりが重要で しょう。

テクノロジーが発達したとはいえ、人間同士の問題に対しては目に見える文書とともに注意・指導等を行うのが、一番「響く」と思われますし、 文書を残しておけば、万が一裁判になった場合などにも会社側の主張を立証する証拠ともなります。

◆状況に合わせた見直しが必要

懲戒処分を通知する文書でも、けん責、減給、懲戒処分通知書、諭旨退職、管理不行届きだった管理者への処分など、それぞれ内容も書きぶりも 違ってきます。

また、最近の裁判では、例えば問題社員の行動に対して注意・指導書を発しているだけではダメで、面談等による実際的な指導も必要と判断され るようになってきているようです(問題社員と接するのは嫌だという担当者の心情も理解できますが)。

さらに、SNSの使用等に関する注意・警告のための文書など、新しい文書も必要となってきていますので、自社の文書や労務管理の実態が、世 の中の状況に対応しているか見直してみる必要があるかもしれません。

◆わかりやすい文書を書くには

また、日常業務に使う文書(年末調整用の書類提出のお願いなど)も、わかりやすさを意識することで、従業員の会社・管理部門に対する印象は 随分と変わってきます。役所や国が出した情報の丸写しは、間違いがないかもしれません。しかし、従業員が理解しにくいようでは、結局きちんと 読まれずに、ミスや手戻りにつながってしまいます。伝わる文章を書くコツは、「小学生にもわかるように」書くことだそうです。意識して変えて みるとマネージメントの改善にもつながるでしょう。
 

「健康経営」――他社はどのような取組みを行っているのか? (2019/03/03)

東京商工会議所から「健康経営に関する実態調査 調査結果」が公表されています。健康経営については大分認知されてきているかと思いますが、他社はどういった取組みしているのか、その効果のほどはどうなのか、気になると ころかと思います。今回はこの調査結果から、その実態を見てみます。

◆おさらい~健康経営とは?

従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法。企業理念に基づいて、従業員等への健康投資を行うことで、従業員の活 力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に行政向上等につながると期待されています。

◆「健康経営」で実践している(実践の予定がある)具体的な取組み

1位:健診・検診(健康診断受診率100%、人間ドックの費用負担等)
2位:労働時間等の適正化(ノー残業デイの設置や有休取得の推奨等)
3位:禁煙・分煙(事業所内の完全禁煙や禁煙の推奨等)
4位:スポーツイベントの実施(ウォーキング大会等の社内イベントの実施、ラジオ体操の実施等)
5位:メンタルヘルス(産業医や保健師との面談実施、メンタルヘルスチェックの実施等)
6位:ストレスチェック(ストレスチェックの実施、そのフォローアップ等)
7位:職場環境改善(希望者へ椅子としてバランスボールを支給、事業所内に健康器具や血圧計の設置等)
8位:健康企業宣言(健康企業宣言への参加)

◆健康経営に取り組むにあたり、その効果として魅力に感じているもの

1位:従業員満足度の向上(従業員の定着率の向上など)
2位:従業員の健康意識の高まり
3位:生産性の向上(作業効率の向上)
4位:業績の向上
5位:社内のコミュニケーションの活性化
6位:労働時間の適正化、有休取得率増加
7位:企業ブランドイメージの向上(採用活動への影響など)
8位:メディア等への露出の増加

※調査の概要等については、下記をご覧ください。
https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1013694


「毎月勤労統計」不適切調査で過少給付延べ1,973万人、567億円 (2019/02/03)


◆昨年12月に発覚、2004年から

厚生労働省の「毎月勤労統計」の調査手法が誤っていたことが失業給付などの過小給付につながったとして、大きな問題になっています。

毎月勤労統計は、従業員の給与の変化などを把握する目的で実施されています。調査対象は、全国の従業員5人以上の事業所。5~499人の事 業所は無作為に抽出し、500人以上の事業所はすべてで、合わせて約3万3,000事業所となります。

厚生労働省は、調査を都道府県を通じて実施していますが、15年前の2004年から、東京都内の従業員500人以上の事業所については3分 の1程度しか調査していませんでした。その理由や調査した事業所の選び方は明らかにされていません。

問題が発覚したきっかけは、昨年12月、厚生労働省の担当職員が総務省の統計委員会の打合せで「東京以外の地域でも従業員500人以上の事 業所について抽出調査を実施したい」と発言したことだとされています。これにより重大なルール違反だとの声が上がり、問題が表面化しました。

◆雇用保険や労災保険で過小給付

規模の大きな事業所は給付水準が高い傾向にあります。このため、多くの事業所を調査していなかったことで、統計の平均給与額が本来よりも低 く算出されました。

この統計結果が雇用保険や労災保険を給付する際の算定根拠になっていることから、給付水準が押し下げられてしまいました。担当職員らは不適 切な調査と認識しながら、組織全体で情報を共有していませんでした。

過少給付の対象者は延べ1,973万人で、総額は537.5億円に上ります。政府は、過少給付のあったすべての対象者に不足分の追加給付を 行います。

厚生労働省によると、過少給付で最も多かったのは、失業などの雇用保険で、延べ約1,900万人に計約280億円。休業補償などの労災保険 でも延べ約72万人に計約241.5億円となりました。ほかに、船員保険で約1万人に計約16億円の過少支給がありました。追加給付の1人当 たりの平均額は、雇用保険で約1,400円で、労災保険の年金給付では約9万円に上ります。

国庫負担分の積み増しのため、政府は平成31年度予算案の閣議決定をやり直します。

根本厚生労働大臣は記者会見し、「極めて遺憾であり、国民の皆様にご迷惑をおかけしたことを心よりおわび申し上げる」と謝罪。国の統計制度 を所管する石田真敏総務相は会見で「再発防止に向け、具体策を検討するよう事務方に指示した」と述べました。


「過半数代表」に注意!~労働政策研究・研修機構の調査より (2019/02/02)


◆労使協定と過半数代表

労働組合の組織率は年々低下傾向にあるようですが、働き方改革法の成立・施行に伴い、労使協定の重要性が増す中、「過半数代表」については 注意が必要です。

36協定等の労使協定を締結する場合は、その都度、過半数組合か、過半数組合がない場合は過半数代表者との書面による協定が必要ですが、こ の度、「過半数労働組合および過半数代表者に関する調査」((独)労働政策研究・研修機構)の結果が公表されました。

◆「労働組合は1つ」が9割以上

この調査に回答した7,299事業所のうち、労働組合のある事業所(全体の12.6%)の93.8%は、組合が1つでした。2つ以上と回答 したのは6.1%です。また、過半数組合があるのは65.5%となっています。

◆「過半数代表」の選出状況

調査によると、過去3年間に、「過半数代表者を選出したことがある」事業所は43.1%、「過半数代表者を選出したことがない」事業所は 36.0%、「不明(選出したことがあるか分からない)」が10.1%であったとのことで、中には問題があるケースもありそうです。

「過半数代表(事業場における過半数労働組合または過半数代表者)」が「いる」のは全体の51.4%、「いない」が36.0%。事業所規模 別にみると、「過半数代表」がいる割合は、「9人以下」35.7%、「10~29人」69.5%、「30~99人」85.5%、 「100~299人」92.7%、「300~999人」94.3%などと、やはり規模が小さいと割合が低くなっています。

◆選出方法にも問題が…

過半数代表者を選出したことがある事業所における選出方法についての回答は、「投票や挙手」が30.9%となる一方、「信任」22.0%、 「話し合い」17.9%、「親睦会の代表者等、特定の者が自動的になる」6.2%、「使用者(事業主や会社)が指名」21.4%などとなって おり、問題のある事業所があるようです。過半数代表者は、労使協定の締結等を行う者を選出することなど、その目的を明らかにして実施される投 票、挙手等の方法による手続きにより選出された者である必要があります。

また、過半数代表者の職位について、「課長クラス」、「部長クラス」、「工場長、支店長クラス」、「非正社員」といった回答があり、こちら も問題があるようです。過半数代表者は、監督または管理の地位にある者でない必要があるからです。

適正な過半数代表者を選出していないことが労働基準監督署の調査などで判明すると、締結した労使協定等自体が無効なものとされてしまい、是 正勧告や訴訟に大きな影響があります。今後、労働基準監督署によるチェックがさらに厳しくなることは確実と思われますので、再確認しておく必 要があるでしょう。

【(独)労働政策研究・研修機構「過半数労働組合および過半数代表者に関する調査」】
https://www.jil.go.jp/institute/research/2018/186.html


存在が認知されていないことも! 「産業医」、活用できていますか? (2019/02/02)


◆労務管理上の課題解決の要となる「産業医」

2016年の改正がん対策基本法により、企業はがんに罹患した労働者の就労への配慮が求められています。また、2017年に閣議決定された 「経済財政運営と改革の基本方針2017」(骨太の方針)では、働き方改革の1つとして、「治療と仕事の両立推進」が盛り込まれました。現 在、病気になった労働者の就労継続は、労務管理上の大きな課題となっています。

両立の推進を行う上では、労働者を中心として、事業場(事業者、人事労務担当者、上司・同僚等、労働組合、産業医)、医療機関(主治医、看 護師、医療ソーシャルワーカー等)、地域の支援機関(産業保健総合支援センター、保健所、社会保険労務士等)といった関係者が連携することが 望まれます。中でも産業医は、労働者と事業者の間に立つ存在として、関係者間の調整機能を果たすことが求められる、重要性の高い存在です。

◆働く患者の75%が「産業医」の存在を知らない!

しかし、アフラック生命保険会社の調査で、企業における産業医の認知度・活用度は非常に低いことがわかりました。

同社の「がんと就労に関する意識調査」結果報告(2018年11月1日発表)によると、調査対象中、産業医を有すると推定される規模の企業 に勤めている患者は65%と推定されるところ、「産業医がいる」と認知しているのは約25%にとどまりました。また、経営者においても、産業 医または産業保健総合支援センターに相談していない経営者が約70%、がん患者の就労相談についても話し合ったことがない経営者が約60% と、産業医を活用することができていません。

◆「治療と仕事の両立支援」のために

病気になった労働者の就労継続には、産業医が関与することが効果的とされています。産業医について、その存在、日常的な健康管理や両立支援 の要であることを労働者に周知するとともに、企業としても活用を図っていくことが大切です。産業医と上手に連携して、「治療と仕事の両立支 援」に取り組んでいきましょう。


平成30年「高年齢者の雇用状況」集計結果より (2019/01/05)


◆平成30年「高年齢者の雇用状況」

厚生労働省が平成30年「高齢者の雇用状況」(6月1日現在)を公表しました。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安 定法)では65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」「定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(高年 齢者雇用確保措置)を講じるよう義務づけており、毎年6月1日現在の高年齢者の雇用状況の報告を求めています。今回の集計結果は、この雇用状 況を報告した従業員31人以上の企業15万6,989社の状況をまとめたものです。

◆定年の引上げによる措置を講じる企業が微増

調査によると、65歳まで雇用確保措置のある企業は全体で99.8%となっています。内訳としては、「定年制の廃止」が2.6%(変動な し)、「定年の引上げ」が18.1%(1.0ポイント増加)、「継続雇用制度の導入」が79.3%(1.0ポイント減少)となっており、定年 制度よりも継続雇用制度により雇用確保措置を講じる企業の比率が圧倒的に高い状況が読み取れますが、わずかながら定年の引上げを講じる企業が 増加している様子も読み取れます。また、65歳を定年とする企業は全体で16.1%(0.8ポイント増加)、中小企業で16.8%、大企業で 9.4%となっています。

◆66歳以上働ける制度のある企業は約28%

66歳以上働ける制度のある企業は全体で27.6%(中小企業28.2%、大企業21.8%)に上っています。希望者全員が働ける制度に限 ると10.6%になります(中小企業11.4%、大企業3.5%)。また、70歳以上働ける制度のある企業は全体で25.8%(中小企業 26.5%、大企業20.1%)、定年制の廃止企業は2.6%(中小企業2.9%、大企業0.5%)となっており、人手不足が深刻な中小企業 では特に、高齢者の雇用に関する意欲が高いことがうかがえます。

◆政府は70歳まで雇用継続へ法改正を検討

政府は11月26日に行われた未来投資会議で、雇用の継続を企業に求める年齢を現在の65歳から70歳へ引き上げるために高年齢者雇用安定 法の改正を目指すとしています。雇用継続は定年延長や再雇用制度の導入だけでなく、別の企業で働き続けるといった他の選択肢を盛り込むことも 検討するとしています。高年齢者の雇用に関する措置については、さらなる検討が必要でしょう。

【厚生労働省「平成30年「高年齢者の雇用状況」集計結果」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000182200_00002.html


悪質なクレームはハラスメント! 企業向け対策指針、策定へ (2019/01/05)


◆悪質クレームはハラスメント

顧客や取引先から従業員への悪質なクレーム(「クレームハラスメント」「カスタマーハラスメント」などとも。以下「悪質クレーム」といいま す)が社会問題となっています。企業向けの悪質クレーム対応マニュアルがベストセラーとなっていますし、報道を目にする機会も増えています。

◆悪質クレームに関する調査結果

UAゼンセン「悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査分析結果」(2018年9月公表)によると、「業務中に来店客から迷惑行為に遭 遇した」従業員は70.1%とのことです。迷惑行為の内訳(複数回答)では、「暴言」が最多の66.5%で、以下「何回も同じ内容を繰り返す クレーム」(39.1%)、「権威的(説教)態度」(36.4%)などとなっています。

注目すべきは、迷惑行為を受けた従業員の91.3%がストレスを感じているほか、「精神疾患になった」という回答もあった点です。同調査 は、対象に離職した人が含まれていないため、悪質クレームにより精神疾患を患ったり離職したりした人は潜在的に少なくないとしています。悪質 クレームには、従業員を疲弊させ、休職や離職をさせてしまうリスクがあるということです。

◆厚労省も悪質クレーム対策を議論中

こうした中、厚生労働省は11月、悪質クレームを「職場のパワハラに類するもの」と位置づけ、企業が取り組むべき対策を指針にまとめる方針 を明らかにしました。セクハラ・パワハラ対策の法制化などとあわせて労働政策審議会で議論し、来年の通常国会に関連法改正案を提出する見通し です。

◆悪質クレームから従業員を守るには

では、企業としてどのような対策・取組みが考えられるでしょうか。この点について、上記調査では「迷惑行為への対応を円滑にする企業の相談 体制の整備」が最多の40.8%(複数回答)となっています。悪質クレームに対峙する多くの従業員は、セクハラやパワハラなどの対策と同様、 自社が親身に相談にのってくれることを望んでいるといえます。悪質クレーム対応を現場まかせとするのではなく、企業として従業員をサポートす る姿勢が大切です。


厚生労働省が生活習慣病の予防策を強化 (2019/01/05)


◆寿命は延びても不健康な期間は変わらず

厚生労働省が、生活習慣病の予防策を強化します。高齢者人口が増えるなか、健康に過ごせる寿命を延ばし、意欲ある高齢者が長く働けるように するのが目的です。背景には、人手不足があります。

寿命は年々延びており、日常生活を制限なく送ることができる期間を指す健康寿命も延びていますが、健康でない状態で暮らす期間は、男女とも にほとんど変わっていません。このままだと高齢化で病気を抱える人が増えるため、これに対応する必要があります。

◆予防対策は「ジム利用料の医療費控除拡大」と「自治体の予防事業支援」

厚生労働省は、インセンティブを強化することにより予防対策を強化する方針です。その1つめは、生活習慣病の患者が医師の指導に沿ってジム などで運動をすると医療費として費用を控除できる制度がありますが、その対象となるジムを増やすことです。2つめは、生活習慣病の予防事業に 力を入れる自治体に渡る交付金を増やすことです。

◆ジムの利用料が医療費控除になる要件

ジムで運動した場合に医療費控除の対象になるためには、次の3つの要件があります。

  1. 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)において、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病である、または同等の状態であると診断 された場合や、医師の「運動療法処方箋」に基づいて行う運動療法として行う運動であること。
  2. 厚生労働省が指定した「指定運動療法施設」で運動療法に取り組むこと。
  3. おおよそ週1回以上の頻度で8週間以上にわたって、施設での運動を行っていること。

1.の「指定運動療法施設」であるジムや施設は全国で200カ所程度にとどまっています。対象施設の要件として、健康運動指導士の配置や生 活指導のための設備の設置、医療機関と提携していることが求められるためです。今回の見直しでは、こうした基準を緩めるなど制度の使い勝手を 検討し、対象となるジムを増やす方針です。患者に有効な運動プログラムを処方する医師に対する診療報酬を引き上げることも検討します。

◆自治体の予防事業への交付金にメリハリをつけて競争を促進

平成30年度から実施されている「保険者努力支援制度」は、国民健康保険の財政基盤立て直しを主とする医療保険制度改革法に盛り込まれ、医 療費の抑制で成果を上げた自治体に予算を重点配分する制度です。今回の見直しでは、その交付金にいっそうメリハリを利かせる予定です。自治体 が手がける特定健康診査の実施率や糖尿病の重症化予防の取組みを点数化し、点数によって大きな差がつくようにして、自治体に予防対策の競争を 促進するのが目的です。


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2019/06/02
新卒採用者の3年以内の離職率、平成30年は31.8%
2019/05/01
令和に改元 人事労務・給与担当者が確認しておくべきこと
2019/05/01
出退勤時に打刻しない勤怠管理の最新動向
2019/05/01
法整備も間近!企業のパワハラの実態は?
2019/04/01
約半数の企業が副業を許可~パーソル総合研究所の調査から
2019/04/01
障害者雇用をめぐる最近の動き
2019/04/01
一般化するリファラル採用と、その留意点
2019/03/03
人手不足問題への対応、どうしますか?
2019/03/03
マネージメントと「文書」の大切さ
2019/03/03
「健康経営」――他社はどのような取組みを行っているのか?
2019/02/02
「毎月勤労統計」不適切調査で過少給付延べ1,973万人、567億円
2019/02/02
「過半数代表」に注意!~労働政策研究・研修機構の調査より
2019/02/02
存在が認知されていないことも! 「産業医」、活用できていますか?
2019/01/05
平成30年「高年齢者の雇用状況」集計結果より
2019/01/05
悪質なクレームはハラスメント! 企業向け対策指針、策定へ
2019/01/05
厚生労働省が生活習慣病の予防策を強化