過去の事務所便り 2021年
改正育児介護休業法の施行に向けて、準備を始めましょう (2021/12/01)
◆大きく変わる育児休業制度
来年4月1日から改正育児介護休業法が施行され、「パパ育休」が新設されるほか、労働者に対する会社の育児休業制度に関する情報提供、育児休業を取得するか否かの意向確認が必要になったり、育児休業の分割取得ができるようになったりします。
当然、育児介護休業規程の見直しや制度利用に関する社内書式の整備が必要となりますが、それだけではありません。
◆労使協定の締結も必要
現在は雇用期間によっては育児休業が取得対象外となっているパートタイマー等について、改正により取得要件が緩和されます。そのため、引き続き雇用された期間が1年未満の人を取得対象とするか否か、労使協定を締結して決定する必要があります。
◆会社の制度を周知する資料の作成等も必要
上記のとおり、改正法施行後は、労働者本人またはその配偶者から妊娠・出産等の申出があった場合、制度に関する情報提供や育児休業取得に関する意向確認が事業主の義務とされます。情報提供は、規程を渡すだけでは不十分で、育児休業の申出先や育児休業給付、休業期間中の社会保険料の取扱いに関する情報の提供も必要です。
資料が既に用意されている場合は、所定の要件を満たしているかをチェックすれば済みますが、新たに作成する場合は、会社がどのような制度を設けているのか、明文化されていないものの見落としはないかなど、確認して作成する必要もあります。
◆厚生労働省が規定例等を公開
11月5日、厚生労働省より今回の改正に対応した規定例や書式例が示されました。これらを参考に、自社に合った内容にカスタマイズしながら余裕を持って準備を進めましょう。
【厚生労働省「育児・介護休業法について」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html
新入社員の離職率とコロナ後の人材確保 (2021/12/01)
◆就職後3年以内の離職率は新規高卒者で約4割、新規大卒者で約3割
昨年初めからのコロナ禍により、採用活動についても例年と異なる方針をとってきた企業も多いところですが、長期的には人手不足が叫ばれるなか、新入社員の離職率については現在どのような状況なのでしょうか。
厚生労働省が公表した「新規学卒就職者の離職状況」によれば、令和2年度における新規学卒就職者の離職率は、学歴別、卒業年別とも、例年に比べて低下し、新規学卒就職者(平成30年3月卒業者)の就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者で約4割(36.9%)、新規大卒就職者で約3割(31.2%)となっているそうです。
離職率の高い業界としては、宿泊業・飲食サービス業(高卒61.1%、大卒51.5%)、生活関連サービス業・娯楽業 (高卒56.9%、大卒46.5%)、教育・学習支援業(高卒50.1%、大卒45.6%)、小売業(高卒47.8%、大卒37.4%)、医療、福祉(高卒46.2%、大卒38.6%)が挙げられています。
◆特に中小企業では離職率の低下に配慮が必要
同調査では、事業所規模が小さくなるほど離職率が高くなることも示されており、30人未満規模の事業所の離職率は、1,000人以上規模の事業所の離職率と比べて2倍ものひらきがあります。特に多くの中小企業においては、採用活動における人手確保の困難さを踏まえると、離職率の低下は重要なテーマといえます。
◆オンライン化の進行と採用活動の見直し
コロナ禍ではオンライン面接、WEBセミナーなど、採用活動のオンライン化も急速に進みました。これからは、今の時代に対応した採用活動の見直しも含めて、人材確保への長期的な視点での対策が必要になっていくでしょう。
【厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況を公表します」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00004.html
転職者の5割以上が現在の勤務先に満足~令和2年「転職者実態調査」 (2021/12/01)
厚生労働省は11月8日、令和2年「転職者実態調査」の結果を公表しました。
「転職者実態調査」は、転職者の採用状況、就業意識等の実態を把握することを目的としています。今回の調査は、5人以上の常用労働者を雇用する事業所から約17,000事業所およびそこで働く転職者から約10,000人を無作為抽出し、令和2年10月1日現在の状況について実施したものです。
◆現在の勤め先に満足な転職者は、不満足な転職者を大幅に上回る
転職者の現在の勤務先における満足度については、「満足」「やや満足」とした割合の合計は53.4%、「不満」「やや不満」の合計は11.4%で、その差で表す「満足度指数」は、「職業生活全体」で42.0ポイントとなっています。
また、「職業生活全体」を事業所規模別にみると、事業所規模が大きいほどポイントが高く、満足度項目ごとにみると、すべての項目で「満足」が「不満足」を上回っています。特に、「仕事内容・職種」が最も高く、60.5ポイントでした。
◆離職理由は「労働条件」、転職先を選んだ理由は「仕事内容・職種」
転職者が直前の勤め先を離職した主な理由は、「自己都合」が76.6%と最も高くなっています。そして「自己都合」による離職理由(3つまでの複数回答)は、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」が28.2%で最も高く、次いで「満足のいく仕事内容でなかったから」が26.0%、「賃金が低かったから」が23.8%となっています。
また、転職者が現在の勤め先を選んだ理由(3つまでの複数回答)は、「仕事の内容・職種に満足がいくから」が41.0%で最も高く、次いで「自分の技能・能力が活かせるから」が36.0%、「労働条件(賃金以外)がよいから」が26.0%となっています。
◆事業所による転職者の募集方法と、転職者による転職活動の方法
転職者がいる事業所の転職者の募集方法(複数回答)は、「ハローワーク等の公的機関」とする事業所割合が最も高く57.3%で、次いで「求人サイト・求人情報専門誌、新聞、チラシ等」が43.2%、「縁故(知人、友人等)」が27.6%となっています。
一方、転職者がどのような方法で転職活動を行ったか(複数回答)をみると、「求人サイト・求人情報専門誌・新聞・チラシ等」が39.4%と最も高く、次いで「ハローワーク等の公的機関」が34.3%、「縁故(知人、友人等)」が26.8%となっています。
【厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/6-18c-r02.html
傷病手当金の支給期間が改正されます (2021/11/03)
◆傷病手当金とは
傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やケガの療養のため連続する3日間を含み4日以上仕事に就くことができず、給与支払いがない場合に、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。
支給期間は、支給を開始した日から最長1年6カ月です。この1年6カ月には、復職し再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合の、復職した期間も含まれます。
◆改正により支給期間を通算化
令和4年1月1日から、この支給期間が通算化され、療養中に復職し再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合、復職期間を除いて支給期間がカウントされることとなります(具体的な支給期間の計算方法は、令和3年11月中に明らかになる見通しです)。
◆仕事と治療の両立をしやすくするための改正
通算化されることとなった理由は、がん治療など入退院を繰り返して療養する患者が柔軟に傷病手当金制度を利用できないとの問題点が指摘され、支給期間が通算化されている共済組合と取扱いを合わせるべき、などの意見もあり、見直されることとなったものです。
■両立支援に取り組む会社に対する支援
会社による仕事と治療の両立のための取組みとしては、新たに休暇制度を導入したり健康づくりのための制度を導入したりする等があり、こうした取組みが要件を満たす場合には、助成金の対象となる可能性があります。
【厚生労働省】
「社会保障審議会医療保険部会における議論の整理について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15749.html
「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案概要」PDF
https://www.mhlw.go.jp/content/000733601.pdf
「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」PDF
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000780068.pdf
令和2年度 監督指導による賃金不払残業の是正結果から (2021/11/03)
◆支払われた割増賃金の平均額 1企業当たり658万円
厚生労働省は、「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)」として、労働基準監督署が監督指導を行い、令和2年度(令和2年4月から令和3年3月まで)に不払いとなっていた割増賃金が支払われたもので、支払額が1企業当たり合計100万円以上である事案を取りまとめて公表しました。
これによれば、是正企業数1,062企業(前年度比549企業の減)、対象労働者数は6万5,395人(同1万3,322人の減)で、支払われた割増賃金の平均額は1企業当たり658万円、労働者1人当たり11 万円にのぼりました。
◆割増賃金合計額は前年度比28億5,454万円減
業種別の企業数で比較すると、製造業が215企業(20.2%)、商業が190企業(17.9%)、保健衛生業が125企業(11.8%)と上位を占めています。支払われた割増賃金合計額は69億8,614万円で前年度比28億5,454万円の減と大幅に減少していますが、コロナ禍における様々な影響は当然無視できないところですので、今後どのような傾向となるかは引き続き注視する必要があります。
◆改めて労働時間管理の確認を
厚生労働省は、あわせて「賃金不払残業の解消のための取組事例」についても紹介しています。そこでは企業が実施した解消策として、①代表取締役等からの賃金不払残業解消に関するメッセージ(労働時間の正しい記録、未払賃金の申告)の発信、②管理職に対する研修会の実施、③定期的な実態調査等が挙げられています。
厚生労働省では、引き続き賃金不払残業の解消に向け、監督指導を徹底していくとしています。企業においても改めて適切な労働時間管理方法や自社の現況については確認したいところです。
【厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21200.html
70歳までの継続雇用制度を考えるにあたって (2021/11/03)
◆70歳までの就業機会の確保
高年齢者雇用安定法の改正により、2021年4月から70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となっています。この対応として、70歳までの継続雇用制度を導入する企業も多いでしょう。ただ、これまでの65歳までの継続雇用制度とは違った点も考慮に入れる必要がありそうです。
◆体力と意欲
年齢と共に身体機能は低下します。65歳から70歳に近づくにつれ、関節性疾患やガンなどによる受療率はかなり高まるとされています。また、身体機能や健康状態の個人差も大きくなってくる年代です。
65歳までの継続雇用制度では、定年後の業務内容として、60歳時(定年時)と同じとするケースが多いようですが、改正法へ対応を考えるにあたって、単純に年齢を70歳までにすればよいという訳にはいかないでしょう。
また、定年前と同じ業務内容としているケースでは、定年後の処遇と職務を十分検討していないケースも多く、退職時期だけが先送りになったような恰好になれば、労働者の仕事への意欲や満足感も低下してしまいかねません。
◆他人事ではなく
継続雇用を機に、後進の育成など企業が期待する業務を担当してもらう、専門性を生かした業務を継続してもらうなど、定年後の処遇の変化と併せて、単純に年齢で区切るのではなく個人に合わせた継続雇用制度の設計が求められます。そのためには、若い世代も巻き込んだ制度設計・見直しが必要となるでしょう。
◆マルチジョブホルダー制度が来年からスタート
65歳以上の労働者に関する新しい制度が、来年1月から始まります。複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して所定の要件を満たす場合に、労働者本人がハローワークへの申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者となることができる制度です。
企業は、労働者からの依頼に基づき、手続きに必要な証明を行う必要がありますので、厚生労働省のホームページなどで事前に確認しておくことをお勧めします。
【厚生労働省「雇用保険マルチジョブホルダー制度について」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000136389_00001.html
健康保険の被保険者証 保険者から被保険者に直接交付可能に (2021/10/01)
◆改正の趣旨
健康保険制度における被保険者証等については、保険者から事業主に送付し、事業主から被保険者に交付すること等が義務付けられていますが、テレワークの普及等に対応した柔軟な事務手続を可能とするため、保険者が支障がないと認めるときは、保険者から被保険者に対して被保険者証等を直接交付すること等が可能となります(10月1日から)。
◆主な改正点
- 被保険者証の交付について、保険者が支障がないと認めるときは、保険者が被保険者に直接送付することができることとされます。
- 被保険者証の情報を訂正した場合における被保険者証の返付について、保険者が支障がないと認めるときは、事業主を経由することを要しないこととされます。
- 被保険者証の再交付について、保険者が支障がないと認めるときは、事業主を経由することを要しないこととされます。
- 被保険者証の検認又は更新等を行った場合における被保険者証の交付について、保険者が支障がないと認めるときは、保険者が被保険者に直接送付することができることとされます。
- 高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証及び限度額適用・標準負担額減額認定証の交付方法等について、1.~4.に準じた改正が行われます。
◆被保険者証等の返納については、事業主経由を省略できない
厚生労働省のQ&Aによると、被保険者証等の返納については、事業主経由を省略できません。被保険者が資格を喪失したときは、これまでと同様に、事業主は遅滞なく被保険者証を回収して保険者に返納しなければなりません。
令和3年度の最低賃金の改定と賃金引上げに向けた支援策 (2021/10/01)
◆過去最大の全国一律28円引上げ
10月1日から、地域別最低賃金額(時給)が改定、順次適用されます。今年度の最低賃金は、全国加重平均が昨年より28円増え930円(前年同期比3.1%増)となり、過去最大の引上げ幅となりました。
昨年度の中央最低賃金審議会の答申では、新型コロナウイルスの影響により「現行水準を維持することが適当」とし、引上げの目安額が示されませんでしたが、今年度は政府が目標として掲げている「年3%の引上げ、早期に加重平均1,000円」を考慮し、全国一律28円の引上げの目安を公表しました。
◆全国の最低賃金の状況は?
地域別の最低賃金額では、最高額は東京都の1,041円、最低額は高知県と沖縄県の820円で、その金額差は221円と、昨年と変わりませんでした。しかし、目安額の28円に4円上積みし32円引き上げた島根県(824円)のほか、6県が目安額以上を上積みしたため、割合でみると地域間の賃金格差は縮まったことになります。また、今年度初めて、全国で800円を超えました。
◆最低賃金引上げに向けた支援策
厚生労働省は経済産業省と連携し、コロナ禍における最低賃金の引上げにより影響を受ける中小企業や小規模事業者に対し、以下の賃金引上げに向けた生産性向上等の支援を実施しています。
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金
業況特例等の対象となる中小企業が事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げる場合、令和3年10月から12月までの3か月間の休業については、休業規模要件(1/40以上)を問わず支給
業務改善助成金
生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げた中小企業・小規模事業者に対して、その設備投資などにかかった経費の一部を助成
働き方改革推進支援助成金
生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む中小企業・小規模事業者や、傘下企業を支援する事業主団体に対して助成
令和2年度 長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果 (2021/10/01)
◆監督指導の実施事業場数と監督指導の主な内容
厚生労働省は、長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果を公表しました。これによると、対象となった24,042事業場のうち、8,904事業場(37.0%)で違法な時間外労働が確認されました。このうち実際に1カ月当たり80時間を超える時間外・休日労働が認められた事業場は2,982事業場(違法な時間外労働があったもののうち33.5%)でした。
また、賃金不払残業があったものは1,551事業場(6.5%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものは4,628事業場(19.2%)となっています。
◆主な健康障害防止に関する指導の状況
健康障害防止に関する指導の状況(健康障害防止のため指導票を交付した事業場)としては、①過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したものが9,676事業場(40.2%)、②労働時間の把握が不適正なため指導したものが4,301事業場(17.9%)となっています。
②の指導事項の中では、「始業・終業時刻の確認・記録」(2,609事業場)のほかに、自己申告制による場合の「実態調査の実施」(1,806事業場)の数が目立っています。
◆労働時間の管理方法の内訳
監督指導を実施した事業場において労働時間の管理方法を確認したところ、「使用者自ら現認」が2,109事業場、「タイムカードを基礎」が9,088事業場、「ICカード、IDカードを基礎」が4,497事業場、「PCの使用時間の記録を基礎」が1,680事業場、「自己申告制」が7,126事業場でした。自己申告制を採用している企業は多いようですが、指導事項をみても管理が不十分な企業も少なくないことがわかります。各企業でも労働時間の管理方法についてはあらためて確認したいところです。
雇用保険の高年齢被保険者の特例とは? (2021/09/01)
雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)により、高年齢被保険者の特例に関する規定が令和4年1月1日から施行されます。それに伴い、令和3年7月21日に、「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第125号)」が公布されました。以下で、高年齢被保険者の特例の概要について紹介いたします。
◆現行制度
雇用保険法(昭和49年法律第116号)6条1項1号において「1週間の所定労働時間が20時間未満である者」については、雇用保険法の適用除外となっています(1事業所で週所定労働時間が20時間以上の者は適用)。複数の事業所で就労する場合は、それぞれの事業所ごとに適用要件を判断、労働時間は合算しません。
◆高年齢被保険者の特例とは
令和4年1月1日より、複数の事業主に雇用される 65 歳以上の労働者について、本人の申出を起点に、2つの事業所の労働時間を合算して、「週の所定労働時間が20時間以上である」ことを基準として雇用保険が適用されることになります。
◆制度の対象者(高年齢被保険者)となるための要件
要件は次のとおりです(雇用保険法37 条の5第1項各号)。
- 2つ以上の事業主の適用事業に雇用される65歳以上の者
- 上記1.のそれぞれ1つの事業主の適用事業における1週間の所定労働時間が20時間未満
- 上記1.のうち2つの事業主の適用事業(申出を行う労働者の1週間の所定労働時間が5時間以上であるものに限る)における1週間の所定労働時間の合計が20時間以上
◆高年齢被保険者の特例の申出
高年齢被保険者の特例の申出は、当該申出を行う者の氏名、性別、住所または居所および生年月日、当該申出に係る事業所の名称および所在地、当該申出に係る適用事業における1週間の所定労働時間などを記載した届書に労働契約に係る契約書、労働者名簿、賃金台帳等を添えて、管轄公共職業安定所の長に提出することによって行うものとされています。
公共職業安定所は申出の内容を確認し、本人および各事業所に通知します。なお、資格取得の場合は申出の日に被保険者の資格を取得します。
◆事業主の留意点
事業主は、高年齢被保険者の特例の申出を行おうとする者から当該申出を行うために必要な証明を求められたときは、速やかに証明しなければなりません。また、事業主は、労働者が申出をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他の不利益な取扱いをしてはなりません。
厚生労働省が「無期転換ルール」で初の実態調査結果を公表 (2021/09/01)
◆「無期転換」について初の調査
厚生労働省は、「有期労働契約に関する実態調査」の結果を公表し、有期契約労働者の契約更新が通算5年を超えると無期契約を申し込める権利が発生する「無期転換ルール」(2013年4月施行の改正労働契約法により新設)の実態を初めて明らかにしました。調査は、昨年4月時点で5人以上を雇用している企業5,662事業所と、今年1月時点での労働者6,670人に対してそれぞれ行われたものです。
◆約3割が無期転換申込権を行使
調査結果によると、有期契約労働者を雇用している事業所の割合は41.7%でした。そのうち、2018~2019年度に無期転換ルールによる無期転換を申し込む権利が生じ、その権利を行使した人の割合は27.8%、無期転換を申し込む権利を行使せず継続して雇用されている人の割合は65.5%でした。また、無期転換を申し込む権利を行使した人の割合を事業所の規模別にみると、1,000人以上の事業所が39.9%、300~999人の事業所が22.2%、100~299人の事業所が22.3%、30~99人の事業所が17.1%、5~29人の事業所が8.6%となりました。従業員数が多い事業所になるほど、無期転換の権利を行使する割合が高くなっています。
◆無期転換を希望しない理由は?
一方、有期契約労働者に対する調査では、無期転換の希望の有無について「希望する」と回答した人の割合が18.9%、「希望しない(有期労働契約を継続したい)」が22.6%、「わからない」が53.6%でした。無期転換を希望する理由は、「雇用不安がなくなるから」が最も高く、「長期的なキャリア形成の見通しや、将来的な生活設計が立てやすくなるから」、「その後の賃金・労働条件の改善が期待できるから」などが続いています。また、希望しない理由は、「高齢だから、定年後の再雇用者だから」が最も高く、次いで「現状に不満はないから」、「契約期間だけなくなっても意味がないから」となっています。
◆4割が「無期転換ルール」を知らない
有期契約労働者が労働契約法における無期転換ルールに関して知っている内容(複数回答)について、問われた内容のどれか1つでも知っている人の割合は38.5%でした。知っている内容については、「契約社員やパート、アルバイト、再雇用者など呼称を問わず、すべての労働者に適用される」と回答した人は68.9%と最も高く、次いで「契約期間を通算して5年を超えても、労働者から「申込み」を行わなければ無期転換されない」が51.9%、「無期転換ル-ルが適用されるのは、2013年4月1日以降に開始(更新)された、有期労働契約である」が46.0%でした。一方、「無期転換ルールという名称は聞いたことがある」と回答した人は17.8%、「無期転換ルールについては何も知らない・聞いたことがない」が39.9%と、4割の人が制度そのものを知らないことがわかりました。
無期転換ルールが新設されて8年が経ちますが、制度について十分に認知されているとは言えないのが現状です。厚生労働省では3月から、無期転換ルールの見直しをテーマとする検討会が始まり、議論を重ねています。有期契約労働者と企業がお互いにルールの内容を理解し、ルールが適切に運用されることが望まれます。
【参考】厚生労働省「令和2年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)」PDF
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/172-2a-3.pdf
同「令和3年有期労働契約に関する実態調査(個人調査)」PDF
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/172-3a-3.pdf
テレワーク定着についての課題は?~令和3年版「労働経済白書」より (2021/09/01)
◆テレワークの今
2020年初頭から全世界で猛威を振るい、日常生活に多大な影響を与えている新型コロナウイルス感染症ですが、2020年4月には、感染拡大地域を対象に初めて緊急事態宣言が出され、これをきっかけとして、多くの企業でテレワークが導入されました。
テレワークを日常的に行っていた企業では大きな混乱はなかったものと思われますが、付け焼き刃の整備で始めた企業では、現在の感染拡大の最中においても、テレワークをやめて出社勤務が主となっているところも少なくないようです。
◆導入した企業の継続割合
厚生労働省が公表した「令和3年版 労働経済の分析」(労働経済白書)では、「新型コロナウイルス感染症の拡大による雇用・労働への影響」として「テレワークを活用して働いた労働者についての分析」が示されています。
そこでは、2020年4、5月には企業のテレワーク実施割合は5割を超えていたものの、同年末には3割程度に減少しており、特に2020年2~5月に初めてテレワークを活用した企業では、感染拡大前からテレワークを実施していた企業よりも継続割合が低いことが指摘されています(2021年2月時点の継続状況:感染拡大前から活用経験がある企業90.4%、2020年2~5月に初めて活用した企業71.7%)。
◆定着に向けた課題
テレワークの運用・実施状況別にみた企業の課題としては、「出社時と比べて、職場の人とのコミュニケーションが取りづらい」(73.8%)、「業務の性質上、テレワーク可能な業務を切り出すことが 難しい」(49.3%)、「個人の業務の進捗や達成度の把握が難しい」(55.7%)、「社員がテレワークするための環境整備が難しい(使用PCの台数確保や、テレワーク回線、セキュリティの問題等)」(41.6%)などが挙げられますが、運用状況別にみると、「うまく運用できていない」企業においてこれらを課題として挙げる割合が高いことが指摘されています。
◆会社ごとの課題に応じた模索が必要
労働経済白書では、「テレワークの活用経験がある企業や労働者の割合が比較的低い業種でも、テレワーク継続率が高い場合があることを踏まえると、業務の性質にかかわらず、テレワーク定着の可能性があることがうかがえる」とも分析されています。「うちの業種ではテレワークはできない」と決めつけずに、自社での最適で有用な手段を模索していくことで、労使双方により良い効果をもたらすことができるでしょう。
【参考】厚生労働省「令和3年版 労働経済の分析」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/20/20-1.html
健康保険法改正で傷病手当金の通算や育休中の社会保険料免除が変更に (2021/08/01)
「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が第204回国会で可決・成立し、6月11日に公布されています。
以下で、主な改正事項をご紹介します。
◆傷病手当金の支給期間の通算化(令和4年1月1日から施行)
傷病手当金は、業務外の事由による病気やケガの療養のために休業するときで、一定の要件に該当した場合に支給されるもので、支給期間は、支給が開始された日から最長1年6カ月です。これは、1年6カ月分支給されるということではなく、1年6カ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も含めて1年6カ月に算入されます。支給開始後1年6カ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。
今回の改正は、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して支給を受けられるように、支給期間の通算化を行うというものです(支給を始めた日から通算して1年6カ月支給)。がん治療などで入退院を繰り返すなど、長期間にわたり療養のための休暇をとりながら働くケースなどがあることから、改正になりました。
◆任意継続被保険者制度の見直し(令和4年1月1日から施行)
任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が、退職した後も選択によって引き続き最大2年間、退職前に加入していた健康保険の被保険者になることができる制度です。
保険料は全額被保険者負担(事業主負担なし)で、従前の標準報酬月額または、当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額を負担します。任意継続被保険者となった日から2年を経過したときや、保険料を納付期日までに納付しなかったとき、就職して健康保険などの被保険者資格を取得したとき、後期高齢者医療の被保険者資格を取得したとき、被保険者が死亡したときのいずれかに該当するときは、被保険者の資格を喪失します。
今回の改正は、任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直しや(健康保険組合が規約に定めた場合は、当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額より従前の標準報酬月額が高い任意継続被保険者については、従前の標準報酬月額を保険料の算定基礎とすることができるようになる)、被保険者からの申請による資格喪失を可能とするというものです。
◆育児休業中の保険料の免除要件の見直し(令和4年10月1日から施行)
育児休業中の社会保険の保険料免除は、現在、月の末日時点で育児休業をしている場合に、当該月の保険料(賞与保険料含む)が免除される仕組みです。そのため例えば、月中に2週間の育休を取得したとしても、休業期間に月の末日を含まなければ免除の対象にはなりません。
今回の改正は、短期の育児休業の取得に対応して、育児休業期間に月末を含まない場合でも、月内に2週間以上の育児休業を取得した場合には当該月の保険料を免除するとともに、賞与に係る保険料については1カ月を超える育児休業を取得している場合に限り免除の対象とするというものです。
年休取得義務化で取得は進んでいるか~労働政策研究・研修機構調査から (2021/08/01)
独立法人労働政策研究・研修機構が、働き方改革関連法の施行に伴い、年次有給休暇(年休)取得に関する企業・労働者アンケートを行い、その結果を公表しました(調査期間:2020年1月27日~2月7日。企業17,000社、労働者71,796人を対象に実施し、回答は企業5,738票、労働者15,297票)。
◆計画的付与制度の導入企業は42.8%、取得目標を設定している企業は6割以上
企業調査の年休の計画的付与制度の導入状況では、「導入されている」とする企業割合は42.8%でした。年休取得率や年休取得日数などの目標設定については、「年休取得日数の目標のみを設定している」が53.6%と半数以上を占め、「年休取得率の目標のみを設定している」が4.3%、「年休取得率及び取得日数双方について目標を設定している」が4.1%、「上記以外の目標を設定している」が0.9%となっている一方で、「何らの目標も設定していない」とする企業は34.9%ありました。
◆3年前と比べ取得日数が増えた企業とする労働者は41.5%
労働者調査での年休取得日数の3年前との増減比較では、「変化しなかった」が46.4%でしたが、「増加」(「5日以上増えた」「3~4日増えた」「1~2日増えた」の合計)も41.5%となりました。一方で、「減少」(「5日以上減った」「3~4日減った」「1~2日減った」の合計)は4.4%でした。
「増加」と回答した者の増加した理由(複数回答)は、「会社の取組みにより取りやすい就業環境になったから」が37.6%ともっとも高く、次いで、「個人的理由により、有給休暇が必要になったから」(31.3%)、「上司に有給休暇を取得するよう勧められたから」(21.0%)、「法律等の影響もあり年休を取りやすい環境ができた」(20.7%)などとなっています。
◆年5日の取得義務の認知度は、企業で95.5%、労働者では84.4%
年休の年5日の取得義務化についての理解度は、企業調査では、「内容を十分に理解している」が64.4%で、「ある程度理解している」(31.1%)と合わせて95.5%を占めました。また、労働者調査でも、年5日の取得義務化について、「内容を含め知っている」が54.9%で、「聞いたことがある」(29.5%)と合わせると84.4%に上りました。
◆時間単位年休の導入企業は22%、導入を求める労働者は5割以上
企業調査での時間単位年休取得制度の導入状況では、「導入している」が22.0%でした。導入理由(複数回答)では、「日単位・半日単位に満たない時間の取得が可能で便利」(70.0%)がもっとも高く、次いで、「個人的な事情に対応した休暇取得が可能になる」(57.3%)、「年休の取得促進のため」(56.5%)、「育児、介護の支援」(49.0%)、「仕事と治療の両立支援」(42.1%)などとなっています。
一方、時間単位年休取得制度を導入していない理由(複数回答)は、「勤怠管理が煩雑になる」が50.3%ともっとも高く、次いで、「すでに半日単位の年休取得制度がある」(46.8%)、「給与計算が複雑になる」(39.3%)、「変形労働時間制等のため時間単位の代替要員確保困難」(31.4%)、「導入可能と不可能部署があり平等性から導入しづらい」(29.4%)などとなっています。一方、労働者調査で時間単位年休取得制度が適用・導入されていない者(「わからない」を含む)に聞くと、勤務先での時間単位年休取得制度を「導入・適用してほしい」とする割合は50.6%となっています。
年休の取得促進については、5日間の取得義務化という法律の後押しがあって3年前と比べると全般的に進んでいるという結果が出ましたが、やはり会社が取得しやすい環境づくりを進めることが重要のようです。とりわけ、時間単位の取得制度については会社側の事情から導入されていないケースが多い一方で、導入されていない企業の勤労者の半数以上が導入を望んでおり、有休の取得率アップや従業員の満足度向上のためにあらためて検討してみることも必要かもしれません。
【労働政策研究・研修機構「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査」】
https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/211.html?mm=1698
企業の教育訓練の実施状況は?~厚生労働省 令和2年度「能力開発基本調査」の結果等より (2021/08/01)
◆教育訓練費用を支出した企業は49.7%
厚生労働省がまとめた令和2年度「能力開発基本調査」(令和2年12月1日時点の状況についての調査)の結果によれば、企業の教育訓練への費用の支出状況をみると、OFF-JTまたは自己啓発支援に支出した企業は49.7%で、令和元年度調査(以下 「前回」という)の57.5%と比べて減少しています。計画的なOJTについて、正社員に対して実施した事業所は56.5%(前回64.3%)、正社員以外に対して実施した事業所は22.3%(前回26.5%)となっており、こちらも前回同様減少しています。
コロナ下において、企業の様々な活動に影響が出ているところですが、社員の教育訓練に関する分野にも影響を与えていることが予想できます。
◆能力開発や人材育成に関して問題があるとする企業が7割以上
能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所は74.9%で、前回と比べてやや減少しているものの、多くの企業では、人材育成に関する問題があると考えていることがうかがえます。問題点の内訳は、「指導する人材が不足している」(54.9%)が最も高く、「人材育成を行う時間がない」(49.4%)、「人材を育成しても辞めてしまう」(42.6%)と続いています。
◆コロナ下でオンライン研修などの取組みも進んでいる
株式会社パーソル総合研究所が実施した、企業におけるオンライン集合研修の実態に関する調査によれば、オンライン集合研修を増やした企業の割合は75%にも上ったそうです。対面での実施が難しい中、これまでと異なる手法で教育訓練を実施した企業も多かったのではないでしょうか。
◆今後求められる企業の能力開発への取組み
日本では、GDPに占める企業の能力開発費の割合が、他の先進国と比べても低いといわれており、米企業と比べると20分の1ほどしかないそうです(2018年「労働経済白書」)。このような実態を国も問題視しており、2021年6月に政府が提示した骨太の方針でも、「リカレント教育等人材育成の抜本強化」が掲げられています。今後、国を挙げた取組みが進むとともに、労働者側でもキャリア形成に関する意識が高まってくることが予想されます。
このような動きは、企業としても人材確保の観点から無視できないところです。今後は、自社の生き残りのためにも、新入社員のみならず、中堅社員等までも対象にした能力開発に係る新たな取組みを模索していく必要があるでしょう。
【厚生労働省「令和2年度「能力開発基本調査」の結果】ニュースリリース
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_19368.html
【パーソル総合研究所「オンライン研修の実態に関する調査結果」】ニュースリリース
https://rc.persol-group.co.jp/news/202107051000.html
新型コロナワクチンの職域接種と労働時間の取扱い (2021/07/01)
新型コロナワクチンの接種を加速化するため、企業や大学での「職域接種」が6月21日から可能とされ、6月8日から申請の受付が開始されています。一部の企業や大学では職域接種を実施するとの報道もされています。
◆職域接種の概要
職域接種は自治体からの接種券が届く前でも可能ですが、会場や人員は企業等が自ら確保しなければなりません。実施形態としては、企業単独実施のほか、中小企業が商工会議所等を通じての共同実施、下請け企業、取引先を対象に含めての実施などがあります。
企業や大学に求められる主な実施要件は、以下のとおりです。
- 医師・看護師等の医療職のほか、会場運営のスタッフ等、必要な人員を企業や大学等が自ら確保すること。また、副反応報告などの必要な対応を行うことができること。
- 接種場所・動線等の確保についても企業や大学等が自ら確保すること。
- 社内連絡体制・対外調整役を確保すること(事務局を設置すること)。
- 同一の接種会場で2回接種を完了すること、最低2,000回(1,000人×2回接種)程度の接種を行うことを基本とする。
- ワクチンの納品先の事業所でワクチンを保管の上、接種すること。
◆ワクチン接種に関する休暇や労働時間の取扱い
ワクチン接種自体は業務ではありませんが、接種に費やす時間や副反応が出た場合の労働時間や休暇の取扱いが気になるところです。厚生労働省の見解は以下のとおりです。
「職場における感染防止対策の観点からも、労働者の方が安心して新型コロナワクチンの接種を受けられるよう、ワクチンの接種や、接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度等を設けていただくなどの対応は望ましいものです。
また、①ワクチン接種や、接種後に副反応が発生した場合の療養などの場面に活用できる休暇制度を新設することや、既存の病気休暇や失効年休積立制度(失効した年次有給休暇を積み立てて、病気で療養する場合等に使えるようにする制度)等をこれらの場面にも活用できるよう見直すこと、②特段のペナルティなく労働者の中抜け(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認め、その分終業時刻の繰り下げを行うことなど)や出勤みなし(ワクチン接種の時間につき、労務から離れることを認めた上で、その時間は通常どおり労働したものとして取り扱うこと)を認めることなどは、労働者が任意に利用できるものである限り、ワクチン接種を受けやすい環境の整備に適うものであり、一般的には、労働者にとって不利益なものではなく、合理的であると考えられることから、就業規則の変更を伴う場合であっても、変更後の就業規則を周知することで効力が発生するものと考えられます(※)。
こうした対応に当たっては、新型コロナワクチンの接種を希望する労働者にとって活用しやすいものになるよう、労働者の希望や意向も踏まえて御検討いただくことが重要です。
※常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合、就業規則の変更手続も必要です。」
【厚生労働省「職域接種に関するお知らせ」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_shokuiki.html
【厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00007.html
夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定に新基準 (2021/07/01)
◆厚生労働省から新基準が公表されました
厚生労働省から、「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(令和3年4月30日保保発0430第2号・保国発0430第1号)」という通知が出されました(5月12日)。これにより、夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について、これまでの通達(昭和 60 年6月13日付保険発第66号・庁保険発第22号通知)が廃止され、新たな基準が適用されます(令和3年8月1日より)。
◆背景
令和元年に成立した健康保険法等の一部を改正する法律(令和元年法律第9号)の附帯決議で、「年収がほぼ同じ夫婦の子について、保険者間でいずれの被扶養者とするかを調整する間、その子が無保険状態となって償還払いを強いられることのないよう、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を策定すること」とされ、これを踏まえたものです。
◆夫婦とも被用者保険の被保険者の場合の取扱い(新基準)
基準には、「夫婦の一方が国民健康保険の被保険者の場合の取扱い」、「主として生計を維持する者が健康保険法第 43 条の2に定める育児休業等を取得した場合の取扱い」などが定められています。ここでは、「夫婦とも被用者保険の被保険者の場合の取扱い」の新基準をみてみます。
- 被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。
- 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
- 夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべき者に係る扶養手当又はこれに相当する手当の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。なお、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできない。
- 被扶養者として認定しない保険者等は、当該決定に係る通知を発出する。当該通知には、認定しなかった理由(年間収入の見込み額等)、加入者の標準報酬月額、届出日及び決定日を記載することが望ましい。被保険者は当該通知を届出に添えて次に届出を行う保険者等に提出する。
- 4.により他保険者等が発出した不認定に係る通知とともに届出を受けた保険者等は、当該通知に基づいて届出を審査することとし、他保険者等の決定につき疑義がある場合には、届出を受理した日より5日以内(書類不備の是正を求める期間及び土日祝日を除く。)に、不認定に係る通知を発出した他保険者等と、いずれの者の被扶養者とすべきか年間収入の算出根拠を明らかにした上で協議する。この協議が整わない場合には、初めに届出を受理した保険者等に届出が提出された日の属する月の標準報酬月額が高い方の被扶養者とする。
標準報酬月額が同額の場合は、被保険者の届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。なお、標準報酬月額に遡及訂正があった結果、上記決定が覆る場合は、遡及が判明した時点から将来に向かって決定を改める。 - 夫婦の年間収入比較に係る添付書類は、保険者判断として差し支えない。
【厚生労働省「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」PDF】
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T210512S0010.pdf
コロナ対策で注目、「昼休みの時差取得」 (2021/07/01)
◆「昼休みの時差取得」とは
令和3年5月に「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(新型コロナウイルス感染症対策本部決定)が改正され、感染防止のための取組みに「昼休みの時差取得」が追加されました。昼休みを一斉に取得した場合、休憩室や更衣室、喫煙室やエレベーター、近隣店舗などに人が集中し、感染リスクが高まる可能性があります。これを抑制するために、昼休みの時間をずらして取得してもらうという取組みです。
◆手続き上の留意点
労働基準法では、休憩時間は労働者に一斉に与えなければならないこととされており、昼休みを時差取得とする場合には、労使協定を締結して、①対象者の範囲、②新たな昼休みの時間の2点を取り決めなければなりません。労働者の意向などもよく確認しながら、職場の実情に応じて取り決めることが重要とされています。
※労使協定は、過半数労働組合または過半数代表者と書面で締結する必要があります。
※以下の業種については、一斉休憩の規定は適用されていません。
①運輸交通業、②商業、③金融・広告業、④映画・演劇業、⑤通信業、⑥保健衛生業、⑦接客娯楽業、⑧官公署(現業部門を除く)
※常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合、就業規則の変更手続も必要です。
◆労使で話し合い、理解を求める
感染症対策に有効な昼休みの時差取得ですが、導入を検討する際には、そもそもなぜ休憩時間の一斉付与が原則とされているのか、労使ともに理解しておくべきでしょう。働いている同僚を気にして休憩を早めに切り上げたり、ずらして取得している休憩時間中に取引先に対応する、あるいは休憩時間を取り過ぎるといったことがないよう、労使で導入・運用について意向を擦り合わせながら、効果的かつ適切な感染症対策をすることが望まれます。
【厚生労働省「基本的対処方針の改正等を踏まえた、職場における新型コロナウイルス感染症対策の拡充について、経済団体などに協力を依頼しました」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18659.html
新型コロナ感染拡大の仕事や生活への影響に関する最新調査~(独)労働政策研究・研修機構 (2021/06/01)
(独)労働政策研究・研修機構が、新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活、企業への影響についてまとめた最新の調査結果を公表しました。
◆個人調査:第4回「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査」(一次集計)結果(2021年4月30日)
この調査は、昨年からの連続パネル調査で、今回(3月調査)が4回目の実施です。調査結果によると、直近の月収額について、通常月の月収と「ほぼ同じ」との回答が3分の2程度(68.8%)である一方、「減少した」との割合も引き続き4分の1超(27.2%)となっており、過去の調査と単純に比較すると、実労働時間の長さが戻り切らないこと等を反映して、一定程度の「減少」が常態となりつつあることなどがわかったとされています。
https://www.jil.go.jp/press/documents/20210430a.pdf?mm=1680
この調査に関連した以下の分析結果も公表されているので、参考にしてください。
☆リサーチアイ 第58回「新型コロナ感染症拡大下における雇用調整助成金利用企業の特徴と助成金の効果─JILPT企業調査二次分析」(2021年4月2日)
https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/058_210402.html?mm=1680
☆リサーチアイ 第53回「新型コロナウイルス流行下(2020年2~9月)の企業業績と雇用─「第2回新型コロナウイルス感染症が企業経営に及ぼす影響に関する調査」二次分析─」(2021年2月3日)
https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/053_210203.html?mm=1680
◆企業調査:第3回「新型コロナウイルス感染症が企業経営に及ぼす影響に関する調査」(一次集計)結果(2021年4月30日)
この調査は、昨年6月からの連続パネル調査で、今回(2月調査)が3回目の実施です。テレワークの実施経験企業は約4割、現在(1月末)も実施している企業は約3割で、一定の効果がみられた一方、コミュニケーション、業務の進捗把握、業務の切り出し等、実施上の課題も浮き彫りになっていることなどがわかったとされています。
https://www.jil.go.jp/press/documents/20210430b.pdf?mm=1680
この調査に関連した以下の分析結果も公表されているので、参考にしてください。
☆リサーチアイ 第58回「新型コロナ感染症拡大下における雇用調整助成金利用企業の特徴と助成金の効果─JILPT企業調査二次分析」(2021年4月2日)
https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/058_210402.html?mm=1680
☆リサーチアイ 第53回「新型コロナウイルス流行下(2020年2~9月)の企業業績と雇用─「第2回新型コロナウイルス感染症が企業経営に及ぼす影響に関する調査」二次分析─」(2021年2月3日)
https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/053_210203.html?mm=1680
「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書が公表されました (2021/06/01)
厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和2年10月実施。調査実施者:東京海上日動リスクコンサルティング株式会社)について、報告書が取りまとめられました。職場でのハラスメントの予防・解決の参考にしてください。
◆ハラスメントの発生状況・ハラスメントに関する職場の特徴
職場の特徴として、パワハラ・セクハラともに「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」、「ハラスメント防止規定が制定されていない」、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」、「残業が多い/休暇を取りづらい」等の特徴について、ハラスメントを経験した者と経験しなかった者の差が特に大きい。
◆ハラスメントの予防・解決のための取組状況
すべてのハラスメントにおいて、勤務先が「積極的に取り組んでいる」と回答した者で、ハラスメントを経験した割合が最も低く、「あまり取り組んでいない」と回答した者は経験した割合が最も高い。
◆ハラスメントを受けた経験
◆ハラスメント行為を受けた後の行動、ハラスメントを知った後の勤務先の対応
ハラスメントを受けた後の行動として、パワハラ、セクハラでは「何もしなかった」の割合が最も高かった。一方、顧客等からの著しい迷惑行為では、「社内の上司に相談した」の割合が最も高く、次いで「社内の同僚に相談した」が高かった。ハラスメントを知った後の勤務先の対応としては、パワハラでは「特に何もしなかった」(47.1%)、セクハラでは「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」(34.6%)、顧客等からの著しい迷惑行為では、「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」(48.6%)の割合が最も高かった。
「選択的週休3日制」の導入に向けて議論開始 (2021/06/01)
自民党の一億総活躍推進本部は、希望する社員が週3日休むことができる「選択的週休3日制」の導入に向けた議論を進めており、政府は、今夏の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に盛り込む方向で調整しています。
◆コロナ禍の柔軟な働き方の後押しに
厚生労働省の「令和2年度就労条件総合調査」の結果によると、全体の82.5%の企業が「週休2日制」を採用(うち44.9%は「完全週休2日制」を採用)し、8.3%の企業が「完全週休2日制より休日数が実質的に多い制度」を採用しています。
近年、働き方改革推進の一環として、大企業を中心に週休3日制を導入する企業が増えていますが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、中小企業でも在宅勤務や柔軟な働き方への対応が求められるようになりました。そこで、政府は、労働生産性を高めながら働き方の選択肢を広げるために「選択的週休3日制」の導入を促す議論を開始しました。
◆メリットと課題
自民党の一億総活躍推進本部が示した「選択的週休3日制」のメリットは以下のとおりです。
- 育児や介護、治療に充てる時間の増加
- リカレント教育(学び直し)や大学院進学によるキャリア形成
- 地方での兼業やボランティア活動の促進
一方で、給与体系や人事評価、労務管理への影響が懸念されます。特に1日あたりの労働時間が増え週の出勤日数が減ることによって、個人や他の従業員への業務の負担が増えることが考えられます。また、従業員の多い大企業や中小企業の人員に余裕のある部署等は導入しやすいが、従業員数の少ない中小・零細企業には導入のハードルが高いとの意見も出ています。
現在、企業は週休3日制を労使の合意などで導入することができますが、政府は「選択的週休3日制」を導入する企業に対する助成金等の支援も検討しているとしています。今後、メリットや課題について十分に議論し、労使双方の効率化が図られることを期待したいと思います。
【厚生労働省「令和2年度就労条件総合調査」】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/20/dl/gaiyou01.pdf
無期転換をめぐる裁判の動向と厚生労働省の動き (2021/05/01)
◆無期転換をめぐる裁判の動向
物流大手の日本通運で有期雇用で働いていた男性(40)が、契約期間が通算5年を過ぎ、無期契約への転換を希望できる日の直前に雇用を打ち切られたのは不当だと訴えた訴訟で、横浜地裁川崎支部が訴えを棄却する判決を言い渡しました。男性は2012年9月から同社に派遣社員として勤務。労働契約法の改正で5年ルールが導入された後の13年7月に、1年間の契約社員として日通に直接雇われ、4回の契約更新を重ねましたが、18年6月末に契約を打ち切られました。
判決では、雇用契約書に「更新限度が18年6月30日までの5年」と明記されていると指摘。男性が「契約内容を十分認識した上で契約を締結した」と認定し、改正労契法の「5年ルール」については、「5年を超えて労働者を雇用する意図がない場合に、当初から更新上限を定めることが直ちに違法にはならない」と指摘しました。男性は控訴する方針ということです。
無期転換については、無期転換申込権が発生する5年の直前での雇止めに関するトラブルが増加。裁判も相次いでいて、2月の山口地裁判決(山口県立病院機構)、3月の福岡地裁判決(博報堂)などでは、不更新条項の効果を否定して「雇止め法理」を踏まえて雇い止めを無効とする判決が出ています。
◆厚労省が「取組支援ワークブック」公開
こうしたなか、厚生労働省では、「無期転換ルールに対応するための取組支援ワークブック」を作成・公開しました。このワークブックは、「企業が無期転換ルールに対応するにあたって問題となるポイントを中心に、ワーク形式の演習を交えながら解説したもの」で、平成30年の「多様な正社員及び無期転換ルールに係るモデル就業規則と解説(全業種版)」とともに使用して、無期転換ルールに適法に対応した社内制度を整備してほしいというものです。巻末には8ステップからなるワークシートが掲載されており、これを活用することで、無期転換ルールに対応するための手順を実践することができるとしています。
◆「多様化する労働契約のルールに関する検討会」始まる
また、厚労省では3月24日から、無期転換ルールの見直しを主要テーマのひとつとする検討会も始まりました。現行法下での適正な運用を心がけたいのはもちろんですが、今後の制度の見直しへの動きも気になるところです。
【厚生労働省「無期転換ルールに対応するための取組支援ワークブック」】
https://muki.mhlw.go.jp/policy/workbook_201125_01.pdf
【厚生労働省「多様化する労働契約のルールに関する検討会 第1回資料」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17519.html
職場における新型コロナウイルス集団感染事例にみる感染予防対策 (2021/05/01)
◆まん延防止等重点措置の適用地域が拡大
4月5日から宮城県、大阪府、兵庫県の一部地域、加えて12日からは東京都・京都府・沖縄県の一部地域にも、まん延防止等重点措置が適用されています。
特に、1月31日時点では日に5例の報告であった変異株への感染が、3月31日には23例に増える等、従来型より感染力が強いとされる変異株への感染増加が懸念されています。
◆職場における集団感染はどこで発生している?
厚生労働省がまとめた「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係る職場における集団感染事例」では、次の4つの事例が紹介されています。
- 事業場(執務室)
- 事業場(休憩スペースや社員食堂等)
- 事業場外(外勤時や移動時)
- 事業場外(勤務時間外等)
◆執務スペース以外の感染対策
多くの労働者が同時に休憩を取ったり更衣室の消毒が不十分であったり、食堂の飛まつ対策が不十分であったりしたために集団感染が発生しています。
対策としては、休憩時間等を分散したりスペースの消毒を定期的に実施したり、入退室後の手洗い・手指消毒を徹底したりするなどがあります。また、食堂における感染防止対策としては、座席数を減らす、座る位置を制限する、会話をしない、昼休み等の休憩時間に幅を持たせる、などがあります。
◆外勤時や移動時の感染対策
研修など宿泊を伴う業務において、集団活動や生活する場で密集していたことが原因で集団感染が発生したり、複数の労働者が車両で移動し、同乗した複数の労働者に感染が見つかったりしています。
対策としては、3密回避やマスクの着用、手洗い・手指消毒といった基本的な対策に加えて、日常生活用品の複数人での共用は避けるなどがあります。また、車両での移動についても、人との間隔を空け、マスクを着用し、換気を行うなどがあります。
◆勤務時間外等の感染対策
政府は4人以上の会食を行わないよう呼びかけていますが、就業時間後の飲み会などでの集団感染が発生しています。改めて一人ひとりが感染予防の行動をとるよう全員に周知することが求められます。
「令和3年度地方労働行政運営方針」にみる労務管理のポイント (2021/05/01)
◆気になるポイントは?
今後の労働基準監督署等による監督・指導方針の傾向がわかる「令和3年度地方労働行政運営方針」が策定されました。気になるポイントを見ていきましょう。
◆雇用の維持・継続に向けた支援
新型コロナへの緊急的な対応期を経て、ポストコロナへ政策の重心が移っていくようです。
産業雇用安定助成金やトライアル雇用助成金などを活用した、在籍型出向の活用や再就職支援を支援する、とあります。出向契約や出向に関する意向の確認などが重要となるでしょう。
◆女性活躍・男性の育児休業取得等の推進
女性活躍推進法の行動計画策定義務対象企業が、この4月より101人以上に拡大されています。また、新設が予定される、いわゆる男性版産休制度(子の出生後8週間に4週間の休みを取得可能とすること等が柱)も、制度の施行は2022年秋頃が予定されているようですが、どのような内容になるのか確認しておく必要があるでしょう。
◆テレワーク、労災
今や、やっている・知っていて当然となったテレワークに関しても、取組みを強化するようです。人材確保等支援助成金による支援があります。テレワークに関しては技術的な面からも、労働時間の管理、健康管理などの労務管理の面からも、これから人事労務担当者の必須の知識となるでしょう。
また、新型コロナ感染症による労災にも注意しておきましょう。医療関係の職種だけではなく、ビルメンテナンス業の清掃員や建設業の施工管理者・営業職従事者・建設作業員、港湾荷役作業員、販売店員でもコロナによる労災が認められた事例があります。
監督・指導は長時間労働の是正に関する監督指導が中心にはありますが、今年度の運営方針では、職場のハラスメントや勤務間インターバル、同一労働同一賃金などについても触れられていますので、昨今の傾向を反映した調査・指導にも注意が必要です。
「男性育休」を促進する育児・介護休業法等の改正案が上程されました (2021/04/01)
◆進まぬ男性育休の取得
令和元年度の男性の育休取得率は7.48%でした。過去最高ではあるものの、平成30年度 の7.16%から小幅の上昇にとどまっており、依然低水準です。政府は令和7年までに、これを30%まで引き上げる目標を掲げています。しかし、多忙化や収入減少への対応、また「育児は女性がやるのが当たり前」という意識からくるパタハラ(パタニティ・ハラスメント)等を背景に、実際には取得は難しいと感じている男性が多いようです。
◆育児・介護休業法の改正案
この状況を改善するため、男性の育児休業取得促進策を盛り込んだ育児・介護休業法と雇用保険法の改正案(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案)が閣議決定され、今国会に提出されました。
- 男性の育児休業取得促進のため、子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる柔軟な育児休業の枠組み(男性育休)の創設
- 休業の申出期限は、原則休業の2週間前まで
- 分割して取得できる回数は2回
- 労使協定を締結している場合は、労働者と事業主の個別合意により、事前に調整した上で休業中に就業することが可能
- 育児休業を取得しやすい雇用環境整備および妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の事業主への義務付け
- 育児休業(男性育休を除く)を分割して2回まで取得することを可能とする
- 常時雇用する労働者数が1,000人超の事業主に対し、育児休業の取得状況の公表を義務付け
- 有期雇用労働者の育児休業及び介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」であることという要件を廃止
- 育児休業給付に関する所要の規定の整備
成立すれば、上記2および5は令和4年4月1日から対応が求められます。育休制度の充実は、若い世代の人材確保にも大きな効果があります。これを機に、社内の体制について再考してみるのもよいでしょう。
【厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案」(概要)】
https://www.mhlw.go.jp/content/000743975.pdf
パート・有期社員待遇改善、どのくらい進んでる? (2021/04/01)
◆パートタイム・有期雇用労働法の施行
同一企業内における正社員(無期雇用フルタイム労働者)とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の不合理な待遇の差をなくすため、2020年4月にパートタイム・有期雇用労働法(以下、パート・有期雇用労働法という)が施行されました。中小企業への適用は、2021年4月1日からとなっています。
法の施行を前に行われた企業へのアンケートが(独)労働政策研究・研修機構から公表されましたが、今後の企業対応について参考になる点があります。
◆待遇差の理由等についてどの程度、説明できるか
パート・有期雇用労働法では、本人からの求めがあれば、正社員とパート・有期との待遇差の理由等を説明しなければならなりません。
「大半の待遇差を、説明できると思う」との回答は、パート・有期雇用労働法等について「内容まで知っている」企業では69.3%に上りましたが、内容がわからないなどとした企業では、45.1%にとどまっていました。
◆待遇差をなくすための取組み
正社員・正職員とそれ以外の労働者との間の不合理な待遇差をなくすためにこれまでに取り組んだ内容および今後取り組む予定の内容もまとめられています。
その中で、今後に行う予定とした割合のほうが多かった取組みとしては、次のものが挙がっています。
- 退職金の導入や、退職金の算定方法等の見直し
- 諸手当の導入や、算定方法等の見直し
- 派遣労働者に係る制度や活用のあり方の見直し
基本的な賃金の算定方法や算定要素の見直し等は当然として、上記のような点も今後の取組みとして意識する必要があるでしょう。
この調査はパート・有期雇用労働法の施行前に実施されたものですが、自社の現状としてはどうでしょうか。調査は賃金や賞与、手当や休暇制度等についての動向がわかる内容となっていますので、今後の取組みのために参考にしてみてはいかがでしょうか。
【労働政策研究・研修機構「『パートタイム』や『有期雇用』の労働者の活用状況等に関する調査結果 企業調査編」】
https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/207-1.html
2度目の緊急事態宣言で人手不足の企業は減少~帝国データバンク調査 (2021/04/01)
人手不足に対する企業の見解について、帝国データバンクが1月18日~31日にかけて全国の2万3,695社を対象に調査を実施し、1万1,441社(48.3%)から回答を得ました。
◆正社員不足は35.9%、公共工事が好調な「建設」や「情報サービス」で高い
現在の従業員の過不足状況を尋ねたところ、正社員について「不足」していると回答した企業は35.9%となりました。新型コロナウイルスの感染が拡大する直前だった2020年1月から13.6ポイント減少し、1月としては2014年(36.6%)とほぼ同水準まで低下しました。「適正」と回答した企業は46.5%で同5.6ポイント増加。「過剰」と回答した企業は17.6%で同8.0ポイント増となりました。
「不足」している企業を業種別にみると、「放送」が56.3%でトップとなりました。また、国土強靭化対策などにより公共工事が好調な「建設」(54.6%)や、IT人材の不足が続く「情報サービス」(53.3%)、「自動車・同部品小売」(51.8%)などが5割台で続いています。また、「電気通信」(44.4%)は在宅勤務などリモート需要の高まりから増加しています。
◆月次の人手不足割合は、2度目の緊急事態宣言が発出された2021年1月に再び減少
人手不足割合を月次の推移でみると、1度目の緊急事態宣言が5月に解除されて以降、人手不足割合は緩やかに上昇傾向にあったものの、再び同宣言が発出された2021年1月は減少となりました。
企業からは「2度目の緊急事態宣言で、荷動きは鈍くなった」といった声が多い一方で、「仕事が多く電気設備工事の現場職が少し足りていない」との意見もみられます。
◆非正社員の人手不足は19.1%、「電気通信」は51業種中で唯一の前年同月比増加
非正社員が「不足」していると回答した企業は19.1%となり(前年同月比10.1ポイント減)、1月としては2013年(16.4%)以来、8年ぶりに2割を下回りました。「適正」は65.3%(同3.4ポイント増)、「過剰」は15.5%(同6.6ポイント増)となりました。
◆「飲食店」の人手不足割合は大幅に減少、「旅館・ホテル」は過去最低に
新型コロナウイルスの影響が拡大するまで人手不足が顕著だった「飲食店」と「旅館・ホテル」について月次でみると、正社員・非正社員それぞれで大幅な減少傾向にあります。「GoToキャンペーン」の利用が広がった2020年10月・11月を山にして、2度目の緊急事態宣言の発出や「GoToキャンペーン」の一時停止も加わり、2021年1月にかけてさらに減少しました。
雇用調整助成金などの支援策はあるものの、これ以上の厳しい局面を招く前に新たな支援策の実施が求められています。
国税庁より「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」(源泉所得税関係) (2021/03/01)
◆概要
テレワークによる働き方が定着するなか、会社以外で業務にあたる際の通信費や光熱費の費用負担に係る税務について、2021年1月、国税庁よりFAQが公表されました。
FAQでは、手当の支給方法や業務使用部分の精算や計算方法等に係る税務の取扱いを示しています。ここでは、主な内容の項目を取り上げます。
◆企業が従業員に在宅勤務手当を支給した場合、従業員の給与として課税する必要があるか?
- 費用の実費相当額を精算する方法で従業員に対して支給する⇒課税する必要なし
- 在宅勤務手当として渡切りで支給するもの(必要費用として使用しなかった場合でも返還義務のないもの)⇒課税する必要あり
◆従業員が負担した通信費の計算方法
- 電話料金
「通話料」と「基本使用料」について示しており、通話料に関しては明細書等で確認できるため、その部分の企業の負担は非課税扱い。基本使用料については、次のような【算式】で算出したものについては非課税。
- インターネット接続にかかる通信料
「基本使用料」や「データ通信料」などについて、業務で使用した部分を合理的に計算する必要があり、次のような【算式】により算出したものについては非課税。
【算式】
業務のために使用した基本使用料や通信料等
=従業員が負担した1か月の基本使用料や通信料等×その従業員の1か月の在宅勤務日数/該当月の日数×1/2
【例】従業員が9月に在宅勤務を20日行い、1か月の基本使用料や通信料を1万円負担した場合の業務のために使用した部分の計算方法
10,000円×20日(在宅勤務日数)/30日(9月の日数)×1/2
=3,334円(1円未満切上げ)
このほか、電話料金に係る行う使用部分の計算方法や、レンタルオフィス等の利用に関する取扱いについても示しています。詳細は、以下をご確認ください。
【国税庁ホームページ】
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0020012-080.pdf
新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルス~厚生労働省調査より (2021/03/01)
厚生労働省から、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うストレスなど、国民の心理面への影響を把握する調査の結果が公表されました。
◆不安の対象
性別年代別の特徴としては、以下のとおりです。
- 全体的に、50歳未満の女性の不安に対する割合が高かった。
- 30歳~49歳の男性や 20歳~49歳女性では、「自分や家族の仕事や収入に関する不安」の割合が高かった。
- 女性の方が男性より「生活用品などの不足への不安」の割合が高かった。
- 15歳~19歳の人は「自分や家族の勉強や進学に関する不安」の割合が高かった。
また、産業別の特徴としては、「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」の人は、「自分や家族の仕事や収入に関する不安」の割合が高くなりました。
就業形態別の特徴としては、自営業主(内職者含む)や家族従業者、パート・アルバイト、派遣社員・契約社員・嘱託、無職(新型コロナウイルス感染拡大の影響による失職・離職)の人は、「自分や家族の仕事や収入に関する不安」の割合が高くなりました。
◆困ったこと・ストレスに感じたこと
以下の内容を挙げた人が多くなりました。
- 感染や感染症の情報に関すること……「自分や家族が感染するかもしれないこと」(75.5%)
- 生活に関すること……「医療用品・衛生用品(マスクなど)が入手困難なこと」(57.6%)「旅行やレジャーができないこと」(50.4%)
- 医療・福祉、仕事に関すること……「医療機関を受診しづらいなど医療サービスを受けづらくなったこと」(43.1%)
- 家族などに関すること……「家族・親戚・友人などに会えないこと」(47.9%)
◆日常生活における変化(新型コロナウイルス感染症の感染拡大前と比べて)
「睡眠時間」や「飲酒量」の変化については、増加した人と減少した人はほぼ同程度でした。「運動量」が減少した人が約4割、「ゲームをする時間」が増加した人が約2割いました。
厚生労働省では、特設サイト「こころの耳」の中で、新型コロナウイルス感染症に関連した不安やストレスと上手に付き合う方法について、専門家からのアドバイスや相談窓口などを紹介しています。従業員の皆様のメンタルヘルス対策にお役立てください。
【厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト~新型コロナウイルス感染症対策(こころのケア)」】
https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/coronavirus_info/
多くの企業で人の移動や対面の積極機会削減に尽力~帝国データバンク調査 (2021/03/01)
◆2度目の緊急事態宣言を受けた企業への影響を調査
新型コロナウイルスの感染者数の急拡大により、11都府県に対して2度目の緊急事態宣言が発出されたことを受け、帝国データバンクが1月に「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」を実施し、今月1日に結果を発表しました。
調査は今年1月18 日~31 日にかけて行われたもので、調査対象は全国2万3,695 社、有効回答企業数は1万1,441社(回答率48.3%)でした。新型コロナウイルス感染症に関する調査は、2020年2月以降毎月実施されているもので、今回が12回目ということです。
◆8割弱の企業で業績へマイナス影響
まず、新型コロナウイルス感染症による自社の業績への影響について、「マイナスの影響がある」と答えた企業は78.8%で、4カ月連続で8割を下回りました。一方で、「影響はない」とした企業が11.1%、「プラスの影響がある」(「既にプラスの影響がある」と「今後プラスの影響がある」の合計)とした企業は4.3%でした。
多くの企業でマイナスの影響がある一方、コロナ対策関連事業を営む企業ではプラスの影響があると回答しているものとみられます。
◆多くの企業で人の移動や対面の積極機会削減に尽力
次に、緊急事態宣言を受けて、何らかの「対応を講じている」とした企業は89.9%と、9割近くに達しました。一方で、「緊急事態宣言以前と変わらない」とした企業は8.6%ありました。
また、「対応を講じている」企業にその内容を質問したところ、上位の回答は、「都道府県をまたぐ出張や打ち合わせの削減」が 55.6%で最も高く、次いで「対面営業や打ち合わせの削減」(51.8%)、「従業員に不要不急の外出自粛などの呼びかけ」(51.7%)、「非接触の会議や打ち合わせの推奨」(41.2%)、「イベントの開催・参加の中止(展覧会など)」(39.2%)となりました。
なんらかのかたちで人の移動や対面による接触の削減を挙げている企業が多いことがわかります。
「資金繰り対策(金融機関への融資相談など)」は15.6%、「営業時間の短縮」は14.0%という結果でした。
【帝国データバンク「<速報>新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2021 年1月)」】
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210201.html
「36協定届」が新しくなります (2021/02/01)
◆改正の内容
2021年4月1日より、36協定届の様式が新しくなります。
改正内容は、大きく2点あります。
- 36協定届における押印・署名の廃止
- 36協定の協定当事者に関するチェックボックスの新設
◆36協定届における押印・署名の廃止
労働基準法施行規則等の改正により、使用者の押印および署名が不要になりました(記名は必要)。
*36協定と36協定届を兼ねる場合の留意事項
労使で合意したうえで労使双方の合意がなされたことが明らかとなるような方法(記名押印または署名など)により36協定を締結すること
◆36協定の協定当事者に関するチェックボックスの新設
労働者代表(事業場における過半数労働組合または過半数代表者)についてチェックボックスが新設されています。
*過半数代表者の選任にあたっての留意事項
- 管理監督者でないこと
- 36協定を締結する者を選出することを明らかにしたうえで、投票、挙手等の方法で選出すること
- 使用者の意向に基づいて選出された者でないこと
◆新旧様式の届出の適用
2021年3月31日以前であれば、4月1日以降の期間を定める協定であっても、原則、旧様式を用いることになります。しかし、新様式を使用することも可能で、その場合は、協定当事者の適格性にかかるチェックボックスにチェックする必要はありませんが、使用者の記名押印または署名が必要になります。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえ、3月31日以前であっても、使用者や労働者の押印または署名がなくても提出することができます。
また、4月1日の施行日以降であっても、当分の間旧様式を用いることもできます。その際の留意点は次のとおりです。
- 旧様式の押印欄を取り消し線で削除する
- 協定届・決議届については、旧様式に、協定当事者の適格性にかかるチェックボックスの記載を直接追記する、または同チェックボックスの記載を転機した紙を添付する(チェックボックスにチェックがないと、形式上の要件に適合している協定届・決議届と認められませんので、注意が必要です)
※新様式は以下のURLからダウンロードして使用できます。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/index.html
【厚生労働省リーフレット】
https://www.mhlw.go.jp/content/000708408.pdf
3月1日から障害者雇用率が引き上げられます (2021/02/01)
◆改正の概要
障害に関係なく、希望や能力に応じて、誰もが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」実現の理念のもと、障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)において、事業主には、障害者雇用率以上の割合で対象障害者を雇用する義務が課されています。この法定の障害者雇用率が、令和3年3月1日から0.1%引き上げられることになりました。
改正の経緯としては、平成30年4月1日施行の改正で、法令上は、2.0%から「2.3%」に引き上げられました。ただし、経過措置として、平成30年4月1日から起算して3年を経過する日より前に廃止することして、当分の間は、「2.2%」とすることとしていました。
この経過措置の廃止の期日が、「令和3年3月1日」とされ、結果的に、同日から法令上の「2.3%」が適用されることになりました。
◆障害者雇用率
事業主(国および地方公共団体を除く)は、その雇用する対象障害者(※)である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(その数に1人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる)以上であるようにしなければなりません(障害者雇用促進法43条1項)。
※対象障害者とは、身体障害者、知的障害者または精神障害者(精神保健および精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る)をいいます(障害者雇用促進法37条2項)。
この障害者雇用率が、3月1日から以下のとおりとなります(いずれも同日前より0.1%引上げ)。
- 一般事業主(一定の特殊法人を除く)…………………………100分の2.3
- 一定の特殊法人………………………………………………………100分の2.6
- 国・地方公共団体(都道府県等の教育委員会を除く)……100分の2.6
- 都道府県等の教育委員会…………………………………………100分の2.5
◆障害者雇用率の引上げの影響
障害者雇用率の引上げに伴い、対象障害者を1人以上雇用する義務のある一般事業主(一定の特殊法人を除く)は、常時雇用する労働者の数が43.5人以上の事業主となります(1人÷100分の2.3=43.478≒43.5人)。
この事業主には対象障害者の雇用義務のほか、次の義務・努力義務が課せられます。
- 毎年、6月1日現在における対象障害者である労働者の雇用に関する状況を、翌月15日までに、管轄公共職業安定所長に報告する義務(障害者雇用促進法43条7項)
- 障害者雇用推進者を選任する努力義務(障害者雇用促進法78条)
企業の同一労働同一賃金への対応状況は? (202/02/01)
◆4月から全面施行「同一労働同一賃金」
パートタイム・有期雇用労働法の施行に伴って、企業には正社員と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消等が求められています。2021年4月から中小企業にも全面的に適用されるこの「同一労働同一賃金」。完全施行を前に準備を進めている企業も多いところです。企業の対応状況はどのようになっているのでしょうか。
◆「同一労働同一賃金」ルール 認知度は6割
独立行政法人 労働政策研究・研修機構が実施した調査(10 月1日現在の状況について調査。
有効回答数(有効回答率) 9,027 社(45.1%))によれば、同一労働同一賃金ルールについて「内容を知っている」との回答が6割超となっています(大企業(常用雇用者 301人以上)で93.6%、中小企業(同 300人以下)で63.3%)。
「内容はわからないが、同一労働同一賃金という文言は聞いたことがある」は31.4%(大企業5.2%、中小企業32.6%)となっており、適用前の中小企業ではまだ周知が不十分である状況もわかります。
◆対応完了は約15%
同調査によれば、同一労働同一賃金ルールへの対応(雇用管理の見直し)について、「既に必要な見直しを行った(対応完了)」が14.9%(大企業27.5%、中小企業14.1%)、「現在、必要な見直しを行っている(対応中)」が11.5%(大企業23.9%、中小企業10.8%)、「今後の見直しに向けて検討中(対応予定)」が19.5%(大企業 25.7%、中小企業 19.3%)となっています。
約半数が「必要な見直しを行った・行っている、または検討中」である一方、「従来通りで見直しの必要なし(対応完了)」が34.1%(大企業16.5%、中小企業35.1%)、「対応方針は、未定・わからない」が19.4%(大企業6.4%、中小企業20.1%)となっており、まだ手をつけていないという企業も多いようです。
◆不合理な待遇差禁止義務への対応が4割
対応策にも様々ありますが、本調査では(複数回答)、「左記(正社員と職務・人材活用とも同じ)以外のパート・有期社員の待遇の見直し(不合理な待遇差禁止義務への対応)」が4割を超え(42.9%)、「正社員とパート・有期社員の、職務分離や人材活用の違いの明確化」(19.4%)、「正社員と職務・人材活用とも同じパート・有期社員の待遇の見直し(差別的取扱い禁止義務への対応)」(18.8%)、「就業規則や労使協定の改定」(18.6%)、「労働条件(正社員との待遇差の内容・理由を含む)の明示や説明」(17.0%)、「パート・有期社員の正社員化や正社員転換制度の導入・拡充」(12.8%)、「正社員を含めた待遇の整理や人事制度の改定」(10.7%)、「正社員の待遇の見直し(引下げ等)」(6.1%)等が続いています。
これからという企業も、自社の状況をみながら具体的な対応を検討していきたいところです。
【独立行政法人 労働政策研究・研修機構「『パートタイム・有期契約労働者の雇用状況等に関する調査』結果」PDF】
https://www.jil.go.jp/press/documents/20201225.pdf
雇用調整助成金の今後について (2021/01/03)
◆令和3年年2月いっぱいで現行の特例措置は終了予定
新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置として、令和3年2月末まで日額上限額の引上げ等がされていますが、3月以降段階的に縮減し、5~6月にリーマンショック時並みの特例とするとの方針が令和2年12月8日にまとめられた総合経済対策で表明されています。
そして、令和3年1月末および3月末時点の感染状況や雇用情勢が大きく悪化している場合、感染が拡大している地域・特に業況が厳しい企業について特例を設ける等、柔軟に対応するとされています。
◆3月以降の雇用調整助成金の特例措置はどうなる?
参考としてリーマンショック時の主な特例措置の内容を紹介すると、次のとおりです(実施時期にはばらつきがあります)。
- 助成率:中小企業 4/5、大企業 2/3(コロナ特例措置では雇用を維持している場合、中小企業10/10、大企業3/4)
- 生産指標要件:最近3カ月の生産量等が直前3カ月または前年同期と比べて原則5%以上減少(コロナ特例措置では1カ月5%以上減少)
- 対象被保険者:被保険者期間6カ月未満の者も助成(コロナ特例措置では緊急雇用安定助成金により被保険者でない労働者も助成)
- 支給限度日数:3年300日(コロナ特例措置では令和2年4月1日から令和3年2月末までの期間+1年100日、3年150日)
◆3月以降は在籍型出向による雇用維持支援にシフト
総合経済対策では、「産業雇用安定助成金(仮称)」を創設し、出向元と出向先の双方を支援するとともに、出向元企業への雇用調整助成金による支援、労働移動支援助成金による受入れ企業への支援も引き続き実施するとされています。
現在従業員を休業させ雇用調整助成金を活用している企業においては、上記のような変更への対応を検討しておく必要があるでしょう。
◆人手不足企業向けには新たな雇入れ助成も
コロナ禍による離職者等で、就労経験のない職業に就くことを希望する求職者を一定期間試行雇用する事業主に対する賃金助成制度(トライアル雇用助成金)を創設するとともに、紹介予定派遣を通じた正社員化(キャリアアップ助成金)を促進するとされています。
人手不足に悩んでいる企業においては、こうした制度の活用による人材確保も検討してみるのもよいかもしれません。
リモートワークの実態は? (2021/01/03)
◆リモートワーク、どのくらいやってるの?
東京商工リサーチが実施したアンケート調査(令和2年11月実施、有効回答1万1,076社)の結果をみると、在宅勤務・リモートワークを「現在も実施している」企業は30.7%にとどまり、導入後に「取りやめた」企業は25.4%にのぼっているとのことです。
また、リモートワークを実施している企業について、従業員の何割が実施しているかを尋ねたところ、割合の大きい順に、「1割」29.80%、「2割」13.92%、「3割」12.85%、「10割」11.14%、「5割」10.95%という結果でした。業務がリモートに向かないというケースもあるのでしょうが、実態としてはこのような実施率のようです。
◆現役世代にとっての新型コロナ
現役世代での新型コロナによる死亡率も、日本では高くないのが実態のようです。新型コロナの死亡者の平均年齢は79.3歳で、ほぼ男性の平均寿命(80.98歳)と同じであり、健康寿命(男性72.14歳、女性74.79歳)との比較でみると男女とも死亡者の平均年齢のほうが上回っているという状況だそうです。
http://agora-web.jp/archives/2049200.html
経団連がコロナ対策のガイドラインを改訂し、出張について「見合わせ」から「注意」に変更するなど、不合理な対策は改めようという動きもある一方、まだまだ自粛一辺倒のような空気もあります。会社が立ち行かなくなっては元も子もありませんから、ワクチンの開発など期待せずに、感染の現状について自社で判断しながら、できることからやっていくしかないのでしょう。
◆雇調金などもあるけれど……
前述のアンケート調査では、「1年以内に廃業を検討する可能性がある」と回答した中小企業が42.2%に上っています。11月上旬時点の調査結果なので、第3波を迎えているとされる現時点では、増加している可能性もあります。
特例措置の期間が延長された雇用調整助成金などの利用も、一時的には考えられますが、いつまでも頼れるものではありません。
自粛継続によって経済がシュリンクし、自殺率が高まるなど、社会的な問題も深刻となりつつあります。医療崩壊を防ぐには、新型コロナを指定2類感染症としている取扱いの見直しも検討が必要かもしれません。経済回復との両立に向け、感染防止に向けた取り組みの再点検が求められます。
【株式会社東京商工リサーチ 第10回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査】
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20201125_01.html
仕事・子育てへのコロナ禍の影響(連合調べ) (2021/01/03)
◆コロナ禍の働き方への影響
全回答者(1,000名)に、新型コロナウイルス感染拡大によって働き方にどのような変化があったか聞いたところ、「働き方に変化はない」が53.3%で最も高くなった一方、「テレワーク勤務を行うようになった」は24.6%、「時差出勤を行うようになった」は15.1%、「労働時間が減った」は14.8%、「労働時間が増えた」は5.9%、「副業・兼業をはじめた」は3.2%となりました。働き方に変化があったという人の中では、感染症対策として、テレワークや時差出勤を行うようになったという人が多いようです。
年代別に見ると、「テレワーク勤務を行うようになった」と「時差出勤を行うようになった」は上の年代ほど高くなる傾向が見られ、最も高くなった50代では「テレワーク勤務を行うようになった」は37.8%、「時差出勤を行うようになった」は22.2%となりました。
◆コロナ禍による保育園・幼稚園休園時、日中の子どもの面倒は誰が見たか
コロナ禍により保育園や幼稚園が臨時休業となっていたときの子どもの世話の状況について聞きました。保育園・幼稚園に通っている子どもがいる人(828名)に、新型コロナウイルス感染拡大によって、保育園・幼稚園が休園になっていたとき、自身の家庭では、日中、誰が子どもの面倒を見ていたか聞いたところ、「自分」(60.9%)が最も高く、「配偶者・パートナー」(54.7%)、「自分や配偶者・パートナーの親」(18.4%)が続きました。男女別に見ると、男性では「配偶者・パートナー」(84.5%)、女性では「自分」(79.1%)が最も高くなりました。
では、日中に子どもの面倒を見ていたとき、どのように対応していた人が多いのでしょうか。日中の子どもの面倒を自身で見ていた人(504名)に、新型コロナウイルス感染拡大による保育園・幼稚園の休園時、日中の子どもの面倒を自身で見ていたとき、どのように対応したか聞いたところ、「在宅勤務を行った」(29.2%)が最も高く、次いで、「年次有給休暇を取得した」(25.0%)、「年次有給休暇以外の有給休暇を取得した」(18.7%)となりました。
在宅勤務制度の活用や有給休暇の取得で対応していたという人が多いようです。男女別に見ると、男性では「在宅勤務を行った」が45.0%と、半数近くとなり、女性では「欠勤して対応した」が18.3%と男性(6.3%)の3倍になりました。
◆コロナ禍以降、子育てにかかわる時間は変わったか
コロナ禍は子育てにかかわる時間にどのような変化をもたらしたのでしょうか。全回答者(1,000名)に、新型コロナウイルス感染拡大以降、子育てにかかわる時間はどのように変わったか聞いたところ、「非常に増えた」は9.7%、「やや増えた」は38.1%で、合計した『増えた(計)』は47.8%、「以前と変わらない」は49.2%となりました。外出自粛や保育園・幼稚園の臨時休業などにより、子どもと一緒にいる時間が増え、育児に携わる時間が長くなったという人が多いのではないでしょうか。男女別に見ると、子育てにかかわる時間が増えた人の割合は、女性では51.8%と、男性(43.8%)と比べて8.0ポイント高くなりました。