過去の事務所便り 2018年

パワハラ防止対策、厚生労働省は法制化を検討 (2018/12/03)

◆労使の主張は依然平行線だが…

11月6日の第10回労働政策審議会雇用環境・均等分科会で、職場のパワハラ防止対策について、厚生労働省は3つの案を示しました。

案のうち、(1)パワハラ行為を禁止して加害者への損害賠償請求をできるようにする、(2)事業主にパワハラ防止措置を義務づける、の2つ は法制化に関するもので、もう1つが指針の策定(法的強制力を持たせる案とそうでない案の2案)です。

労働者側と使用者側で意見が対立していますが、公益委員からは社会的情勢を考えると法制化は当然との意見も出ています。

これらは年内にまとめる報告書に盛り込まれ、来年中に関連法案を国会に提出する方針とされています。

◆事業主にはどんな防止措置が求められるのか

6日の分科会では、今年3月30日公表の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」より抜粋して、(1)事業主の方針等 の明確化、周知・啓発、(2)相談等に適切に対応するために必要な体制の整備、(3)事後の迅速・適切な対応、(4) (1)~(3)の対応と併せて行う対応としてプライバシー保護や相談・協力者の不利益取扱い禁止、という4つが示されました。

◆労災認定件数にみるパワハラ問題

2017年度の精神障害に関する労災補償状況をまとめた資料によれば、請求件数は1,732件で前年度比146件増、支給決定件数は506 件で前年度比8件増です。このうち、出来事別の決定件数は「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が186件、うち88件が支給決 定され最も多くなっています。対人関係では、「上司とのトラブルがあった」も320件と決定件数が多く(支給決定は22件)なっています。

6日の分科会での公益委員の意見も、こうした資料を踏まえたものと考えられます。

◆相談体制の強化も図られている

厚生労働省の「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、相談、助言・指導の申出、あっせん申請に係る件数のすべてで「いじ め・嫌がらせ」が72,067件で最も多く、同省は2019年度より都道府県労働局の相談員を増やし、夜間や休日も対応する相談窓口を設けて 相談体制を強化するとしています。

企業においては、行政がパワハラ問題防止に力を入れていることだけでなく、採用や定着に影響することも踏まえ、対策を検討する必要があると 言えるでしょう。


来年4月から労働条件の通知がFAXやメールでも可能になります! (2018/12/03)

◆労働条件通知書がペーパレス化に!

厚生労働省は、現在、労働基準法第15条で定められている労働条件の「書面」での通知について、来年の4月1日からFAXや電子メール等で も可能にし、規制を緩和させることを決めました。書面として印刷できれば問題ないと判断したことによるもので、企業にとっては印刷や郵送にか かるコストや手間の削減ともなり、利便性が高まることが期待されます。

◆労基法施行規則を改正

具体的には、今年の9月7日に公布された働き方改革法関連法に基づく省令で、労働基準法施行規則第5条第4項に下記の下線部分が追加されま した(2019年4月1日施行)。

【労働基準法施行規則第5条】
第4項 法第15条第1項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当 該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。

  1. ファクシミリを利用してする送信の方法
  2. 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信の方法 (当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)

◆本人の希望が条件

今回の規制緩和は、労働者がFAXや電子メール等での通知を希望することが条件となっています。本人に通知方法を確認し、FAXや電子メー ル等での受取りを希望しない場合は、今までどおり書面で通知しなければなりません。

また、電子メールで送信する場合の具体的なファイル形式(メールの本文または一定形式の添付ファイルに限られるのか、どちらでもよいのか 等)や、本人が確実に受け取ったかどうかの確認の要否などについては、現時点では明らかになっていません。施行までになんらかの基準が示され る可能性もありますので、注意が必要です。


平成30年就労条件総合調査の結果より (2018/12/03)

◆平成30年就労条件総合調査

厚生労働省は、平成30年就労条件総合調査の結果を公表しました。この調査は、企業における就労条件の現状を明らかにすることを目的として 実施されているもので、今回公表されたものは、平成30年1月1日現在の状況等について1月に行われた調査結果です(調査対象:常用労働者 30人以上の企業6,370社(有効回答3,697 社))。

◆平成29年の年次有給休暇の取得率は51.1%

調査によると、平成29 年(または平成28会計年度)1年間の年次有給休暇の付与日数は18.2日(平成29年調査18.2日)、そのうち労働者が取得した日数は9.3日(同9.0日)で、取得 率は51.1%(同49.4%)となったそうです。付与日数、取得日数共に、企業規模が小さいほど下がる傾向にあります。年休の取得について は2019年4月施行の労基法の改正事項もありますので、気にしていきたいところです。

◆勤務間インターバル制度の導入状況

また、政府が導入を推進している勤務間インターバル制度については、導入状況別の企業割合をみると、「導入している」が1.8%(平成29 年調査1.4%)、「導入を予定または検討している」が9.1%(同5.1%)、「導入予定はなく、検討もしていない」が89.1%(同 92.9%)となっています。昨年より若干増加していますが、まだ普及は進んでいない状況のようです。

また、1,000人以上規模の企業では導入割合は5.1%であるのに対し、30~99人規模の企業では1.4%と、母数が小さいながらも差 が大きくなっています。導入しない理由として「当該制度を知らなかったため」との回答が3割近くもあることから、制度の周知も求められるとこ ろでしょう。

◆退職給付(一時金・年金)制度

退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は80.5%となっています。企業規模別にみると、1,000人以上が92.3%、 300~999人が91.8%、100~299人が84.9%、30~99人が77.6%となっています。退職年金制度がある企業について、 支払準備形態(複数回答)別の企業割合をみると、「厚生年金基金(上乗せ給付)」が20.0%、「確定給付企業年金(CBPを含む)」が 43.3%、「確定拠出年金(企業型)」が47.6%となっており、平成25年の調査と比べると、厚生年金基金の割合は半分未満となり、その 分、確定給付企業年金、確定拠出年金の割合が増えています。

平成30年就労条件総合調査の結果は、厚生労働省のホームページにも掲載されています。会社の状況と比べながら、会社が全体でいまどの位置 にいるのか把握してみるのもよいでしょう。

【厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」】
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/11-23.html


人手不足で増えている「自己都合退職トラブル」 (2018/11/02)

◆自己都合退職トラブルとは

退職の意思を会社に伝えようとする従業員に対し、会社が退職を認めないという「自己都合退職トラブル」が増加しています。「上司が面談に応 じない」「退職届を受理しない」「離職票さえ渡さない」「有給休暇を取得させない」「辞めた場合は損害賠償請求すると脅迫する」などがその代 表例です。

◆解雇トラブルの相談件数と逆転

昨年度、都道府県労働局および労働基準監督署に寄せられた民事上の個別労働紛争相談のうち、「自己都合退職」は2番目に多い38,954件 でした。この件数は直近10年間で増え続けており、平成27年度を境に「解雇」を上回っています(厚生労働省「平成29年度個別労働紛争解決 制度の施行状況」)。

かつての不況下においては解雇トラブルがよくみられましたが、人手不足のいまは自己都合退職トラブルが多い時代です。この傾向はしばらく続 くでしょう。

◆民法上は2週間で退職できる

労働者は法律上、期間の定めのない雇用の場合、いつでも雇用の解約の申入れをすることができます。また、会社の承認がなくても、原則として 解約の申入れの日から2週間を経過したとき、雇用契約は終了します(民法627条1項)。

就業規則の「退職」の項目においては、業務の引継ぎ等の必要性から、「退職希望日の少なくとも1カ月前に退職届を提出」等と規定することも 多いですが、この規定のみを理由に退職を認めないということはできません。

◆従業員の退職でもめないために

一度退職を決意しその意思を表明している従業員に対し、慰留・引き留めを行ったところでさほど効果はないものですし、度を過ぎれば前述のよ うな法的案件にもなりかねません。くれぐれも感情的な対応はせず、淡々と引継ぎや退職手続をさせましょう。

最近では、「退職代行ビジネス」とわれる、民間企業が本人に代わって退職手続を行うサービスを利用して、会社との自己都合退職トラブルを防 ぐ退職者も増えています。この場合、本人と面と向かうことなく、会話もないまま退職が完了してしまいます。

従業員が自己都合退職に至る動機はさまざまですが、そもそも「辞めたい」と思わせない会社づくりも大切です。


従業員の通勤事故リスク、対策を取っていますか? (2018/11/02)


◆会社が通勤時の事故発生をめぐり責任追及されるケースが増加

10月1日、事故死したトラック運転手の遺族が、原因は過重労働だとして会社に約1億円の損害賠償を求める訴えを起こしました。

同様に、通勤途中で発生した事故をめぐり会社が責任追及されるケースが増えています。

◆上司も書類送検されたケース

2017年10月、業務で公用ワゴン車を運転中に兵庫県川西市選挙管理委員会の職員が5人を死傷させる事故が発生しました。職員は、当時、 参議院選挙対応で約1カ月間休みがなく、200時間超の時間外労働を行っていました。2018年4月23日、運転していた職員は自動車運転処 罰法違反(過失致死傷)で書類送検され、また過労状態を知りながら運転を命じたとして、上司も道路交通法違反(過労運転下命)で書類送検され ています。

◆裁判で和解が成立したケース

2018年2月8日、横浜地方裁判所川崎支部において、ある事件の和解が成立しました。この事件は、バイクで帰宅途中に居眠り運転で事故死 した従業員の遺族が、原因は過重労働だとして会社に損害賠償を求めたもので、会社が7,590万円支払うこととなりました。従業員は約22時 間の徹夜勤務明けで、事故前1カ月の時間外労働は約90時間でした。

◆裁判官は通勤中の会社の安全配慮義務に言及

上記事件で、裁判所は、通勤時にも会社は社員が過労による事故を起こさないようにする安全配慮義務があると認定し、公共交通機関の利用を指 示するなどして事故を回避すべきであったと指摘しています。

和解の内容には、再発防止策として勤務間インターバル制度の導入、男女別仮眠室の設置、深夜タクシーチケットの交付などの実施も盛り込まれ ました。これまで通勤中の事故で会社の責任を認めたものはほとんどなかったため、会社の安全配慮義務が従業員の通勤についても認められること を示した画期的な判断とされています。

◆「労働時間把握」だけではリスクを回避できない

働き方改革法では、労働時間把握が使用者の義務として課されることとなりました。

しかし、会社に求められるのは、省令に定める方法により労働時間を記録等するだけでなく、過労状態で従業員が事故を起こさないような具体的 対策を講じることであると認識する必要があるでしょう。


高齢者の就業者数が過去最高に~総務省調査より (2018/11/02)


◆高齢者の就業者数が807万人と過去最高に

総務省は、「敬老の日」(9月17日)にあたって、「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」として、統計からみた我が国 の65歳以上の高齢者についての取りまとめを公表しています。

取りまとめによれば、高齢者の就業者数は14年連続で増加しており、807万人と過去最多だそうです。また、就業者数増に占める高齢者の割 合も、12.4%と過去最高となっています。高齢就業者数は、「団塊の世代」の高齢化などを背景に2013年以降大きく増加していますが、 「団塊の世代」が70歳を迎え始めたことなどにより、70歳以上で主に増加しているようです。

◆高齢者就業者は「卸売業、小売業」「農業、林業」などで多い

高齢就業者が多い業種としては、主な産業別にみると、「卸売業、小売業」が125万人と最も多く、次いで「農業、林業」が99万人、「製造 業」が92万人、サービス業(他に分類されないもの)」が91万人となっています。なお、各産業の就業者総数に占める高齢者の割合をみると、 「農業、林業」が49.3%と最も高く、次いで「不動産業,物品賃貸業」が24.0%、「サービス業(他に分類されないもの)」が21.2% となっています。

特に「農業、林業」「製造業」などは、かねてより高齢化の進展が指摘されている業界です。

◆これからも増加が予想される高齢就業者

国際比較でみても、日本の高齢者人口の割合は、世界最高となっており、高齢者の就業率も23.0%と、主要国の中で最も高い水準にあるそう です。この傾向は今後も加速することが予想されます。

調査によれば、高齢雇用者の4人に3人は非正規の職員・従業員となっており、高齢者の非正規の職員・従業員は、10年間で2倍以上に増加し ているといいます。
今後も、企業としては、高齢者の雇用に関する諸問題には注視していきながら、適切な対応をしていきたいところです。

【総務省「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」】
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1130.html


厚生年金のパート適用、さらなる拡大を検討 (2018/10/02)

◆要件緩和で加入者200万人増?

厚生労働省が、パートタイマー(短時間労働者)の厚生年金加入の適用拡大にむけ、検討会を設置するとの報道がありました。要件を緩和し、最 大200万人の加入者増を見込むとしています。

◆パートタイマーの厚生年金適用範囲

厚生年金保険は、直近で2016年10月に適用拡大が行われました。以降、パートタイマーの適用範囲は下記A・Bのいずれかになっていま す。

A 所定労働時間および所定労働日数が一般社員の概ね4分の3以上(一般的に所定労働時間「週30時間以上」)。

B 次の①~⑤をすべて満たす人(①所定労働時間「週20時間以上」/②月額賃金「8.8万円以上」/③雇用(見込)期間「1年」以上/④学生でない/⑤勤務企業の従業員規模 501人以上」(※2017年4月より、500人以下も労使合意にて加入可))。

いま検討されているのは、上記②月額賃金を「6.8万円以上」と引き下げることや、⑤企業規模「501人以上」を撤廃するこ等です。

◆労働時間を延長して厚生年金に加入したいパートタイマー

2016年の適用拡大の際、新規加入者は25万人程度と予想されていましたが、実際には37万人の加入者増となりました(「2018年4月 4日 社会保障審議会年金部会」議事録)。

このことについて調査した、労働政策研究・研修機構「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査(略)働き方の変化等に関する調査」に よると、2016年の適用拡大に伴い働き方が「変わった」パートタイマーの半数以上が、「厚生年金・健康保険が適用され、かつ手取り収入が増 える(維持できる)よう所定労働時間を延長した」と回答しており、「適用されないよう所定労働時間を短縮した」という回答を上回っています。

多くのパートタイマーは、2016年の適用拡大をきっかけとして、より長時間働くワークスタイルへ変化したといえます。

◆適用拡大への企業対応

今回の適用拡大はまだ検討中の段階ですが、「(労働時間を延長して)厚生年金加入を希望するパートタイマー」はこれからも増えるのではない でしょうか。

上記調査では、さらなる適用拡大が行われた場合の企業対応として、「基本的には短時間労働者の希望に基づき、出来るだけ加入してもらう」が 最多の4割超でした。企業にとっても適用拡大は、パートタイマーを積極的に活用する良いきっかけなのかもしれません。


70歳雇用時代が来る? 政府が検討開始 (2018/10/02)

◆今秋から検討開始

政府は、未来投資会議と経済財政諮問会議で高齢者が希望すれば原則70歳まで働ける環境整備に向けた検討を、今秋から始める方針です。

現在は高年齢者雇用安定法で原則65歳までの雇用が義務づけられていますが、同法を改正し、70歳雇用を努力目標とすることを検討するとし ています。

◆2019年度は補助金拡充

法改正に先駆け、まず高年齢者雇用に積極的な企業への補助金を拡充するとしています。来年度予算案で高齢者の中途採用を初めて実施した企業 への補助金を拡充し、「トライアル雇用」から始められるようにすることで企業に高齢者雇用への取組みを促す方針です。

◆賃金大幅ダウン避ける仕組みも検討

内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によれば、現在仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」と回答しており、「70歳 くらいまで」が約22%、「75歳くらいまで」が11.4%、「80歳くらいまで」が4.4%と、全体の8割近い人が高齢期にも高い就業意欲 を持っています。

しかし、現在は定年後に継続して働く場合でも高年齢者雇用給付や在職老齢年金との兼合いで大幅に賃金がダウンする仕組みとなっています。

このため、働く意欲や能力のある人が大幅に賃金が下がらないようにするため、評価・報酬体系を官民で見直すとしています。公的年金を70歳 以降に受給開始できるようにすることも検討される予定で、70歳超から年金を受け取る場合には受取額を大幅に加算する案も出ています。

◆現状は「再雇用」が8割

ただし、企業における現在の高齢者雇用は、定年を65歳まで延長している企業が17%、定年廃止は2.6%で、約8割が「再雇用」です。

政府は、高齢者雇用で成功している企業を参考に、今秋以降、経済界などとも慎重に協議を進めるとしています。


「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の一部改正 (2018/10/02)

◆平成27年改正による「賞与に係る報酬」

厚生労働省の通知「健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱いについて」の中で、報酬と賞与の取扱いが定められていま す。大まかに言って、年間を通じて支払い回数が3回までのものは「賞与」、4回以上のものは「報酬」とされています。それぞれ「標準賞与 額」、「標準報酬月額」として保険料算定の基礎にされます。

しかし、事業者の中には保険料を安くするために、特殊な賞与の支払い方をする例がありました。例えば、年間100万円の賞与を⒉回にわけて 支払うと標準賞与額100万円として保険料が算定されますが、100万円を12分割し、6月と12月だけ多く支払い、その他の月は500円支 払うとします。そうすると、その賞与は「報酬」になり、かつ「随時改訂」の規定により算定され、年間の保険料は標準賞与額によるものより安く なります。「随時改訂」が3カ月平均で求めることを逆手に取っているわけです。

これを防ぐため、平成27年改正により、1年間を通じ4回以上支払われる賞与は「通常の報酬」ではなく「賞与に係る報酬」として、1年間の 支払い合計額の12分の1を報酬額とすることとされました。

◆今般の改正による「通常の報酬」、「賞与に係る報酬」、「賞与」の明確化

平成30年7月30日に出された通知によると、上記の通知に下記の2点が加わりました。

① 通知にいう「通常の報酬」、「賞与に係る報酬」及び「賞与」は、名称の如何にかかわらず、二以上の異なる性質を有するものであることが諸規定又は賃金台帳等から明らかな場 合には、同一の性質を有すると認められるものごとに判別するものであること。

② 通知にいう「賞与」について、7月2日以降新たにその支給が諸規定に定められた場合には、年間を通じ4回以上の支給につき客観的に定められているときであっても、次期標準 報酬月額の定時決定(7月、8月又は9月の随時改定を含む。)による標準報酬月額が適用されるまでの間は、賞与に係る報酬に該当しないものと すること。

厚生労働省の示すQ&Aによると、本通知の趣旨は、従前の通知に示す取扱いをより明確化し徹底を図ることです。具体的には、

①については、諸手当等の名称の如何に関わらず、諸規定又は賃金台帳等から、同一の性質を有すると認められるもの毎に判別するものであるこ と

②については、諸手当等を新設した場合のような支給実績のないときに、翌7月1日までの間は「賞与」として取り扱うものであること

とされています。

本通知は、周知期間を確保するため、発出から半年の周知期間を設けていますが、本通知の適用日以降に受け付けた届書から本通知による取扱い を適用することとされており、適用日前に受け付けた届書の内容を見直すことは要しないとされています。


ポスト待ちで平均賃金減!? 氷河期世代、団塊ジュニア世代、バブル期入社世代…労働人口を支える40代社員の課題に企業はどう対応すべ きか (2018/09/02)

◆40代社員が足りない!?

昨年、「40代前半の社員が少ない」との某大手企業トップのコメントが話題になりました。

40代前半層といえば、就職氷河期世代に該当します。つまり、採用を極端に少なく調整した時期で、2018年の新卒求人倍率が1.78倍な のに対し、氷河期の底であった2000年はたったの0.99倍(リクルートワークス研究所「大卒求人倍率調査」より)だったのです。

「その結果だろう。何を今さら」といった反感がネットを中心に飛び交いました。

◆企業が求める40代

「氷河期世代は採用人数も少ないため、出世もしやすい」と勘違いされがちですが、企業が求める40代は、例えば20代で経験を積み、リー ダー職や係長職を経て、30代後半で課長、40代で部長等上級ポストを担える人材で、氷河期世代の40代は採用の対象になりにくいといわれて います。

◆賃金構造基本統計調査からみる40代

「賃金構造基本統計調査」とは、政府が主要産業に雇用される労働者について、その賃金の実態を労働者の雇用形態、就業形態、職種、性、年 齢、学歴、勤続年数および経験年数別に明らかにすることを目的として、毎年6月(一部は前年1年間)の状況を調査している調査です。

2018年6月に公表された結果によると、2010~12年平均と2015~17年平均の比較では、全年齢平均では31.0万円から 31.9万円と増加しているものの、40~44歳および45~49歳の年齢層では5年前の水準に比べて減少しています。

また、常用労働者数100人以上の企業における部長級、課長級の役職比率を見ると、5年前と比較して全体的に昇進が遅くなっていることがわ かります。一方、常用労働者数100人以上の企業における部長級、課長級の人数は、比率が低下している中でもむしろ増加しており、役職比率の 低下は世代の労働者数の増加に起因しているようです。

また、役職者数の増加は45歳以上の課長級が中心であることから、上級ポストが空かないことによるポスト待ちのような状況が多く発生してい る可能性があり、下手をすると、「生涯ヒラ社員」で終わる社員が多く発生する可能性があります。

バブル期入社世代にあたる40代後半、団塊ジュニアにあたる40代半ばにかけては、労働者のボリュームゾーンです。企業が求める40代になっ ていない層、ポスト待ち層のモチベーションを下げずにどう活躍してもらうか、フォローやメンテナンスが今後の課題になりそうです。

ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出状況 (2018/09/02)

厚生労働省は、平成29年度のハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数を取りまとめました。

◆申出件数・申出内容・申出要因

平成29年度の申出等の件数は8,507件(全国計。対前年度比8.5%減)で、申出等の内容では、「賃金に関すること」が27%と最も多 く、次いで「就業時間に関すること」21%、「職種・仕事の内容に関すること」15%、「選考方法・応募書類に関すること」11%、「休日に 関すること」10%、「雇用形態に関すること」8%、「社会保険・労働保険に関すること」6%と続いています。

申出要因としては、「求人票の内容が実際と異なる」(3,362件)が最も多く、次いで「求人者の説明不足」(2,070件)、「言い分が 異なる等により要因を特定できないもの」(778件)、「求職者の誤解」(480件)、「ハローワークの説明不足」(111件)と続いていま す。

◆「求人票の内容が実際と異なる」ものの対応

上記「求人票の内容が実際と異なる」ものの対応として、「職業紹介の一時保留」(8%)、「求人取消し(安定所取消し)」(4%)、「求人 取消し(事業所取消し)」(8%)、「求人票の内容を変更」(23%)、「求人票に合わせ労働条件等を変更」(6%)、「その他」(求人票が 無効等)(52%)となっています。

ハローワークでは、こうした求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に関する相談を最寄りのハローワークのほか、電話(「ハローワーク求人 ホットライン(求職者・就業者専用)」)で受け付けています。相談を受けると、求人票を受理したハローワークと連携して、迅速に事実確認を行 うほか、法違反のおそれなどがある場合には、当該求人の職業紹介の一時保留や求人の取消しを実施しています。

会社が労働者の募集を行う際には、労働条件の明示が必要なタイミングや最低限明示しなければならない労働条件、労働条件明示に当たって遵守 すべき事項、変更明示の方法等が職業安定法に定められていますので、留意してください。

従業員の健康情報取扱規程の策定が必要になります (2018/09/02)

◆働き方改革法で規定

働き方改革法成立を受け、主に労働時間に関する改正が話題になっています。しかし、この法律によって変わるのはそれだけではありません。

労働安全衛生法改正により産業医や産業保健機能の強化がなされ、労働基準法改正による長時間労働抑制と両輪となって労働者の健康確保が図ら れるようになるのです。

具体的には、労働安全衛生法に第104条として「心身の状態に関する情報の取扱い」という規定が新設され、会社に従業員の健康情報取扱規程 策定が義務づけられます。

◆規程の内容等は指針で明らかに

厚生労働省の労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの在り方に関する検討会では、4月下旬から事業場内における健康情報の取扱いルールに 関する議論を行い、7月25日に指針案を示しました。

案では、個人情報保護法の定めに基づき、事業場の実情を考慮して、(1)情報を必要な範囲において正確・最新に保つための措置、(2)情報 の漏えい、紛失、改ざん等の防止のための措置、(3)保管の必要がなくなった情報の適切な消去等、について適正に運用する必要があるとして、 規定すべき事項を9つ示しています。

◆衛生委員会等での策定が必要

指針案によれば、「取扱規程の策定に当たっては、衛生委員会等を活用して労使関与の下で検討し、策定したものを労働者と共有することが必 要」としています。共有の仕方については、「就業規則その他の社内規程等により定め、当該文書を常時作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え 付ける、イントラネットに掲載を行う等により周知する方法が考えられる」としています。

なお、衛生委員会等の設置義務のない事業場については、「関係労働者の意見を聴く機会を活用する等、労働者の意見を聴いた上で取扱規程を策 定し、労働者に共有することが必要」としています。

◆平成31年4月1日までに準備を進めましょう

この健康情報取扱規程策定義務については、平成31年4月1日施行と、比較的準備期間に余裕がありますが、その分見落としがちとも言えま す。心配だという場合は、その他の改正と併せて行う就業規則等の見直しと一緒に準備を進められないか、専門家に相談してみるのもよいでしょ う。


「働き方改革法」省令・指針の検討始まる (2018/08/01)

◆労政審の労働条件分科会で議論開始

6月29日に働き方改革関連法が成立したことを受け、必要な省令や指針などについての議論が7月10日、労働政策審議会の労働条件分科会で 始まりました。

まずは、残業時間や年次有給休暇(年休)などに関する部分の検討が始まり、国会でも与野党が激しく対立した高度プロフェッショナル制度(高 プロ)が適用される職業や年収については、秋以降に検討が始められる見込みです。

◆まずは残業時間や年休から

働き方改革法で制度の具体化が委ねられた省令は62に及びます。10日の分科会では、罰則があり、企業のシステム改修などが必要な残業時間 の上限規制や年休の消化義務などに関わる部分から第1段階として議論することで労使が合意しました。

◆第1段階の検討まとめは8月下旬めど

残業と休日労働の抑制については、法律で残業時間が「原則月45時間、年360時間」までと明記されており、新たな指針で残業を「できる限 り短くするよう努める」ことなどを定めることで、罰則に至らない事例でも是正を求めて指導をしやすくします。

また、月45時間を超えて残業した働き手に対して健康確保措置を実施することを労使協定(36協定)に盛り込むことを省令で定めることになっています。第1段階の検討は8 月下旬をめどにまとめられる見込みです。

◆高プロについての議論は秋以降に

来年4月から導入される高プロについては、適用対象については、政府は金融商品開発やコンサルタントなどの業務で年収は1,075万円以上 と想定していますが、具体的には省令で定められます。

7月10日の分科会では、厚労省が第1段階の議論終了後に「できる限り、早期に結論を出す」との案を示しましたが、労働側は「きちんと議論が必要」として了承しませんでし た。

【厚生労働省「労働政策審議会(労働条件分科会)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126969.html


個別労働紛争の“種”は「いじめ・嫌がらせ」がトップ~「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」より (2018/08/01)

◆個別労働紛争解決制度とは

会社と労働者との間の労働条件や職場環境をめぐるトラブルを防止・解決する制度のひとつとして、「個別労働紛争解決制度」があります。この 制度には3つの方法(①総合労働相談、②あっせん、③助言・指導)があります。

おおまかに言えば、①は労働局、労基署、街角に設置される総合労働相談コーナーで専門の相談員が相談を受け付けるもの、②は紛争調整委員会(労働局)のあっせん委員が間に 入り解決を図るもの、③は労働局長が、紛争当事者に対して解決の方向性を示すものです。

◆最も多い内容は「いじめ・嫌がらせ」

このほど、厚生労働省から「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。その内容は、①②③のすべてで、職場の「いじ め・嫌がらせ」に関するものがトップとなっています。「いじめ・嫌がらせ」は、①総合労働相談では、6年連続でのトップとなっています。ま た、総合労働相談の件数は10年連続で100万件を突破しています。

なお、総合労働相談に持ち込まれた相談のうち、労働基準法等の違反の疑いのあるものが19万件ほどありましたが、これらは労働基準監督署等に取り次がれ、行政指導等が検討 されることになりますので、“相談”という文字から受ける軽いイメージとは違った一面もあります。

◆「解雇」は半減、「雇止め」は微増

②あっせん、③助言・指導のいずれにおいても、「解雇」に関する内容は平成20年度とおよそ半数程度に減少しています。昨今の雇用状況が改 善していることも影響しているのでしょうか。一方、「雇止め」は微増しており、今後注意が必要と思われます。

労使間のトラブルでは、セクハラ・パワハラ・モラハラ…等のハラスメントがキーワードとなっています。まだ、問題が表面化していなくても、ある日突然……となる可能性はあ ります。地震への備えと同じですが、事が起こる前の対策と起きてからの対応如何で、被るダメージ(企業イメージの低下、職場の士気低下 etc)に大きな差が生まれます。

【厚生労働省「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」】
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000213218.pdf


加速する「副業・兼業」容認 (2018/08/01)

◆副業にまつわる2つの最新動向

いわゆる「多様な働き方」の1つに、「副業・兼業」(複数の企業と労働契約を結ぶ働き方)があります。今年6月、この副業にまつわる動きが 2つありました。

◆副業する人の労災問題、議論開始

1つめは、厚生労働省の労働政策審議会が、副業する就業者の労災について議論を開始したことです。その主な論点は以下の2点です。

  • 労災保険給付……本業先・副業先の賃金の合算分を基にした給付額とするかどうか
  • 労災認定……本業先・副業先の業務上の負荷(労働時間等)を合わせて業務起因性の判断するかどうか

労災は、副業を容認するにあたり、どの企業も直面しうる問題です。議論の経過が注目されるところです。

◆国家公務員の副業も容認へ

2つめは、国家公務員の副業が一部容認されることです。

6月15日に閣議決定された「未来投資戦略2018」において、「国家公務員については、公益的活動等を行うための兼業に関し、円滑な制度運用を図るための環境整備を進め る」と明記されました。ここでいう「公益的活動等」とは、特定非営利法人(NPO)等による、環境保護、教育、地方活性化等の仕事を指しま す。

従来、国家公務員は国家公務員法や通達により、「職務に支障が出ない活動」(大学の教員、本の執筆等)しか認められていませんでした。同様に地方公務員も、神戸市や生駒市 等、認めてられている例はごく一部でした。

今回の方針決定により、公務員が副業を行うことも一般化していくかもしれません。

◆副業容認は制限とセットで

報道によれば、副業をしようとする国家公務員は、各省庁の人事担当者に届け出る必要があります。また、「副業は休日に行う」「長時間労働に ならない」「副業先が政府と利害関係のある団体ではない」といった制限が設けられる見込みです。

厚生労働省「モデル就業規則」最新版(今年1月公表)においても、「労務提供上の支障がある場合」や「企業の利益を害する場合」等には、会社は副業を禁止または制限できる と規定されています。

企業が副業を許可制・届出制とするにあたっては、上記のような制限を就業規則に規定しておくことが重要です。


ハローワークを通じた障害者の就職件数が増加 (2018/07/05)

◆就職件数が9年連続で増加

厚生労働省の調査によると、平成29年度のハローワークを通じた障害者の就職件数は9万7,814件で、対前年度比4.9%の増となったと のことです。

今年4月の改正障害者雇用促進法の完全施行をにらみ、大企業などを中心に早くから障害者雇用が活発になっており、人材紹介会社や就労移行新 事業所などへの問合せも多くなっているようです。調査結果の内容を見てみましょう。

◆精神障害、その他の障害で大幅な伸び

障害者全体での新規求職申込件数は20万2,143件(対前年度比5.4%増)となり、就職件数は9万7,814件(同4.9%増)でし た。

このうち、精神障害者の新規求職申込件数は9万3,701件で、就職件数は4万5,064件(同8.9%増)、発達障害等を含む「その他の 障害者」は1万2,167件で就職件数5,007件(同4.9%増)と大幅に増加しています。この理由としては、平成30年4月1日から、障 害者雇用義務の対象として精神障害者が加わったことが大きいでしょう。

なお、「その他の障害者」とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神保健福祉手帳等を保有しない人であって、発達障害、高次脳機能障害、難治性 疾患等により、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な人を指します。

◆産業別就職件数

産業別の就職件数では、「医療、福祉」(3万5,566件、構成比36.4%)、「製造業」(1万3,595件、同13.9%)、「卸売 業、小売業」(1万2,412件、同12.7%)、「サービス業」(1万288件、同10.5%)などとなっています。障害種別に若干の違い はありますが、傾向としては同じとなっているようです。

◆ミスマッチを防ぐには

障害者の雇用については、職場環境の整備と障害のある方への適切な対応が必要です。障害者雇用率を達成するためとか、人手不足だからといっ た消極的な理由だけでは、雇用のミスマッチが生まれ、社内にも混乱を生むだけです。

障害者を雇用する場合のほか、既存の社員が障害者となる場合もあるでしょう。労務管理関してはある程度の障害に対する知識のほか、コミュニ ケーションが何より重要となります。障害者の雇用を考える場合は、主治医や産業医、社会保険労務士等の専門家相談しながら進めましょう。


従業員の健康もリスクアセスメントしてみよう! (2018/07/05)

◆「リスクアセスメント」とは

リスクアセスメントとは、事業場にある危険性・有害性の特定、リスクの見積り、対策の優先度の設定、リスク低減措置の決定の、一連の手順を いいます。事業者は、その結果に基づいて、適切な労働災害防止対策を講じる必要があります。

この考え方を、従業員の健康管理に広げて適用しようとする取組みがあります。

◆健康管理に関するリスクアセスメント

健康管理についても、リスクアセスメントのプロセスは、一般的なものと同様です。危険を洗い出して、そのリスクを見積もり、対策を検討して いきます。

たとえば、心筋梗塞の既往があり、複数の動脈硬化危険因子を持っている従業員が、月60時間の残業をしていたとしたら、リスクは、

  • 危険:心疾患の再発(危害の重大性が大きい)
  • 発生の可能性:危険因子複数持っていることから、高い
  • 危険への対応:過重労働への対策が取られていない

といったことから、「非常に大きい」と見積もることができます。

◆リスク削減のためのプロセスが明確に

このように見積もられたリスクを削減していくことが大切です。先ほどの例では、従業員にとっては「危険因子を減らすために、健康診断結果の どの指標の改善に取り組むべきか」、その上司にとっては「過重労働対策として、どの労務管理項目を改善するべきか」が明確になります。

つまり、健康管理に関するリスクアセスメントを行うことにより、危険を「見える化」し、リスク削減プロセスを明確にすることが可能となるの です。
一度、取り組んでみませんか。


調査結果にみる中小企業の人手不足等への対応 (2018/07/05)

◆人手不足の中小企業が4年連続増加

日本商工会議所は、全国の中小企業4,108社を対象に実施した「人手不足等への対応に関する調査」の結果を発表しました。それによると、 回答した2,613社のうち、1,731社(65.1%)が「人手が不足している」と回答しており、4年連続で割合が上昇していることから、 中小企業の人手不足が悪化していることが浮き彫りとなりました。

◆人手不足が深刻な業種

業種別に見ると、「宿泊・飲食業」の79.1%の企業が「不足している」と回答し、次に「運輸業」(78.2%)、「建設業」 (75.6%)が続きました。特に飲食業は、「求人募集を出しても人が集まらない」「採用してもすぐに辞めてしまう」など問題が深刻化してい ます。

また、人手が不足しているが人員を充足できない理由について、採用の面では「立地する地域に求めている人材がいない」という回答が多く、こ れは人口減少や大都市圏への流出などによるものと考えられます。

◆人材確保のために取り組んでいることは?

同調査での多様な働き方に関する取組みついての設問では、約5割の企業が「長時間労働の削減」「再雇用制度」を、約3割の企業が「年休取得 の促進」「子育て・介護休暇制度」を実施していることがわかりました。それによって得られた効果として、「高齢者の活躍促進」「人材の確保 (退職者の減少)、定着」「従業員のモチベーション向上」などが挙げられています。

また、外国人材の受入れについては、「受入れのニーズがある」「雇用するか検討中」と回答した企業は合わせて1,145社(42.7%) だったことから、外国人の雇用に関する関心が高いことがうかがわれます。しかし、コミュニケーションのとりづらさや文化の違い、雇用する際の 手続きの煩雑さなどに課題があるようです。

◆「人手不足対応アドバイザー」を全国に配置

中小企業庁は、昨年「中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドライン」を取りまとめ、5月には地域の相談に応じる相談員「人手不足対応ア ドバイザー」を全国のよろず支援拠点に配置しました。各拠点の相談員は、労務管理、業務見直し等による生産性向上、職場環境の改善などの相談 に応じ、対応が困難な内容についてはテレビ電話システムや出張を通じて対応するとしています。

人手不足は、業種や地域によって問題が様々ですので、専門家に相談することによって具体的な解決策が得られるかもしれません。


厚労省が過労死等防止対策大綱の改定案を公表 (2018/06/04)

◆平成27年に策定された現行版を改定

厚生労働省は4月24日、過労死等防止対策大綱の改定案を公表しました。大綱では、過労死や過労自殺を防ぐために国が取るべき対策がまとめ られています。3年ごとに見直すこの大綱を、政府は今夏にも閣議決定する方針です。今回の改定案では、将来的に過労死をゼロとすることを目指 し、労働時間、年次有給休暇の取得、勤務間インターバル制度およびメンタルヘルス対策について、数値目標を設定することが盛り込まれました。

◆労働時間

平成32年までに週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下とするとしています。また、長時間労働の是正対策として、労働時間をIC カードなどの「客観的な記録」で会社側が確認することを原則とすることが新たに明記されています。

さらに、仕事と子育てや介護を無理なく両立させるためには、長時間労働を是正し、働く人の健康を確保することによって、ワーク・ライフ・バ ランスを改善し、女性や高齢者が働きやすい社会に変えていくため、原則として、月45時間かつ年360時間とする時間外労働の限度について周 知・啓発を行う方針です。

◆年次有給休暇の取得

取得率は5割を切っています。これを平成32年までに70%以上とし、特に、年次有給休暇の取得日数が0日の者の解消に向けた取組みを推進 するとしています。

◆勤務間インターバル制度

欧州では1日24時間につき最低連続11時間の休息時間の確保を義務化していることを参考に、導入を促進します。平成29年の調査では、制 度の導入割合はわずか1.4%でした。制度を導入していない企業(92.9%)のうち制度を知らなかった企業が40.2%で、この周知が課題 となります。今回、新たに数値目標を盛り込むこととしています(数値は未定)。

◆メンタルヘルス対策

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合は、長期的には増加しているものの、56.6%と未だ5割台に留まっています。これを平成 34年度までに80%以上とするとしています。また、労働者のメンタルヘルスの不調の原因にもなり得るパワーハラスメントへの対策について は、その予防・解決のための周知・啓発を進めることが重要であるとして、平成30年3月の検討会での報告を踏まえ、必要な対応を検討していく としています。

【厚生労働省~第11回過労死等防止対策推進協議会 配布資料】
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000204334.html


若年性認知症への会社の対応は準備していますか? (2018/06/04)

◆若年性認知症に関する調査

65歳未満で発症した認知症を「若年性認知症」と呼びます。有名なアルツハイマー型だけではなく、脳血管の障害や頭部外傷によっても発症し たり、その原因は多様です。働き盛りの現役世代が認知症を発症すると、仕事に影響を及ぼし、会社を辞めることになった場合には、経済的困難に 直面し、生活設計が崩れるなど大きな影響があります。

若年性認知症について、企業と団体を対象に実施したアンケート調査(認知症介護研究・研修大府センター;2017年)の結果から、次のよう なことが明らかになりました。

◆発見の経緯は職場での受診勧奨が最多

会社が若年性認知症の人を把握した経緯として「会社からの受診勧奨」が最も多くなっています(約5割)。その他は、「本人からの相談・申 告」が約4割、「家族からの相談・申告」が約1割となっています。企業等に勤めている人では、家庭よりも職場での気づきが重要なようです。

◆会社としての対応状況

会社の対応としては、約6割で「他の業務・作業に変更した」としており、配置転換による就労継続を図っています。次いで、「労働時間の短 縮・時間外労働削減」、「管理職業務からの変更」が行われています。報酬・雇用については、「作業能力低下でも報酬を維持した」が最も多く6 割以上となっており、本人の会社に対するそれまでの貢献を考慮している会社が多くなっています。一方で、症状の進行状況によっては合意退職も 行われているようです。

◆対応の検討が必要

最近では、障害者雇用については認知度が高まっているようですが、それは身体障害に偏っているようです。若年性認知症の人の多くは精神障害 者保健福祉手帳を取得していることから、身体以外の障害についても一層の理解が求められるとともに、会社としての適切な対応についても理解を 深めることが必要でしょう。

若年性認知症は早期発見・早期治療が重要とされています。貴重な人材に力を発揮し続けてもらうためにも、受診勧奨、休職・復職、職務変更に 関する規定の整備や相談先に関する情報提供など、該当する従業員が現れた場合に会社が適切な対応を取れるよう、検討しておく必要があるでしょ う。


若手社員の「飲み会嫌い」は本当か?~平成・昭和生まれ意識調査より (2018/06/04)

◆「平成生まれ」と「昭和生まれ」の意識調査

ソニー生命保険株式会社が、平成生まれ(20歳~28歳)と昭和生まれ(52歳~59歳)を対象にアンケートを行い、『平成生まれ・昭和生 まれの生活意識調査』として公表しました。同調査から、それぞれの有職者に対して仕事にまつわる質問を取り上げます。

◆「仕事に対する考え方」の傾向

理想的な仕事は「給料が高い仕事」と「やりがいがある仕事」のどちらかという質問に対し、平成生まれは「給料が高い仕事」の方が56.7% と多く、昭和生まれは「やりがいがある仕事」の方が61.8%と多い結果となりました。

また、残業が多い人は「頑張っている人だと思う」か「仕事ができない人だと思う」か、という質問では、「頑張っている人だと思う」が平成生 まれで60.1%、昭和生まれで52,5%となりました。同調査は「働き方改革を掲げ、業務効率改善や残業時間削減の方針を打ち出す企業は増 加していますが、平成生まれには、"残業が多い=頑張っている"と考える人が多いようです」としています。

◆「飲み会」への考え方

勤務先でのイベントは「積極的に参加したい」か「プライベートを大切にしたい」か、という質問では、平成生まれの61.5%、昭和生まれの 71.3%が「プライベートを大切にしたい」と回答しており、昭和生まれのほうがより多い結果となりました。

同調査はこの結果を、若手はいわゆる"飲みニュケーション"に消極的などといわれることがありますが、必ずしもそうではないようだ、と総括 しています。

シチズン時計が昨年行った「社会人1年目の仕事と時間意識」でも、「実際にあった飲み会の頻度」が「理想の飲み会の頻度」より少ないという 結果となり、同社も「職場のコミュニケーション機会として『もう少し誘って欲しい』と考えている新入社員もいる」と、さきほどの調査と同様の 結論となっています。

俗に「5月病・6月病」などともいわれるように、入社・新年度からしばらく経ち、新しい環境に適応できず思い悩んでしまう若手が増える時期 です。気になる社員をみかけたら、あまり気負うようなことなく、お酒の席へなどへ誘ってみてはいかがでしょうか。

5月から雇用保険の手続きでマイナンバーの取扱いが変わります! (2018/05/01)

◆マイナンバーの取扱い

平成28年1月より利用が開始されたマイナンバーですが、平成30年3月5日から、事業所における社会保険手続において記載が求められるよ うになりました。

また、これまでマイナンバーの記載がなくても受理されていた雇用保険関係については、マイナンバーが必要な届出に記載・添付がない場合は、ハローワークより返戻され再提出 を求められますので注意が必要です。

◆マイナンバーが必要な届出等

【マイナンバーの記載が必要な届出等】

(1) 雇用保険被保険者資格取得届
(2) 雇用保険被保険者資格喪失届
(3) 高年齢雇用継続給付支給申請(初回)
(4) 育児休業給付支給申請(初回)
(5) 介護休業給付支給申請

【個人番号登録・変更届の添付が必要な届出等(ハローワークにマイナンバーが未届の者に係る届出等である場合)】

(6) 雇用保険被保険者転勤届
(7) 雇用継続交流採用終了届
(8) 高年齢雇用継続給付支給申請(2回目以降)
(9) 育児休業給付支給申請(2回目以降)

◆すでにハローワークにマイナンバーを届け出ている場合

個人番号記載欄がある届出(上記(1)~(5))については、届出の都度マイナンバーを記載することになっていますが、すでに他の届出等の際にマイナンバーを届け出ている 場合には、各届出等の欄外に「マイナンバー届出済」と記載して、個人番号の記載を省略することが可能です。

個人番号記載欄のない届出(上記(6)~(9))については、「マイナンバー届出済」の記載は不要ですが、未届けの場合は届出書類が返戻されてしまうので、個人番号登録・ 変更届を添付して提出します。

◆個人番号登録・変更届により別途の登録を行う場合

事前に個人番号登録・変更届によりマイナンバーの登録を行うことが可能です。
ただし、新規に被保険者資格を取得する従業員については被保険者番号が振り出されていないため、資格取得届の提出に先立って個人番号登録・変 更届による届出を行うことができません。

このような場合等、個人番号登録・変更届の提出が各種届出よりも後になる事情がある場合には、ハローワークに相談してください。

「年齢にかかわりない転職・再就職者の受入れ促進のための指針」で求められる企業の取組み (2018/05/01)

◆指針策定の背景

職業キャリアの長期化による働き方の多様化や、急速な技術革新や産業・事業構造の変化により、企業・労働者の双方から中途採用、転職・再就職のニーズが高まっており、転 職・再就職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行の確立が求められています。

厚生労働省ではこうした観点から、企業が転職・再就職者の受入れ促進のため取り組むことが望ましいと考えられる基本となるべき事項等を示した「年齢にかかわりない転職・再 就職者の受入れ促進のための指針」を策定しました。

◆企業に望まれる取組み

  • 必要とする職業能力等の明確化及び職場情報等の積極的な提供
  • 職務経験により培われる職務遂行能力の適正な評価
  • 専門性の高い従業員の活躍機会の拡大
  • 従業者の主体的(自律的)・継続的なキャリア形成の促進
  • 公平かつ柔軟な処遇
  • 早期定着に向けた支援
  • 平素からの従業員に求める役割の明確化、職業能力の把握

◆年齢にかかわりない適正な評価・採用に向けて

指針では、例えば「必要とする職業能力等の明確化および職場情報等の積極的な提供」として、必要な人材の早期採用に向け、自社の現状や目指している方向性等を踏まえ、必要 とする専門性等の職業能力の水準、範囲等を明確に整理したうえで募集・採用活動を行うことや、中途採用者と企業のマッチングおよびその後の定 着を図る観点から、賃金等の労働条件や職務内容に限らず、期待する役割、職場情報、企業文化等の情報提供に積極的に取り組むことが望ましいと しています。

◆採用後の活躍支援として

また、「早期定着に向けた支援」として、即戦力として中途採用する場合も含め、中途採用者が企業に適応し能力を十分に発揮し続けられるよう、入社時における導入教育や社内 人的ネットワーク形成の支援等、早期定着支援を積極的に行うことや、「従業員の主体的(自律的)・継続的なキャリア形成の促進」として、早い 段階から従業員に自身のキャリア形成を考えさせる機会や、自身の職業能力を把握させる機会を提供することや、他企業への出向や他部門への異動 の経験を積極的にキャリアパスに組み込むなど、職場環境や職務内容の変化に柔軟に対応し活躍できる人材の育成に努めること、転職者本人とかか わりのない取引先等への転職を禁止する競業避止義務については、長期・広範なものとならないよう、合理的な範囲のものとすることが望ましいと しています。

M字カーブ解消? 働く30歳代女性が増加中 (2018/05/01)

◆雇用環境、依然として良好

今年1月、総務省は「労働力調査(29年)」を公表しました。「完全失業率が前年より18万人減」「就業者が前年より65万人増」「労働力人口が5年連続で増」など、全体 的に雇用が進んでいることが調査結果に表れています。

◆「M字カーブ解消」とは

同調査結果で特筆すべきなのが、30歳代の女性の労働人口比率(就業率)が69.4%と、米国を抜くほど大きく改善したことです。いくつかのメディアではこの結果を、「M 字カーブ(現象)ほぼ解消」と報じました。

「M字カーブ現象」とは、日本の女性の就業率を年齢階層別に比較すると、20歳代や40歳代が高い一方で30歳代は低いため、グラフにするとM字型を描く現象のことです。 先進諸国ではほとんど見られない、日本固有の現象として問題視されてきました。

◆働く30歳代女性増加の背景

M字カーブ現象があった背景には、20歳代で働きはじめた女性が30歳代で出産・育児のため(やむを得ず)職を離れ、育児が一段落した40歳代で再就職するというワークス タイルがありました。

M字カーブの解消傾向は、仕事と育児を両立しようという女性が増えていること、および国によるさまざまな両立支援策(たとえば育児・介護休業法の改正による育児休業の延 長、短時間勤務やフレックスタイム制など「多様な働き方」の浸透、保育所の定員枠の増加など)の効果が出始めていることによる、ワークスタイ ルの変化があるとみられています。

◆両立支援策で人材定着を

企業も、自社従業員の仕事と出産・育児の両立支援をすすめています。

例えば三越伊勢丹ホールディングスは、「子が4歳に達するまで利用可能な育児休業」「出産・育児ほかの理由で退職した場合、8年以内なら優先的に再雇用」など、手厚い支援 制度で知られています。同社は女性従業員の約半数が30歳代とのことですから、これら支援制度が人材定着にとりわけ大きく寄与していると思わ れます。

人手不足のいま、両立支援策を上手に活用し、女性従業員の離職を防ぎましょう。

厚労省検討会で示された事業主が講ずべき「パワハラ」防止策  (2018/04/02)

◆防止対策の検討が進む

政府の「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日決定)において、「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」と されたことを受け、厚生労働省では昨年5月に「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」を立ち上げ、職場のパワハラの実態や課題 の把握、実効性のあるパワハラ防止対策の検討が進められています。

2月下旬に開催された第8回会合において、職場におけるパワハラの定義、パワハラ防止のための対応策とメリット・デメリット、パワハラを防止するために事業主が講ずる対応 策の案が示されました。

このうち、パワハラを防止するために事業主が講ずる対応策の案をご紹介いたします。

◆パワハラ防止対策の案

(1) 事業主の方針等の明確化、周知・啓発

  • パワハラの内容等の明確化、周知・啓発
  • 行為者への対処方針・対処内容(懲戒等)の就業規則等への規定、周知・啓発

(2) 相談等に適切に対応するために必要な体制の整備

  • 相談窓口の設置
  • 相談窓口の担当者による適切な相談対応の確保
  • 他のハラスメントと一体的に対応できる体制の整備

(3) 事後の迅速・適切な対応

  • 事実関係の迅速・正確な確認
  • 被害者に対する配慮のための対応(メンタルヘルス不調への相談対応等)の適正な実施
  • 行為者に対する対応(懲戒等)の適正な実施
  • 再発防止に向けた対応の実施

(4) パワハラの原因や背景となる要因を解消するための取組として望ましいもの

  • 長時間労働の是正等の職場環境の改善
  • 相談窓口と産業保健スタッフ等との連携
  • コミュニケーションの円滑化のための研修等の実施

(5) 上記の対応と併せて行う対応

  • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な対応、周知
  • パワハラの相談・事実確認への協力等を理由とした不利益取扱いの禁止、周知・啓発

「高齢社会対策大綱」にみるこれからのシニア就業支援施策  (2018/04/02)

◆「高齢社会対策大綱」とは

2月中旬、政府は「高齢社会対策大綱」を閣議決定しました。同大綱は日本が高齢社会にどう対応するかの指針であり、5年ごとに見直されてい ます。

今回は、人を年齢で区別せず国民が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できる「エイジレス社会」の構築を目指すことが示されました。

◆年金受給開始年齢:70歳超が可能に

公的年金の受給開始年齢について、選択により70歳以降まで繰下げ可能にする制度や在職老齢年金の在り方等、働くシニアの多様な実態に応じた制度を検討することが盛り込ま れました。

現在でも65歳以降70歳までの繰下げは可能で、受給額が月額最大42%上乗せされるメリットもありますが、2015年度末時点の利用率は1.4%と、60歳以降への繰上 げの35.6%に比べて低く、この周知にも取り組むとされています。

◆高年齢者の就業率引上げ目標

昨年の総務省「労働力調査」によれば、60~64歳の就業率は63.6%、65歳以上の就業者数も10年間で1.5倍に増え、807万人と なっています。

今回の大綱では、この就業率を2020年には67%とする目標が掲げられました。

◆健康年齢の延伸目標

中小企業では、再雇用制度等の活用によりシニア従業員になるべく長く働いてもらうことで人材を確保しているところが多くあります。

長く働き続けるためには健康であることが不可欠ですが、大綱でも、日常生活に支障のない健康寿命を、2013年時点の男性71.19歳、女性74.21歳から、2025年 に2歳以上延ばす目標が設定されました。

就労の場においても、加齢に伴う身体機能の変化を考慮し、安全と健康確保に配慮した働きやすい快適な職場づくりおよび健康確保対策を推進す るとしています。

◆事業者に対する支援の充実も明記

シニアの就業は本人の健康・意欲・体力等により多様化することから、テレワークの活用等選択肢を広げるとしています。

また、65歳までの定年延長や65歳以降の継続雇用延長を行う企業への支援を充実させるとともに、賃金・人事処遇制度等の条件整備に係る相談・援助の実施や各種助成制度を 有効活用することが明記されました。

「女性管理職」の実態と管理職に対する女性の意識 (2018/04/02)

◆割合は過去最高…だがまだ少ない

厚生労働省の調査によれば、課長級以上の管理職に占める女性の割合が前年比0.3ポイント増の9.6%となり、過去最高を更新したそうで す。

それでも他の主要国に比べると、まだまだ女性の管理職が少ないということは各メディアでもしばしば取り上げられているところです。

太陽グラントソントンが昨年11月~12月に実施した、非上場企業を中心とする中堅企業経営者(従業員数100人~750人)の意識調査によると、日本の中堅企業における 「経営幹部の女性比率」は約5%で、調査対象国の中で最下位となっているそうです。

また、この数字は2004年の調査開始時の数値(約8%)を下回る数字となっており、世界的な女性管理職割合の増加傾向(世界35カ国「経営幹部の女性比率」の平均は 24%)とは、大きく差が出る結果となっています。

◆女性管理職は今後増えるのか?

中小企業における女性管理職の割合は、上記調査よりもさらに少ないことが予想されますが、国も雇用制度改革の1つとして「女性の活躍推進」を掲げており、女性管理職の登用 拡大に向けた働きかけを行うことを明言しています。

今後は、管理職として女性を視野に入れていなかったような企業でも、女性管理職を積極的に登用しようという意識が働くかもしれません。

◆管理職になりたくない社員が増加

一方、最近はそもそも「管理職になりたくない」という若者が増えているという現状もあります。

リクルートマネジメントソリューションズが3年おきに実施している「新人・若手の意識調査」によれば、「管理職になりたい」「どちらかといえばなりたい」と回答した割合 が、2010年の新人では55.8%だったのが、2016年の新人では31.9%となり、減少傾向が続いているようです。

また、電通が働く女性を対象に実施した調査によると、「9割以上に管理職志向なし」という結果も出ています。

◆“変化の時代”に求められる人材を育成する

上記のように、マネジメント職への意識が高いとは言えない中で、今後は、女性の管理職に限らず、管理職となるべき人材を企業として意識的に育成するための体制を考えていく ことが必要になるでしょう。

管理職に対するマイナスイメージを払拭しつつ、“変化の時代”に求められる人材を育成していくことが必要でしょう。

「働き方改革」って実際進んでいるの? (2018/03/03)

◆企業における「働き方改革」の実態は?

現在、政府が推進する「働き方改革」の名の下に、様々な方面で「働き方」の見直しが進められており、関連する国の動きや企業事例などがメディアでも多く取り上げられていま す。

その一方で、実態が伴っていない「働き方改革」に対する批判や課題も叫ばれているところですが、「働き方改革」は、実際、企業ではどのように受け止められているのでしょう か。

◆必要性は感じているが取り組んでいない企業も

株式会社オデッセイが、全国の人事部門または「働き方改革」に係わる部門に所属している方を対象に実施した「働き方改革に関する意識アンケート」の結果によると、約8割 が、「働き方改革」の必要性を感じていると回答しましたが、実際に「働き方改革」に取り組んでいるのは約5割という結果になったそうです。

必要性を感じながらも、実行できていない企業がまだ多いことがわかります。

◆労働時間の改善、休暇取得促進への取組みが中心

また、「働き方改革」の具体的な施策として取り組んでいることで最も回答が多かったものは、「労働時間の見直しや改善」となっており、「休暇取得の促進」が続いています。

「女性の働きやすい環境作り」と「育児・介護中の社員が働きやすい環境作り」という回答も多く集まり、女性を支援する施策に取り組んでいる企業も多いことがわかります。

◆実現にはまだまだ課題も

また、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが、企業の人事制度の企画・運営および「働き方改革」推進責任者を対象に実施した「『働き方改革』の推進に関する実 態調査」の結果によると、「働き方改革」推進上の課題として、「社外を含めた商習慣を変える難しさ」を挙げる回答が62.1%と最も多く、 「現場や他部署との連携が難しい」(54.0%)、「マネジメント難度上昇への懸念」(50.3%)が続いています。

◆自社の現状を踏まえて適切な対応を

人材確保や従業員のメンタルヘルス対策等の面からも、企業の「働き方改革」に対する取組みは今後も重要性が増すでしょう。

自社の現状を見極めながら適切な対応を考えていきたいところです。

「請負契約のフリーランス」を独禁法で保護へ (2018/03/03)

◆悪質なケースでは摘発も

企業などから個人で直接仕事を請け負って働く「フリーランス」とよばれる人たちが、契約で不当な制限を受けた場合、独占禁止法(独禁法)で保護されることになりました。フ リーランスが増えていることを受け、実態調査を行ってきた公正取引委員会(公取委)の有識者会議が見解をまとめ、明らかになったものです。

どういったケースが違反にあたるかを2月中にも公表し、各業界に自主的な改善を促す方針ですが、悪質なケースが見つかれば摘発も検討してい るようです。

◆「法律の空白地帯」が発生

企業と雇用契約を結ばずにフリーランスとして働く人は、現在1,000万人以上いるとされています。システムエンジニアやプログラマーといった職種のほか、プロスポーツ選 手や芸能人も含まれ、近年はインターネットを通じて不特定多数の個人に仕事を発注する企業も増えているようです。

ただ、こうした働き方は労働基準法などの対象となるのか、事業者の適切な取引環境を守る独禁法の対象となるのか、非常にあいまいだったため、企業側から不当な要求を受けて も対抗できない「法律の空白地帯」になっていました。

◆不当な報酬や移籍制限、囲い込みなどを規制

公取委は、昨年からフリーランスの労働環境の実態調査をすすめ、有識者による検討会を重ねてきました。今回まとめた見解では、企業側からフリーランスになされる不当な要求 は独禁法の対象となりうると認定。「企業側が報酬や仕事内容などの約束を守らない」「補償費も払わずに他社と仕事をさせない」等を求めた場合 は独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」などにあたるおそれがあるとしました。

また、プロスポーツ選手の不当な移籍制限や、芸能事務所による芸能人の囲い込みなども独禁法違反にあたるおそれがあるとしています。

◆クラウドソーシングの急増に対応

公取委が、フリーランスへの不当な要求を独禁法の対象と認めるのは、「雇用関係ではない働き方」を守る必要性が高まっているとの判断からです。仕事の発注側がウェブサイト などで仕事をしたい人を募集するクラウドソーシングの出現は、こうした働き方を広げる一方、報酬の支払いが遅れたり、仕事内容が一方的に変更 されたりするトラブルの急増にもつながっているのです。

公取委の方針にはこうした現状を是正するねらいがあり、見解をまとめることにより、人材の活用を活性化させ、消費者サービスの向上につながることが期待されています。

労働損失は"うつ"より大きい! 「腰痛対策」について考えてみよう  (2018/03/03)

◆「腰痛・首の痛み」は最も労働損失を生じさせる

腰痛・肩こりを訴える方は多く、国民の訴える愁訴の1・2位を占めると言われています。「たかが…」と甘く考えてはいけません。慢性疾患による労働損失調査によると、世代 を問わず最も就労に影響を与えるのが腰痛・首の痛みであり、特に30代では約3割もの人が、業務に差障りがあると回答しています。

また、腰痛・首の痛みが生じさせる労働損失は、うつ・不安・意欲障害よりも大きいと試算されていますので、職場としても対策を行い、腰痛を減らしていくことが重要です。

◆朝・昼2回のストレッチが効果的

腰痛で多い「ギックリ腰」や「椎間板ヘルニア」を防ぐためには、崩れた筋肉骨格のバランスを正すことが大切です。

ギックリ腰の発生は9~11時台、昼休憩後の14~15時台に多いというデータがあります。その時間帯の前、例えば朝(始業時)と昼休憩時に、腰を反らすといった簡単なス トレッチを行って体のバランスを整えるだけでも効果があります。

とはいえ、職場でのストレッチは周囲の目が気になるという声もあります。個人に対策を求めるのではなく、部署単位でストレッチの重要性を理解し実践することで、仕事の合間 にストレッチがしやすくなり腰痛の発生件数が減ったという例もありますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

◆早期の職場復帰が有効

腰痛が起こった場合に、整形外科や産業医学では休養を勧めることが多いようです。しかし、近時は、安易に休むのではなく、少しでも動けるようになったら、軽作業からであっ てもできるだけ早期に職場復帰することが大事だと言われるようになってきました。

「また痛くなるのでは」との不安や恐怖心が予後を悪くするとも言われます。できる範囲で働いてもらうことで、治療の面でも大きな効果がある と言えそうです。

4月施行!「改正障害者雇用促進法」のポイント (2018/02/01)

◆民間企業の雇用障害者数が過去最高に

昨年12月12日、厚生労働省より「平成29年障害者雇用状況の集計結果」が発表され、民間企業における雇用障害者数(49万5,795 人、前年比4.5%)、実雇用率(1.97%、前年比0.05ポイント上昇)がともに過去最高を更新したことがわかりました。

今年4月には「改正障害者雇用促進法」が施行される予定となっており、障害者雇用に対する関心はますます高まっていきそうです。

◆改正の内容

4月から施行される改正のポイントは以下の通りです。

(1)法定雇用率の引上げ

事業主は、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用することが義務付けられていますが、その率が、民間企業については現行の「2.0%」から「2.2%」に引き上げられます。

また、今回の法定雇用率の変更に伴い、障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が「従業員50人以上」から「従業員45.5人以上」に変更されます(短時間 労働者は1人を0.5人としてカウント)。
なお、平成33年4月までにはさらに「2.3%」への引上げが予定されています。

(2)法定雇用率の算定基礎の見直し

法定雇用率の算定基礎の対象は、これまで「身体障害者」および「知的障害者」に限られていましたが、新たに「精神障害者」が追加されます。

なお、昨年12月22に開催された「第74回労働政策審議会障害者雇用分科会」において、障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則の一部 を改正する省令案が示され、精神障害者である短時間労働者に関するカウント方法に以下の特例措置が設けられることが明らかになりました。

【特例措置の内容】

精神障害者である短時間労働者であって、新規雇入れから3年以内の者または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の者に係る雇用率のカウントにおいて、平成35年3月 31日までに雇い入れられた者等については、1人をもって1人とみなす(現行は1人をもって0.5人とみなしている)こととする。

◆今後の企業の対応は?

法定雇用率の引上げ等が行われることから、各企業においては、今後どのように障害者雇用に向き合っていくのかが問われることになりそうで す。

「平成29年度就労条件総合調査」の結果にみる労働時間の実態  (2018/02/01)

◆「就労条件総合調査」とは?

今回の調査は、常用労働者が30人以上いる民間企業6,367企業を抽出し、平成29年1月1日現在で厚生労働省が調査を行い、4,432企業から得た回答をまとめたもの です。

以下では、調査結果の中から「労働時間」に関するものをまとめてみます。

◆調査結果のポイント

1日の所定労働時間は、1企業平均7時間45分、労働者1人平均7時間43分でした。

主な週休制の形態をみると、「何らかの週休2日制」を採用している企業割合は87.2%(完全週休2日制は46.9%)で、適用されている労働者割合は87.5%(完全週 休2日制は58.4%)となっており、年間休日総数をみてみると、1企業平均108.3日、労働者1人平均は113.7日となっています。

1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数は除く)は、労働者1人平均18.2日で、そのうち労働者が取得した日数は9.0日と取得率は半分以下であることがわか ります。

年次有給休暇を時間単位で取得できる制度がある企業の割合は18.7%にとどまりました。そして、病気休暇制度がある企業割合は32.5%で、休暇取得時の賃金の支給状況 について、「全額支給」が33.2%、「一部支給」が18.8%、「無給」が47.7%となっています。

また、1企業平均1回当たりの最高付与日数は246.0日で、そのうち賃金の支給状況が「全額」である企業では97.6日、「一部」である企業では294.1日、「無休」 では354.5日となっています。

変形労働時間制を採用している企業の割合は57.5%で、種類別にみると、「1年単位の変形労働時間制」が33.8%、「1カ月単位の変形労働時間制」が20.9%、「フ レックスタイム制」が5.4%となっています。

みなし労働時間制を採用している企業割合は14.0%で、こちらも種類別にみると、「事業場外みなし労働時間制」が12.0%、「専門業務型裁量労働制」が2.5%、「企 画業務型裁量労働制」が1.0%となっています。

最近注目を集めている勤務間インターバル制度については、制度を導入している企業割合は、「導入している」1.4%、「導入を予定または検討している」5.1%、「導入の 予定もなく、検討もしていない」92.9%となっており、超過勤務が問題視されているのはかなり限定的と考えられます。

調査結果にみる「副業」に関する時間と収入の実態 (2018/02/01)

◆「副業・兼業容認」が今後広がる?

昨年12月25日に、厚生労働省の「柔軟な働き方に関する検討会」が公表した報告書で、労働者が主体的に自らの働き方を考え、選択できるようにするために、同省が示すモデ ル就業規則を改定して、「労務提供上の支障や企業秘密の漏洩が生じる場合等以外は副業・兼業を認める内容に改めること」等が必要とされまし た。

また、副業の希望者数は1992年と2012年で比較すると、100万人以上増えています(10月3日同検討会資料)。

こうした動きを受け、企業は、自社の副業・兼業の取扱いを考える必要がありそうです。

◆副業・兼業に充てる時間はどれくらい?

従業員が副業・兼業を行う場合の懸念事項の1つに、長時間労働となり業務がおろそかになることが挙げられます。

経済産業省の委託調査の結果では、「労働時間が長くなり本業に専念できない」と回答した人の割合は6%程度でした。具体的な時間数は、回答した2,000人の約半数が「週 平均1~9時間」としています。

◆別の調査結果では10時間未満が約8割

また、エン・ジャパン株式会社が20~40代の正社員5,584名に対して昨年4月に行った調査の結果によれば、副業時間は週当たり「1時間未満」12%、「1~3時間未 満」23%、「3~5時間未満」21%、「5~10時間未満」23%でした。

◆副業の形態はアルバイト、収入は月1~5万円が多い

同調査結果によれば、副業で行ったのは「アルバイト(接客・販売・サービス系)」が61%いる一方、インターネットを活用したものもあり、「ネットオークション・フリマサ イト」が14%、「アフィリエイト」と「クラウドソーシング」が各7%でした。

また、月の収入は「1~3万円」「3~5万円」が各24%で約半数を占めますが、「10~20万円」も19%います。

◆副業・兼業できない会社には人が集まらない?

前出の経済産業省の委託調査では、回答者の約3分の2が「副業を認めない会社(経営者)に魅力を感じない」としています。

今後は、優秀な人材を呼び込む観点からも、副業・兼業に対する柔軟な姿勢が求められるのかもしれません。

『AI』の影響により減少する仕事、増加する仕事は? (2018/01/06)

◆厚労省の部会で議論がスタート

何かと世間を賑わせている『AI』ですが、中でも我々の仕事への影響が気になるところです。

12月初旬に開催された厚生労働省の労働政策審議会(労働政策基本部会)では、「技術革新(AI等)の動向と労働への影響」をテーマに議論がスタートしましたが、ホーム ページ上で公開された資料の中から「AI導入による仕事への影響」を考えてみます。

◆求められるは『AI』にはできない仕事

厚生労働省のホームページで公開された資料の中で、シンクタンクや各省庁等による先行研究の内容がまとめられています。

『AI』等で代替可能性の高い(今後減少する)仕事、代替可能性の低い(今後増加する)仕事の例として、以下のものが挙げられています。

【代替可能性の高い(今後減少する)仕事の例】

  • 必ずしも特別の知識やスキルが求められない職業
  • バックオフィス等、従来型のミドルスキルのホワイトカラーの仕事
  • ルーティンタスク
  • ホワイトカラーの仕事
  • 定型的業務が中心の職種
  • 教育水準や所得水準が低い労働者の仕事

【代替可能性の低い(今後増加する)仕事の例】

  • 他者との協調や他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業
  • 上流工程やIT業務における、ミドルスキル・ハイスキルの仕事
  • 人が直接対応することが質や価値の向上につながるサービスに係る仕事
  • 新しい付加価値の創出に役立つ技術職

◆今後は必要な取組みとは?

ビジネスパーソンにとって今後は、「AIを使いこなす能力」や「AIに代替されにくいコミュニケーション能力」を向上するための取組みが必要になってくると言えるでしょ う。

企業における「働き方改革」の現状と時短ハラスメント (2018/01/06)

◆働き方改革スタートから1年半

2016年8月の第3次安倍第2次改造内閣の発足と同時に「働き方改革」がスタートしてから、およそ1年半が経過しました。

政府においては、2017年9月に労働政策審議会にて「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」(働き方改革推進法案)が示されるなど、法整備に向 けた動きが見られます。

では、民間企業においては、「働き方改革」は進んでいるのでしょうか?

◆8割のビジネスパーソンが「働き方改革」実感せず

今月、一般社団法人日本能率協会は、ビジネスパーソンを対象にした意識調査「ビジネスパーソン1000人調査」【働き方改革編】を公表しま した。

同調査によれば、「職場での『働き方改革』を実感していますか?」という質問に対し、80.7%の人が「実感していない」と回答していま す。

一方、職場での「働き方改革」を実感している人がその理由として最も多く挙げた回答(複数回答)は、「残業が減った」(38.0%)でし た。

◆一方的な残業禁止は「ジタハラ」

とはいえ、単純に残業を禁止すればよいとも限りません。

手帳市場でシェア1位の高橋書店が11月に公表した「働き方改革」に関するアンケート調査では、「自分が勤めている会社で働き方改革(長時間労働の改善)が行われている」 というビジネスパーソンのうち41.5%が、働き方改革で困っていることとして、「働ける時間が短くなったのに、業務量が以前のままのため、 仕事が終わらない」ことを挙げました。

同調査は、この結果を「『働き方改革』に取り組む企業のビジネスパーソンの4割がジタハラ(時短ハラスメント)被害につながる悩みを抱えている」と表現しています。
現場に即していない、一方的な残業禁止は「ハラスメント」とみなされる時代なのです。

◆トラブルのない残業削減を

ジタハラは往々にして「隠れ残業」(持ち帰り残業など)の温床となります。隠れ残業は、企業にとっては残業代抑制につながりますが、従業員にとっては手取り収入の減少に直 結するため、労働意欲を低下させ、様々な不正やトラブルの遠因ともなりかねませんので、要注意です。

ジタハラに留意しつつ、現場が実現可能な残業削減を指示することで、自社の「働き方改革」を進めていきましょう。

いま考えるべき 管理職の介護と仕事の両立支援 (2018/01/06)

◆介護を理由に退職を考えた管理職は47.5%

家族の介護を要因とした人材の流出は、退職する本人のキャリアや会社の生産性にとっても悪影響を及ぼします。特に、退職するのが会社の中で重要な仕事を担う管理職である場 合、影響が及ぶ範囲はより広いでしょう。

人材サービス大手のアデコ株式会社のアンケート調査によると、家族の介護を経験したことのある企業の管理職のうち、介護を理由に「何度も退職を考えた」ことがある人が 19.5%、「1、2度考えた」人が28.0%で、両社を合わせると退職を考えたことのある人は47.5%に上るそうです。

また、介護と仕事の両立について「不安がある」との回答は77.3%となったとのことです。

◆介護の支援制度を利用しにくい"雰囲気"

支援制度として介護休業・休暇などがありますが、回答者の63.2%が「制度を利用しにくい」と回答しています。

その理由は「自分の業務に支障が出る」「部下の業務に支障が出る」「介護を理由に休みを取る管理職はいない」「休みを取りにくい雰囲気がある」などとなっています。

◆検討・見直しのタイミングは「いま」

上記の調査でも、「企業は制度を利用しやすい職場風土の醸成と労務対策が求められる」とまとめられているように、会社としての風土が変わらなければならないでしょう。

介護離職を防ぐために検討すべき事項は多くあります。

正社員(管理職に限らない)の失効した年次有給休暇を積み立てておき、介護等の事由が発生した場合に利用できるようにする制度を設けている企業があります。また、有期雇用 の従業員についても有給の介護休暇制度を設けているところもあります。さらに、介護等の事情を考慮することは、社員の転勤を考える際にも重要 です。
一方で「働き方改革」の中で注目されているテーマの中にも、介護離職防止の制度の取組みが盛り込まれています。

人手不足の情勢もあり、介護による人材流出防止を考える時期はまさに「いま」、といえるでしょう。


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