過去の事務所便り 2020年


来年4月1日施行! 気になる同一労働同一賃金の取組みと賃金の動向について (2020/12/01)


◆「同一労働同一賃金」とは?

同一企業における、いわゆる正社員と非正規社員(有期雇用労働者、パートタイマー、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指し、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されます。

また、非正規社員から求めがあった場合に、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主が説明すること、また説明を求めたことを理由に不利益取扱いをしないことが義務付けられます。

2020年4月1日より大企業と労働者派遣について適用され、中小企業は2021年4月から適用となります。

◆企業・労働者はどんな反応をしている?

11月6日の閣議に提出された「令和2年度 年次経済財政報告」の第2章にて、同一労働同一賃金の取組みや影響に関する内容がまとめられているので、一部を紹介します。

待遇の違いについて、「業務の内容等が同じ正社員と比較して納得できない」と回答したパートタイマー・有期雇用労働者の割合は、「賞与」37.0%、「定期的な昇給」26.6%、「退職金」23.3%、「人事評価・考課」12.7%となっています。

一方、取組みの実施率は、「業務内容の明確化」35.2%、「給与体系の見直し」34.0%、「諸手当の見直し」31.3%、「福利厚生制度の見直し」21.2%、「人事評価の一本化等」17.7%となっています。

また、企業が課題と感じていることは、「費用がかさむ」30.4%、「取り組むべき内容が不明確」19.5%、「社内慣行や風習を変える事が難しい」18.7%、「効果的な対応策がない、分からない」16.5%、「業務の柔軟な調整」16.1%となっています。

◆対応に必要な費用の一部に助成金を活用することもできます

厚生労働省のキャリアアップ助成金は、キャリアアップ計画を提出して6つのコースから選んで非正規社員の待遇改善等を行う場合に、費用の助成が受けられます。

近年、「同一労働同一賃金」に向けて対応を進める企業で多く利用されていますが、申請が適正になされず不正受給と判断されると、支給取消しやペナルティが課されるだけでなく企業名が公表されます。

助成金の利用も含めて、「同一労働同一賃金」への対応は、専門家に相談しながら進めるのがよいでしょう。


来年4月施行の70歳までの就業機会の確保(努力義務)について (2020/12/01)


◆これまでの高齢者雇用安定法(65歳までの雇用確保(義務))の内容

高年齢者雇用安定法は、①60歳未満の定年禁止、②65歳までの雇用確保措置を定めています。①は、事業主が定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上としなければならないということです(法8条)。②は、定年を65歳未満に定めている事業主は、ア.65歳までの定年引上げ、イ.定年制の廃止、ウ.65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入、のいずれかの措置を講じなければならないといものです(法9条)。①②いずれも当該労働者を60歳まで雇用していた事業主を対象に義務づけられています。

◆令和3年4月1日からの改正~70歳までの就業機会の確保(努力義務)の内容

65歳から70歳までの就業機会を確保することを目的に、来年4月1日からは、上記65歳までの雇用確保(義務)に加え、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が新設されました。当該労働者を60歳まで雇用していた事業主が対象となります。

  1. 70歳までの定年引上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
  4. 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
  1. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
  2. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

1.2.は創業支援等措置(雇用によらない措置)となり、過半数労働組合等の同意をえて導入します。

◆留意点

  1. 70歳までの就業確保措置は努力義務となるため、対象者を限定する基準を設けることが可能となります(70歳までの定年引上げ、定年制の廃止を除く)。ただし、対象者の基準を設ける場合は、労使間で十分に協議した上で過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされています。また、労使間での十分な協議の上で設けられた基準であっても、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨等に反するものは認められません(不適切な例として、会社が必要と認めた者に限るなど)。
  2. 継続雇用制度、創業支援等措置を実施する場合において、「心身の故障のため業務に耐えられないと認められること」「勤務(業務)状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責(義務)を果たし得ないこと」といった事項等を就業規則や就業支援等措置の計画に記載した場合には、契約を継続しないことが認められます。


テレワークセキュリティの実態は? 総務省調査より (2020/12/01)


◆急速に普及したテレワークと課題

今年になって、新型コロナウイルスへの対応として、初めてテレワークを導入したという企業も多いところです。総務省が今年の7~8月に従業員10名以上の3万社に実施した調査でも、回答数5,433のうちテレワーク実施企業は1,569となっています。

ただ、急場しのぎで始めた企業も多く、テレワークに必要な機材やセキュリティ体制も整わないまま実施している企業も多いのではないでしょうか。実際に、同調査でも、テレワークの導入にあたっての課題として「テレワークに必要な機器の整備」(54.3%)、「セキュリティ確保」(43.1%)が挙がっています。

◆情報セキュリティ管理体制

本調査によれば、「情報セキュリティに関する明確な担当者は存在しない」とする企業が2割もみられました。また、情報セキュリティの管理体制等に関する対策の実施状況として、「情報セキュリティポリシーの策定」(34.1%)、「定期的なセキュリティ教育・啓発活動」(32.9%)、「社内情報の重要度レベルによるファイル等へのアクセス制限」(28.9%)が挙がっています。いずれも3割程度にとどまっており、対策が十分でない企業がまだ多いことがわかります。

◆サイバー攻撃に関する対策の実施状況

本調査では、「各種サイバー攻撃に関する対策の実施状況」として、「セキュリティ対策ソフト(ウイルス対策ソフト等)が常に最新になるように指示・設定をしている」(64.4%)、「OSやソフトウェアについて最新の状態となるようアップデートを指示・設定をしている」(53.6%)、「インターネットと社内のネットワークとの間に、ファイアウォールを設置している」(47.7%)が続きますが、セキュリティ対策ソフトが常に最新になるように指示・設定している企業は約3分の2にとどまっていることがわかります。

◆十分な対策を

最近は、「ランサムウエア」と呼ばれる身代金要求型のウイルスによる被害なども多く報告されています。企業がサイバー攻撃を受け、社内の重要な情報が流出したり、金銭を要求されたりする被害は後を絶ちません。テレワークが普及する中、セキュリティ対策が不十分な企業は、そのような攻撃の格好の餌食となってしまいます。企業としては真剣に対策を検討したいところです。


労基法施行規則等の改正案「届出等の際の押印等の廃止・36協定届などの様式の見直し」について (2020/11/01)


行政手続における押印の見直しを受け、「労働基準法施行規則等の一部を改正する省令案」のパブリックコメントによる意見募集が、令和2年10月9日から開始されました(意見募集の締切りは令和2年11月7日)。

◆改正の趣旨

労働基準法および最低賃金法の規定に基づき、使用者に提出が求められている届出等について、規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)等において、行政手続における押印の見直しが明記されたことを踏まえ、これら届出等に際し、使用者および労働者の押印、または署名を求めないこととするというものです。

◆規制改革実施計画

令和2年7月17日に閣議決定された規制改革実施計画のデジタルガバメント分野における新たな取組みとして、「行政手続における書面規制・押印、対面規制の抜本的な見直し」が掲げられ、「各府省は、……原則として全ての見直し対象手続について、恒久的な制度的対応として、年内に、規制改革推進会議が提示する基準に照らして順次、必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行う。」ことが明記されました。

◆改正の概要

労働基準法施行規則、事業附属寄宿舎規程、年少者労働基準規則および建設業附属寄宿舎規程ならびに最低賃金法施行規則において、法令上押印等を求めないこととするとともに、労働基準監督署長等への届出等の際に押印等を求めている省令様式について押印欄を削除します。

押印等を求めている省令様式のうち、36協定届など、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者の記載のあるものについては、労働組合の記名がされている場合には事業場の労働者の過半数で組織されている旨を、過半数代表者の記名がされている場合には事業場の労働者の過半数を代表している旨および当該過半数代表者が労働基準法施行規則6条の2第1項各号(※)のいずれにも該当する者である旨のチェックボックスを設けることとするほか、所要の改正を行います。

※ ①法41条第2号に規定する監督または管理の地位にある者でないこと。②法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続きにより選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。

◆いつから施行

令和3年4月1日予定(公布日は令和2年12月中旬予定)となっています。

コロナ禍で増える自転車通勤……
企業に義務付けられる対応を改めて確認しておきましょう (2020/11/01)


◆コロナ禍で自転車通勤が増えている

コロナ禍の影響で、電車などの公共交通機関の利用を避ける観点から、自転車通勤が増えています。政府も、「環境問題や災害対応から推進する」と後押しする構えです。

従来、自転車通勤は、事故等への懸念から禁止する企業も多くありました。実際、2019年の統計によると、全国で発生している自転車関連事故数は年間8万件以上。一日平均200件以上の事故が起きている計算です。自転車通勤の要請が高まっている現状と、事故の多さを踏まえて、企業としては、改めて自転車通勤について検討し、対策を講じる必要があります。

◆条例への目配りも必要

自転車が関わる事故が多発していることを背景に、2020年4月、東京都は条例で、都民に自転車保険への加入を義務付けました。こうした動きは都に限ったものではなく、条例による保険の加入義務化は2015年10月に兵庫県で初めて導入されて以降広がっており、現在、15都府県・8政令都市が同趣旨の義務付けを行っています。加えて、11道県・2政令都市が努力義務としています。

これらの条例では、自転車利用者に損害保険への加入を義務付けるだけでなく、事業者の責務として、自転車の業務使用時の損害保険への加入、従業員安全教育などを定めています。また、たとえば東京都では、事業者に対し、自転車通勤をする従業者に対する自転車損害賠償保険等への加入の有無の確認、確認ができないときの自転車損害賠償保険等への加入に関する情報提供も努力義務化されるなど、自転車利用を許可するに際しては条例への目配りも欠かすことができません。これらの内容を盛り込んだ自転車通勤規程を定めるなどして、管理を行うことが望まれます。

◆保険加入の確認時の注意点

なお、自転車事故に適用可能な保険として、個人賠償責任保険があり、自動車保険・火災保険・傷害保険などに特約として付帯することができますが、これは日常生活に起因する事故が対象であり、業務中の事故には適用がないことに注意が必要です。業務使用時の事故による賠償責任をカバーするには、企業賠償責任保険(施設賠償責任保険)や自転車の車体に付帯したTSマーク付帯保険に加入する必要がありますので、この点も確認しておきましょう。

企業における感染症対策の実態は?~東京商工会議所調査より (2020/11/01)


◆企業活動に影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症

今年の頭から全世界にパニックを引き起こした新型コロナウイルスですが、多くの企業の事業活動にも大きな影響を及ぼしています。東京商工会議所が会員企業1,477社(回答数582社、回答率39.4%)を対象に実施した調査でも、76.1%が新型コロナウイルス感染症拡大は事業継続への影響を与えたと回答しています。大なり小なり、何ら影響を受けていないという企業は少ないのではないでしょうか。

◆感染症BCP 必要性は認識しながらも策定困難な企業が多い

本調査では感染症の対応を含むBCP(事業継続計画)の有無についても聞いており、「有る」と回答した企業は17.8%、「策定中」「今後、策定予定」と回答した企業は合わせて36.1%だったそうです。一方、「必要だと思うが、予定はない」と回答した企業は42.4%となっています。感染症BCP策定上の課題として、「ノウハウやスキルがない(66%)」「人員が割けない(49.5%)」との回答も多く、BCP策定の必要性は感じながらも、なかなか実施できないという企業の実情が読み取れます。

◆感染拡大防止のために実施した対策と購入資材

また、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて実施した対策として、「手洗い・うがい・マスク着用の励行(96.6%)」「アルコール消毒液等の設置(94.5%)」はほとんどの企業が実施しており、「飛沫感染防止資材の購入(74.6%)」「定期的な従業員の体調確認(68%)」が続いています。感染防止のために社内で購入した資材としては、「手指用消毒液(90.5%)」と「マスク(86.9%)」が上位になっている一方、「設備用消毒液(46.6%)」「間仕切り(アクリル板等)(40.7%)」などは半数以下となっています。

◆企業に求められる対策

本調査は東京23区の会員企業の現況を示したものですが、対策が十分といえる企業はまだ少なく、付け焼刃的に対応している企業が多いようです。感染症に限らず、最近は自然災害等による影響も目立つところです。今後は、地域ごとの特徴を踏まえ、自社の課題を整理したうえでの、わかりやすい対策マニュアルの策定が求められていくことでしょう。

【東京商工会議所「企業における感染症対策に関する実態調査」結果について】
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1022911


副業・兼業ガイドラインが改定されました (2020/10/04)


◆副業・兼業の促進に関するガイドライン

企業に広く兼業・副業を認めることを促すよう、現行の法令のもとでどういう事項に留意すべきかをまとめた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下、ガイドライン)が、9月に改定されました。企業も労働者も安心して副業・兼業を行うことができるよう、さらなるルールの明確化を目的としています。

◆改定の主な内容

今回の改定では、労働時間の通算管理や、安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止義務、誠実義務等についての記述が新設されています。なかでも注目されるのが、労働時間の通算管理に関する事項です。長時間労働や健康被害を防ぐために、企業は、労働者からの自己申告により副業で働いた時間を把握し、本業と副業の労働時間を通算して労務管理を行うとしています。また労働時間管理については、簡便な労働時間管理の方法として、「企業の負担に配慮した管理モデル」(以下、管理モデル)が示されています。

◆企業の負担に配慮した管理モデル

管理モデルでは、副業・兼業の開始前に、当該副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者Aの事業場における法定外労働時間と、後から労働契約を締結した使用者Bの事業場における労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)とを合計した時間数が、単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲内において、各使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定し、各使用者がそれぞれその範囲内で労働させるものとしています。

また、使用者Aは自らの事業場における法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払うこととします。

これにより、それぞれの使用者は、副業・兼業の開始後においては、それぞれあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させる限り、他の使用者の事業場における実労働時間の把握を要することなく労基法を遵守することが可能となるとしています。

【厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」】
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf


コロナと整理解雇 (2020/10/04)


◆予断許さず

新型コロナについては、指定感染症からは外す方向で議論が進められるようです。しかし、すでに緊急事態宣言がなされてから痛手を負っている企業も多く、今後の景気回復も急激に良くなるとの予想はされていませんし、倒産や解雇の増加という波が時間差でやってくるとも予想されます。また、冬に向けて、新型コロナ感染者のさらなる増加や、ウイルスの変異による感染力の増強、さらに別のウイルス等による感染症の発生なども考えられます。

今は何とか持ちこたえている企業でも、企業体力や今後の情勢によっては、コロナ禍による業績の落込みから、正社員の整理解雇等を検討せざるを得なくなるかもしれません。

いくら「コロナだから。緊急事態だから」と言ってみても、裁判例上は、コロナによる業績の落込みは、天災地変等のやむを得ない事由ではなく、経営上の理由による解雇と扱われる場合がほとんどと思われます。正社員の整理解雇は、ご存じのように厳格な要件(要素)で判断されます(整理解雇の4要素)。

◆可能な限り解雇を回避する

この4要素の一つとして「解雇回避努力義務の実行」があります。整理解雇の実施にあたっては、可能な限り雇用を確保(解雇せざるを得ない場合でも労働者の負担をなるべく軽減)するべく、取れる方策を模索し、準備しておくべきです。

  • 転勤・出向等による異動
  • 休業手当を支払って自宅待機等を命令(一時帰休、再就職支援休暇など)
  • 休業手当相当の退職一時金を支払い、雇用契約を合意解約
  • 訴訟となるリスクを考慮しつつ、退職金の上積み等を提案し、退職勧奨

というような方策が考えられます。

◆就業規則等の確認を

また、そうした方策をとる前提として、一時帰休の際の賃金の扱い(休業手当相当額を減額する規定)、コロナ等の事態が発生した場合の整理解雇があり得ること等は、就業規則や個別の労働契約に明記しておくことが重要です。
コロナ等による整理解雇に備え、説明資料や社員の説得のための資料なども、事前に準備しておくべきでしょう。

コロナや災害等の際の人事・労務の取扱いについて、社員からの質問等にしっかりと答えられるよう、人事・総務担当者が使えるより細かいFAQのような形でまとめておくと、会社としての統一的対応が図れ、担当者の負担も減るでしょう。

対象事業場の約半数で違法残業を確認~令和元年度監督指導結果より (2020/10/04)


◆15,593事業場で違法な時間外労働確認

9月8日、厚生労働省は令和元年度の長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表しました。

働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が令和元年4月1日より中小企業にも適用されたこと等もあってか、対象事業場数は平成30年度の29,097から約1割増の32,981で、そのうち15,593(47.3%。平成30年度は11,766(40.4%)で違法な時間外労働が確認され、指導が行われています。

◆健康障害防止措置に関する指導状況

監督指導の実施事業場のうち15,338(46.5%)で、健康障害防止措置が不十分として、長時間労働者に対する医師面接等を講じるよう指導が行われています。平成30年度の20,526(70.5%)に比べて減少していますが、まだまだ多いことがわかります。

◆対象事業場の7割近くが30人未満、企業規模別では3割近くが300人以上

事業場規模別に見ると、監督指導実施事業場の41.7%を10~29人の事業場が、25.3%を1~9人の事業場が占めており、30人未満の事業場で約7割を占めています。平成30年度と比べてこの割合は増えており、これらの事業場で特に注意が必要といえます。

企業規模別に見ると、29.3%が300人以上、24.7%が10~29人、12.8%が100~299人となっています。こちらも平成30年度に比べて30人未満の割合が増えています。

◆「商業」の事業場で是正勧告が急増

監督指導の対象事業場32,981のうち、商業の事業場は8,009(24.3%)で、そのうち6,088(76.0%)で労働基準関係法令違反がありました。平成30年度の4,647事業場への実施と3,097事業場での違反に比べると、ほぼ2倍となっています。

◆11月には「過重労働解消キャンペーン」も実施

厚生労働省では、11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施し、重点的な監督指導を行うとしています。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月17日に発出された依命通達では、中小企業等に対する相談・支援について、「労働基準関係法令に係る違反が認められた場合においても、新型コロナウイルス感染症の発生および感染拡大による影響を十分勘案し、労働基準関係法令の趣旨を踏まえた自主的な取組みが行われるよう、きめ細かな対応を図る」ともされていますが、自社の時間外労働の実施状況や健康障害防止措置に関する対応に問題がないか、改めて確認しておき、不安がある場合は速やかに専門家に相談しましょう。


8月1日から雇用保険の基本手当日額が変更になっています (2020/09/01)


◆「基本手当日額」の変更

雇用保険の基本手当日額が、令和元年度の平均給与額が平成30年度と比べて約0.49%上昇したことおよび最低賃金日額の適用に伴い変更されています。なお、平均給与額については、「毎月勤労統計調査」による毎月決まって支給する給与の平均額(再集計値として公表されているもの)が用いられています。

◆具体的な変更内容

1. 基本手当日額の最高額の引上げ
  基本手当日額の最高額は、年齢ごとに以下のようになります。
 (1) 60歳以上65歳未満  7,150円 → 7,186円(+36円)
 (2) 45歳以上60歳未満  8,330円 → 8,370円(+40円)
 (3) 30歳以上45歳未満  7,570円 → 7,605円(+35円)
 (4) 30歳未満       6,815円 → 6,850円(+35円)
2. 基本手当日額の最低額の引上げ
              2,000円 → 2,059円(+59円)
※ 基本手当日額の算定基礎となる賃金日額の最高額、最低額等については、毎年度の平均給与額の変動に応じて変更されていますが、これにより変更された最低額が、最低賃金日額(地域別最低賃金の全国加重平均額に20を乗じて7で除して得た額)を下回る場合は、最低賃金日額を最低額とすることとされています(雇用保険法第18条第3項)。

令和2年8月1日以降の基本手当日額の最低額については、最低賃金日額に、基本手当の給付率80%を乗じて計算されています。

(計算式)
901円(令和2年4月1日時点での地域別最低賃金の全国加重平均額)×20÷7×0.8
=2,059円

*変更の詳細については厚生労働省のパンフレットをご確認ください。
【厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」PDF】
https://www.mhlw.go.jp/content/11607000/000654410.pdf


マイナンバーカードの健康保険証利用受付が始まりました (2020/09/01)


2021年3月から、マイナンバーカードが健康保険証として利用できることになっていますが、その申込みが始まりました。詳細はマイナポータルのホームページに掲載されていますが、概要は以下のようなものです。

◆メリットは?

  1. 就職・転職・引越をしても健康保険証としてずっと使える
  2. マイナポータルで特定健診情報や薬剤情報・医療費が見られる
  3. マイナポータルで確定申告の医療費控除がカンタンにできる(2021年分確定申告から)
  4. 窓口への書類の持参が不要になる


◆使い方は?

医療機関や薬局でマイナンバーカードをカードリーダーにかざすだけで使えます。オンライン資格確認が導入されている医療機関・薬局では、マイナンバーカードを持参すれば健康保険証がなくても利用できます。医療機関や薬局は、マイナンバーカードをかざした後、顔写真で本人を確認します。また、医療機関や薬局が12桁のマイナンバーそのものを取り扱うことはなく、マイナンバーカードのICチップ内の利用者証明用電子証明書を利用します。

ただ、オンライン資格確認が導入されていない医療機関・薬局では、引き続き健康保険証が必要です。

◆事前に準備するもの

  1. 申込者のマイナンバーカード+数字4桁の暗証番号(パスワード)
  2. マイナンバーカード読取対応のスマートフォン(またはPC+ICカードリーダー)
  3. 利用するブラウザ用のマイナポータルアプリのインストール


なお、マイナポータルのホームページでは、パソコンの場合とスマートフォンの場合の利用申込方法の動画が公開されることになっているようですが、8月12日現在では「準備中」の表示になっています。

【マイナポータル「マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになります!」】
https://myna.go.jp/html/hokenshoriyou_top.html?fbclid=IwAR2jRv7ros5drqQWeFXxg87T91cjFNTxGqwFlK8u2lo1gTxnuV_FgR2RAto


新型コロナウイルスの影響による障害者の働き方の変化
~パーソルチャレンジ調査 (2020/09/01)


◆6割が「収入」や「就業継続」に不安

パーソルチャレンジ株式会社が行った「新型コロナウイルス感染拡大による障害者の就業、就職・転職活動への影響」についての調査結果によると、在職中の障害者(複数選択)の約6割が新型コロナウイルスの影響で、実生活に直結する「収入」「就業継続」を不安に感じていることが明らかになりました。

また、ストレスや体の不調による「体調、健康面への不安」(36.7%)や、「コミュニケーション、人間関係の不安」(24.7%)など在宅勤務による就業場所や環境の変化によって不安が増していることが明らかになりました。

◆半数が在宅勤務を希望

コロナ禍の就業形態についての調査では、51.6%が在宅勤務で就業をしていました。また、今後の理想の働き方として、在宅勤務を望む人が50.1%と約半数に上っており、「自宅から近いオフィスや事業所で働きたい」が16.6%、「今までどおりオフィスに出社して働きたい」が8.9%という結果となりました。

なお、同社が企業担当者に対して行った調査でも、障害のある社員に対し特別措置として「テレワークを導入し、在宅勤務とした」(27.3%)、「時差出勤や時短勤務を導入した」(26.4%)と回答しました。

◆今後の障害者雇用にどう影響するのか?

また、同調査で「障害者が働くことに対して重視すること」について、新型コロナウイルス発生前と現在・今後に分けて聞いたところ、以下の結果になりました。

重視すること コロナ発生前 現在・今後 増減
収入・給与 64.6% 57.1%  ▲7.5
業務内容 42.5% 26.6% ▲15.9
就業継続 43.3% 40.5%  ▲2.8
自己成長・キャリアアップ 22.4% 18.1%  ▲4.3
自宅と職場の距離・在宅勤務制度 21.4% 27.7%   6.3
オンライン活用・業務体制  7.0% 20.1%  13.1

これからの障害者の働き方として、オンラインの活用やテレワークといった在宅勤務を前提とした採用の仕方も考えられます。もちろん、これまでと変わらず障害種別に応じた配慮や健康に重視した働きやすい環境を整えることも必要です。

来年3月末までには、民間企業の法定雇用率が2.2%から2.3%に引き上げられ、常用雇用で働いている労働者が43.5人以上の企業に対し、1人の障害者を雇用する必要があります。この調査結果を踏まえて障害者の採用を検討してみてはいかがでしょうか。

【パーソルチャレンジ「新型コロナウイルス感染拡大による障害者の就業、就職・転職活動への影響」】
https://challenge.persol-group.co.jp/wp-content/uploads/2020/07/news_6485.pdf



新型コロナ感染症による社会保険の標準報酬月額の特例改定 (2020/08/01)


◆標準報酬月額の特例改定

今般の新型コロナウイルス感染症の影響により休業した方で、休業により報酬が著しく下がった方について、一定の条件に該当する場合は、事業主からの届出により、健康保険・厚生年金保険料の標準報酬月額を、通常の随時改定(4か月目に改定)によらず、特例により翌月から改定可能となりました。

◆対象となる方

以下の3つの要件すべてに該当している方が対象となります。

  1. 事業主が新型コロナウイルス感染症の影響により休業(時間単位を含む)させたことにより、急減月(令和2年4月から7月までの間の1か月であって、休業により報酬が著しく低下した月として事業主が届け出た月)が生じた方
  2. 急減月に支払われた報酬の総額(1か月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて、2等級以上下がった方
    ※固定的賃金(基本給、日給等単価等)の変動がない場合も対象となります。
  3. 特例による改定を行うことについて、本人が書面により同意している方
    ※被保険者本人の十分な理解に基づく事前の同意が必要です(改定後の標準報酬月額に基づき、傷病手当金、出産手当金および年金の額が算出されることへの同意を含む)。
    ※本特例措置は、同一の被保険者について複数回申請を行うことはできません。


◆対象となる保険料

令和2年4月から7月までの間に休業により報酬等が急減した場合に、その翌月の令和2年5月から8月分保険料が対象となります。

※令和3年1月末日までに届出があったものが対象となります。それまでの間は遡及して申請が可能ですが、給与事務の複雑化や年末調整等への影響を最小限とするため、改定をしようとする場合はできるだけ早めの手続きが求められます。

◆注意事項

  • 通常の月額変更届・算定基礎届と提出先が異なります。
    ⇒管轄の年金事務所に郵送、もしくは窓口へ提出します。
  • 通常の月額変更届・算定基礎届と様式が異なります。
    ⇒届書および申立書は、日本年金機構ホームページからダウンロードできます。
  • この特例改定の届出は、電子証明書を利用したe-Govからの電子申請やGビズIDを利用した電子申請、電子媒体による申請には現時点では対応していません。
  • 特例改定の届出を行うか否かにかかわらず、通常の算定基礎届の提出は変更なく必用です。

【日本年金機構のリーフレット】
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2020/0625.files/01.pdf


障害者雇用の取組みが優良な中小企業への認定制度について (2020/08/01)


◆認定マークの愛称とデザインが決定

今年4月に改正障害者雇用促進法が施行され、障害者雇用に関する優良な中小企業への認定制度(もにす認定制度)が新たに創設されました。厚生労働省は、公募によって決定した障害者雇用優良中小事業主認定マーク(愛称:もにす)のデザインを公表しました。

このロゴマークは、障害者を企業が丸く優しく包み込み、多様性を受け入れ、「共に社会貢献をしていこう!」という前向きな想いを表したキャラクターで、「もにす」という愛称は、共に進む(ともにすすむ)という言葉と、企業と障害者が共に明るい未来や社会に進んでいくことを期待して名付けられました。

◆認定事業主になるには?

障害者雇用に関する優良な中小企業への認定制度は、ポイント制で実施され、下記の要件を満たす中小企業(常時雇用する労働者が300人以下の事業主)が優良な事業主として認定されます。

  1. 障害者雇用への取組みなどの認定基準(※)に基づき、50点中20点以上であること
  2. 雇用率制度の対象障害者を法定雇用障害者数以上雇用していること
  3. 指定就労支援A型の利用者を除き、雇用率制度の対象障害者を1名以上雇用していること
  4. 障害者雇用促進法および同法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと
    など

    ※認定基準は、厚生労働省ホームページに掲載されている「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度申請マニュアル(事業主向け)」をご確認ください。
    また、認定事業主になるための手続きや様式、必要書類は、厚生労働省ホームページに掲載されています。


◆認定のメリット

厚生労働大臣から認定を受けた企業は、認定マークを商品、広告、求人票、名刺、書類などに表示することができ、障害者の雇用の促進・安定に関する取組みが優良な企業であることを採用活動や取引先等にアピールすることができます。
また、日本政策金融公庫の低利融資の対象となることや、公共調達で有利になることなども期待できます。

【障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)】
https://www.mhlw.go.jp/stf/monisu_00001.html


テレワークで長時間労働~連合調査より (2020/08/01)


◆調査で明らかになったテレワーク実態

日本労働組合総連合会(以下、連合)は、テレワークで働く人の意識や実態を把握するため、「テレワークに関する調査」を公表しました。調査では、「通常の勤務よりも長時間労働になることがあった」と半数超(51.5%)が回答しました。テレワークでは、仕事と仕事以外の切分けが難しく、長時間労働になりやすいという問題が以前から指摘されています。これらを実感した労働者が多かったことがわかります。それでも、テレワークの継続を「希望する」と回答した人は 81.8%となり、多くの人がメリットを感じたことがわかります。しかし、この調査で気になるのが、労働時間管理についてです。時間外・休日労働をしたにもかかわらず申告していない回答者が 6 割超(65.1%)、また時間外・休日労働をしたにもかかわらず勤務先に認められないという回答者が半数超(56.4%)いました。

◆テレワークでも労働時間管理は必要

テレワークであろうと労基法は適用されます。みなし労働時間制が適用される労働者や労基法第41条に規定する労働者を除き、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づいて、適切に労働時間管理を行わなければなりません。実労働時間やみなされた労働時間が法定労働時間を超える場合や法定休日に労働を行わせる場合は、36協定の締結、届出及び割増賃金の支払いが必要です。また、現実に深夜に労働した場合は、深夜労働に係る割増賃金の支払いが必要です。これらを放置すれば、労務トラブルに発展しかねません。

◆実態にあった適切な労働時間管理を

時間外労働等について労働者からの事前申告がなかったり、申告に対して許可を与えなかった場合でも、業務量が過大であったり、明示、黙示の指揮命令があったと解しうる場合には、労働時間に該当します。テレワークを行う労働者は、業務に従事した時間を日報等において記録し、使用者はそれをもって当該労働者に係る労働時間の状況の適切な把握に努め、必要に応じて労働時間や業務内容等について見直すことが望ましいとされています。自社の実態にあった管理、制度の選択ができるよう、適宜見直していきましょう。

【日本労働組合総連合会「テレワークに関する調査2020】
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20200630.pdf?3253

【厚生労働省「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」】
https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf


テレワークの流れを止めない ―今後企業が重視すること (20202/07/04)


◆流れを読めていますか?

職種柄、どうしても実際に職場に出てくることが必要な仕事というものもありますが、テレワークやウェブ環境を通じた働き方は、今後もより一層浸透していくことでしょう。

しかし、今回のコロナ禍を機にテレワークを導入し始めた企業では、緊急事態宣言の解除とともに、何となく(あるいはそそくさと)旧来の働き方に戻ろうとの空気が漂い始めているのではないでしょうか。

そのような新しい流れに対応できない企業は、人材採用の面でも「テレワークすらとり組めていない企業なんて……」と、就職先の候補から外されてしまうことも起こるはずです。

◆テレワークのメリット?

テレワークに、会社に対する直接的なメリットを求める企業もあるようですが、それは少し認識がずれている可能性があります。

人生100年時代、70歳までの雇用確保等に向けて世の中が動き始めています。年齢・性別にかかわりなく活躍してもらわなければ企業が生き残っていけない時代に、すでに差しかかっています。(独)労働政策研究・研修機構が行った「人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関する調査」を見ても、日本企業の雇用管理と長期勤続化の課題として、働きやすい職場の実現に対する配慮を重視されています。

つまり、「ワーク・ライフ・バランスの向上」、「育児・介護や病気治療と仕事の両立」、「社員のストレスの削減」等が重視される時代なのです。
いろいろな社員が活躍できるようにすることが、回りまわって企業のメリットとなるのです。今後の社会において、社員の働きがいを考えられない企業は生き残れるでしょうか?

また、BCP対策や企業イメージの向上につながるテレワークは、会社として重要なメリットであるはずです。

◆試行錯誤してこそ

現在、多くの企業が試行錯誤しながらテレワークの活用を模索しているところです。労働時間や業績の管理、評価方法、通勤手当の見直し、在宅勤務手当の検討、ツールの使い方といった試行錯誤を経験してこそ、仕事の効率化・スキルの向上や新しい事業の創造につながるのですから、そこに背を向けることは企業の自殺行為に等しいことでしょう。

何事につけ、「どうしたらうまく活用できるか」を自律的に考えられる場や雰囲気を社内に作り出すことが、企業には求められているでしょう。

【労働政策研究・研修機構「人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関する調査」PDF】
https://www.jil.go.jp/press/documents/20200529.pdf


厚労省発~「新しい生活様式」における熱中症予防 (020/07/04)


◆「新しい生活様式」

新型コロナウイルスの感染拡大を長期間にわたって防ぐため、「新しい生活様式」が厚労省より公表されています。このなかでは、基本的な事項として、身体的距離の確保(できるだけ2m)、マスクの着用、手洗いを挙げ、これに加え、三密(密集、密接、密閉)の回避、換気、こまめな健康チェックが効果的としています。働き方については、テレワークや時差通勤、オンラインの活用をすすめています。第二派への警戒が求められるなかで、これらを定着・持続させることが重要です。

◆熱中症には、例年以上に注意が必要

この時期気になるのが、熱中症へのリスクです。今年は、上記のような十分な感染症予防を行いながら、熱中症対策をする必要があります。しかし、高温多湿でのマスクは熱中症のリスクを高めます。体調不良で冷房のある屋内に入ろうとしたら、人数制限中ということも考えられます。厚労省は、「新しい生活様式」における熱中症予防行動について、次の通り示しました。

◆予防のポイント

  1. マスクの着用:屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合は、外しましょう。着用時には、強い負荷の運動は避け、こまめに水分補給しましょう。人と十分な距離をとれる場所で、一時的にマスクを外して休憩しましょう。
  2. エアコンの使用:冷房時でも、窓開放や換気扇によって換気をしましょう。換気により室内温度が高くなりがちなので、エアコンの設定温度を下げるなどの調整をしましょう。
  3. 涼しい場所への移動:少しでも体調に異変を感じたら、すぐ涼しい場所に移動しましょう。屋内に入れない場合は、屋外でも日陰や風通しのいい場所に移動してください。
  4. 日頃の健康管理:定時の体温測定、健康チェックをしましょう。平熱を知れば、発熱に早く気づけます。また、体調が悪いと感じたら、無理せず自宅で静養しましょう。

【厚生労働省「「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_coronanettyuu.html


感染拡大による働き方と意識の変化~日本生産性本部の調査結果 (2020/07/04)


新型コロナウイルス感染症は、組織で働く人の意識にどんな変化をもたらしているのか。日本生産性本部が、政府による緊急事態宣言の発出から約1か月後の5月11日~13日に20歳以上の日本の雇用者(就業者から自営業者、家族従業者等を除く)1,100名を対象にインターネットを通じて行った第1回の調査結果を公表しました。

◆労働時間・業務時間の変化、業種別・労働時間の変化

労働時間・業務量・余暇時間とも「特に増減は無い」が4割以上。労働時間は43.2%、業務量は37.6%が「減少した」と回答した一方、余暇時間は42.8%が「増加した」と回答しました。また、労働時間の増減は業種による差が大きく、特に宿泊業では100%、飲食サービス業では89.2%で「減少した」と答えました。

◆勤め先の業績、今後の自分自身の雇用・収入への不安、勤め先への信頼感

勤め先の業績(65.3%)、今後の自分自身の雇用(47.7%)、今後の収入(61.8%)と、いずれも「不安」を感じている人が多いという結果です。今後の雇用への不安感は業種による差が大きく、宿泊業(85.7%)、飲食サービス業(75.7%)、医療・福祉(65.0%)、生活関連サービス業(63.0%)で「不安」の割合が多くなっています。

一方、勤め先による健康への配慮は、雇用形態や性別等の属性に関わらず68.7%が肯定的で、信頼の程度は、性別・雇用形態等の属性に関係なく「信頼している」「まずまず信頼している」が約7割、「あまり信頼していない」「信頼していない」が約3割でした。

◆新型コロナウイルス感染症による働き方の変化

働き方については、「特に変化はない」が40.7%で最多、「多少変わった」が35.0%、「大きく変わった」が24.3%でした。職種別に見ると、「専門的・技術的な仕事」「管理的な仕事」で3割以上が「大きく変わった」一方、「生産工程の仕事」「輸送・機械運転の仕事」「建設・採掘の仕事」「運搬・清掃・包装等の仕事」では6~7割が「特に変化はない」としています。

また、柔軟な働き方の施策については、「特にない」が46.3%で最多。「自宅での勤務」29.0%、「時差出勤」16.3%、「短時間勤務」15.4%で、柔軟な働き方が一般化したとまでは言えない状況です。ただ、直近1週間の出勤日(営業日ベース)については、「1~2日」が37.3%で最多、「0日」32.1%、「3~4日」21.1%、「5日以上」9.5%で、2日以下の出勤が約7割を占めました。

テレワーク実施における課題については、「職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化」48.8%が最多で、以下「Wi-Fiなど、通信環境の整備」45.1%、「部屋、机、椅子、照明など物理的環境の整備」43.9%などが続きました。「特に課題は感じていない」は8.4%にとどまり、多くの人が現状に不都合を感じていることが分かります。

 一方で、新型コロナウイルス収束後もテレワークを継続したいかについては、「そう思う」24.3%、「どちらかと言えばそう思う」38.4%と、6割強が肯定的でした。

ある程度予想された結果も多いといえますが、これらの具体的な数字も踏まえ、企業としては、今後予測される新型コロナウイルスの第2波・第3波への備えはもちろん、多様な働き方を取り入れながら生産性を高められるよう、社内インフラの整備や社員教育、制度改革が求められることになりそうです。

【日本生産性本部「新型コロナウイルスの感染拡大が働く人の意識に及ぼす調査」結果PDF】
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/5f4748ac202c5f1d5086b0a8c85dec2b.pdf



6月から職場におけるハラスメント防止対策が強化されます (2020/06/01)


◆パワーハラスメント

労働施策総合推進法の改正により、6月1日から、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。なお、中小事業主は、令和4年4月1日から義務化されます(それまでは努力義務です)。

(1) 事業主および労働者の責務

  • 事業主の責務……1.職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないこと等これに起因する問題に対する労働者の関心と理解を深めること、2.その雇用する労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう研修を実施する等、必要な配慮を行うこと
  • 労働者の責務……1.ハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に注意を払うこと、2.事業主の講ずる雇用管理上の措置に協力すること

(2) パワーハラスメントの防止のために事業主が講ずべき措置

  1. 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
  2. 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
  3. 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
  4. 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること
  5. 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  6. 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
  7. 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
  8. 再発防止に向けた措置を講ずること
  9. 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
  10. 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

(3) 事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止

事業主は、労働者が職場におけるパワーハラスメントについての相談を行ったことや雇用管理上の措置に協力して事実を述べたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いをすることが、法律上禁止されます。

◆セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント

これらについては、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法により、雇用管理上の措置を講じることが既に義務付けられていますが、6月1日から以下のとおり、事業所の規模を問わず防止対策が強化されます(1、2の内容はパワーハラスメントと同様です)。

  1. 事業主および労働者の責務
  2. 事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
  3. 自社の労働者が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応

自社の労働者が他社の労働者にセクハラを行い、他社が実施する雇用管理上の措置事実確認等への協力を求められた場合、これに応じるよう努めることとされました。

テレワークの実施状況は?~厚労省・LINE株式会社の調査より (2020/06/01)


◆新型コロナウイルスの影響で急速に広まったテレワーク

新型コロナウイルス感染リスク防止の観点から急速に広まったテレワーク。騒動の中で急遽対応に迫られた職場も多いことでしょう。業態やこれまでの対応状況によっては実施が難しいところもありますし、その実施内容は職場によって大きく異なると思いますが、全国的な実施率はどのようになっているのでしょうか。

◆テレワーク実施率は27%

厚生労働省は、LINE株式会社と協力して、LINE株式会社の公式アカウントにおいて、サービス登録者に対して「新型コロナ対策のための全国調査」を3回にわたり実施し、その分析結果を発表しています(第1回:3月31日-4月1日、第2回:4月5日-6日、第3回:4月12日-13日実施)。

調査によると、オフィスワーク中心(事務・企画・開発など)の人におけるテレワークの実施率は、第3回調査時点で、全国平均で27%でした。緊急事態宣言前と比べて増加しているものの、政府目標の「オフィス出勤者の最低7割削減」には、この時点ではまだまだ届いていない状況です。

緊急事態宣言が最初に発令された7都府県だけで見ても、最も進んでいる東京都で52%、最も遅れている福岡県で20%と差があります。また、全国的には1割にも届いていない地域が多いようです。

◆テレワークはコロナ対策に限るものではない

本調査は4月中旬までの状況を示したものですので、その後、また状況は変わっていることが予想されます。実際に、これまでは「テレワークなんて無理だ・関係ない」と考えていた企業においても、この騒動の中で、どうにかテレワークを実施できないか、テレワーク下でも滞りなく業務を行えないかと試行錯誤しているところが多いのではないでしょうか。

テレワークはコロナ対策だけに限るものではありません。育児・介護、様々な災害対応の面からも必要になってくるものです。テレワークの実施状況が今後の企業経営にも大きく影響してくることにもなりかねませんので、これを機に自社でも真剣に検討していきたいところです。

【厚生労働省「第1-3回「新型コロナ対策のための全国調査」からわかったことをお知らせします。」】
  https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11109.html


コロナ禍で、事業者の健康診断の延期が認められています (2020/06/01)


◆対応の概要

  • 一般健康診断:令和2年6月末までの間、実施時期を延期することができます。
  • 特殊健康診断:実施することが義務づけられていますが、十分な感染防止対策を講じることが困難な場合などには、実施時期を6月末まで延期することができます。


◆一般健康診断

事業者は、労働安全衛生法第66条第1項の規定により、労働者の雇入れの直前または直後に健康診断を実施することや、1年以内ごとに1回定期に一般健康診断を行うことが義務づけられています。しかし、新型コロナウイルスの拡がりにより、健康診断等の実施会場においても、密閉・密集・密室といった「三密」空間での感染拡大が懸念されるところから、一般健康診断の実施時期については、令和2年6月末までの間、延期することとして差し支えないこととされました。

◆特殊健康診断

また、事業者は、労働安全衛生法第66条第2項および第3項、じん肺法の規定に基づき、有害な業務に従事する労働者や有害な業務に従事した後配置転換した労働者に特別の項目についての健康診断を実施することや、一定の有害な業務に従事する労働者に歯科医師による健康診断を実施すること等が義務づけられています(特殊健康診断)。

特殊健康診断については、がんその他の重度の健康障害の早期発見等を目的として行うものであるため、基本的には十分な感染防止対策を講じたうえで法令に基づく頻度で実施するのが望ましいとされていますが、十分な感染防止対策を講じた健康診断実施機関での実施が困難である場合には、一般健康診断と同様、実施時期を令和2年6月末までの間、延期することとして差し支えないこととされました。

これらの取扱いは、現時点では新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた令和2年6月末までに限られた対応とされています。詳細は厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」に掲載されていますが、随時更新されていますので、こまめにチェックする必要があります。

【厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」】
  https://mhlw.lisaplusk.jp/jump.cgi?p=2&n=107


新型コロナウイルスによる厚生年金保険料等の納付猶予制度 (2020/05/02)


日本年金機構のホームページに、厚生年金保険料等の納付猶予について、次のとおりお知らせが出ています。

新型コロナウイルスの影響により、厚生年金保険料等を一時に納付することにより事業の継続等を困難にするおそれがあり、一定の要件に該当する場合、厚生年金保険料等を分割納付できる仕組みがあります。事業主の方は、納付すべき厚生年金保険料等の納期限から6月以内に「換価の猶予」の申請ができます。

また、災害等によって事業所の財産に相当な損害を受け、厚生年金保険料等の納付が困難となった場合は、事業主の方からの申請に基づき、保険料等の「納付の猶予」を受ける制度があります。

◆「換価の猶予」の概要

申請要件は、次のすべてに該当することです。

  1. 厚生年金保険料等を一時に納付することにより、事業の継続等を困難にするおそれがあること
  2. 厚生年金保険料等の納付について誠実な意思を有すること
  3. 納付すべき厚生年金保険料等の納期限から6か月以内に申請されていること
  4. 換価の猶予を受けようとする厚生年金保険料等より以前の滞納又は延滞金がないこと
  5. 原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保の提供があること
  6. 換価の猶予が認められた場合は、
  1. 猶予された金額を猶予期間中の各月に分割して納付することになります。
  2. 猶予期間中の延滞金の一部が免除されます。
  3. 財産の差押や換価(売却等現金化)が猶予されます。

猶予期間は、原則1年の範囲内で年金事務所が認めた期間となります。

◆「納付の猶予」の概要

猶予の要件は次のとおりです。

  1. 次のいずれかに該当する事実があること
    1. 財産につき、震災、風水害、落雷、火災その他の災害を受け、又は盗難にあったこと
    2. 事業主又はその生計を一にする親族が病気にかかり、又は負傷したこと(個人事業所)
    3. 事業を廃止し、又は休業したこと等)
  2. aの該当事実により、納付すべき厚生年金保険料等を一時に納付することができないと認められること
  3. 申請書が提出されていること
  4. 原則として、猶予を受けようとする厚生年金保険料等の金額に相当する担保の提供があること

納付の猶予が認められた場合の効果は、上記「換価の猶予」と同じです。
詳しくは、下記ホームページをご覧の上、管轄の年金事務所までお問い合わせください。
【日本年金機構「新型コロナウイルス感染症の影響により厚生年金保険料等の納付が困難となった場合の猶予制度について」】
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2020/202003/20200304.html


70歳までの就労確保が努力義務に ~ 改正高年齢者雇用安定法成立へ (2020/05/02)


◆改正高年法が成立

新型コロナウイルスに関する騒動のなかで、大きく報道される機会が減ってしまった印象の今国会審議中の改正法案ですが、3月末に、従業員の70歳までの就労確保を努力義務とする改正高年法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)が雇用保険法や労災保険法などとあわせて成立しました。来年4月の施行とされています。

◆65歳から70歳までの高年齢者就業確保措置が努力義務に

現在、平成25年改正により、65歳までの「高年齢者雇用確保措置」が企業に義務付けられています。「高年齢者雇用確保措置」とは、「定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置をいい、あくまで「雇用」を前提としたものになっていますが、今回の改正では、65歳から70歳までの「高年齢者就業確保措置」として、これらに加え、労使で同意したうえでの雇用以外の措置(継続的に業務委託契約する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度)の導入のいずれかを講ずることを、企業の努力義務にするとしています。「再就職支援」、「フリーランス契約への資金提供」や「起業支援」など、これまでの考え方にない措置が登場している点は注目に値します。

高年齢者就業確保措置の実施や運用の詳細については、今後指針が出される予定です。施行まで1年と短いですので、最新情報を注視していく必要があります。

◆今後の雇用の在り方について検討を

今回の改正は、現状、努力義務とされていますが、将来的には義務化も検討されています。高齢者の雇用については、年金法の改正による老齢年金の受給開始時期の拡大や雇用保険法の改正などとも密接に絡み合うものです。少子高齢化や労働力人口の減少は避けられない状況のなか、企業としても、高齢者雇用をはじめとした、これからの雇用の在り方をしっかり検討していきたいところです。


在宅勤務の長期化に備えて情報発信も必要 (2020/05/02)


◆在宅勤務に関する意識調査

BIGLOBEが3月に行った「在宅勤務に関する意識調査」によると、新型コロナ拡大防止のための外出自粛は、「4月までが妥当」と考えている方が多いようです。
ただ、事態の収束については、誰にも予想は難しく、在宅勤務が長期化した場合のことも想定しておく必要があります。在宅勤務を行う上で、難しい・ストレスに感じるものとして、同調査では、集中力が続かない、家を出なくなってストレスがたまる、上司や部下に気軽に相談や雑談ができないといった回答があります。

◆情報発信も必要

在宅で仕事をしていると、ともすると堕落してしまう傾向があります。また、外出自粛要請の影響もあり、ストレスもたまります。

業務に関することについては、仕事上のこととして対処しやすいとは思いますが、社員の健康確保のためのアドバイスを会社から発信することも、在宅勤務の長期化に伴って必要となってくる可能性があります。

大きな災害時における被災者の心理的反応として、初期の頃は災害後の生活に適応したかに見えるハネムーン期(積極的・発揚的な時期)があり、それを過ぎると、だんだんと幻滅期(消極的・抑うつ的な時期)がやってくるとされています。

◆社員の健康を見直すチャンス

今回のコロナ禍も災害としてとらえれば、長期化した場合を想定して、「閉じこもり生活のアドバイス、宇宙飛行士から潜水艦艦長まで新型コロナ対策」(https://www.afpbb.com/articles/-/3275588) といった記事を紹介したり、室内でできる運動を紹介するといったことも考えられるでしょう。そこから何か仕事上のアイデアが生まれるかもしれません。また、職場の健康診断で生活習慣病の恐れを指摘されている方は、自身の健康を見直す機会になるでしょう。

【BIGLOBE「在宅勤務に関する意識調査[第一弾]」】
https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2020/03/200326-1


新型コロナウイルスへの企業の対応~マーサージャパン調査より (2020/04/02)


新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、企業がどのような対応をしているかが気になるところです。人事コンサルティング会社のマーサージャパンでは2月27日から3月4日までの期間、新型コロナウイルスに対する企業の対応について、調査を実施しました。

◆時差出勤、テレワーク

各社の取組みの現状としては、「時差出勤の許可・奨励」が84%、「在宅勤務・テレワークの許可・奨励」が69%と柔軟な対応が進んでいます。

在宅勤務・テレワークについては、82%が全社または一部の部門で実施しています。その一方で、18%の企業が実施していない理由としては、「インフラが整っていない」(78%)、「関連規定・ルールが整備されていない」(66%)、「業務特性がテレワークに適していない」(62%)などが挙げられています。

◆イベントの中止・延期

「緊急性の低い国内外の出張を中止・延期」が91%、「集合型社内研修の中止・延期」が71%、「職場での懇親会等の中止・延期」が59%、「採用関連イベントの中止・延期」が39%と多く、「新卒・中途入社式の中止」も10%となっています。

◆オンライン化

会議などのオンライン化も「オンライン会議への切替え」(社内ミーティング52%、社外ミーティング39%)、「オンライン研修への切替え」(27%)と進んでいます。

◆企業への影響

企業が抱える懸念としては「出張の中止や延期に伴う商談のスローダウン」が57%、「国内外の経済活動の停滞、自粛ムードに伴う売上の減 少」が50%と多くなっています。

◆マーサージャパンによるポイントまとめ

  • 全社共通の対応としては、総じて不要・不急な出張の中止・延期やテレワークへの切替えなど、感染拡大防止にあたり必要な施策を実施する一方、ビジネス面の影響や4月以降の業務計画の見直しについては慎重に見極める姿勢が大半であり、悲観的なトーンが比較的強いメディア報道に比べ、企業の現場では比較的冷静な対応が多く見受けられた。
  • 一方で、感染拡大防止に向けた対応・施策が十分に整備されていない企業も散見され、個別企業ごとの危機管理や業務・ITインフラ、リーダーシップのあり方の違いが浮き彫りになった。


【マーサージャパン「新型コロナウィルスに対する企業対応のスナップショットサーベイ結果」】
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000046.000035512.html


テレワーク導入への自宅環境は?~リクルート住まいカンパニー調査より (2020/04/02)


◆調査の概要

株式会社リクルート住まいカンパニーが2月25日、東京・神奈川・千葉・埼玉・群馬・茨城・栃木・長野・山梨に住居を置く20歳~64歳の会社員(正規・非正規問わず)・公務員・自営業・自由業等の男女に実施した、「テレワーク(リモートワーク)×住まいの意識・実態調査」の結果を公表しました。

◆テレワークの実施率

テレワークの実施については、17%が既に「実施中」、28%が「導入を考えている・興味がある」、55%が「興味がない・仕事の性質上無理」と回答しています。

職種別にみてみると、実施中で多いのが「企画/マーケティング」(38%)、「Web/クリエイティブ系」(30%)、「エンジニア」「営業」(ともに24%)、「事務・経理・総務・人事」(16%)と続きます。公務員でも12%が導入済です。
「導入を考えている」との回答で注目すべきは、「事務・経理・総務・人事」で、34%が興味があるとしています。HRテクノロジーの発展により、事務系は確実にテレワークができる環境が整いつつあるようです。

◆自宅環境整備の実施率

  • テレワーク実施場所
    最も多かったのは、「リビングダイニング」(59%)で、そのうち専用のスペースがあるのは20%。その他、「書斎等専用ルーム」 (19%)、「カフェ・喫茶店」(12%)、「寝室・ベッドルーム」(10%)と、圧倒的に自宅で働く人が多いようです。
  • 自宅環境の整備
    テレワーク実施にあたり、自宅を仕事に適した環境に整えたかという質問では、70%が「環境を整えた」と回答しています。その内容として、「仕事の資料・PC置き場・収納スペースを作った」(28%)、「ネットワーク環境を整えた」(26%)、「モニター・プロジェクター等用意した」(24%)が挙がり、金額的には、10万円以下を費やした割合が64%と過半数を超えています。

◆その他

賃貸住宅居住者に至っては、現在の住宅にシェアオフィスやコアワーキングスペースが備わる場合、66%が「家賃が上がっても良い」と回答しています。また、テレワークをきっかけに、「引越しをした」割合が10%、また「前向きに検討している・してみたい」と回答した割合が42%ありました。
今夏の東京オリンピックに向けて、テレワークの導入検討・準備を進めていた企業は多かったと思います。そんな矢先、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、大企業を筆頭に前倒しでテレワーク導入を始めた企業が多くみられます。急ピッチでの整備が求められます。

【リクルート住まいカンパニー「「テレワーク×住まいの意識・実態」調査結果」】
https://www.recruit-sumai.co.jp/press/2020/02/70.html


求人不受理の対象が追加されます! (2020/04/02)


◆3月30日から施行

原則、ハローワークや職業紹介事業者は、すべての求人を受理しなければなりませんが、①内容が法令に違反する求人、②労働条件が通常の労働条件と比べて著しく不適当な求人、③求人者が労働条件を明示しない求人のいずれかに該当する求人については、例外的に受理しないことができます。

今回、改正によって、④一定の労働関係法令違反の求人者による求人、⑤暴力団員、法人で役員の中に暴力団員がいる者、暴力団員がその事業活動を支配する者による求人、についても受理しないことが可能になりました。

◆求人者に求められる自己申告

職業紹介事業者は、求人者に対して自己申告を求めることができます。ちなみに、「私どもは、この求人申込みの時点において、職業安定法に規定する求人不受理の対象に該当いたしません」と記載された自己申告書が厚生労働省から出されています(事業所名・所在地・代表者名、チェックシートへの記入が求められます)。

求人者が自己申告を行わなかった場合にも、求人を受理しないことができます。
また、求人者が事実に相違する自己申告を行った場合、都道府県労働局が勧告・公表などを行うことができます。

◆求人不受理の対象となる場合とは?

①労働基準法および最低賃金法に関する規定で、1年間に2回以上、同一の対象条項違反により是正指導を受けた場合や、②職業安定法、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法に関する規定で、対象条項に違反し、法違反の是正を求める勧告に従わず、公表された場合⇒法違反の是正後 6カ月経過するまで不受理となります。


時間外労働上限規制2020年4月から中小企業も適用に (2020/03/04)


◆4月から中小企業も適用に

「働き方改革」の下、昨年4月から大企業を対象に時間外労働の上限規制が始まりました。時間外労働の削減については多くのメディアでも取り上げられてきており、各企業で多様な取組みがなされているところですが、いよいよ今年の4月から中小企業も規制の対象となります。

中小企業で猶予されていた月60時間を超える時間外労働の法定割増賃金率50%以上の規定についても、2023年から適用が始まりますので、長時間労働が常態化している会社において、残業時間削減の取組みは、経営上無視できない問題となっています。

◆労働時間は減少傾向に

実際、労働時間自体は全体的に減少傾向にあるようです。直近の厚生労働省が2月に公表した毎月勤労統計調査令和元年分(速報)によると、労働時間(1人平均)は総実労働時間139.1時間と前年比2.2%減となったそうです(うち、所定内労働時間は128.5時間(同2.2%減)、所定外労働時間は10.6時間(同1.9%減))。どの程度実態が伴っているものなのかはわかりませんが、残業時間の上限に法的規制が加えられたことから、各企業で時間外労働等の削減に向けた取組みが進められていることは確かでしょう。

◆残業時間削減の取組み

残業時間削減の取組みとしては、「年次有給休暇取得促進の取組」、「従業員間の労働時間の平準化を実施」、「残業を事前に承認する制度の導入」、「従業員の能力開発の実施や自己啓発の支援」、「IT環境の整備」など様々なものがあります。厚生労働省では、現在、中小企業の事業主に向けて「働き方改革」の特設サイトを設けており、残業削減等の取組み事例や関連の助成金の情報をまとめて紹介しています。各企業で時間外労働の原因や適切な対策は異なりますが、自社の現況を踏まえて対応可能なところから始めてみてはいかがでしょうか。

【厚生労働省「働き方改革特設サイト」】
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/index.html


4月までに対応しましょう! 「身元保証書」を求める際の留意点 (2020/03/04)


◆2020年度の身元保証契約は要注意

素性や経歴を保証するとともに、従業員が会社に何らかの損害を与えた場合に連帯して賠償してもらうため、入社時には身元保証人を立ててもらっている、という会社は多いのではないでしょうか。そのような会社では、この春、「身元保証書」の見直しが必要です。

2020年4月より、「個人保証人の保護の強化」を目的として、極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効とされます(改正民法465条の2)。入社時の身元保証契約は、従業員が会社に損害を与えた場合に本人と連帯してその賠償を行うという連帯保証契約であり、保証人にとっては、従業員が、いつ、どのような責任を負うのかを予測することができないことから根保証契約に当たります。そのため、身元保証契約を締結する際には、賠償の上限(極度額)を定めておかなければなりません。

◆極度額の定め方

極度額の定め方については、例えば次のように、これまでの身元保証書に極度額を追加することが考えられます。

「同人の身元を保証し、同人が貴社に損害を与えた場合、貴社が被った損害を賠償する旨確約します(極度額○○○○円)。」

なお、実務上は、「極度額をいくらにするか」が問題となります。損害に対するリスクヘッジという観点からは、あまりに低額とすると実効性がなくなりますし、一方であまりに高額としてしまうと、連帯保証人が躊躇する等で手続きが進まないおそれもあります。

具体的に金額を明記する(「極度額は1千万円とする。」など)のがベストですが、例えば「極度額は従業員の月給の○○か月分とする。」などと定めることも考えられます。

◆「身元保証契約」締結の見直しも……

身元保証を求める会社は多いですが、実質的に形骸化しているケースも多くあります。対応を求められていることを機に、会社にとって身元保証 契約を結ぶことが本当に必要であるのか、再検討してみましょう。

今年の健診ではプラス「風しん抗体検査」受診を (2020/03/04)


◆風しんの流行レベルはアメリカが日本渡航者に警告するほど深刻

風しんは、本来1~4歳までの子どもが発症しやすい感染症ですが、現在、最も患者数が多いのは40~50代の成人男性です。流行は2018年7月頃から始まり、2015~2017年には200人未満だった患者数が、2018年は2,946人、2019年は2,306人と急増して います。

この流行を受け、アメリカの疾病対策予防センター(CDC)では、予防接種を受けていない人や妊娠中の女性の日本への渡航をなるべく控えるよう警告しているほどなのです。

◆抗体がなく感染リスクが高い人は?

風しんウイルスの感染力は、1人から6~7人に感染するほど強く、これはコロナウイルスより強いといえます(コロナウイルスの感染力は暫定値で1.4~2.5人)。

予防方法は、ワクチンの接種を受けるのが最も有効ですが、1962年4月2日から1979年4月1日までの間に生まれた男性は、子どもの頃に一度も予防接種を受ける機会がありませんでした。そのため、現在最も感染リスクが高くなっているといえます。

◆厚生労働省の風しん対策(抗体検査)

2022年3月31日までの期間限定で、上記の予防接種を受ける機会がなかった男性を対象に、抗体検査や予防接種を受けるために医療機関や健診会場で提示する受診券(クーポン券)を発行し、住んでいる市区町村から送付しています(1962年4月2日から1972年4月1日までの間に生まれた男性へのクーポン券発送は2020年4月1日から)。

クーポン券を健診会場に持参すれば、原則無料で抗体検査が受けられます。また、検査結果から抗体の数が十分でないことがわかった人は、無料で予防接種も受けられます。

◆受診で従業員と家族の健康が守られます

風しんを発症した場合の症状は、発熱、発疹やリンパ節の腫れなどですが、風しんに免疫のない女性が妊娠初期にかかると、胎児に先天性の心疾患や難聴、白内障などの障害(先天性風しん症候群)を引き起こします。つまり、家族に感染させたときにより深刻な症状となり得るのです。

今年度クーポン券が送付された人のうち、これまでに実際に抗体検査を受けた人は16.1%と、感染拡大防止に十分な人が受けたとは言えない結果となっています。
ぜひ、従業員とその家族の健康を守るためにも、2020年の健康診断にはクーポン券の持参と「風しん抗体検査」の受診を呼びかけてあげてください。


令和元年 障害者雇用状況の集計結果 (2020/02/02)


◆雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新

厚生労働省は、民間企業、公的機関などにおける令和元年「障害者雇用状況」集計結果を公表しました。

集計結果によると、民間企業における雇用障害者数は56万608.5人(対前年4.8%、2万5,839人増)、実雇用率は2.11%(対 前年日0.06ポイント上昇)と、ともに過去最高を更新しています。雇用者のうち、身体障害者は354,134.0人(対前年比2.3% 増)、知的障害者は128,383.0人(同6.0%増)、精神障害者は78,091.5人(同15.9%増)となっており、特に精神障害者の伸びが目立ちます。

◆法定雇用率未達成の企業が約5割

障害者雇用促進法では、事業主に対して、常時雇用する従業員の一定割合(45.5人以上規模の企業:法定雇用率 2.2%)以上の障害者を雇うことを義務付けています。徐々に雇用障害者の数は増えていますが、同調査によると、法定雇用率達成企業の割合は48.0%(前年比2.1ポイント上昇)となっており、半数以上の企業で法定雇用率未達成という現実もあります。そのうち、障害者を1人も雇用していない企業(0人雇用企業)は30,638社となっており、未達成企業に占める割合は57.8%となっています。

◆障害者雇用促進法改正と今後の障害者雇用

令和元年6月に改正障害者雇用促進法が成立し、今年4月からは「特定短時間労働者を雇用する事業主に対する特例給付金」、「障害者雇用促進への取組実施状況が優良な中小事業主の認定制度」が創設されます。障害者雇用については、雇用の拡大のみならず、その質の向上も求められており、国や民間においても多くの施策が進められているところです。

障害者雇用については、自社の状況も踏まえつつ、今後も注視していきたい課題です。

「産業保健師」の活用を検討してみませんか (2020/02/02)


◆企業と産業保健活動

企業には、近年のメンタルヘルス不調者の増加、高齢化による従業員の平均年齢の上昇、長時間労働対策の必要性が増していること等を背景に、 従業員の健康管理に取り組むため、産業保健活動を効果的・効率的に進めることが求められています。しかし、特に中小規模事業所においては、健康診断の機会の提供以外のサービスはほとんど行われていないのが現状です。産業医の人数不足や、健康問題について対応できる人材が社内にいないといった問題もあります。

このような問題に対応するため、今、「産業保健師の活用」が注目されています。

◆「産業保健師」とは

保健師の最も大切な役割は、病気になる前の段階でその予兆を察知し、疾病の発生そのものを予防することです。保健師の職種は行政保健師・学校保健師・産業保健師に分類されますが、うち「産業保健師」は、主に民間企業や健康保険組合で産業医や衛生管理者、人事担当者とチームを組み、従業員の健康維持・改善・促進等をサポートする存在です。

◆産業保健師を活用するメリット

産業医も従業員の健康をサポートする存在ですが、その業務においては実際に疾病にかかった方への対応や、面接指導等の業務が優先されがちです。産業保健師を活用すれば、たとえばちょっとした健康に関する相談、新入社員のフォローなど、産業医だけでは時間や費用の関係で難しかった対応も可能となります。産業医と現場、担当者をつなぐコーディネーターとしても機能します。

また、産業医の選任義務のない事業場においては、産業保健師に健康管理のための各種対応を行ってもらうことで、効果的な産業保健活動を、費用を抑えながら行うことができます。

近時は派遣スタッフとして働く産業保健師も増えています。活用を検討してみてはいかがでしょうか。

利用者急増!“退職代行”サービス (2020/02/02)


◆“退職代行”とは

近年、退職代行サービスの利用者が増加しています。退職代行サービスとは、直接退職の意思を伝えることが難しい従業員に代わり、退職意思の伝達や、処理を行うものです。利用者は退職する企業と一切やり取りをすることなく、自分で辞めるよりもスムーズに退職できると謳う業者が多いのが特徴です。

一方、弁護士のいない代行会社も多く、その場合は利用者の意思・希望の伝達以上のことはできません。退職にまつわる交渉等をするには、企業は従業員本人と連絡をとらなければなりません。費用は3~5万円が多く、弁護士に依頼するよりも当初の費用は抑えられますが、代行する行為にも制限があるのが特徴です。

◆背景にある問題

利用者が増加する背景には、さまざまな問題があります。退職代行サービスを利用する理由として多いのは、次のようなものです。

  1. 退職の意思を伝えたが、人手不足や上司の多忙等を理由に受け入れてもらえない
  2. パワハラがあり、相手の態度・言動が怖くて退職を言い出せない
  3. 執拗な引留め交渉に時間を取られたくない

従業員本人としては退職の意思が固まっているにもかかわらず、企業側がそれを受け入れないという状況が読み取れます。「自分の意思が尊重されないのでは」という思いが利用者側にあるようです。

◆企業の対応

従業員が退職代行サービスを利用すると、ある日突然、代行会社から企業に連絡がきます。書面や電話等により、「当該従業員は本日より出社できない、有給を消化したうえで退職したい、以降の連絡は退職代行会社へしてほしい」という旨を伝えられることが多いようです。突然出社しなくなるため、退職の理由を従業員本人から聞く機会もなければ、業務の引継ぎも難しい場合がほとんどです。

原則として退職は自由です。それが従業員本人の意思であれば、企業は退職を受け入れ、必要な手続きを速やかに行うのが一般的です(交渉すべき事項がある場合は除く)。

問題がこじれるのを防ぐためにも、従業員が退職代行サービスを利用しなくてもよいと思える環境を企業が整備することが求められます。


進めていますか? 36協定締結&作成 (2020/01/03)


◆「時間外労働の上限規制」がいよいよ中小企業にも適用

2020年4月1日から、中小企業でも時間外労働は原則「1か月45時間」「1年360時間」とされ、36協定で特別条項を定めた場合も法定の上限を超えると罰則の対象となる「時間外労働の上限規制」が適用されます。

厚生労働省では、この適用に向けて、令和元年度下半期を集中的施策パッケージの実施期間と位置づけ、主に次のような取組みを行っています。

◆36協定未届事業場への案内文の送付

厚生労働省では、令和元年度より36協定未届で労働者数が10人以上の事業場等に「自主点検表」を送付し、提出を求めるだけでなく個別訪問 等も実施しています。
集中的施策パッケージでは、この自主点検により把握した36協定の届出が必要と考えられる事業場に対し、案内文を送付しています。

◆特別条項締結事業場への集中対応

36協定の特別条項は、通常予見できない業務量の大幅増加等の場合に限り、上記の限度時間を超えて働かせても法違反とならない免罰効果を有する定めですが、上限規制により、法定の時間を超えると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

集中的施策パッケージでは、時間外労働時間を月80時間超とする特別条項付き36協定を届け出た事業場に対する説明会の開催、不参加事業場への個別訪問等を実施して、上限規制への対応を求めています。

◆提出前にチェックを受けましょう

2020年4月1日以降を始期とする36協定届は、新様式にて作成します。新様式には、上限規制について、時間外労働時間に係るものと時間外・休日労働時間の両方に係るもののいずれをもクリアしている内容を記載しなければなりません。
また、新設されたチェックボックスへのチェック漏れがあるとその場で修正する「補正」ではなく「再提出」扱いとなってしまう等、記入上の注意点が複数あります。

さらに、従業員代表者が不適格と判断される等により36協定そのものが無効になってしまうと、時間外・休日労働を行わせること自体が違法行為となります。
令和2年度の36協定届の作成と提出では、「年中行事の1つ」との楽観視はせずに、監督署に提出する前に専門家のチェックを受けることをお勧めします。


健康保険の被扶養者に国内居住要件が求められます (2020/01/03)


外国人労働者の受入れ拡大に伴い、2020年4月1日から健康保険法の被扶養者にも国内居住要件が求められることになりました。外国人労働者の母国に残された家族の疾病、負傷などについても日本の健康保険で給付を行うことになれば、保険財政を圧迫するからです。被扶養者として認められるには、原則として、日本国内に住所を有することが要件ですが、外国にいても被扶養者として認められる者や日本国内にいても被扶養者から除外される者など一定の例外がありますので、そこを整理します。

◆法律の条文(改正後の健康保険法第3条7項)

この法律において「被扶養者」とは、次に掲げる者で、日本国内に住所を有するもの又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められるものとして厚生労働省令で定めるもの(※1)をいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者(※2)は、この限りでない。
1号~4号  略

◆日本国内に住所を有しないが、例外的に被扶養者と認められる者

上記※1の「渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められるものとして厚生労働省令で定めるもの」とは、下記の人たちをいいます。

  1. 外国において留学をする学生
  2. 日本からの海外赴任に同行する家族
  3. 海外赴任中の身分関係の変更により新たな同行家族とみなすことができる者(海外赴任中に生まれた被保険者の子ども、海外赴任中に結婚した被保険者の配偶者など)
  4. 観光・保養やボランティアなど就労以外の目的で一時的に日本から海外に渡航している者(ワーキングホリデー、青年海外協力隊など)
  5. その他日本に生活の基礎があると認められる特別な事情があるとして保険者が判断する者

◆日本国内に住所を有するが、例外的に被扶養者と認められない者

上記※2の「この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者」とは、下記の人たちをいいます。

  1. 「医療滞在ビザ」で来日した者。医療滞在ビザとは、日本において治療等を受けることを目的として訪日する外国人患者等(人間ドックの受診者等を含む)及び同伴者に対し発給されるものです。
  2. 「観光・保養を目的とするロングステイビザ」で来日した者(富裕層を対象とした最長1年のビザ)

なお、国民年金の第3号被保険者についても、健康保険と同じ2020年4月1日から国内居住要件が求められますが、その要件は上記※1、※2と同様に判定されます。第1号被保険者については、従来から国内居住要件がある一方で、国内にいても被保険者から除外される例外規定が新設されましたが、それは上記※2と同様に判定されます。

高齢者雇用の雇用状況~厚生労働省調査より~ (2020/01/03)


◆65歳までの高年齢者雇用確保措置のある企業はほぼ100%

厚生労働省は、高年齢者を65歳まで雇用するための「高年齢者雇用確保措置」の実施状況などを集計した、令和元年「高年齢者の雇用状況」(6月1日現在)を公表しました(従業員31人以上の企業161,378社の状況をまとめたもの)。

同調査によれば、65歳までの雇用確保措置のある企業は99.8%と、ほぼ100%となっています。

◆定年制の廃止、引上げを講じる企業割合が微増

雇用確保措置の実施済企業のうち、「定年制の廃止」を講じている企業は4,297社、2.7%(対前年0.1ポイント増加)、「定年の引上げ」を講じている企業は31,319社、19.4%(同1.3ポイント増)、「継続雇用制度の導入」を講じている企業は125,501社、 77.9%(同1.4ポイント減)となっており、定年制度により雇用確保措置を講じるよりも、継続雇用制度により雇用確保措置を講じる企業の比率が高いものの、定年制度の見直しを講じる企業がわずかながら微増していることもわかります。

◆66歳以上働ける制度のある企業が増加

66歳以上働ける制度のある企業の割合も増加しています。66歳以上働ける制度のある企業は49,638社(同6,379社増)、 30.8%(同3.2ポイント増)、70歳以上働ける制度のある企業は46,658社(同6,143社増)、28.9%(同3.1ポイント増)となっています。

66歳以上働ける制度のある企業は、大企業、中小企業共に増加してきていることがわかります。

◆今後の動向も踏まえて検討を

現在政府は70歳までの就業機会確保を事業主の努力義務とする高年齢者雇用安定法の改正に向けて動いています。少子高齢化や労働力人口の減少により、高齢者雇用は今後ますます進んでいくことが予想されます。企業としても、先を見据えて対応を考えていきたいものです。

【厚生労働省「令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000182200_00003.html


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